弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2020年 02月 27日 ( 1 )

市民病院,腹部大動脈瘤が発見され経過観察としたが,カルテに記載せず,経過観察も行われなくなり大動脈破裂で患者が死亡した事案で約2453万円支払へ(報道)

朝日新聞「カルテへの記載忘れる 腹部大動脈瘤破裂で死亡」(2020年2月26日)は次のとおり報じました.

「富山県射水市の射水市民病院は、70代の男性患者の検査で腹部大動脈瘤(りゅう)が見つかったものの、主治医がカルテへの記載を忘れて経過観察をしなかったため、腹部大動脈瘤破裂で死亡したと発表した。同病院は遺族に謝罪し、損害賠償として約2453万円を支払う方針を決めた。28日開会の同市議会3月定例会に損害賠償に関する議案を市が提出する。
 同病院によると、男性は2014年9月に腹部のCT検査を受け、腹部大動脈瘤が見つかった。主治医は男性本人に説明し、経過観察をすることにした。この際、男性の家族には説明していなかった。
 主治医は1~2カ月ごとに経過観察を実施。カルテには15年6月まで腹部大動脈瘤に関する記載があったが、同年8月から記載がなくなり、経過観察も行われなくなった。16年9月に主治医が代わった際も、腹部大動脈瘤については引き継がれなかった。
 男性は18年11月11日に腰の痛みを訴えて同病院の救急外来を受診。腹部大動脈瘤の破裂がわかり、別の病院で手術を受けたが、同日、死亡した。
 同病院は、カルテへの記載の徹底や病状を家族にも伝えることなどで再発を防ぐという。(田島知樹)」


毎日新聞「主治医交代で病歴引き継がれず患者死亡 富山の病院、遺族に賠償」(2020年2月26日 )は次のとおり報じました.

「富山県射水市の射水市民病院(島多勝夫院長)は、70代の男性患者がCT(コンピューター断層撮影)検査で腹部大動脈瘤(りゅう)と診断されたが、主治医がカルテへの記載を忘れて経過観察が引き継がれず、2018年11月に死亡したと発表した。同病院は遺族に謝罪し、約2453万円の損害賠償金を支払うという。

 同病院によると、男性は13年12月に心筋梗塞(こうそく)の可能性があるなどとして入院。退院後、14年9月にCT検査で腹部大動脈瘤が発見され、経過観察とした。

 その後、カルテに大動脈瘤について、15年6月までは記載があるものの同8月以降はなく、16年9月に主治医が交代。男性は18年11月に腰痛を訴え、CT検査で腹部大動脈瘤破裂と後腹膜血腫と診断されて別の病院で手術をしたが、死亡した。【高良駿輔】」


上記報道の件は私が担当したものではありません.
大動脈瘤は,飲み込みにくくなったり,かすれ声になったりして発見される場合もありまいすが,多くはのこの例のようにCT検査で偶然発見されます.瘤が小さいうちは経過観察とします.本件の発見時の診療には間違いがありません.
医師法第24条は「医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない。」と定めています.
保険医療機関及び保険医療養担当規則第22条は「保険医は、患者の診療を行った場合には、遅滞なく、様式第1号又はこれに準ずる様式の診療録に当該診療に関し必要な事項を記載しなければならない。」と定めています.
「必要な事項」が何かは,具体的なケースによる異なります.
医師法上の義務,療担規則上の義務イコール患者への義務ではありませんが,本件のカルテに記載しなかったことは患者との関係でも義務違反となります.
その義務違反による経過観察が引き継がれず,CT検査が行われず,腹部動脈瘤の増大傾向に気づかず,死亡に至ったことについて,因果関係を肯定できます.
つまり,本件は医療過誤にあたります.
カルテに記載していれば,患者ば亡くならずにすんだケースですので,残念です.

谷直樹

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by medical-law | 2020-02-27 01:40 | 医療事故・医療裁判