弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2019年 11月 29日 ( 3 )

健康成人を対象とした治験における死亡例発生事案に係る調査結果の公表について

厚生労働省は健康成人を対象とした治験における死亡例発生事案に係る調査結果の公表についてをサイトに掲載しました.


経緯と本治験の状況

「(1)被験者が死亡するまでの経緯・死亡した被験者(以下、「被験者A」という。)は、最高用量(15mg/日)・10日間反復投与の本剤群に参加し、予定の投薬を受けた。・治験薬投与中には軽度~中程度の眠気及び浮動性めまいが認められ、投与終了後3日間の入院観察期間には軽度の悪心、眠気及び浮動性めまいが認められたが、それ以外は特段の異常を訴えずに退院。・その後、被験者Aは退院日当日に自主的に再来院。入院観察期間中に幻視、幻聴、不眠があったことを訴えた。医療機関側は、被験者の受け答えがはっきりしており、容態が安定していたこと等から経過観察を決断したが、翌日朝、警察から被験者Aが電柱から飛び降りて死亡したことが伝えられた。

(2)本治験状況及び他の被験者の状況死亡事例の発生後、本剤投与は中止している。医療機関側は、本治験の他の被験者の安全確認を行ったが、一部異常を訴えた被験者はいるものの、重篤な有害事象は認められなかった。」


調査結果は次のとおりです.

「・治験薬と被験者Aで生じた有害事象との因果関係は否定できない。

・治験実施医療機関は、被験者から治験参加の同意を得る際に、治験の概要や予測される副作用について情報提供していた他、緊急搬送先及びその手順を定める等、緊急時に適切な医療を提供するための措置を講じていた。また治験依頼者は、実施医療機関等の選定にあたり、医療機関に多くの治験の実績があること、治験で必要な検査等の実施が可能なこと、緊急時の対応が定められていること、治験責任医師となる者に中枢神経系の第I相試験を含めた治験の実績があること等を考慮していた。これらを踏まえると、治験実施医療施機関及び治験依頼者にGCP省令の規定からの重大な逸脱に該当する所見は認められなかった。
しかしながら、その理念に従い、より配慮を要する事項があった。

-治験実施医療機関は、被験者Aの再来院時に速やかに精神科等の医師に診察を受けさせるのが適切であった。また、治験実施医療機関は、治験薬投与後の入院観察期間においても被験者をより詳しく観察し、記録を行うべきであった。

-治験実施医療機関は、被験者に対する同意説明時に、自殺に関連するリスクを含む、治験薬の心身に与える影響について、より詳細な注意を書面で伝えると共に、心身の変調を感じたら速やかに申告するよう説明すべきであった。

-治験実施医療機関は、治験担当医師にとって専門外の有害事象を確認した際には、講じるべき措置をより慎重に判断すべきであった。

-治験依頼者は、治験薬のリスクを踏まえ、精神科医等による診察が可能な実施体制が整った医療機関を選定するか、治験責任医師・分担医師に精神科医等を含めることが適切だった。また、有害事象が生じた際の家族等の関与も事前に検討するべきであった。



今後の対応は,以下のとおり書かれています.

「今回の事案を踏まえ、医薬品の忍容性等を評価するための開発初期の治験を実施する際の対応として以下のものが必要と考える。

(1)治験依頼者における対応

-被験薬のリスクに応じた対応が可能な治験実施医療機関及び治験責任医師等を選定する。

-発現が想定され重大な転帰につながる有害事象について、治験実施医療機関に十分な説明を行い、被験者に文書で情報提供する。

-当該有害事象に対応可能な医師等が治験に参加していること又は、事前に連携体制を構築した他の医療機関で即時の対応が可能となっていること確認する。

-中枢神経症状を来す薬剤の治験を行う際には、有害事象の診断が可能な治験実施医療機関での実施や、家族等の保護者の関与の検討を行う。

(2)治験実施医療機関における対応

-発現が想定され重大な転帰につながる有害事象について、被験者に文書で情報提供するとともに、心身の変調が生じたら速やかに申告するよう被験者に伝達する。

-被験者に重篤な事象が発現した場合には、入院期間の延長等の被験者保護に必要な措置への協力を依頼する可能性があること、症状によっては精神保健指定医に診察への協力を依頼することや、家族等に連絡を取る可能性があることを説明し、同意を得る。

-被験薬の性質により治験終了後も有害事象が発現する可能性があることを理解し、被験薬投与終了後も被験者の有害事象の発現の有無を確認し、記録を取る。-重大な転帰につながる可能性のある事象が発現した際には、臨床経験のある専門の医師の意見を参照する等、適切な連携体制を整備する。」


健康な人が治験によって亡くなったことは重く受け止め,今後の対策に活かされるべきと思います.

谷直樹

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by medical-law | 2019-11-29 22:21 | 医療事故・医療裁判

平成30年(2018)人口動態統計(確定数)

平成30年(2018)人口動態統計(確定数)が,令和元年11月28日,厚労省のサイトに掲載されました.
その要点は以下のとおりです.

「出生数は減少

出生数は91万8400人で、前年の94万6146人より2万7746人減少し、出生率(人口千対)は7.4で前年の7.6より低下した。

死産数は減少

死産数は1万9614胎で、前年の2万364胎より750胎減少し、死産率(出産(出生+死産)千対)は20.9で、前年の21.1より低下した。

死亡数は増加 

死亡数は136万2470人で、前年の134万567人より2万1903人増加し、死亡率(人口千対)は11.0で前年の10.8より上昇した。

死因別にみると、悪性新生物<腫瘍>の死亡数は37万3584人(死亡総数に占める割合は27.4%)、死亡率(人口10万対)は300.7であり、前年と同様死因順位の第1位となった。
なお、第2位は心疾患、昨年第4位であった老衰が第3位となった。

年齢調整死亡率(人口千対)は男4.6、女2.5で、男は前年の4.7より低下したが、女は前年と同率となった。」


出生数は91万8400人で,死産数は1万9614胎です.死産とは,妊娠12週以降に死亡した胎児を出産することを言います.死産率が減少したのは,医学医療の進歩によるものでしょうか.
なお,死産について医療過誤を疑う方もいますが,死産の原因は様々で,原因を確定し難い場合も多く,予見し回避することが困難な場合も多く,裁判で医師の責任が認められ得るケースは少ないように思います.
「老衰」が3位になったのは,「成人肺炎診療ガイドライン2017」(日本呼吸器学会)以来,死亡原因を「誤嚥性肺炎」ではなく「老衰」とする医師が増えているためではないでしょうか.誤嚥性飛燕は嚥下能力の低下している患者におきるため,一部の例外を除いて,医療過誤としての責任を問うのが難しい事案が多いように思います.もっとも,静岡地裁令和元年9月19日判決は,肺がん患者が誤嚥性肺炎で死亡した事案で,総額1122万0116円が認めています.

谷直樹

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by medical-law | 2019-11-29 03:59

赤いほうれん草

茎が赤いほうれん草を見かけなくなって久しいです.
先日,関西のデパートで茎が赤いほうれん草がありましたので,買ってきました.
この赤い茎の部分が美味しく,葉の部分もしっかりした味でした.
少し渋めですが,緑と赤のクリスマスカラーで、見た目もきれいです.

谷直樹

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by medical-law | 2019-11-29 01:16 | 日常