弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2016年 07月 24日 ( 2 )

大学病院,16倍量の抗てんかん薬を投与し死亡した事案で法的非難を受ける理由はないと(報道)

毎日新聞「<東京女子医大病院>薬16倍投与、女性死亡…14年」(平成28年7月24日)は,次のとおり報じました.

「東京女子医科大病院(東京都新宿区)で2014年、脳腫瘍の女性が添付文書に書かれた量の16倍の抗てんかん薬を投与され、その後に重い副作用を起こし死亡していたことが分かった。病院の依頼で調査した第三者機関は、薬の投与を「標準的な医療と言えない」と指摘したが、病院側は「患者側の希望を考慮して決めた」と過失を否定。遺族は「副作用の説明は全くなかった」と反論している。

 ◇病院側は過失を否定

 同病院では、この約半年前にも原則禁止の鎮静剤投与で幼児が死亡する事故が起き、特定機能病院の承認取り消しにつながった。院内で医薬品の不適正使用が問題化していた中で、用法・用量を逸脱した処方が行われていたことになる。

 亡くなったのは、川崎市の長浜裕美さん(当時43歳)。14年7月に同病院で脳腫瘍の再発の疑いと診断され、手術のための入院前の8月、けいれん発作を起こして錠剤の抗てんかん薬「ラミクタール」(一般名ラモトリギン)を処方された。その結果、全身の皮膚に障害が起こる中毒性表皮壊死(えし)症(TEN)を発症し、投与開始約3週間後に肺出血などを併発して死亡した。

 ラミクタールの添付文書では、別の薬も飲んでいた今回のようなケースの投与量を「2週目まで25ミリグラムを1日おき」(1日当たり12.5ミリグラム)と定め、用法・用量を超えた投与は皮膚障害が出やすくなると注意している。しかし、医療関連死の調査モデル事業としてこの件を調べた「日本医療安全調査機構」の報告書によると、担当医は16倍に当たる1日200ミリグラムを連日投与。院外薬局から量が正しいのか照会があったが、見直さなかった。

 報告書はラミクタールによるTEN発症が死因とした上で、今回の処方を「最良の選択肢とは言い難く、あえて選択するなら必要性やリスクを本人や家族に十分に説明して同意を得るのが望ましい」と指摘した。

 病院側は「患者が手術前に趣味のサンバ大会への参加を望んだため、確実な効果を期待した。リスクは話している」と主張し、代理人を通して遺族に「法的非難を受ける理由はない」との見解を伝えた。

 これに対し、遺族側代理人の安東宏三弁護士は「副作用の説明はなく、あれば処方を受けなかった」と訴える。報告書はこの点の結論を出していない。同大広報室は毎日新聞の取材に「弁護士で折衝中の事案で、コメントは控える」と回答した。【桐野耕一、伊藤直孝】

 ◇禁止鎮静剤投与事故

 2014年2月、東京女子医大病院で人工呼吸中の小児には投与してはいけない「禁忌」とされている鎮静剤「プロポフォール」を大量に投与された2歳男児が、副作用とみられる症状で死亡した。安全管理体制の不備を重く見た厚生労働省は15年6月、高度医療の提供により診療報酬が優遇される特定機能病院の承認を取り消した。」



患者遺族の代理人は,医療問題弁護団幹事長の安東宏三先生です.
きわめて杜撰な医療が行われたのですから,説明義務違反と悪しき結果との因果関係を立証するというハードルはありますが,道を切り開くために,裁判(判決)で決着をつけていただきたいと思います.

谷直樹


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by medical-law | 2016-07-24 08:51 | 医療事故・医療裁判

最高裁平成28年7月19日判決、患者側逆転敗訴、CT検査義務の期待権侵害を否定した事案(報道)

最高裁平成28年7月19日判決、患者側逆転敗訴、CT検査義務の期待権侵害を否定した事案(報道)_b0206085_3472566.jpg
時事通信「手術後後遺症で逆転敗訴=一部賠償命令の二審破棄-最高裁」(平成28年7月19日)は、次のとおり報じました.

「東京都台東区の病院で脳の外科手術後に後遺症が残った新潟市の男性(48)が、病院側に損害賠償を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(山崎敏充裁判長)は19日、一部賠償を認めた二審判決を破棄し、請求を棄却した。男性側逆転敗訴が確定した。
 判決によると、男性は2009年に手術を受けた直後に脳内出血し、手足の筋力が低下するなどして日常生活で介護が必要な状態となった。男性側は、医師らは出血の兆候が出た時点でコンピューター断層撮影(CT)検査をすべきだったのに怠ったとして提訴した。
 一審新潟地裁は請求を棄却。しかし、二審東京高裁は医師が注意を怠ったと認定した上で、男性は適切な治療を受けられず精神的苦痛を受けたとして、5000万円の請求に対して1100万円の賠償を命じた。
 これに対し第3小法廷は「患者が適切な医療を受けられなかった場合に医師が責任を負うかどうかは、その行為が著しく不適切な事案に限って検討する」と指摘。男性の場合は医師が経過観察を続けるなどしており、不適切なケースに当たらないと判断した。」


これは、私が担当した事件ではありません.
期待権侵害(適正な医療を受ける期待権の侵害)は、下級審では認められていますが、最高裁で肯定した事案はありません.

以前、私も、、担当事件で、34時間のCT不実施について期待権侵害の主張を行ったことがありますが、その後、主張を変えて戦っています.予備的に「相当程度の可能性」「期待権侵害」を主張せざるをえない事案もありますが、基本的には悪しき結果との因果関係(高度の蓋然性)を立証することが王道の戦い方と考えています.裁判所が因果関係(高度の蓋然性)の認定について異常に厳格だった時期があるように思いますが、これもルンバール事件の原点に立ち戻って常識的な認定に戻すべきと思います.


 谷直樹


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by medical-law | 2016-07-24 00:58 | 医療事故・医療裁判