弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2018年 11月 11日 ( 3 )

インフォームドコンセントの意味

インフォームドコンセントについて,未だに臨床医療の実践の中では正しく理解されていないことがあるように思います.

医療行為の最終的判断主体は患者です.つまり,患者自身の価値判断により医療行為が行われるのです.インフォームドコンセントはそのために必要不可欠です.

医療者は,患者に病態,診断についての情報,選択可能な検査,治療の情報,さらにその治療の見通しについての情報を提供します.
患者は,専門的情報を与えられただけで,ただちにその専門的な情報を理解し判断することができませんので,平易な言葉で情報を提供することが必要ですし,情報についての解説も必要です.一方的な情報提供ではなく,患者と医師とが十分コミュニケ-ションをとった情報提供が必要とされます.
治療方法(メニュー)を提示し,お好きなものをお選び下さい,でも選択できる患者もいますが,そうではない患者も多数います.利害得失を示すことが求められています.
そして,医療者には,提供した情報を患者が正確に理解したことを確認することも求められています.
さらに,「情報提供」と「判断」は密接な関係にありますので,医療者は,患者の判断の過程にも関与します.医療行為の最終的判断主体が患者であることは,医療者が判断の過程に関与することを否定するものではありません.「最終的」という言葉は,医療者も自身の判断を示すことを当然の前提としています。医療者と患者が意見を交わし,情報と判断を共有することになります.
インフォームドコンセントは「説明と同意」ではありません.

木村理人氏は,「人間が、専門家と非専門家とを問わず、平等な関係に立ち、相互に持つ情報と決断と方策を共有することが、バイオエシックスの公共政策づくりとして極めて重要なこととなる」と述べています.

また,インフォームドコンセントは単なる手続きと誤解されがちですが,インフォームドコンセントによって悪い結果が起きることを防止できる場合も少なくありません.一般に「療養指導義務としての説明義務」(医師法23条)が認められています.最高裁平成7年5月30日判決は,退院に際し「黄疸の増強や哺乳力の減退などの症状が現れたときは速やかに医師の診察を受けるよう指導すべき注意義務」を認め,「退院時における被上告人の適切な説明、指導がなかったことが上告人A2らの認識、判断を誤らせ、結果として受診の時期を遅らせて交換輸血の時機を失わせたものというべきである。」と認定しています.

谷直樹

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by medical-law | 2018-11-11 11:01 | 医療

12 月1日シンポジウム「患者の権利侵害の予防と救済に向けて=医療基本法法制化の実現をめざし みんなで動こう!」

日時:12 月1日(土)/2018年 ➤ 13時30分〜16時30分 (13時開場)
場所: 明治大学駿河台キャンパス 研究棟2階9会議室 (東京都千代田区神田駿河台1−1)
主催: 患者の権利法をつくる会
e-mail info@kenriho.org TEL 092-641-2150 FAX 092-641-5707
〒812-0054 福岡市東区馬出1-10-2 メディカルセンタービル 九大病院前6階
共催:明治大学法務研究科医事法センター

【基調報告】
●小林洋二(患者の権利法をつくる会事務局長:弁護士)

【各パネリストの報告】
●永井裕之さん(医療事故被害者遺族・医療の良心を守る市民の会代表)
  ●藤崎陸安さん(全国ハンセン病入所者協議会事務局長)
  ●浅倉美津子さん(薬害肝炎全国原告団代表)
  ●前田哲兵さん(優生保護法被害東京弁護団:弁護士)
  ●身体拘束事件原告の方(匿名)・三枝恵真さん(弁護士)

【パネルディスカッション】
【会場との質疑応答】
【総括】
●鈴木利廣(弁護士・明治大学学長特任補佐)

谷直樹

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by medical-law | 2018-11-11 10:00 | 医療

平成29年の医事関係訴訟,提訴は857件,審理期間は24.2月,認容率(患者側勝訴率)は20.5%,和解54.6%

1 新受(提訴)857件

裁判所の集計によると,平成29年の医事関係訴訟(新受)は857件でした.前年の878件より21件減少ですが,前年が前々年より52件増加でしたから,これが平均的な数字と思います.
医療ADRなど裁判外の紛争解決手段が充実してきたにもかかわらず,平成29年に提訴された医事関係訴訟が857件もあったということは,(1)医療過誤の疑いのあるケースが表面化することが増えてきたためと(2)弁護士へのアクセスが容易になってきているためではないか,と思います.

2 1審平均審理期間24.2月

1審の平均審理期間は24.2月(速報値)です.
平成25年以降,審理期間は2年を切っていましたが,2年をわずかに超えました.
平均は2年程度と考えてよいでしょう.

3 認容率(患者側勝訴率)20.5%

平成29年の地裁民事第一審通常訴訟事件・医事関係訴訟事件の認容率(原告=患者側が勝訴した率)は,20.5%と著しく低率です.
平成28年が17.6%ですから,一応回復したとは言えますが,通常訴訟の認容率84.9%(証拠調べを実施した場合の認容率61.4%)と比較すると,著しく低率です.
医療事件に不慣れな裁判官にとっては過失・因果関係が立証されていないと判断するほうが容易であることも影響している可能性も考えられますし,高裁での患者側勝訴の逆転判決の報道もみられることから,地裁裁判官の力量不足による可能性も考えられますが,何よりも患者側弁護士の準備不足,努力不足が大きいのではないか,と思います。

4 判決は32.5%,和解は54.6%

平成29年終了事件のうち,判決は32.5%,和解は54.6%でした.
和解内容は,判決以上に担当弁護士の力量を反映します.原告側(患者側),被告側(医療側)双方に経験のある弁護士がつくと,先が見えるので,和解で終わることが多いように思います.

谷直樹

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by medical-law | 2018-11-11 09:20 | 医療事故・医療裁判