弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2018年 02月 17日 ( 3 )

秋田地裁平成30年2月16日判決,薬の副作用で両目失明の事案で市立秋田総合病院に賠償命じる

NHK「薬で失明 慰謝料など命じる判決」(2018年2月16日)は,次のとおり報じました.

「医師に処方された薬の副作用で両目を失明した61歳の男性が市立秋田総合病院に損害賠償を求めている裁判で、秋田地方裁判所は、「医師の説明が不十分だった」として、病院に慰謝料など165万円を支払うよう命じました。

秋田市の61歳の男性は、市立秋田総合病院で処方された薬の副作用で3年前に両目を失明したのは、医師が検査を怠るなど過失があったためだとして、病院に1億4000万円余りの損害賠償を求めています。
秋田地方裁判所の齊藤顕裁判長は、判決で、「薬には副作用のおそれがあり、医師は男性に視力に異常があればすぐに連絡するように説明すべきだったが不十分だった」と指摘し、男性の訴えを一部認めました。
一方で、「説明が足りなかったために失明したとまでは認められない」として、病院に慰謝料など165万円を支払うよう命じました。
判決について、市立秋田総合病院は「判決の内容が届いていないので、まだコメントできない」としています。」


上記報道の事案は,私が担当したものではありません.
説明義務違反は認めたが,説明義務違反と結果との因果関係を認めなかった判決です.
診療の選択のための説明義務違反ではこのような判決が数多くあります.例えば,手術のリスクを説明されても,手術を受けたであろうと考えられるからです.
これに対し,療養指導義務としての説明義務に違反した場合では,むしろ因果関係が認められるのが一般的です.一般的な裁判例からすれば,本件も説明していれば早期に異変に気付き検査を行うなどし,適切に副作用に対処でき悪しき結果(失明)発生を防止できたと考えられるのではないでしょうか.毎日新聞では,「エブトール」と報道されていますが,エタンブトール製剤については,「本剤による視力障害は、早期に発見し投与を中止すれば可逆的であるが、発見が遅れ高度に進行すると非可逆的になることがある。」とされています.

【追記】
秋田魁新報「市立秋田総合病院失明訴訟、原告の男性ら控訴」(2018年3月3日)は次のとおり報じました.

「肺の治療薬の副作用についての説明が不十分だったため両目を失明したとして、秋田市の60代男性と妻が市立秋田総合病院を相手取り、約1億4千万円の損害賠償を求めた訴訟で、男性らは2日、請求を一部棄却した一審秋田地裁判決を不服とし、仙台高裁秋田支部に控訴した。」

谷直樹

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by medical-law | 2018-02-17 09:06 | 医療事故・医療裁判

広島高裁で患者側逆転勝訴,県立総合医療センター受診するも帰され腹部大動脈瘤破裂で死亡した事案

産経新聞「医師の過失認定、山口県の病院に3200万円賠償命令 原告側が逆転勝訴」(2018年2月16日)は,次のとおり報じました.

「平成23年に山口県防府市の県立総合医療センターを受診後、腹部大動脈瘤破裂で死亡した男性=当時(69)=の遺族が、治療が不十分だったとしてセンターに約6千万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、広島高裁は16日、約3200万円の支払いを命じた。1審の山口地裁は請求を棄却していた。

 野々上友之裁判長(退官のため三木昌之裁判長代読)は判決理由で、男性が病院を訪れた時にはすでに緊急手術が必要な状態だったと指摘。処置に当たった医師の責任を認め、「手術をすれば救命できた」とした。

 1審判決は、診察時に腹部大動脈瘤破裂の状態だったとは認められず、医師の過失を示す証拠はないと判断していた。

 判決などによると、男性は23年11月に腰の痛みを訴えてセンターを受診。帰宅後に意識を失って搬送され、死亡した。

 男性の次女(42)は判決後「父の死を無駄にせず、病院はベストな診療態勢を整えてほしい」と語った。」


上記報道の件は,私が担当したものではありません.九州合同法律事務所の小林洋二先生らです.→小林先生の解説はコチラ
野々上友之裁判長は四国電力伊方原発3号機の運転停止命令を下した判事で,昨年12月20日に定年退官しました.
裁判は証拠に基づきますが,医療過誤において,あまりにも厳密な証拠を要求するとかえって不合理な結果になります.原審判決がそのようなこのだったのでしょう.
裁判官には合理的な推論を積み重ねて事実を認定することが期待されます.この判決は,初診時に大動脈瘤破裂の状態にあったか(事実認定),適切な診療が行われていたなら結果は発生しなかったか(不作為の因果関係)について,参考になります.

谷直樹

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by medical-law | 2018-02-17 07:15 | 医療事故・医療裁判

「緑陰のマナ. Manna in the Green Shadow」(『あなたは、誰かの大切な人』より)

脳梗塞を二度やって一人で亡くなった母の葬儀の後,40歳代後半のフリーランスの物書きの女性は,姉から「結婚もしらんと、勝手気ままに、あちことぶらぶらしちゃあって・・・お気楽にもほどがあるわ。」と言われます.言葉は,鋭い刃物となって胸に深く突き刺さります.

そして,トルコで,母が漬けた最後の梅干しをエミネさんと食べます.
梅干しを食べたエミネさんは言います.「あなたを今日まで、ずっと守ってくれた食べ物だったのですね。まるで神様の与えたもうたマナのような」

原田マハさんの『あなたは、誰かの大切な人』に登場する人物は,私の身近にもいそうな人たちで,今の時代の空気を感じます.

谷直樹

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by medical-law | 2018-02-17 05:39 | 趣味