弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2019年 02月 23日 ( 2 )

内頸静脈透析用カテーテルを座らせたまま抜き,空気塞栓による脳梗塞を起こし,障害を残した事案で約476万円の賠償(報道)

共同通信「透析の男性患者に障害 名古屋市が損害賠償へ」(2019年2月20日)は,次のとおり報じました.

「名古屋市は20日、市立東部医療センター(同市千種区)で昨年2月、市内に住む70代男性の静脈から透析用カテーテルを誤って座位のまま抜いたため、血管内に空気が入り、身体に障害を負わせたと発表した。和解に向け、損害賠償金約476万円を支払うための議案を開会中の市議会に提出する。

市によると、同センターはマニュアルで、静脈のカテーテルを抜く際はあおむけなどの姿勢で行うよう定めているが、施術した消化器内科の男性主治医(30)は知らなかったという。

男性は昨年1月、胆管炎による敗血症と診断され入院し、血液透析のため首の静脈にカテーテルを入れた。約1カ月後、男性は座った状態でカテーテルを抜かれ、身体の動きが遅くなるなどの障害を負った。

昨年10月に男性側が市に損害賠償の請求を申し入れた。」


報道の件は私が担当したものではありません.
マニュアルの周知徹底がなされなかったようです.
座位では,血液が重力により下方に移動し下半身の静脈圧が上昇し,上半身の静脈圧が低下します.そのため,座位では,カテーテルから流入する空気を引き込む力が増す危険があります.これは基本的な知識と思いますが.
「身体の動きが遅くなるなどの障害」とありだけで具体的な程度は分かりませんが,後遺症等級11級あたりを認めたのでしょうか.

谷直樹

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by medical-law | 2019-02-23 17:09 | 医療事故・医療裁判

病理組織検査結果が入れ替わり間違った検査結果を基に医療行為が行われた医療事故660万円で和解(報道)

一宮市立市民病院は,平成31年2月19日,「医療過誤に対する損害賠償金の支払いにについて」を発表しました.
市内在住男性患者(当時63歳)に660万円を支払うことで合意したとのことです.

概要は以下のとおりです.

「相手方は、平成28年8月31日、一宮市立市民病院で胃内視鏡検査を行い、過去に内視鏡的粘膜下層剥離術を施行した幽門前部小弯瘢痕部と近傍の胃角部前壁びらん部の組織を採取し病理組織検査を実施したところ、瘢痕部からがん細胞が発見され、胃がんの再発と診断されました。再発部位に内視鏡的な手術はできないため同年12月21日に外科的な幽門側胃切除術が実施されました。同年12月27日、切除後の検体の病理組織検査をしたところ、胃内視鏡時にがん細胞が見つかった部位に悪性所見はなく、悪性所見のなかった部位からがん細胞が見つかりました。このことにより同年8月31日の病理組織検査結果が入れ替わった可能性が極めて高いことが判明し、間違った検査結果を基に医療行為が行われた医療事故が発覚しました。過去に内視鏡的粘膜下層剥離術を施行した部位には同じ手技ができないために外科的手術となりましたが、検体の入れ替わりがなければ体への負担がより少ない内視鏡的粘膜下層剥離術の適応になった可能性が高く、診療契約上の義務違反に当たるとして、一宮市に対して、損害賠償を求められたため、相手方と一宮市との間で協議を重ねた結果、損害賠償の額の合意に至ったものでございます。」

上記は私が担当した事件ではありません.

病理組織検査結果の入れ替わり,癌ではない部位を切除し,癌である部位を切除されず,後に,癌のある部位に外科的な切除術が実施された事案です.

病理組織検査結果の入れ替わりについて過失(注意義務違反)があるのは明らかです.
医療過誤に基づく損害賠償は,過失(注意義務違反)だけででは成立しません.損害と因果関係が問題になります.体への負担がより少ない内視鏡的粘膜下層剥離術を行えなかったことなどが「損害」でそれとの因果関係があると判断し,合意に至ったようです.損害算定が難しいので,この660万円の和解は同種事案について参考になります.


谷直樹

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by medical-law | 2019-02-23 16:29 | 医療事故・医療裁判