弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2018年 07月 13日 ( 1 )

徳島地裁平成30年7月11日判決,常位胎盤早期剝離による胎児死亡事案で約1409万円の賠償命じる(報道)

朝日新聞「胎児死亡で1409万円の賠償命じる 徳島地裁が判決」(2018年7月12日)は,次のとおり報じました.


「胎児が死亡したのは主治医の診断が遅れたためだとして、徳島県北島町の夫婦が鳴門市の産婦人科医院を運営する医療法人に計約4101万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が11日、徳島地裁であった。川畑公美裁判長は、主治医の過失と死亡の因果関係を認め、医療法人に約1409万円の支払いを命じた。

 判決によると、母親は妊娠31週だった2013年3月中旬、切迫早産の兆候があると診断されて医院に入院。主治医から出産前に胎盤がはがれてしまう「常位胎盤早期剝離(はくり)」と診断され、救急搬送先の別の病院で緊急帝王切開手術を受けたが、死産となった。夫婦は、胎児が危険な状態にあると認識できたにもかかわらず、主治医が健康状態を判定する検査を中止し、必要な措置を取らなかったため、死亡したと主張していた。

 判決では、主治医が胎児の健康状態を判定する検査で、心拍の異常を読み取ることが可能だったと指摘。常位胎盤早期剝離を疑い、心拍の異常の原因を調べるための鑑別診断をする義務があったとした。さらに鑑別診断をしていれば、胎児が生きたまま生まれる「高度の蓋然(がいぜん)性があった」と認めた。判決後、医療法人側は「弁護士と相談して対応を決めたい」と話した。」


上記報道の件は私が担当したものでではありません.
常位胎盤早期剝離による胎児死亡は,注意義務違反(過失),因果関係,損害評価の3点いずれも問題になります.
胎児心拍モニタリングの異常に気付かず,対応が遅れた事案ですが,判決の意義は,①注意義務違反がなければ常位胎盤早期剝離による胎児死亡を回避できた高度の蓋然性があると認定したこと,②胎児死亡の損害を約1409万円と認定したことです。

常位胎盤早期剝離は,胎盤が剥がれてる疾患ですが,その剥がれ方,そのスピードはさまざまで,したがって胎児への影響もさまざまで,胎児心拍モニタリングにおいて典型的な常位胎盤早期剝離による異常波形が出現する前に気付く必要があります.胎児心拍モニタリングで何らかの異常波形が出現した時点で,どのような対応が求められていたのか(注意義務)について具体的に検討する必要があります.

さらに,常位胎盤早期剝離による胎児死亡の事案では,注意義務違反がなければ帝王切開によって胎児を生きて娩出させることができたこと(因果関係)を立証する必要がありますが,それには胎児がいつまで生きていたか,地域の搬送体制はどうだったか,等具体的な立証が必要になります.

また,常位胎盤早期剝離に限らず,胎児死亡は「人」になる前の死亡ですから,生きて生まれてから亡くなった場合とは,損害額の算定が異なります.胎児死亡の慰謝料は,事案に応じ一切の事情を総合的に考慮して裁判所が決めます.本判決の約1409万円は高額の例です.

判決が判例雑誌等に掲載されたら,よく読んでみたいと思います.

谷直樹

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by medical-law | 2018-07-13 02:44 | 医療事故・医療裁判