弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2020年 01月 29日 ( 2 )

兵庫県立病院,医療事故3件公表,放射線科医が肺がんの疑いを指摘するも患者に伝わらず,肺がんが進行し切除不可に(報道)

朝日新聞「西宮病院、CTで肺がん見落とす 治療開始が5年遅れる」(2020年1月29日)は次のとおり報じました.

「兵庫県西宮市の県立西宮病院で、2014年にCT検査を受けた男性患者の肺がんが見落とされるミスがあり、治療開始が5年後になっていた、と県が29日発表した。男性は現在「ステージ3」と診断されて治療中。病状が進んで手術はできない状態だという。

 県によると、男性患者は現在50代。14年4月、胸の痛みを訴えて同病院の救急外来を訪れた。当直だった消化器内科の女性医師(現在は退職)は男性のCT検査を実施し、いったん気管支肺炎と診断。翌日、画像を確認した放射線科医師が肺がんの可能性を指摘するカルテを作成したが、女性医師はその内容を確認しなかったという。

 男性は昨年8月、みぞおちの痛みなどを訴え再び来院。別の医師が過去の受診記録を確認し、5年前の肺がんの見落としがわかった。県は見落としがなければ、がんを切除できた可能性があったとしている。

 八木聡・県病院事業副管理者は「大変申し訳なく思う。安全対策を徹底し、再発防止に努める」とコメントした。」



サンテレビ「患者のがん5年間見落とし 県立病院で医療事故3件/兵庫県」(2012年1月29日) は次のとおり報じました.

「兵庫県は県立病院で患者のがんを5年間見落とすなど、合わせて3件の医療事故があったことを明らかにしました。

県によりますと、5年前、県立西宮病院でレントゲン科の医師がCT検査を受けた50代の男性に、肺がんの疑いがあると指摘したにも関わらず、診察した当時20代の女性医師が画像の確認をしなかったため5年間肺がんが放置されました。

男性のがんはステージ1からステージ3まで進行して脳にも転移しているということです。

また、丹波医療センターでも、2年前に当時30代の女性医師が60代女性のCT画像から肺がんを発見できずがんを進行させてしまったことなど、県立病院で合わせて3件の医療事故があったことを明らかにしました。

県は、確認を徹底するなど再発防止に努めるとしています、」


神戸新聞「5年前の検査で「肺がん可能性」も確認せず 再検査で脳に転移、手術できない状態に 兵庫県立西宮病院」(2020年1月29日)は次のとおり報じました.

「兵庫県病院局は29日、県立西宮病院と旧県立柏原病院(現丹波医療センター)=丹波市=で、コンピューター断層撮影(CT)検査で医師が画像の確認を怠り、患者2人の肺がんを見逃したと発表した。うち1人はがんが転移し、手術できない状態になったという。

 病院局によると、西宮病院は2014年4月、胸と腹部の痛みを訴えて救急外来に来た50代の男性患者にCT検査を実施。放射線科医は肺に約30ミリの影を見つけ、電子カルテに「肺がんの可能性」と記入したが、女性医師は確認しないまま気管支肺炎と診断した。

 5年後の昨年8月、患者が再受診し、別の医師が過去のカルテを見てミスが発覚。腫瘍は約40ミリの大きさになっており、ステージ3の肺がんと診断された。患者は昨年末に脳への転移が分かり、治療中という。

 旧柏原病院でも60代の女性患者が17年5月にCT検査を受けたが、放射線科の女性医師が肺の影を見落とした。昨年9月に別の医師が気付き、別の病院で肺がんと診断された。

 県は18年度から、医師が画像を見落とさないよう通知するシステムを県立病院に順次導入している。

 また、加古川医療センターでは検査中、女性患者に挿入したカテーテルが腸の壁を突き破るミスがあった。(前川茂之)」


報道の件は私が担当したものではありません.
放射線科医が記入したカルテを確認するシステムができていなかったのではないでしょうか.そうであれば,宿直だった消化器内科医の問題というより,システムの問題が大きいように思います.具体的な再発防止策について知りたいと思います.

【追記】

関西テレビ「兵庫県立病院で医療ミス がん見逃しで男性患者は「手術できない状態」(2020年1月30日)は次のとおり報じました.

「兵庫県立病院でがんを見逃すなど3件の医療ミスがあったことが分かりました。

兵庫県病院局によると、2014年、県立西宮病院で50代の男性が胸のCT検査を受けた際、検査結果を診る医師が初期の肺がんの疑いを指摘しましたが、診察医は検査結果を確認していませんでした。

去年になって別の診察医が当時の検査画像に影があることに気づき、男性はステージ3の肺がんと診断されました。

がんは脳へも転移し、すでに手術できない状態だということです。

また、丹波医療センターでもがんの疑いを見逃したほか、加古川医療センターでは、大腸の検査でカテーテルを刺した際に誤って腸に穴を空け、注入したバリウムが腸の外に漏れ出た例もありました。

兵庫県は「再発防止に努める」としています。」


谷直樹

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by medical-law | 2020-01-29 23:50 | 医療事故・医療裁判

胃カメラによる進行胃がん見逃し


NEWSポストセブン「胃カメラ検査するも進行胃がん見逃し、突然余命3か月宣言も」(2020年1月28日)は次のとおり伝えました.

「医療機器は日進月歩で進化するが、最新鋭の検査にも落とし穴がある。日本人男性の罹患数第1位である胃がん。最近は「胃部X線検査」ではなく、より精度が高い内視鏡検査(胃カメラ)を選択する患者が増えている。

「それでも一定程度の見落としは防げません」と指摘するのは、医療経済ジャーナリストの室井一辰氏。

「日本消化器がん検診学会が2015年に発表した研究では、胃カメラの初回診断で医師ががんを見落とす割合が4.5%ほどでした。検診を継続すると精度は上昇しますが、それでも2.3%程度はがんを見落としていました」

 なかでも注意すべきは、進行の速い「スキルス胃がん」の見落としだ。NPO法人医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師が指摘する。

「胃がんの約1割は、極めて速く増殖して、数か月で転移することも稀ではないスキルス胃がんです。このがんは胃カメラで見逃すこともあり、会社の検診で『小さな腫瘍の跡のみ』と診断されたのに、その後、食欲がなくなり再受診したら進行胃がんが見つかり、『余命3か月』と宣告されたケースもあります」

 上医師は患者が取れる“自衛策”の一つとして、こんな方法を挙げる。

「医師が丁寧に検査をすることでスキルス胃がんが見つかることはある。検査前には『小さなスキルスが怖いので、時間をかけてよく診てください』と遠慮せず医師に頼んでほしい。医師が“よく勉強している患者だな”と感じるほど、入念に検査をしてもらえるでしょう」

 放射線を用いて身体の断面を撮影して病巣を発見するCT検査。人間ドックのオプションとして選択する人も多いはずだ。

 だがナビタスクリニック川崎の谷本哲也医師は「CT検査は万能ではありません」と指摘する。

「CTは体を5~10mmほどの厚みでスライスした画像を撮影できる検査で、肺がんや膵臓がんの発見に適しますが、表面にある初期の胃がんや大腸がんは見つけにくい」

 CT検査では、人為的ミスの存在も明らかになっている。

 大阪市の病院では、2018年にCT検査を受けた男性の左肺に長さ4.3cmの腫瘍がある可能性を画像診断科の医師が指摘し、電子カルテに「精査を」と記載したが、心臓内科の主治医が見落とし、必要な治療をしなかった。この男性は1年9か月後にステージ4の肺がんと骨への転移が判明した。

 岩手県の病院では、2015年にCT検査を受けた60代男性の画像診断報告書に腎細胞がんの疑いが記載されていたが、呼吸器内科の主治医がその報告書を読まず、その後男性は腎細胞がんが見つかって死亡した。

 最近になりこれらの「見落とし事例」が全国で毎月のように報告され、危機感を抱いた厚生労働省は電子カルテシステムの機能強化などの対策を急いでいる。
※週刊ポスト2020年2月7日号」


①がんの疑われるものが画像上写っていた,②医師ががんの疑いをもち精密検査を指示しなかった,の事実があれば,「がんの見逃し」になります。
しかし,「がんの見逃し」イコール医療過誤ではありません.
2.3%の見逃しの中には,医療過誤にあたるものと医療過誤にあたらないものがあります.

医療過誤は,過失と因果関係と損害が要件です.
過失の判断については,(1)当該医療機関の種類・性格,(2)職場の検診か,人間ドックか,症状を訴えての受診か,などを考慮し,(3)専門家医師の協力を得て,医師であれば前方視的にがんを疑うレベルの画像か否か,を検討して判断します.
そのようにして弁護士が専門家医師の協力を得て調査すると,医療過誤にあたるものと医療過誤にあたらないものがおおよそ分かります.
医療過誤にあたると考えられる事案について,弁護士は示談交渉を奨め,示談交渉を行います.医療側の弁護士も同様に調査を行います,その結果,多くの事案は示談で解決します.金額の問題というより,謝罪等がなく誠意が感じられない少数のケースが訴訟になっているように思います.

検診には画像検査の性質上の限界と画像を判断する医師の能力の限界があります.
検査機器の性能は向上していますが,それを取扱う技師によっては適切な画像が得られないこともあります.画像を見る医師が専門的医師であるか否か,画像診断能力が高いか低いか,によっても要精査の判断は異なります.
検診で要精査にならなかったことで自信をもってしまい,症状があったにもかかわらず医療機関受診が遅れてしまう例がありますので,検診の結果で安心しないことも大事と思います.


谷直樹

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by medical-law | 2020-01-29 05:15