弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2014年 11月 15日 ( 2 )

医療事故調査制度の施行に係る検討会第1回会議

厚生労働省の「医療事故調査制度の施行に係る検討会 第1回会議」が2014年11月14日開催されました.

NHK「医療事故調査の指針作り始まる」(2014年11月14日 )は、次のとおり報じました.

患者が死亡した医療事故の原因を第三者機関が調査する新たな制度が来年10月に始まるのを前に、どのような事故を調査の対象にするのかなど、制度を運用するための指針の策定に向けた議論が始まりました。

14日、新たな制度を運用するための指針について検討する、医師や弁護士、それに医療事故の遺族などで作る厚生労働省の会議の初めての会合が開かれました。
患者が医療事故で死亡した際、医療機関が行った調査の結果に遺族が納得できない場合に、第三者機関が調査を行う新たな制度は来年10月に始まります。
会議では、調査を行う医療事故の範囲について議論が行われ、弁護士が、対象として示されている「医療機関が死亡を予期しなかった事故」は表現があいまいなため、多くのケースが対象外となるおそれがあるとして、基準を明確にするよう求めたのに対し、医師側からは「調査の対象を広げれば医療現場の負担が増し、かえって安全が確保できなくなる」といった意見が出されていました。
会議では今後、調査対象の範囲のほか、調査の項目や遺族への調査結果の報告の在り方などについて検討を進め、来年2月までに議論を取りまとめたいとしています。」


検討会のメンバーは以下のとおりです.

有賀徹氏(全国医学部長病院長会議「大学病院の医療事故対策委員会」委員長)
今村臣氏(公益社団法人日本医師会常任理事)
大磯義一郎氏(浜松医科大学医学部教授)
小田原良治氏(一般社団法人日本医療法人協会常務理事)
葛西圭子氏(公益社団法人日本助産師会専務理事)
加藤良夫氏(南山大学大学院法務研究科教授・弁護士)
河野龍太郎氏(自治医科大学メディカルシミュレーションセンター センター長)
堺常雄氏(一般社団法人日本病院会会長)
鈴木雄介氏(鈴木・村岡法律事務所弁護士・医師)
瀬古口精良氏(公益社団法人日本歯科医師会常務理事)
髙宮眞樹氏(公益社団法人日本精神科病院協会常務理事)
田邉昇氏(中村・平井・田邉法律事務所弁護士)
土屋文人氏(公益社団法人日本薬剤師会相談役)
豊田郁子氏(新葛飾病院医療安全対策室セーフティーマネージャー)
永井裕之氏(患者の視点で医療安全を考える連絡協議会代表)
西澤寛俊氏(公益社団法人全日本病院協会会長)
福井トシ子氏(公益社団法人日本看護協会常任理事)
松原謙二氏(公益社団法人日本医師会副会長)
宮澤潤氏(宮澤潤法律事務所弁護士)
柳原三佳氏(ノンフィクション作家)
山本和彦氏(一橋大学大学院法学研究科教授)
山本隆司氏(東京大学大学院法学政治学研究科教授)
米村滋人氏(東京大学大学院法学政治学研究科准教授)
和田仁孝氏(早稲田大学法科大学院教授)

m3.com「事故調”検討会、来年2月の取りまとめへ「法律準拠」を確認、焦点は「入口」と「出口」」 (2014年11月14日)によると、以下の発言があったとのことです.

厚生労働大臣政務官の橋本岳氏
「欲張ってさまざまな機能を追加すると、予期せぬ挙動、バグが生じることがあるため、システムは簡潔、コンパクトにすべきと言われる。医療事故調査制度についても、10年以上、さまざまな議論があり、今日に至っている」と指摘。その上で、「医療は複雑なものであり、多様。また事故という不幸な状態が始まりなので、理性的ではなく、感情的に動くこともあり得る。その中で制度を考えなければならず、『あれも、これも』となりがちで、最終的に合意ができず、今に至っている。しかし、先に成立した改正医療法による医療事故調査制度の目的はシンプルで、原因分析を行い、再発防止を行うことにある。このことを目指して議論をお願いしたい」

土生課長
「法律上は、過誤があったかどうか、管理が含まれるかどうかは、(報告の)判断の軸には入っていない。医療に起因するまたは医療に起因することが疑われるかどうかで、判断することになっている。医療と管理は重なり得る概念なので、その視点から言えば、医療の中にある管理は対象になってくると思う。どのようなものが対象になるかは、本検討会において、十分に検討してもらいたい。一方、医療の外にある、単なる管理は法律上、対象外」

小田原良治氏
「本来業務である診療を最優先すべきであり、報告対象は人的・物的コストをかけて分析すべき事案に限定すべき」

加藤良夫氏
「「医法協ガイドラインには、随所に問題点がある」、「医法協ガイドラインでは、『報告対象から、医療過誤の類型が基本的に除外』としているが、法律上は区別していない。社会常識的に見て、到底容認できない。(報告の際に)いちいち過誤があるか否かを考えることになってしまう。管理についても、薬の管理などに問題があれば、当然、それは医療安全につないでいかなければいけない。完全に管理を除外することは難しい」、「予期しなかった」の定義について、「死亡以前に、当該患者が、この時期に、このような経過で死亡するとは考えがたかったもの」との私案も提示。」


今後の検討会での議論に注目したいと思います.

谷直樹

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by medical-law | 2014-11-15 01:20 | 医療事故・医療裁判

心停止蘇生後ラットにおける水素ガス吸入は脳機能予後を改善する

慶應義塾大学医学部は、2014 年 11 月 6 日、「心停止後症候群に対して水素ガス吸入が脳障害を改善する効果を発見 -救急医療現場に即した社会復帰率を改善する新たな治療法として期待‒」を発表しました.

「慶應義塾大学医学部救急医学教室(林田敬特任助教、堀進悟教授)、同内科学(循環器)(佐野元昭准教授、福田恵一教授)、日本医科大学大学院医学研究科加齢科学系専攻細胞生物学分野(上村尚美准教授、太田成男教授)らの共同研究グループは、心肺停止後に蘇生され心拍再開が得られた後に、濃度 1.3%の水素ガス(注1)を低濃度酸素吸入(注2)下で吸入させることによって、生存率や脳機能低下を改善することをラットにおいて発見しました。
本研究グループは、これまで脳や心臓の血管が詰まって生じる脳梗塞や心筋梗塞に対して、水素ガスを吸入させながら詰まった血管を広げて血流を再開通させると、虚血再灌流障害(きょけつさいかんりゅうしょうがい:血流を再開させた結果、臓器の組織障害が進行する現象)を抑制することによって、脳梗塞や心筋梗塞が軽症化することをラットやイヌを用いた実験で明らかにしてきました。今回、本研究グループは、これまでの研究と比較してより臨床現場の状況に即した条件で検証し、心肺停止後に蘇生され心拍再開が達成された後からの水素ガス吸入によっても、生存率や脳機能低下を改善することをラットにおいて発見しました。
今回の研究結果を応用し、心肺停止蘇生後の患者さんの社会復帰率を改善する新たな治療法として期待されます。また、水素ガス吸入は、現在唯一、同病態に対し有効と考えられている低体温療法と併用可能であり、治療効果の向上および治療の選択肢が拡がる可能性が考えられます。この治療法は濃度 1.3%の水素ガスを吸入するもので、爆発等の危険性はありません。本研究成果は、2014 年 11 月 3 日(米国東部時間)に米国心臓病学会雑誌 Circulation オンラ
イン版に公開されました。」


Hydrogen Inhalation During Normoxic Resuscitation Improves Neurological Outcome in a Rat Model of Cardiac Arrest, Independent of Targeted Temperature Management

Kei Hayashida1; Motoaki Sano1*; Naomi Kamimura2; Takashi Yokota2; Masaru Suzuki1;
Shigeo Ohta2; Keiichi Fukuda1; Shingo Hori1

+
Author Affiliations
1School of Medicine, Keio University, Tokyo, Japan
2Graduate School of Medicine, Nippon Medical School, Kanagawa, Japan
↵* Department of Cardiology, School of Medicine, Keio University, 35 Shinanomachi, Shinjuku-ku, Tokyo 160-8582, Japan msano@a8.keio.jp


Abstract


Background—We have previously shown that hydrogen (H2) inhalation, commenced at the start of hyperoxic cardiopulmonary resuscitation (CPR), significantly improves brain and cardiac function in a rat model of cardiac arrest (CA). Here, we examine the effectiveness of this therapeutic approach when H2 inhalation is commenced upon the return of spontaneous circulation (ROSC) under normoxic conditions, either alone, or in combination with targeted temperature management (TTM).

Methods and Results—Rats were subjected to 6 min VF CA followed by CPR. Five min after achieving ROSC, post-CA rats were randomized into four groups: mechanically ventilated (MV) with 26% O2 and normothermia (control); MV with 26% O2, 1.3% H2 and normothermia (H2); MV with 26% O2 and TTM (TTM); MV with 26% O2, 1.3% H2 and TTM (TTM + H2). Animal survival rate at 7 d after ROSC was 38.4% in the control group, 71.4% in the H2 and TTM groups, and 85.7% in the TTM+H2 group. Combined therapy of TTM and H2 inhalation was superior to TTM alone in terms of neurological deficit scores at 24, 48, and 72 h post-ROSC, and motor activity at 7 d post-ROSC. Neuronal degeneration and microglial activation in a vulnerable brain region was suppressed by both TTM alone and H2 inhalation alone, with the combined therapy of TTM and H2 inhalation being most effective.

Conclusions—H2 inhalation was beneficial when commenced after ROSC, even when delivered in the absence of hyperoxia. Combined TTM and H2 inhalation was more effective than TTM alone.


動物実験ですが、たしかに期待できそうですね.

谷直樹

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by medical-law | 2014-11-15 00:58 | 医療