弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2012年 10月 17日 ( 3 )

日本感染症学会第61回東日本地方会学術集会,新型インフルエンザ特措法の問題点を議論

新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成24年5月11日公布)は,新型インフルエンザの感染防止を目的とする法律ですが,集会制限など人権侵害の疑いの強い法律です.

日本感染症学会第61回東日本地方会学術集会で,「“新型”インフルエンザからいかに国民を守るか~新型特措法の問題を含めて~」が議論されました.座長は,渡辺彰氏(東北大学加齢医学研究所抗感染症薬開発研究部門)と菅谷憲夫氏(警友会横浜けいゆう病院小児科)です.

日経メディカル「感染症学会、新型インフルエンザ特措法の問題点を議論」(2012年10月13日)は,次のとおり伝えました.

「日本感染症学会は10月12日、第61回東日本地方会学術集会において緊急討論を開催した。テーマは、今年5月に公布となった「新型インフルエンザ等対策特別措置法」の問題点。参加者からは、鳥インフルエンザH5N1ウイルスのパンデミック化を過大評価している、H5N1亜型については現時点で世界中の感染症の専門家らはパンデミックの最有力候補とは見ていない、新感染症とインフルエンザへの対応が整理されていない、プレパンデミックワクチン接種が既成事実化している、などの手厳しい指摘が相次いだ。

 討論会ではまず、渡辺氏が論点整理を行った。それらは11項目に集約された。

 1.この法律は“新型”インフルエンザが対象か?
 2.そもそも“新型”インフルエンザとは何か? H5N1亜型なのか?
 3.H5N1亜型が本当にパンデミックを起こすのか?
 4.“新型”であれ、死亡が64万人などということは起こり得るのか?
 5.季節性インフルエンザ以下なら発動しないとあるが、発生後直ちに見極められるのか? また、その基準はどのようなものなのか?
 6.検疫(同法第29、30条)は必要なのか? 有効なのか?
 7.臨時の医療施設の開設(同法48、49条)とは「発熱外来」のことか?
 8.外出禁止や集会禁止(同45条)で果たして流行を抑えられるのか?
 9.インフルエンザで、電気やガス、水道が使えなくなるのか(同52条)?
 10.ワクチン対策(同46条)で、プレパンデミックワクチンは有効か? 安全か?
 11.流行の第一波では、抗インフルエンザ薬の早期投与が根本的対策ではないのか?」


日経メディカルには,専門家の次の意見が紹介されています.

・「鳥インフルエンザH5N1ウイルスのパンデミック化を過大評価しているのではないか」
・「H5N1亜型については現時点で世界中の感染症の専門家らはパンデミックの最有力候補とは見ていない」
・「プレパンデミックワクチン接種が既成事実化しているのは倫理的にも問題」
・「新感染症とインフルエンザへの対応がごちゃごちゃになっていて、きちっと整理されていないことが最も大きな問題」


日本感染症学会としての意見表明に期待します.

谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2012-10-17 20:17 | 医療

シンポジウム「いま、尊厳死法制化を問う」

シンポジウム「いま、尊厳死法制化を問う」(日本宗教連盟主催)の模様を,CBニュース「「尊厳死法制化を問う」、都内でシンポ開催」(2012年10月16日)が報じています.


◆ 日本尊厳死協会副理事長の医師長尾和宏氏

「終末期医療は、各医学会のガイドラインと法的担保の両輪でやるべきだ」
「(現行法では)家族が殺人ほう助罪で逮捕されるかもしれない」
「(終末期は)誰も定義できないと思うが、臨終期というのはある。数日、せいぜい1か月、2か月しか分からない」
「医師にも間違いはある。そこを2人で担保する」


◆ 慶應義塾大学看護医療学部教授の加藤眞三氏

「患者中心の医療を実現するためには、医療の情報提供が何よりも大事だ」
法制化については、「医療者を免責することに目的がある。患者さんのためではない」
「医療はすべてが延命行為だが、それを『無駄だ』と思った時に延命措置と呼ぶ。言葉を使う人の価値観が入っている」
「(医師が)植物状態になると思っても、回復する場合もある」


このお二人の御発言に,推進派の意見,反対派の意見が,端的にわかりやすく示されていると思います.

患者には,十分な情報提供と分かりやすい説明を受け,理解した上で,自由な意思に基づき自己の受ける医療に同意し,選択し,拒否する権利(自己決定権)があります.
終末期の医療においては,とくに,患者本人の自由な意思に基づく自己決定であることを担保することが必要です.ところが,そのための手続,システムが未だに整備されていません.尊厳死法制化は早計に過ぎるのではないでしょうか.

谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2012-10-17 01:51 | 医療

「病理検査結果報告書の確認忘れ」医療安全情報 No.71

医療事故情報収集等事業 医療安全情報 No.71「病理診断報告書の確認忘れ」が,2012年10月15日に出されました.

病理検査結果の報告書を確認しなかったことにより治療が遅れた事例が8件報告されている,とのことです.

「事 例 1
患者は他疾患の経過観察のCT検査で子宮・卵巣病変を疑われ、産婦人科を受診した。産婦人科医師の診察では超音波検査で複数個の子宮筋腫を認めるものの明らかな悪性所見を認めず、子宮頸部細胞診を施行し、異常があれば連絡することになっていた。1年半後、PET-CTで骨盤内に集積を認め、再度産婦人科を受診し、腟内の細胞診を施行した。患者の診察終了後、医師は1年半前に施行した子宮頸部細胞診で異常(クラスV、扁平上皮がん)の病理診断報告書を確認していないことに気付いた。

事 例 2
通院中の患者が、胃検診で要精査の通知を持参した。医師は内視鏡検査を行い、病変部を生検し、次回の予約を入れた。その後、病理診断報告書が出ていたが、患者が来院しなかったため、カルテを一度も開くことがなく経過した。2年後、患者は胃検診の結果が再度要精査であったため、受診した。その際、医師は2年前の病理診断報告書で「悪性」の所見が出ていたことに気付いた。

事例が発生した医療機関の取り組み
・病理診断結果の内容の確認ができる仕組みと、患者への説明が確実になされる仕組みを構築する。

総合評価部会の意見
・重大な結果については、直接医師に連絡する仕組みを検討しましょう。」


病理検査結果の報告書を確認しなかったことは,医師としての注意義務違反にあたるでしょう.それが8件も起きているのです.

病理検査の結果を患者に説明するためには,医師は,病理検査結果の報告書を読む必要がありますので,患者への説明を確実に行うシステムを作る,というのも一つの対策です.
また,病理の側からも,重大な結果について連絡するようになれば,事故を防止することができるでしょう.

谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!
  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2012-10-17 01:45 | 医療事故・医療裁判