弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2014年 11月 22日 ( 3 )

日本でもEUと同じくウテメリン錠を使用中止に!

EUが、ウテメリンの重篤な副作用を確認し、ウテメリン錠の承認を取り消し、ウテメリン注について厳しい使用制限を設けてから、1年以上たちますが、日本の対応は遅れています.
(ウテメリンの成分は、塩酸リトドリンです.)

dot「早産治療薬「日本でも使用中止を」専門家が警告」(2014年11月21日)は、週刊朝日2014年11月28日号より抜粋し、次のとおり、専門家の発言を伝えています.

「名古屋大学名誉教授(産婦人科)の水谷栄彦医師は、こう説明する。

「塩酸リトドリンは、β2刺激薬という薬の一種で、本来は喘息の薬です。喘息では、収縮した気管支を拡張するためにβ2刺激薬を使用していますが、β2刺激薬の中で、その作用が比較的子宮だけに限られるという名目で厚労省が早産治療薬として認めたのが、塩酸リトドリンなのです」

 水谷医師は、今回のEUの措置を受けて、日本でも使用を中止すべきだと主張する。

「私自身は患者さんに塩酸リトドリンを使っていませんが、名古屋大学教授時代、私の教え子である産婦人科の医局員たちが塩酸リトドリンを使うのを黙認してきてしまいました。その反省も込めて、今からでも、この危険な薬の使用中止を呼びかけたいのです」

 EUでは、これまで承認されていたものが昨年取り消されたという状況だが、そもそも米国では承認されていない。米国では、塩酸リトドリンと同じβ2刺激薬「テルブタリン」で、胎児の心筋壊死(心臓の筋肉が死んでしまうこと)が報告されており、テルブタリンの早産への使用を最長72時間までに制限している。

 早産治療薬は、国によって承認されている薬が異なり、日本では塩酸リトドリンと硫酸マグネシウムの2種類のみ。この硫酸マグネシウムも塩酸リトドリンよりも強い心臓毒性などの副作用があることが知られている。

 ある大学の薬理学教授はこう話す。

「世界中で使われている薬理学の教科書には、子宮の収縮を抑制する方法として、6種類の薬があると書いてありますが、どれが優れているという順位づけは確立されていません。つまり、早産治療薬として、効果があって副作用も少ない薬と科学的根拠を示された薬はなく、各国でその選択や位置づけは異なっているようです」

 早産治療には、ベストな薬がないといえる。にもかかわらず、「ほかに選択肢がないから」「保険適用になっているから」という理由で、塩酸リトドリンは多くの産科で第一選択薬として使用されている。日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会が作成している「産婦人科診療ガイドライン‐産科編」にも切迫早産の治療法として記載されている。

 日本早産予防研究会代表で日本医科大学多摩永山病院女性診療科・産科の中井章人医師は、塩酸リトドリンの位置づけについてこう話す。

「切迫早産に対する緊急処置としては有効なので、この薬がないと産科医は困ります。ただし、子宮収縮抑制薬であって、予防薬ではありません。最後の切り札という位置づけで、安易に投与するべきものではないでしょう。そのため、本来はおなかの張りの強い人に入院して点滴で投与するものであって、外来で予防的に内服薬を長期間処方するのは好ましくありません」


谷直樹

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by medical-law | 2014-11-22 01:36 | 医療

医療安全情報No.96 インスリン注入器の取り違え

公益財団法人日本医療機能評価機構は、2014年11月17日、「医療安全情報No.96 インスリン注入器の取り違え」を発表しました.

「インスリン注入器の患者名の記載が不十分、または氏名の記載がなかったため、別の患者の注入器と取り違えた事例が報告されています。

事例 1
患者Aにヒューマログ注カート3単位を皮下注射する指示が出ていた。看護師Xは注射伝票で指示を確認後、インスリン注入器を確認したところ、患者Aの氏名が書かれたキャップの本体にヒューマログミックス50注カートのカートリッジが付いていた。指示とは違うインスリンであったため、指示受けをした看護師Yに「これで大丈夫?」とインスリン注入器を見せた。看護師Yはキャップに書かれた氏名を見て「大丈夫」と答え、看護師Xは患者Aにヒューマログミックス50注カートを皮下注射した。複数の患者のインスリン注入器をまとめて保管していた際に、患者Aと患者Bのインスリン注入器のキャップが入れ替わっていた。

事例 2
夜、患者Aに翌朝からノボラピッド注フレックスペンを注射する指示があり、夜勤看護師Xは薬局より受領した。未使用の注入器は伝票と一緒に輪ゴムで止めて保管することになっており、氏名のシールを注入器に貼付せずそのまま保管した。患者Bのノボラピッド注フレックスペンは、インスリン注入器に患者名のシールを貼付せず、患者Bの薬袋に入れて保管していた。
当日の朝、看護師Xは血糖値の測定後、患者氏名のないノボラピッド注フレックスペンを患者Aのものと思い込み、使用した。その後、日勤看護師Yが、患者Aのノボラピッド注フレックスペンが使用された形跡がないことに気づき、誤って患者Bの製剤を使用したことが分かった。

事例が発生した医療機関の取り組み
・キャップをはずしても患者名がわかるよう、インスリン注入器の本体に、患者の氏名を記載する。
・投与前に、患者氏名、患者のインスリン注入器、注射指示書を必ず確認する。」


注入器の本体に氏名を書かないと入れ替わってしまうことが起き得ます.
他の施設でも起こり得るミスです.

谷直樹

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by medical-law | 2014-11-22 01:04 | 医療事故・医療裁判

高島市の病院、大腸の一部摘出手術後の管理ミスを認め5353万7574円で和解(報道)

産経新聞「「術後、大腸が破け腹膜炎起こしていたのに気付けず」滋賀・高島市民病院、医療ミス5千万円支払い」(2014年11月20日)は、次のとおり報じました. 

「滋賀県高島市は20日、高島市民病院で今年3月、50代の男性が手術後に死亡し、遺族に対し約5300万円の賠償金を支払い裁判外の和解をすることで合意したと発表した。病院は「術後に大腸が破けて腹膜炎を起こしていたのに気付けず、適切な処置を取らなかった」としている。

 病院によると、男性は2月に大腸の一部の摘出手術を受け、人工肛門を使用。経過が良好だったため3月14日、人工肛門を閉鎖する手術を受けたが、翌15日深夜から容体が悪化し、同25日に敗血症で死亡した。

 男性は15日昼から腹部が張った状態だったが、担当医師は腸閉塞と判断し、投薬などを続けていたという。

 病院は「術後管理のマニュアルを強化し、再発防止に努める」としている。」


毎日新聞「医療過誤:高島市民病院、5353万円で和解 男性患者死亡」(2014年11月21日)は、次のとおり報じました. 

 「高島市は20日、市民病院で手術を受けた市内の50代の男性が、術後の容体悪化を病院側が過小評価したため11日後に死亡したと発表した。今月、遺族側に賠償金5353万7574円を支払うことで和解が成立したとして、12月議会に和解議案を提案する。

 市と病院によると、男性は慢性消化管出血源病巣があり今年2月27日、結腸切除と臨時の人工肛門手術を受けた。更に3月14日...」


大腸の一部を切除する手術のあとに、医師が術後の症状について判断を誤り、患者が敗血症となり亡くなるという類型の医療事故は時々あります.

たとえば、鳥取県立厚生病院で,2011年4月1日に大腸がんの手術をうけた患者(72歳,男性)の容態が悪化したのに、医師が感染性腸炎と誤診したことから,治療が遅れ,腹膜炎から敗血症を起こして死亡し、た事案では、1800万円の裁判上の和解が成立しています.「鳥取県立厚生病院,直腸がんの手術後,腹膜炎から敗血症を起こして死亡した事案で遺族と和解」参照
他院での事故報道を教訓として、類似の事故を防止してほしいと思います.
なお、70歳代と50歳代では、逸失利益の計算が異なりますので、和解金額に影響したものと思われます.

谷直樹

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by medical-law | 2014-11-22 00:35 | 医療事故・医療裁判