弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2013年 05月 16日 ( 2 )

日本禁煙学会,タバコ会社の元社長をNHKの経営委員長に就かせるべきではない

特定非営利活動法人日本禁煙学会は,2013年5月16日,緊急声明『タバコ会社の元社長をNHKの経営委員長に就かせるべきではない』を発表しました.

 「日本経済新聞2013年5月13日朝刊によりますと、NHK経営委員会の委員長(CEO)をJT(日本たばこ産業)の本田勝彦顧問(71)を軸に調整しているとのことです。
本学会は、以下の理由で、この人事に強く反対し、撤回を求めます。

理由

放送法1条(目的)には、「放送を公共の福祉に適合するように規律し」と定められている。この「公共の福祉」には、タバコの使用を大幅に減らし国民の健康と命を守るという公衆衛生における喫緊の課題も含まれている(健康日本21、がん対策推進基本計画等)。しかしながら、JTの元社長であり現在も経営に関与する者をNHKの経営委員長に就かせることは、年間12~13万人の国民を死に至らしめているタバコの製造販売を促進するために、喫煙率やタバコ販売量が維持されることを意図した偏向的な番組作りや報道が行われる可能性が懸念され、不適切である。


日本国政府は、「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」を批准しており、憲法98条2項により、当該条約の遵守義務をおっている。当該条約5条3項において「締約国は、タバコの規制に関する公衆の健康のための政策を策定し及び実施するに当たり、国内法に従い、タバコ産業の商業上及び他の既存の利益からそのような政策を擁護するために行動する。」と定められており、政策の策定・執行にあたりタバコ産業の干渉・影響を排除しなければならない。しかしながら、JTの経営に関与する者をNHKの経営委員長に就かせることに国会が同意するということは、当該条約5条3項に明確に違反することとなる。
*******


 本学会のもとにも世界各国からこのような重大な懸念を示す意見が次々に寄せられています。NHKの経営人事は、日本国内だけの問題ではなく、十数カ国語で世界中に放送していることからBBCなどの国際放送とならび、国際的に影響のある問題と考えられているからです。」


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 「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」(抜粋)

第五条 一般的義務

締約国は、この条約及び自国が締約国である議定書に従い、多くの部門における包括的な自国の戦略、計画及びプログラムであってタバコの規制のためのものを策定し、実施し、並びに定期的に更新し及び検討する。

このため、締約国は、その能力に応じ、次のことを行う。

(a)タバコの規制のための国内における調整のための仕組み又は中央連絡先を確立し又は強化し、及びこれらに資金を供与すること。

(b)タバコの消費、ニコチンによる習慣性及びタバコの煙にさらされることを防止し及び減少させるための適当な政策を策定するに当たり、効果的な立法上、執行上、行政上又は他の措置を採択し及び実施し、並びに、適当な場合には、他の締約国と協力すること。

締約国は、タバコの規制に関する公衆の健康のための政策を策定し及び実施するに当たり、国内法に従い、タバコ産業の商業上及び他の既存の利益からそのような政策を擁護するために行動する。

締約国は、この条約及び自国が締約国である議定書の実施のための措置、手続及び指針に関する提案を作成することに協力する。

締約国は、適当な場合には、この条約及び自国が締約国である議定書の目的を達成するため、権限のある国際的及び地域的な政府間機関並びに他の団体と協力する。

締約国は、利用することができる手段及び資源の範囲内で、二国間又は多数国間の資金調達のための制度を通じ、この条約の効果的な実施のための資金を調達することに協力する。


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第十二条 教育、情報の伝達、訓練及び啓発
締約国は、適当な場合にはすべての利用可能な情報の伝達のための手段を用いて、タバコの規制に関連する問題についての啓発を促進し及び強化する。このため、締約国は、次のことを促進するための効果的な立法上、執行上、行政上又は他の措置を採択し及び実施する。

(a)タバコの消費及びタバコの煙にさらされることによる健康に対する危険(習慣性を含む。)についての教育及び啓発のための効果的かつ包括的なプログラムへの広範な参加の機会の提供

(b)タバコの消費及びタバコの煙にさらされることによる健康に対する危険並びに第十四条2の規定によりタバコの使用の中止及びタバコのない生活様式がもたらす利益についての啓発

(c)タバコ産業に関する広範な情報であってこの条約の目的に関連するものの自国の国内法に基づく公開

(d)保健に従事する者、地域社会のために働く者、社会福祉活動に従事する者、報道に従事する者、教育者、意思決定を行う者、行政官その他の関係者に対する、タバコの規制に関する効果的かつ適当な訓練又は啓発のためのプログラム

(e)タバコの規制のための複数の部門にわたるプログラム及び戦略の策定及び実施におけるタバコ産業と関係を有しない公的な及び民間の団体並びに非政府機関の啓発及び参加

(f)タバコの生産及び消費が健康、経済及び環境に及ぼす悪影響に関する情報についての啓発及びその情報の取得の機会の提供


Japan: Society for Tobacco Control warns against appointing former tobacco executive as CEO of national broadcaster」(16 May, 2013 )

「President of the Japan Society for Tobacco Control

According to an article published on 13 May in Nihon Keizai Shinbun (Japan’s equivalent of the Wall Street Journal ) the former president of Japan Tobacco Company Mr Katsuhiko Honda is being considered for appointment as the next Chief Executive Officer of Japan Broadcasting Company (popularly known as NHK). Mr Honda continues to be affiliated with JT as a consultant advisor.

The Japan Society for Tobacco Control unequivocally protests the possible appointment.

Japanese Broadcasting Law has a mandate to “broadcast in accordance with public welfare”. This includes the urgent public health priority of reducing consumption of tobacco to protect the health and life of Japanese people, in line with Health Japan 21, and the Basic Policy against Cancer. Appointing the former president of Japan Tobacco creates an environment for broadcasting which is favourably biased to maintain cigarette consumption, particularly given Mr Honda’s ongoing association with the company. Tobacco kills more than 120 thousand people in Japan every year; an unacceptably high toll.

The Japanese Government ratified the World Health Organization Framework Convention on Tobacco Control (FCTC) in 2004, and has an obligation to observe the treaty under Japanese Constitution article 98.2. Article 5.3 of the FCTC states: “Parties shall act to protect these policies from commercial and other vested interests of the tobacco industry in accordance with national law “. The government should avoid the influence of tobacco industry to pursue its policy.

Appointment by the Japanese parliament of a former president and now consultant of JT as the CEO of NHK would be a fundamental breach of Japan’s obligations under the FCTC.

We stand together with our colleagues from around the world who have also expressed concern about the possible appointment. NHK is broadcast in more than ten languages globally; its reach and influence is international.」


タバコは,人(喫煙者自身とその周囲の人)の生命健康を害するものです.
タバコ会社は,タバコを製造販売して人の生命健康を害することで利益をあげています.
タバコ会社は,本質的に人の生命健康を害することで成り立つ,いわばブラックな存在です.
そのようなタバコ会社が存続を許されているのは,タバコの害について十分知られていなかった過去の事情のなごりです.タバコ依存の人が少なからずいる現状からかろうじて容認されているにすぎません.

公共放送のトップにそのようなタバコ会社の元社長を据えることは,タバコ規制策の実施が妨げられる危険があり,たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約違反となり,許されることではないと思います.

谷直樹

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by medical-law | 2013-05-16 22:33 | タバコ

長崎市立市民病院,胸腔鏡下手術中右肺動脈損傷で患者死亡,第三者を含む事故調査委設置へ

読売新聞「手術中動脈傷つけ死亡、長崎市民病院で70代男性」(2013年5月15日)は,次のとおりじました.

「長崎市立市民病院は14日、肺がんの手術中に右肺上部の動脈を傷つけ、市内の70歳代男性が亡くなる医療事故が起きたと発表した。今後、外部の専門家らを交えた病院内の事故調査委員会で術中を撮影した映像を分析し、医療ミスがなかったかどうか原因を調べる方針。

 発表によると、手術は13日に行われ、呼吸器外科の男性医師(53)と助手の医師(45)が執刀。肺に小さな穴を開け、管を通す手術で、切断した肺動脈を縫合する際、ハサミ状の医療器具が大動脈に接触し出血。輸血や心臓マッサージなどの処置を行ったが、約3時間後に死亡したという。

 記者会見した兼松隆之院長は「亡くなった患者や遺族に心から申し訳なく思う。原因を明らかにし再発防止に努めたい」と陳謝した。」


毎日新聞「医療事故:手術中の患者失血死 長崎市民病院、検証へ」(2013年5月15日)は,次のとおり報じました.

「長崎市立市民病院(兼松(かねまつ)隆之(たかし)院長)は14日、肺がんの手術中だった70代の男性=同市在住=の右肺動脈を損傷し、出血多量で死亡させる医療事故があったと発表した。今後、第三者を交えた事故調査委で、原因などを検証した上で、遺族への賠償などについて検討するという。

 同院によると、外科医3人が13日午前9時半ごろ、男性の肺がん切除のため、開胸せずに外から管を通して器具を胸腔(きょうくう)内に入れる胸腔鏡下手術を開始。11時10分ごろ、別の血管を結ぼうとしたところ、器具で右肺動脈を損傷し、出血が止まらない状態になった。緊急に輸血し、開胸して止血に努めたが、午後2時5分ごろ、死亡が確認されたという。」


事故調査委員会による原因解明と再発防止に期待いたします.

谷直樹

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by medical-law | 2013-05-16 00:14 | 医療事故・医療裁判