弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2015年 06月 18日 ( 2 )

遺族からのカルテ開示請求

相続人遺族からのカルテ開示請求に対し消極的な病院が未だにあるようです.

厚生労働省の「診療情報の提供等に関する指針」では,以下のとおり,遺族による開示請求にも原則として応じる義務があることを規定しています.

「遺族に対する診療情報の提供
 ○ 医療従事者等は、患者が死亡した際には遅滞なく、遺族に対して、死亡に至るまでの診療経過、死亡原因等についての診療情報を提供しなければならない。
 ○ 遺族に対する診療情報の提供に当たっては、3、7の(1)、(3)及び(4)並びに8の定めを準用する。ただし、診療記録の開示を求め得る者の範囲は、患者の配偶者、子、父母及びこれに準ずる者(これらの者に法定代理人がいる場合の法定代理人を含む。)とする。
 ○ 遺族に対する診療情報の提供に当たっては、患者本人の生前の意思、名誉等を十分に尊重することが必要である。」


国立大学附属病院長会議の「国立大学附属病院における診療情報の提供等に関する指針(ガイドライン)第2版」も以下のとおり遺族への診療情報提供を定めています.

「遺族に対する診療情報の提供
○ 医療従事者等は、患者が死亡した際には遅滞なく、遺族に対して、死亡に至るまでの診療経過、死亡原因等についての診療情報を提供するものとする。
○ 遺族に対する診療情報の提供に当たっては、3、7の(1)、(3)及び(4)並びに8の定めを準用する。ただし、診療記録の開示を求め得る者の範囲は、患者の配偶者、子、父母及びこれに準ずる者(これらの者に法定代理人がいる場合の法定代理人を含む)とする。
○ 遺族に対する診療情報の提供に当たっては、患者本人の生前の意思、名誉等を十分に尊重するものとする。」


日本医師会の「診療情報の提供に関する指針[第2版]」は,以下のとおり,遺族に対し診療情報を提供するとしています.

「5-1 遺族に対する診療情報の提供
a 医師および医療施設の管理者は、患者が死亡した際には遅滞なく、遺族に対して死亡に至るまでの診療経過、死亡原因などについての診療情報を提供する。
b 前項の診療情報の提供については、〔3-1〕、〔3-3〕、〔3-5〕、〔3-6〕、〔3-7〕および〔3-8〕の定めを準用する。
ただし、診療記録等の開示を求めることができる者は、患者の法定相続人とする。」


これらの指針に照らし,相続人遺族からのカルテ開示請求には,原則として応じるべきでしょう.


谷直樹


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by medical-law | 2015-06-18 07:02 | 医療

香川県立白鳥病院の腹腔鏡下胆嚢摘出手術のミス,香川県立中央病院の肺癌見落とし,和解(報道)

四国新聞「医療事故2件で計556万円賠償へ/県立病院」(2015年6月17日)は,次のとおり報じました.

「2011年2月、県立白鳥病院で、県内在住の30代女性に腹腔鏡下の胆のう摘出手術を行った際、誤って総胆管の一部を切除し、術後に黄疸(おうだん)の症状が出た。女性は別の病院に転院し、総胆管と小腸とをつなぐ手術を受けた。県は手術ミスを認め、追加の治療費や慰謝料など約406万円を支払うことで女性側と和解した。」

「06年3月、県内在住の50代女性が、間質性肺炎の疑いのため、県立中央病院で受けた胸部CT検査で「異常なし」と診断されたが、07年6月に県立がん検診センターの人間ドックで肺がんが見つかったもの。女性側は中央病院で肺がんの見落としがあったとして、調停を申し立てた。県は解決金150万円を支払うとしている。」


一般に,手術に因って悪しき結果が発生した場合でも,注意しても回避できないものについては過失は問えません.
県立白鳥病院の件について,私は報道の限りでしか知りませんが,腹腔鏡下の胆嚢摘出手術には注意深い操作が求められ,一般に注意深く操作すれば総胆管の一部を切除することは回避できるものと考えられますので,基本的に手術ミス(過失)にあたるものと思います.

私が原告代理人となった東京地裁平成18年4月26日判決(ケースファイル3・140頁)は,肺がんの見落としの生存事案で5年生存率低下による精神的苦痛・不安に対する慰謝料400万円と弁護士費用50万円を認めています.
上記報道の事案でも,肺癌の見落としのため1年3か月の診療の遅れが生じたことになりますので,精神的苦痛・不安は少なくなかったものと思います.記事には書かれていない諸般の事情により150万円での和解となったのではないでしょうか.


谷直樹


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by medical-law | 2015-06-18 00:33 | 医療事故・医療裁判