弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2013年 02月 22日 ( 1 )

産科医師不足と訴訟リスク


八重山毎日新聞 「「訴訟多く、医師不足に」産婦人科医療で特別講演」(2013年2月13日)は,次のとおり報じました.
 
お産について考える」をテーマにした八重山病院の市民特別講演会が8日午後、石垣市健康福祉センターで開かれた。

 東邦大学医療センター大森病院産婦人科教授で日本産婦人科医会常務理事の田中政信氏が講師を務め、産婦人科の医師不足の背景として、医師1000人当たり9.9件という医療関係訴訟の多さがあることを説明した。
 田中氏は妊娠22週から出生後7日未満までの周産期に医療事故が多いことを説明し、要因として▽母子の2つの生命を預かっている▽妊産婦の個人差が大きく、分娩(ぶんべん)時間のコントロールができないなどを挙げた。
 また、妊婦自身が気を付けることとして▽妊婦健康診査を必ず受ける▽やせ・肥満に気を付ける▽喫煙・飲酒は禁止を挙げ、特に喫煙については「妊婦がたばこを吸うことは胎児虐待」と厳しく指摘した。妊婦検診についても「妊婦は自分の義務を果たすこと」と受診を求めた
。」

「妊婦がたばこを吸うことは胎児虐待」という発言は全面的に支持します.まったく,そのとおりです.妊婦の近くにいる人も喫煙は止めてほしいです.外で喫煙して妊婦のいる部屋に入った場合にも,吐く息で受動喫煙が生じますので,これも止めてほしいです.


産科医師は,訴訟リスクを気にされている方が多いのでしょう.

当事務所は,協力医(御意見をいただく医師)が関係する施設の相談は受けません.
当事務所では,医療過誤を疑って相談される方には,カルテなどの記録資料を持ってきていただき,カルテに基づいて,医療過誤の疑いの程度を判断します.カルテがあると実のある相談ができます.
医療過誤(過失・因果関係・損害が立証できるもの)の疑いの程度が低いものは,この段階で終了します.

医療過誤の疑いが或る程度あっても,医療過誤であると決めつけている方からの調査依頼は,受けません.責任追及困難という調査結果になった場合,御納得されないことが多く,調査の意味がないからです.

医療過誤の疑いが或る程度あるケースで,医療過誤であると決めつけていない方には,調査をお奨めいたします.

調査を依頼された場合,医学文献,同種裁判例を調べ,第三者医師の公正な御意見を聴き,ときには相手方病院の医師の御説明も聴き,慎重に検討します.これは,他の患者側弁護士も同様でしょう.

そのような調査の結果,医療過誤としての法的責任立証が困難という結論になることもあります。たとえば,過失(注意義務違反)立証の見込みがあっても,因果関係立証が困難なときは,医療過誤としての法的責任立証は困難という結論になります.

期待権侵害(注意義務違反と生じた結果との間の因果関係立証の見込みが困難であるが,法的に医療に期待すべき水準に照らして十分なことが行われていなかったもの),単なる説明義務違反(説明義務違反と生じた結果との間に因果関係のない説明義務違反)の可能性がある,となった場合は,悩ましいところです.たしかに,期待権侵害,単なる説明義務違反でも,訴訟を奨める弁護士はいると思います.
ただ,当事務所は,期待権侵害,単なる説明義務違反では,基本的に,訴訟受任はしない,という方針をとっています.そこまで何もかも訴訟にすることが,関係者にとって本当によいことなのか,という疑問を払拭しきれないからです.

当事務所では,医療過誤としての法的責任立証の見込みがあるときでも,直ちに訴訟はせず,交渉,弁護士会の医療ADRでの適正な解決を試みるようにしています.これは,他の患者側弁護士も同様でしょう.

私の経験では,個人医院等でのガイドラインを外れた,きわめて問題のある診療が行われたケースが,最終的に訴訟になっています.

産科医事訴訟は,このように慎重に提訴されています.
訴訟件数は,産科医事訴訟に濫訴が多いのではなく,産科医療において適切な医療が行われていない場合が他科より多いことを示唆するのではないでしょうか.

産科医療において,ガイドラインにそった適正な医療を実践することが,訴訟リスクを減らすことになると思います.

谷直樹

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by medical-law | 2013-02-22 21:57