弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2019年 10月 15日 ( 1 )

名大附属病院,担当医らが放射線科の医師の診断リポートを確認せず患者が肺癌で死亡(報道)

NHK「名大附属病院 画像診断報告書を放置 治療遅れ肺がん患者が死亡」(2019年10月15日)は次のとおり報じました.

「名古屋市の名古屋大学医学部附属病院で、50代の女性患者の画像診断の報告書が13か月にわたって放置されたため、治療が遅れ肺がんで死亡していたことが分かりました。病院側は医療ミスを認め遺族に謝罪しました。

これは15日、名大病院の小寺泰弘病院長が記者会見を開いて明らかにしました。

それによりますと、平成26年、名古屋市内の50代の女性が背中などの痛みを訴えて名大病院の救急外来を受診し、尿路結石と診断されました。

その際に撮影されたCT画像について、別の放射線科医が「肺に1センチの腫瘍の疑いがある」として、再検査を勧める報告書を作りましたが、診察した医師がこれを確認することはありませんでした。

1年後、女性は別の病院で受けた健康診断で「精密検査が必要だ」と指摘され、再び名大病院を受診し肺がんと診断されてその際、報告書が13か月にわたって放置されていたことが明らかになったということです。

女性はその後治療を受けましたが、肺がんが進行して去年、死亡しました。

名大は医療ミスを認めて遺族に謝罪し、今後、賠償を行うことにしています。

名大病院によりますと、再発防止策として医師が報告書を読んでいない場合、医師に知らせるシステムを平成27年から導入したということです。

名大病院は「不幸な結果になってしまい患者に深くおわびし、再発防止に努めます」と話しています。
詳・遺族「強い憤りと不信と無念の思い」
死亡した50代の女性の遺族は、名大病院を通じ「非常に強い憤りと不信と無念の思いを持っています。こうした出来事が繰り返されているが、多くの事例の1つとして埋没させることはぜひしないでほしいです。医療界全体で再発防止に取り組んでもらいたいです」とコメントしました。」



名古屋大学附属病院の報告書には,次のとおり書かれています.

「一般的に,放射線科医師に画像検査の読影を依頼した医師(医師団)は,速やかに画像診断レポートを確認し,最終的な診断を行う。新たに重要な所見が見つかった場合など,必要があれば患者に連絡し,説明,診療を行う責務がある。一方で通常研修医にはその責務はなく,上級医が監督しつつ,適切に対応することとなる。救急外来においては,研修医を監督した上級医か,救急外来の責任医師がその役割を負うことになる。
本事例において,放射線科医への読影依頼は自動的に行われたが,医師 B (CT をオーダーした研修医) ,医師 C(上級医),医師 D(救急部当該時間帯責任医師)は大型連休明けに,いずれも放射線科医が作成した画像診断レポートを確認せず,本患者の左肺野の結節影に対し,3 ヶ月後の再検査が勧められていることを認識しなかった。
その理由として,当時,医師 B・C・D は,放射線科医が救急外来の画像検査についても,読影を行い,画像診断レポートを作成していることを認識していなかったことが挙げられる。
救急外来で検査をオーダーした医師団が,後日,放射線科医の作成した画像診断レポートにアクセスせず,内容の確認を行わなかったことは,適切ではなかった。
近年,検査オーダー医による失念,記載内容の誤解,責任の所在の誤認など,さまざまな理由により画像診断レポートが確認されないまま長期間経過し,結果として患者の診断に大幅な遅れが生じる事例が散見されるようになった。この問題を受け,公益財団法人日本医療機能評価機構は,会員病院に向け,2012 年 2 月に資料 1 のような注意喚起を行っている。 名大病院では,2012 年 6 月~2014 年 5 月までの間に,各診療科の医療安全担当者に向け,計 5 回に亘って『画像診断レポートの確認は画像をオーダーした医師の責任で行う』旨,<重要伝達事項>として通知していた(2012 年 6 月・9 月・10 月・12 月,2013 年 6 月)。各科の医療安全担当者は<重要伝達事項>を医局内に周知する役割を持ち,医療の質・安全管理部に周知完了報告書を提出することを任務としている。救急科,循環器内科の医療安全担当者は上記 5 回の通知いずれにおいても,周知完了報告書を医療の質・安全管理部に提出していた。一方で,名大病院はこれらの伝達事項がどの程度現場に浸透しているかをフォローする体制までは有していなかった。 名大病院内で,この間に行われていた各科への注意喚起は適切であったが,本患者の診察を担当していた医師団が注意喚起の内容を知らないといった状況を生んでいたこと,また注意喚起の内容がどの程度周知されていたかについてのフォロー体制を有していなかった点は改善の余地がある。」


報道の件は私が担当したものではものではありません.
担当医は,「画像診断レポートの確認は画像をオーダーした医師の責任で行う」,つまり放射線科医の読影報告書を読むルールがあったことを,5回の注意喚起にもかかわらず,知らなかったようです.
何度言っても読影報告書を読まない担当医は日本全国の病院に少なからずいることでしょう.ルールを守ることを徹底するのは現実には難しいこともあるのでしょう.
そうであれば,再発防止のために,検査の結果(読影報告書など)を患者に渡るようにする仕組みをつくるべきと思います.

谷直樹

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by medical-law | 2019-10-15 20:03 | 医療事故・医療裁判