弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2016年 03月 05日 ( 2 )

日本医師会総合政策研究機構、「診療補助行為に関する法的整理」

日本医師会総合政策研究機構は、2016年2月29日,「診療補助行為に関する法的整理」を公表しました.そのポイントは次のとおりです.

「◆診療補助行為は、看護師・准看護師がすべての行為ができると認められ(保助 看法31条、32条)、また、診療放射線技師、理学療法士、作業療法士、臨床検査 技師、視能訓練士、臨床工学技士、義肢装具士、救急救命士、言語聴覚士の9職種においては、それぞれの専門領域で、診療補助行為ができる。
◆調剤行為は薬剤師法19条においてのみ規律される、という見解もあるが、特別刑法の見地からは必ずしも一般的な解釈ではなく、むしろ、「薬剤の調剤・投与は、治療の一方法であるが、調剤は医師とともに、資格のある薬剤師にも認められている」と解するのが通説的な理解である。なお、大審院(最高裁)判例も通説と同様の立論で、薬剤師が患者の容態を聞いて調剤・供与した行為を、調剤行為まで含めて医師法違反と判示している。すなわち、判例理論も通説と同様の立場を取っている。
◆現行薬剤師法19条の起源である、1955年の「医師法、歯科医師法及び薬事法の一部を改正する法律の一部を改正する法律」は議員立法かつ衆議院で修正されたため、医師法17条との関係性は、必ずしも明確にされていない。同条を「医薬分業を規定したもの」と解釈する向きもあるが、立法経緯をみる限り、単純にそのようには断定できない(参考資料2参照)。
◆医師の不足する領域や医師の勤務環境の改善を図るため、米国のPA制度を我が国にも導入しようとする向きもあるが、同制度は我が国の文化にはなじまないものと思われる。我が国の医療現場の実態からすると、「代替」ではなく「補完」が重要になる。その際には、まず、「既存資格の活用」という視点が重要である。」


PA(Physician Assistant)は。ベトナム戦争帰りの衛生兵の活用に端を発し,医師に准じて医師の監督の下に広範囲に医療業務を分担できる者です.米国では,PAの8割(マルチアンサー)は外来診療に従事し,4割は病棟における入院患者の治療管理と夜間休日のオンコールに従事し、2割は手術における第一助手として働いているとのことです.
TPPに基づき医師が医療行為を独占するのは非関税障壁だと言われると困りますが,日本では法制度上も医療に質と安全を求める国民の意識からもPAは無理でしょう.


谷直樹


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by medical-law | 2016-03-05 03:57 | 医療

カテーテルアブレーションの心臓壁穿孔,心膜血腫による死亡で町立八雲総合病院が提訴される(報道)

北海道新聞「町立病院の治療ミスで死亡」 遺族が八雲町提訴 函館地裁」(2016年3月3日)は,次のとおり報じました.

「渡島管内八雲町の町立八雲総合病院で不整脈の治療を受けた男性=当時(61)=が死亡したのは、同病院心臓血管内科に勤務していた医師(55)の過失が原因だとして、男性の妻(59)=八雲町在住=ら家族が、町に約5800万円の損害賠償を求める訴訟を函館地裁に起こした。第1回口頭弁論は29日。

 原告側によると、男性は2014年2月14日、不整脈の原因となっている心臓内の患部を焼き切る「アブレーション」という治療を受けた際、医師が心臓内に入れた細い管(カテーテル)で心臓が傷つけられた。医師は、傷の出血により心臓の周囲にたまった血液を管で抜き取る処置を行ったが、その際、心臓の壁を貫通する傷をつくってしまった可能性が高いとしている。

 男性は治療開始から約9時間後の14日夜、心膜血腫で死亡した。別の病院の医師が2日後に作成した死体検案書によると、心臓の壁を貫通する長さ4センチの傷があった。原告側は、医師が傷をつくるミスをしなければ男性が死亡しなかったことは明らかだとしている。

 妻は「入院前まで元気に仕事をしていた夫が突然亡くなった原因について、医師だけでなく病院からも何の説明もない。不誠実な対応にこれ以上我慢できなかった」と話している。

 八雲町は「現段階ではコメントできない」としている。」


報道の件は私が担当したものではありません。
カテーテルアブレーションの重篤な合併症は,心臓壁穿孔と高度房室ブロックです.
いずれの合併症も,手技の習熟や知識の蓄積により回避することができる可能性があるといえる場合も多いのではないでしょうか.


谷直樹


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by medical-law | 2016-03-05 03:24 | 医療事故・医療裁判