弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2016年 03月 26日 ( 3 )

静岡地判平成28年3月24日,留置針穿刺の際神経を傷つけCRPSを発症した事案で6100万円賠償命令(報道)

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読売新聞「静脈注射で左腕まひ、日本赤十字社に賠償命令」(2016年3月25日)は,次のとおり報じました.

「静脈注射で神経を傷つけられ、左腕まひの後遺症が残ったとして、静岡市内の30歳代の女性が、静岡赤十字病院を運営する日本赤十字社(東京)を相手取り、慰謝料など計約7170万円の損害賠償を求めた訴訟で、静岡地裁(細矢郁裁判長)は24日、計約6100万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

 判決によると、女性は2010年12月、甲状腺腫瘍の切除手術を受けるため、同病院に入院。看護師が点滴を行う際、神経を傷つける可能性があり、深く刺さないようにする義務があるのに十分な注意を払わず、左腕の中枢部から静脈に留置針を刺し、神経を傷つけた。その結果、女性は手足がしびれるなどする「複合性局所疼痛症候群(CRPS)」を発症し、左腕がまひする後遺症が残った。

 判決で、細矢裁判長は、「手関節部から中枢に向かって12センチ以内の部位に留置針を刺す際は、十分な技量を持つ者が、他の部位に比べて十分な注意義務を払って行うべきだ」と指摘。看護師が左手関節から4、5センチ付近に刺した針によって、「神経が傷ついたと認めるのが相当」と認定した。

 原告は「認められて今はほっとしています」とコメントを発表。代理人の青山雅幸弁護士は「将来の医療事故の再発防止につながれば」と述べた。

 一方、静岡赤十字病院の担当者は「判決内容を精査した上で、今後の対応を決める」とコメントした。」


中日新聞「日赤に6100万円賠償命令 赤十字病院注射でまひ 静岡地裁判決」(2016年3月25日) は,次のとおり報じました.

「静岡市葵区の静岡赤十字病院で静脈注射をされたことで神経が傷つき、左腕が完全にまひしたとして同市の30代女性が病院を運営する日赤(東京都)に損害賠償を求めた訴訟で、静岡地裁は24日、同社に慰謝料など6100万円の賠償を命じる判決を言い渡した。

 判決によると、女性は2010年12月、甲状腺腫瘍の摘出手術のため同院に入院。麻酔のため、看護師に左腕の手関節から5センチ付近の血管に針を刺されたが、鋭い痛みを感じ「痛い」と声を上げた。その後も複数回にわたり深く針を刺されて神経が傷つけられ、複合性局所疼痛(とうつう)症候群(CRPS)を発症し、左腕がまひした。細矢郁裁判長は判決で「看護師は、深く穿刺(せんし)しないようにする義務を怠った」とした。

 県弁護士会館で会見した原告代理人の青山雅幸弁護士は「治療過程における問題も多く、結果も重大な事故だった。判決がより良い医療につながれば」と話した。女性は「判決で認められて今はほっとしている」とコメントを出した。

 静岡赤十字病院は取材に「判決内容を精査した上で、控訴も含めて対応を検討したい」と話した。」


この件は私が担当したものではありません.原告の代理人は青山雅幸先生です.
静脈注射による神経損傷は多数起きており,なかにはCRPSを発症する例もあります.
画期的な判決です.

【追記】
毎日新聞「日赤注射ミス 2審も過失認める 5700万円賠償命令」(2017年3月26日)は,次のとおり報じました. 

「手術前の注射が原因で左腕がまひする重度の後遺症が残ったとして、静岡市内の40代の女性が静岡赤十字病院(同市葵区)を運営する日本赤十字社に約7000万円の損害賠償を求めていた訴訟で、東京高裁(阿部潤裁判長)は23日、1審静岡地裁判決と同様に病院側の過失を認め、日赤に約5700万円の支払いを命じた。女性が将来働いて得られたはずの「逸失利益」は1審よりも低く認定し、賠償額を約400万円減額した。」




 谷直樹


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by medical-law | 2016-03-26 21:17 | 医療事故・医療裁判

東高判平成28年3月23日,認知症専門棟の食堂の窓から落下した事案で賠償認める逆転判決(報道)

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朝日新聞「「認知症施設として不十分」 転落死で施設に賠償命令」(2016年3月24日)は,次のとおり報じました.

「東京都羽村市の介護老人保健施設で、認知症の男性(当時86)が窓から転落死したのは施設が適切な対応を怠ったためだとして、遺族が運営法人に約2350万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が23日、東京高裁であった。水野邦夫裁判長は、遺族の請求を棄却した一審・東京地裁立川支部判決を変更し、施設に約1950万円の支払いを命じた。

 判決によると、男性は2012年8月、施設2階にある認知症専門棟の食堂の窓から落下した。窓には、一定の幅以上開かないようにするストッパーがあったが、ずれて窓が開いた状態だった。

 14年9月の地裁判決は、「男性の行動は予測できなかった」として施設の責任を否定したが、高裁判決は「ストッパーの使い方が不適切で、認知症専門棟として求められる安全性を欠いていた」と判断した。

 判決について運営法人は「医療介護の実務に与える影響の極めて大きな判決だ。内容を十分精査、検討して、対応したい」としている。」



ロイター「認知症男性転落死に賠償命令」(2016年3月24日)は,次のとおり報じました.

 「東京都羽村市の介護老人保健施設の2階窓から転落死した認知症の男性(84)の遺族が、施設を運営する医療法人社団「真愛会」(東京)に損害賠償を求めた訴訟で、東京高裁(水野邦夫裁判長)は23日、遺族敗訴の一審東京地裁立川支部判決を変更し、施設側に約1950万円の支払いを命じた。

 判決によると、男性は施設の認知症専門棟に短期入所していた2012年8月、帰宅願望から2階食堂の窓をこじ開け外に出ようとして転落、死亡した。【共同通信】」


このような判決をみると,1審判決であきらめることなく,不適切な判決には断乎控訴すべきと思います.
ちなみに水野邦夫判事は,2002年に弁護士から裁判官に任官した人です.


谷直樹


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by medical-law | 2016-03-26 20:47 | 医療事故・医療裁判

千葉地判平成28年3月25日,四街道徳洲会病院に術後の血液検査義務を認め4600万円賠償命令(報道)

朝日新聞「痔の手術後に死亡、病院と担当医に賠償命令 千葉地裁」(2016年3月25日)は,次のとおり報じました.

「千葉県四街道市にある四街道徳洲会病院で2010年に痔(じ)の手術を受け、4日後に死亡した女性(当時60)の遺族が、病院を運営する医療法人「沖縄徳洲会」などに損害賠償を求めた訴訟の判決が25日、千葉地裁であった。岸日出夫裁判長は、手術後に血液検査をして重篤と判断していれば「生存していた相当程度の可能性があった」として沖縄徳洲会と担当医2人に計約4600万円を支払うよう命じた。

 訴えていたのは、夫ら3人。判決によると、女性は10年1月26日、日帰りで痔の摘出手術を受けた。同28日夜、強い痛みを訴えてこの病院に搬送され、翌29日に人工肛門(こうもん)をつける緊急手術を受けたが、翌30日に敗血症で死亡した。

 原告側は手術時に医師が痔を適切に取り除かず、女性が下半身の痛みを訴えたのに29日の緊急手術時にも、担当医が麻酔後の神経障害を疑って血液検査を怠り、敗血症に気づかずに死亡したと主張した。岸裁判長は、手術での過失を認めなかったが、血液検査については「縫合不全を含む重篤な疾患の可能性を検討するためにも、検査すべきだった」と過失を認めた。

 同病院の広報を担当する医療法人「徳洲会」グループは「司法の判断を厳粛に受け止め、ご遺族の負担を考え、全額支払います」とコメントした。」


千葉日報「過失認め4600万円賠償命令 痔手術後死亡で千葉地裁 四街道徳洲会」(2016年3月26日)は次のとおり報じました.

「四街道市の四街道徳洲会病院で2010年1月、千葉県内の女性=当時(60)=が痔の手術後に死亡したのは医師らが検査を怠ったのが原因だとして、遺族が同院を相手取り損害賠償を求めた訴訟で、千葉地裁(岸日出夫裁判長)は25日、「検査が行われていれば命を救えた可能性は高い」として、同院側に請求内容とほぼ同額の約4600万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

 判決によると、女性は同年1月26日、同院で痔の日帰り手術を受けた。2日後、女性は下半身に強い痛みを訴えショック状態となり、同院へ入院。医師らは術後の神経痛を疑い、炎症を調べる血液検査やCT検査を行わなかった。その後、女性は容体が悪化。緊急手術が行われたが、同月30日に敗血症で死亡した。

 岸裁判長は判決で、遺族の「手術中の患部の切除や縫合が不十分だった」という主張は退けたが、「再来院した際に重篤な状態を疑い、適切な検査が行われていれば、白血球数の異常などが判明し、結果的に死亡を防げた可能性が高い」と指摘した。

 原告側の福武公子弁護士は「遺族の請求が認められて良かった。再発防止のため、病院側は積極的に症例報告をすべき」とコメントした。」


この件は,私が担当したものではありません.福武公子先生が原告の代理人です.

医師の検査義務は,症状等から異常,疾患等が疑われるときに生じjます.
したがって,強い民を訴えている患者については,基本的に検査義務が肯定されると考えます.
「強い痛み」から疑われる疾患は多く,特定できませんので(その特定のための検査せすので),何らかの重篤な疾患が疑われることで,検査義務を肯定できると考えます.
朝日新聞の報道では,「相当程度の可能性」とうけとり方もいるかもしれませんが,千葉日報の記事から明らかなとおり因果関係について「高度の蓋然性」を認めたものです.

裁判所ホームページ,判例雑誌等に掲載されたら,判決文を読んでみたいと思います.


【追記】

正確には,検査義務を怠ったA医師の過失と結果との因果関係については,高度の蓋然性を認め,A医師と徳洲会に4689万7800円の支払いを命じ,その後検査が実施されたのですが,その検査の評価を誤ったB医師の過失と結果との因果関係については,相当程度の可能性を認め,B医師と徳洲会に880万円(慰謝料800万円と弁護士費用80万円)の賠償を命じた判決です.総額では,4689万7800円です.

谷直樹


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by medical-law | 2016-03-26 07:29 | 医療事故・医療裁判