弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2020年 02月 05日 ( 4 )

山形地裁,令和2年2月4日判決,検体の取り違えにより乳房の一部を切除された事案で220万円の支払いを命じる(報道)


共同通信「誤診で乳がん手術、賠償命令 山形県立病院、検体取り違え」(2010年2月4日)は,次のとおり報じました.

「山形県立中央病院(山形市)で検体の取り違えにより良性腫瘍を乳がんと誤診され、乳房の一部を切除されたとして、同県酒田市の女性(47)が県に約1480万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、山形地裁は4日、「誤診でがんと宣告された精神的苦痛は軽視できない」と県に220万円の支払いを命じた。

 判決理由で貝原信之裁判長は、がんでなくても腫瘍の切除手術は必要だったと認定。その上で「誤診で切除範囲は本来より大きくなり、乳房の傷痕の長さは女性としての自己認識に深刻な悪影響を及ぼした。適切な情報に基づき手術を受けるかどうか判断する機会も奪われた」と指摘した。」


報道の件は私が担当したものではありません.
検体の取り違えは注意義務違反(過失)にあたります.
判決は,切除という結果との因果関係を認めていません.本件良性腫瘍の切除の必要性の程度についての医学的評価は分かれるかもしれませんが,基本的に良性腫瘍は手術が奨められます.なお,「良性腫瘍」の「良性」という言葉は患者に誤解を与えがちです.
判決が損害としたのは自己決定権侵害です.
自己決定権侵害の損害額が問題になります.
名古屋地裁平成15年11月26日判決は,慰謝料等計275万円の支払いを命じています.
東京地裁平成18年6月23日判決は,逸失利益,慰謝料等計1645万3672円の支払いを命じています.
那覇地裁沖縄支部平成20年2月28日判決は,慰謝料等477万5500円の支払いを命じています.
これらの事案はそれぞれ異なりますし,本判決が認めたのは自己決定の機会の喪失にとどまり,自己決定の機会の喪失の慰謝料は低額な裁判例の流れがあり,本件判決の慰謝料200万円と弁護士費用20万円は,この流れにのったものと思いますが,本件は,医療ミスによって機会が喪失されたことを考えると,やや低額かもしれません.
毎日新聞によると原告は控訴するとのことですので,仙台高裁の判決に注目したいと思います.

谷直樹

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by medical-law | 2020-02-05 21:51 | 医療事故・医療裁判

web会議(フェーズ1)導入

2月3日に,東京、大阪、名古屋、広島、福岡、仙台、札幌、高松の各地裁と知財高裁の9裁判所で,web会議が導入されました。横浜、さいたま、千葉、京都、神戸の各地裁への導入は5月の予定です.
遠方の医過誤事件もうけやすくなります.


谷直樹

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by medical-law | 2020-02-05 08:48 | 司法

国内の新型コロナウイルス感染対策

厚生労働省は,日本国内の患者が23人と発表しました.限られた人にしか検査を実施していないので,日本国内で2次感染,3次感染が起きていることを分かったことから,患者の実数はもっと多くても不思議はないでしょう.国内のヒトヒト感染が広がらないううにすることが大事と思います.

病院を受診しても,新型コロナウイルスの検査をしてもらえませんし,特効薬もないことから,病院を受診する人は少ないのかもしれません.

新型コロナウイルスの検査が限られた人にしか行われないのは,検査キットが少なく,陰性でも後で陽性になることがあるからかもしれません.

たしかに新型コロナウイルスの治療法(特効薬)はないと言われていますが,そもそも感染症の薬が結果として効くかどうかは,患者自身の抵抗力,治癒力にかかっている部分も大きいので,①抵抗力の弱い人(高齢者,がんなどの患者)と接触せず感染させないこと,②休養し治癒力を上げることが大事だと思います.

新型コロナウイルスは症状がでていない段階から感染しますので,人と人との接触の機会を最小限にし(在宅勤務,遠隔診療,web会議,無接触サービス等),少なくとも何らかの症状があった場合は,必ず休むこと,必ず休ませることを徹底すれば,感染が拡大することはないと思います.

政府が疑惑から目をそらすために意図的に感染拡大をはかっているとは決して思いませんが,政府が国内のヒトヒト感染対策を何1つ講じていないことに疑問を感じます.


谷直樹

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by medical-law | 2020-02-05 05:19 | 医療

大阪市にある病院,抗凝固薬が術後に再開されず脳梗塞を発症した事案で1400万円の訴訟上の和解(報道)


読売新聞「投薬せず脳梗塞再発、病院側が1400万円支払いで和解」は次のとおり報じました.

「○○病院(大阪市○○区)で脳梗塞(こうそく)の治療中、看護師の伝達ミスで投薬されず、再発したとして、男性患者が病院側に約5300万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴し、病院側が解決金1400万円を支払う内容で和解したことがわかった。病院側が落ち度を認め、謝罪した。

 和解は3日付。訴状によると、男性は2010年頃、軽い脳梗塞を発症。血液を固まりにくくする「抗凝固薬」を服薬していたが、15年6月、同病院で胃ろうの手術を受けることになり、医師の指示で中断。術後、医師が投薬を再開するよう看護師に指示したが、看護師が別の看護師に伝達する際に内容が伝わらず、そのまま投薬されなかった。

 男性は手術の約10日後に脳梗塞を再発し、右目を失明し、会話ができなくなる障害を負った。

 男性は18年1月に提訴し、翌2月、78歳で死亡した。」


報道の件は私が担当したものではありません.
ただ,同様の事件を担当し示談で解決したことがあります.
過失は明白で,因果関係,損害額が争われることもある類型です.

2016年5月の「医療安全情報No.114-抗凝固剤・抗血小板剤の再開忘れ」は「観血的医療行為のために中止していた抗凝固剤または抗血小板剤の再開を忘れた事例が4件報告されています(集計期間:2012年1月1日 ~2016年 3 月 3 1 日 )」とし,「薬剤全て再開」と指示したため、手術直前まで内服していた薬剤のみ再開し、それより前に中止していたワーファリン錠は再開されなかった。」事例等を紹介しています.
「事例が発生した医療機関の取り組み」として「・術後指示に抗凝固剤や抗血小板剤の再開日の記入欄を追加する。・病棟薬剤師は、術後の抗凝固剤や抗血小板剤の内服状況について、医師に情報提供する。」を紹介しています.

再開忘れはどこの病院でも起こり得る伝達事故です.術後ワーファリン錠等の抗血小板剤再開指示が確実に伝達される方法をルール化することにより防止できる事故と思います.

谷直樹

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by medical-law | 2020-02-05 00:42 | 医療事故・医療裁判