弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2018年 09月 05日 ( 3 )

名古屋市立西部医療センターと東部医療センターの3件の医療事故公表

朝日新聞「B型肝炎ウイルス見落とし、患者死亡 名古屋の市立病院」(2018年9月4日)は,次のとおり報じました.

「名古屋市は4日、市立西部医療センター(北区)の誤診が原因で70代女性患者が死亡したと発表した。9月市議会に提出する補正予算案に、遺族への賠償金3373万円を盛り込む。

 市によると、女性は悪性リンパ腫の治療を受けていたが、2016年7月の検査でB型肝炎ウイルスに感染していることがわかった。だが翌月、男性医師(44)が検査結果を見誤ってB型肝炎ウイルスはないと診断し、抗ウイルス剤を投与せずに抗がん剤による化学療法を実施。昨年3月に誤診に気づいて抗ウイルス剤の投与を始めたが、女性はB型肝炎を発症し、同年6月に肝不全で死亡したという。市は男性医師を減給10分の1(9日間)の懲戒処分にした。

 このほか、市立東部医療センター(千種区)で16年7月、心臓手術後に容体が急変した70代男性を病室からカテーテル室に移す判断が遅れて人工心肺の取り付けが遅れ、脳障害が残ったという。また、16年2月に別の70代男性に心臓手術をした際、右腕を血圧計で長時間圧迫したため、しびれなどの障害が残ったという。(関謙次)」


報道の件は私が担当したものではありません.
私も,以前B型肝炎ウイルスに感染した患者に抗がん剤治療を行い劇症感染を発症させた事案を担当したことがあります.検査結果の見落とし,見誤りは時として重大事故につながることがあります.

谷直樹

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by medical-law | 2018-09-05 05:07 | 医療事故・医療裁判

陣痛促進剤の添付文書改訂見送り

読売新聞「無痛分娩の陣痛促進剤 安全対策を盛り込む添付文書改訂が見送りに…産婦人科医が反対」(2018年8月30日)は,次のとおり報じました.

 
「無痛 分娩 の多くで使われている陣痛促進剤について、厚生労働省の有識者会議は28日、安全対策として厚労省側が提案した添付文書(薬の医師向け説明書)の改訂を見送った。参考人として出席した産婦人科医の強い反対があり、合意に至らなかった。

 無痛分娩は、麻酔をかけて痛みを弱める出産方法。産後の疲労を軽減するメリットがあり、人気が高まっている。無痛分娩が普及した米国などと違い、国内の無痛分娩は人工的に陣痛を起こす計画分娩が主流で、陣痛促進剤が使われることが多い。2017年に無痛分娩を巡る重大事故が相次いで発覚したが、厚労省研究班の報告によると、無痛分娩をした妊産婦の死亡14例のうち13例で陣痛促進剤が使われていた。

 この日、開かれたのは、厚労相の諮問機関である薬事・食品衛生審議会に設けられた安全対策調査会。薬の安全性について有識者が話し合う。 

 会議の場で、厚労省は、2015~17年度の3年間に、無痛分娩で使った陣痛促進剤による副作用の疑いが報告されたケースの調査結果を発表した。報告は29例あったが、情報不足で因果関係の評価が困難だったため、厚労省は、「現時点での新たな注意喚起に合理的な理由はない」とした。ただし、麻酔をかけた状態で陣痛促進剤を使うと、副作用で異常に強い陣痛(過強陣痛)が起きていてもわかりにくく、対応が遅れる恐れがある。そのため厚労省は、添付文書にある、過強陣痛の防止策を示した警告欄の一文を修正し、無痛分娩時にも十分な監視を促す内容の改訂案を提示した。

 これに対し、参考人として出席した研究班代表の海野信也・北里大学病院長は、「合理的な根拠がわからない」とし、今後、さらにデータを蓄積する必要性を指摘した。もう一人の参考人の石渡勇・日本産婦人科医会副会長も「無痛分娩は怖いという印象を与えかねない」などと強く反対した。委員の中には、厚労省案に賛成する声のほか、書き方の工夫で対応してはどうかという意見もあったが合意できず、改訂見送りが決まった。

 無痛分娩で使われる陣痛促進剤に対しては、出産事故の被害者らでつくる「陣痛促進剤による被害を考える会」が今年3月、慎重に使うよう添付文書の改訂を求める要望書を厚労省に提出していた。同会の出元明美代表は「医師らがしっかり監視していればよいが、そうでないケースで重大な事故が起きている。広く注意を促せるせっかくの機会が生かされず、信じられない結果だ」と話している。」


陣痛促進剤の添付文書を無痛分娩時にも十分な監視を促す内容の改訂案とのことですが,そもそも陣痛促進剤使用の有無にかかわらず無痛分娩時には十分な監視が必要です.
無痛分娩の安全策は,陣痛促進剤に絡めるのではなく,正面から無痛分娩の問題として取り組むべきと思います.
無痛分娩は,(1)血管内へのカテーテル迷入,(2)くも膜下腔への局所麻酔薬の誤投与がとくに問題で,これらを完全に防止することはできませんが,①局所麻酔薬の少量分割投与,②投与後の厳重な観察,③呼吸循環動態の安定をはかりつつ応援を呼ぶことにより重大な結果が生じることを回避できます.実際に起きた無痛分娩事故は,これらを怠ったために起きています.無痛分娩における医療過誤は,局所麻酔約薬の連続的投与を行った例,観察を怠った例,呼吸循環動態を安定させつつ応援を呼ぶことを怠った例などであり,そのために重大な結果が生じています.
陣痛促進剤の副作用というのは違うのではないか,と思います.また,陣痛促進剤によって症状が分かりにくかったというのは言い訳にすぎません.陣痛促進剤を使用していても,無痛分娩に通常求められる観察を行っていれば,(1)血管内へのカテーテル迷入,(2)くも膜下腔への局所麻酔薬の誤投与は,観察すれば分かります.

谷直樹

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by medical-law | 2018-09-05 05:02 | 無痛分娩事故

名古屋市立大病院がセンター長に埼玉医科大産科麻酔科の医師を迎えて無痛分娩を実施

名古屋市立大病院では,埼玉医科大産科麻酔科から医師を迎えて無痛分娩を実施する拠点をつくるとのことです.無痛分娩を希望する妊産婦が年々増えていますので,安全に無痛分娩を実施できる体制を作っていただきたく思います.

中日新聞「名古屋市立大病院に無痛分娩拠点 9月新設、年内にも実施」(2018年8月30日)は,次のとおり報じました.

「名古屋市立大病院(同市瑞穂区)が、出産時の痛みを麻酔で和らげる無痛分娩(ぶんべん)の実施と人材育成を担う「無痛分娩センター」(仮称)を9月に新設することが分かった。外部から産科麻酔の専門医をトップに招き、年内にも無痛分娩を始める方針。産科、麻酔ともに精通した医師が担う方式は中部地方では珍しい。

 国内で無痛分娩の出産は全体の6%程度にすぎず、対応する医療機関も一部のクリニックなどに限られている。近年、母子が死亡するといった事故が報告されているが、厚生労働省の研究班は今年3月に「他のお産と比べ、リスクに大差はない」と指摘している。

 名市大病院ではこれまで心臓の持病がある人などに無痛分娩を限定していた。だが、鎮痛効果が高く、産後の回復が早いとの理由でニーズは高まっており、安全性を確保した上での本格的な実施を模索してきた。

 関係者によると、センター長に就任するのは、現埼玉医科大産科麻酔科の田中基(もとし)医師(52)。無痛分娩は麻酔の投与が長時間にわたるほか、薬の量やタイミングを調整するなど高い技術が必要とされる。センターでは田中医師が投与などを担う見通しで、同病院の産科医らに実技指導し、無痛分娩を担う人材の育成も進める。将来的には、24時間365日の対応ができる体制整備を目指す。

 同病院での分娩は年間500件程度。無痛分娩は数十件になると見込んでいる。」



谷直樹

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by medical-law | 2018-09-05 04:55 | 無痛分娩事故