弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2014年 11月 11日 ( 2 )

負傷した羽生結弦選手の出場について

羽生結弦選手は、頭部、顎に負傷しながら、競技に出場しました.
これは、非常に危険な行為で、主催者あるいは日本連盟が止めるべきでした.
頭部に外傷を負うと、脳出血を起こしたり、解離性の脳梗塞を起こすことがあります.再び頭部を打つとセカンドインパクトシンドロームで死亡することもあります.
羽生結弦選手は、危険な状態で、実際5回も転倒しました.

頭部外傷の危険は、よく知られています.頭部に外傷を負った選手の出場を許すことは主催者としての注意義務に反する可能性があります。そもそも、多くの選手に同時に練習を行わせることも安全性を確保していなかったと評価されるのではないでしょうか.
ラグビーでは、脳震盪を起こした選手は、3週間出場できません.
ボクシングでは、レフリーストップがあります.
これを機会に、すべてのスポーツで、スポーツ選手の安全を守るために頭部外傷や脳震盪を起こした選手は3週間競技に出場できないという規則を作成することを検討してほしいと思います.

一般社団法人日本脳神経外科学会と一般社団法人日本脳神経外傷学会の「スポーツによる脳損傷を予防するための提言」 (平成25年12月16日)は、以下のとおりです.

「日本脳神経外科学会ならびに日本脳神経外傷学会は、「スポーツによる脳損傷」を予防するための研究を行い、それにもとづいて可能な限り最善の診療を行うよう努力してきた。
しかし、医師は、患者ならびに関係者の行動を規制することができない。したがって、的確な診療を行うには、国民の理解が不可欠である。この提言は、「スポーツによる脳損傷」について、国民が認識しておくべき必須の事項を整理したものである。
1-a. スポーツによる脳振盪は、意識障害や健忘がなく、頭痛や気分不良などだけのこともある。
1-b. スポーツによる脳振盪の症状は、短時間で消失することが多いが、数週間以上継続することもある。
2-a. スポーツによる脳振盪は、そのまま競技・練習を続けると、これを何度も繰り返し、急激な脳腫脹や急性硬膜下血腫など、致命的な脳損傷を起こすことがある。
2-b. そのため、スポーツによる脳振盪を起こしたら、原則として、ただちに競技・練習への参加を停止する。競技・練習への復帰は、脳振盪の症状が完全に消失してから徐々に行なう。
3. 脳損傷や硬膜下血腫を生じたときには、原則として、競技・練習に復帰するべきではない。」

谷直樹

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by medical-law | 2014-11-11 01:28 | コンプライアンス

熊本大学病院、医療ミスで誤って肺の一部を切除されたと提訴(報道)

産経新聞「熊本大病院で肺を誤切除 「生活に支障」と女性が提訴」(2014年11月10日)は、次のとおり報じました.

「熊本大病院(熊本市)の医療ミスで誤って肺の一部を切除され、呼吸機能が低下し、日常生活に支障が出たとして、熊本県の50代の女性が10日までに、大学に約2600万円の損害賠償を求める訴訟を熊本地裁に起こした。提訴は10月2日付。

 病院は昨年、肺がんの男性患者とこの女性の検体を取り違え、女性の右肺の一部を切除したと発表し、女性に謝罪した。女性の弁護士によると、大学側と慰謝料について交渉したが合意できなかったため提訴した。

 訴状によると、女性は昨年8月に手術を受けた。病院が切除した肺の検査をすると、がん細胞は見つからなかった。呼吸のしづらさや胸の痛みが残り、勤務先を辞めざるを得なかったと主張している。

 熊本大病院は「係争中なのでコメントは差し控える」としている。」


j熊本日日新聞「健康な肺切除、女性が熊本大提訴 損害賠償請求」 (2014年11月10日)は、次のとおり報じました.

「熊本大病院が昨年8月、手術の必要のない50代女性の健康な肺を切除した医療事故で、女性が10日までに、同大に約2600万円の損害賠償を求める訴訟を熊本地裁に起こした。同病院は昨年9月、事故を公表し、女性に謝罪している。

 同病院の発表によると昨年6月、肺がんの疑いがあった80代男性とこの女性の肺から検体を採取し、標本を作製。この標本が入れ替わったため、女性を「肺がん」と誤って診断。同年8月、右肺下部の3分の1程度を切除した後、誤りに気付いた。

 訴状で女性側は「あってはならない基本的な注意義務違反で、精神的苦痛も甚大」と主張。手術後、右脇の痛みや呼吸しづらいなどの後遺障害があり、仕事への復帰を断念したとして、逸失利益や慰謝料を請求している。提訴前、大学側から賠償額350万円を提示されたが「実態とあまりに懸け離れている」としている。

 熊本大病院は「事故の内容は昨年発表した通りだが、訴訟になったのでコメントは控えたい」としている。(中村勝洋)」


がんの見落とし(多くは画像検査の報告書を見ていない例が多いです)と、その逆にがんではないものを誤って切除する場合があります.
本年は、検体の取り違えですから、注意義務違反(過失)は否定できないでしょう.
問題は損害評価ですが、労働能力に大きな影響があって退職している場合では、それ相応の金額になるでしょう.


谷直樹

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by medical-law | 2014-11-11 00:28 | 医療事故・医療裁判