弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2019年 11月 19日 ( 4 )

大学病院,炭酸水素ナトリウム誤投与による急変死亡

京都大学医学部附属病院は,令和元年11月19日,「炭酸水素ナトリウム誤投与による急変死亡について」を発表しました.

それによると,事故の経過は次のとおりです.

「炭酸水素ナトリウム誤投与による急変死亡について京都大学医学部附属病院に入院されていた腎機能障害をもつ心不全の成人男性の患者さんに、注射薬である炭酸水素ナトリウム(造影剤を用いたCT検査による腎機能への副作用を軽減させるために処方される薬剤)を処方する際、本来投与すべき薬剤の6.7倍の濃度の同一成分製剤(商品名:メイロン)を誤って処方して投与した結果、心停止をきたしました。
蘇生処置により心拍は再開しましたが、心臓マッサージに伴う胸骨の圧迫が原因と思われる肺からの出血をきたし、その後も出血傾向が止まらず、患者さんはその6日後に死亡されるという医療事故が起こりました。」


事故調査委員会の報告によると,いくつものミスが重なっています.
第1のミスは,誤った濃度の炭酸水素ナトリウムを多量投与したことです。
第2のミス 患者の訴えにもかかわらず, 誤った濃度の炭酸水素ナトリウムが多量に投与されていることには気づかなかったことです。
第3のミスは,心臓マッサージによる肺損傷が原因と思われる出血の際,抗凝固薬を内服していることに気づくのが遅れたことです。そのため,抗凝固薬に対する中和薬を事故発生後早期に投与できなかった,とのことです。

病院長は「京大病院における治療でよくなられることを望んでおられた患者さんご本人そしてご家族には、薬剤の誤った処方による死亡という、期待を裏切るような結果になりましたことは誠に申し訳なく、心よりお詫び申し上げます。また、京大病院で治療を受けられておられる皆様にもご心配をおかけしますこと誠に申し訳なく存じます。関係者のみならず病院職員の一人ひとりが自分たちのこととして受け止め、再発防止に努めてまいります。」とのコメントを発表しました.

医療事故について,スイスチーズモデルになぞらえることがあります.いくつもの孔の開いた所を貫通するように,ミスが重なって重大な結果が生じるというものです.

緊急事態に遭遇したときは,視野を広くもち冷静に判断することが重要です.
本件も誤投与に気づけば,抗凝固薬内服に気づけば,重大な結果が生じなかったかもしれません.残念です.
本件は初歩的なミスの連続です.
本当にひどい医療事故ですが,事故後の調査委員会設置等の対応は,適切かつ誠実と思います.
なお,この件は私が担当したものではありません.

谷直樹

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by medical-law | 2019-11-19 17:52 | 医療事故・医療裁判

患者のための医療法律相談

以前書いた本です。
法律相談前にご一読頂けると,ご参考になるかと思います。

第1部 弁護士からのアドバイス 患者の力で医療をよくする
第2部 弁護士が明快に答えます よりよい医療実現のための70のQ&A



谷直樹

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by medical-law | 2019-11-19 16:26 | 法律相談

クリスマスリース

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東京堂でクリスマスリースを買いました.
今年も残りわずかです.

谷直樹

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by medical-law | 2019-11-19 13:43

がん患者がリウマチ治療薬「ゼルヤンツ」(一般名トファシチニブ)に関する副作用の説明が不十分として製薬会社と病院を提訴(報道)

産経新聞 「薬の副作用、説明不足」 がん患者、製薬会社提訴」(2019年11月18日)は次のとおり報じました.

「リウマチ治療薬「ゼルヤンツ」(一般名トファシチニブ)に関する副作用の説明が不十分だったため、服用後に肺がんを発症したとして、岡山県浅口市の男性(65)と家族が18日、東京の製薬会社ファイザーと病院を運営する岡山県倉敷市の大原記念倉敷中央医療機構に、計約8千万円の損害賠償を求めて岡山地裁に提訴した。

 訴状によると男性は平成28年に関節リウマチと診断され、他の薬で治療を開始。30年1月、医師から「より効き目がいい」と言われ、ゼルヤンツに切り替えた。男性は今年に入り、ステージ4の肺がんと診断され、抗がん剤での治療を受けている。

 男性は医師からファイザーの作った患者向けの小冊子を渡されただけで医師による説明はなく、小冊子にも「服用中には悪性腫瘍に注意が必要」としか書かれていなかったと訴えている。」


上記報道の件は私が担当したものではありません.
ゼルヤンツは,もともと重篤な感染症と悪性腫瘍の副作用が懸念されていた薬剤で,このことはよく知られていますが,患者は説明を受けないと分からないでしょう.
添付文書の警告欄には次のとおり記載されています.

「本剤投与により、結核、肺炎、敗血症、ウイルス感染等による重篤な感染症の新たな発現もしくは悪化等が報告されており、本剤との関連性は明らかではないが、悪性腫瘍の発現も報告されている。本剤が疾病を完治させる薬剤でないことも含め、これらの情報を患者に十分説明し、患者が理解したことを確認した上で、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
また、本剤投与により重篤な副作用が発現し、致命的な経過をたどることがあるので、緊急時の対応が十分可能な医療施設及び医師が使用し、本剤投与後に副作用が発現した場合には、主治医に連絡するよう患者に注意を与えること。」



谷直樹

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by medical-law | 2019-11-19 04:07 | 医療事故・医療裁判