弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2020年 03月 04日 ( 4 )

福井地裁令和2年3月4日判決,1絨毛膜2羊膜双胎の診断を誤り,高次医療機関に転医させず,双胎間輸血症候群により1児を死亡させた事案で4873万7328円の支払いを命じる

本日,福井地方裁判所で,1絨毛膜2羊膜双胎(MD双胎)の診断を誤り,高次医療機関に転医させず,双胎間輸血症候群(TTTS)により1児を死亡させた産科医と医療法人に対し 請求通り亡児の相続人である両親に各2436万8664円(計4873万7328円)の支払いを命じた判決がありました。

■ 注意義務違反(過失)について

「一絨毛膜双胎においてはTTTS等の予後不良の疾患頻度が高いため,妊娠初期に膜性診断を行うべきであり,一絨毛膜双胎と診断された場合は,低出生体重児の管理可能な施設においてか,そのような施設と緊密な連携をとりながら管理すべきである。
上記認定事実によれば,平成29年7月24日にはMD双胎と診断することが可能であったにもかかわらず,被告はこれを怠り,同年9月20日には二卵性二胎盤であると誤った診断を行った上,低出生体重児の管理可能な施設に転医勧奨したり,そのような施設と緊密な連携をとりながら管理することなく,被告クリニックにおいてC及び亡Dを娩出したのであるから,被告に注意義務違反が認められる。」


■ 因果関係について

「被告が適切に膜性診断を行い,低出生体重児の管理可能な施設へ転医することを勧奨するか,そのような施設と鬚密な連携をとりながら管理していれば,胎児がTTTSを発症した際に娩出ないしFLPを実施することにより,亡Dが死亡することはなかったと認めるのが相当である。」

■ 被告の素因減額の主張について

「亡Dが発症したTTTSは適切な治療介入により予後の改善が見込まれる以上,MD双胎であることを理由に賠償額を減額すべきものとは解されない。被告らの主張は採用できない。」

この産科医は2卵性と誤診しました(2卵性はすべてDD双胎です)が,本件は1卵性です.
1卵性にも,いろいろなタイプがあります.
1卵性の4分の3は「1絨毛膜2羊膜双胎(MD双胎)」です.「1絨毛膜2羊膜双胎(MD双胎)」は,ひとつの胎盤を共有し,吻合血管を通じて血流のアンバランスが生じ得ます.血液が1人の児に多く流れ,もう1人の児には余り流れないという,双胎間輸血症候群(TTTS)のリスクがあります.そこで,高次医療機関での管理が求められています.
ところが,本件の産科医は,超音波検査で「1絨毛膜2羊膜双胎」と診断することなく,高次医療機関に転院させることもしませんでした.そのために双子の1人が出生後に死亡することになりました.
1卵性のタイプの診断は疾患リスクを評価する上で重要で,リスクのある場合の高次医療機関への転院は大事なことです.
それを確認した判決は,小規模な医院での双胎妊娠の取扱いについて警鐘を鳴らしたものと言えます.
原告ら(亡Dの両親)は「地域格差がないように(必要な場合には遠隔地であっても)転院をすすめてほしかった.今後このようなことがないようにしてほしい」と語っています.
なお,これは当職が担当した事件です.

【追記】

共同通信「双子の1人出生後死亡、賠償命令 福井地裁、一卵性を二卵性と誤診」(2010年3月4日) は次のとおり報じました.
「福井県小浜市の病院で2018年2月、双子のうち次女が出生翌日に死亡したのは産科医が診断を誤ったことなどが原因だとして、両親が病院を運営する医療法人と担当医の男性に損害賠償を求めた訴訟の判決で、福井地裁は4日、請求通り約4900万円の支払いを病院側に命じた。
 判決で武宮英子裁判長は、一卵性の双子の中でも低体重や合併症のリスクが高い妊娠の仕方だという兆候が妊娠8週目には表れていたにもかかわらず、担当医は二卵性の双子と誤診し、十分な設備がある施設への転院を勧めなかったと指摘。適切に診断していれば「合併症を発症した際に女児が死亡することはなかった」とした。」



福井新聞「双子1人死亡、小浜の病院の誤診認定 福井地裁判決「一卵性を二卵性と診断」」(2020年3月5日 )は,次のとおり報じました.

2018年2月に生まれた双子の妹が翌日死亡したのは医師が出産前の診断を誤ったためとして、福井県小浜市の両親が、同市の医療法人と理事長の医師に約4900万円の損害賠償を求めた訴訟の判決言い渡しが3月4日、福井地裁であった。武宮英子裁判長は「適切な診断と転医勧奨が行われていれば妹が死亡することはなかった」と病院側の過失を認定、全額の支払いを命じた。

 訴状によると、母親は法人が開設する病院で二卵性双子の妊娠と診断され、出産した。妹は低体重児で、搬送先の別の病院で疾患リスクの高いタイプの一卵性によくみられる循環血液量の不均衡による疾患と診断され、翌日死亡した。原告側はリスクの高い妊娠との診断は可能で、出産前に高次医療施設に紹介すべきだったなどと主張。被告側は賠償額の算定を争っていた。

 判決理由で武宮裁判長は「医師は疾患リスクの高いタイプの一卵性との所見があったのに誤って二卵性と診断した」と指摘。「低体重児の管理が可能な施設へ転医を勧めたり、そのような施設と連携したりすれば疾患を発症しても治療できた」と判断した。

 判決を受け、両親は代理人を通じ「たとえ遠くだったとしても適切な医療を受けられる病院を勧めてほしかった。今後このようなことがないようにしてほしい」とコメントした。被告側は「コメントすることはない」としている。」

NHK「新生児死亡は診断ミス賠償命じる」(2020年3月05日)は次のとおり報じました. 

「おととし、小浜市内のクリニックで生まれた双子のうちの1人が出産直後に亡くなったのは、妊娠中の検査で医師が診断を誤ったためだなどとして市内の夫婦が損害賠償の支払いを求めていた裁判で、福井地方裁判所は4日、原告側の主張を認め、医師などにおよそ5000万円の支払いを命じる判決を言い渡しました。

この裁判は、おととし、小浜市内にある「中山クリニック」で生まれた双子のうちの1人が出産直後に亡くなり、両親が、死亡した原因は妊娠中の検査で診断を誤った結果、より高度な医療設備がある別の病院で出産をさせなかったことなどにあるとして、医師とクリニックにおよそ5000万円の損害賠償を求めていたものです。
4日の判決公判で、福井地方裁判所の武宮英子裁判長は「双子の胎児が出産の際にリスクが高くなる状態にあったにもかかわらず、この診断を誤ったうえ、ほかの対応可能な施設を勧めることもなかった」として医師側の注意義務違反を認定しました。
そのうえで、「適切に診断を行い対応可能な施設へ移ることを勧めるか、そのような施設と緊密な連携をとりながら管理していれば死亡することはなかった」として、医師と病院に原告側の請求通りおよそ5000万円の支払いを命じました。
判決を受けて被告側の代理人は「病院などと判決内容を精査したい」としています。」

谷直樹

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by medical-law | 2020-03-04 15:25 | 医療事故・医療裁判

「喫煙所」が「新型コロナ」クラスター発生源に

石田雅彦氏が「「喫煙所」が「新型コロナ」クラスター発生源に」を書いています.
「喫煙所」が「新型コロナ」クラスター発生源に

谷直樹

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by medical-law | 2020-03-04 10:18 | タバコ

保育士不足し登園自粛要請

報道されたとおり,新宿区では,臨時休校の影響で,子をもつ保育士が登園できなくなり,保育園から登園自粛の要請がでました.江東区,八王子市,小金井市なども同様です.
保育園に預けられないとなると影響は大きいです.看護師,医師などが出勤できなくなると,医療機関では診療を縮小せざるを得ません.
しかし,そもそも,保育園の感染リスクが学校より低いわけはありませんので,学校は休みで,保育園は開園というのは矛盾です.保育園についても休園の措置が必要なのではないでしょうか.
新型コロナウイルスの重症化率は,明らかに高齢者で高率です.感染拡大防止のためにとるべき措置は屋内における高齢者への感染防止策と思います.

谷直樹

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by medical-law | 2020-03-04 09:58

《協奏曲第1番ホ長調 RV 269「春」》

今日3月4日は,アントニオ・ヴィヴァルディ氏の誕生日です.
喘息のため説教ができなかった司祭アントニオ・ヴィヴァルディ氏は,赤ちゃんポストがあったヴェネツィアのピエタ慈善院の音楽院で教師として働きました.音楽院は,その収益でピエタ慈善院(孤児院・救貧院)の費用をまかなうためにありました.
女子生徒の1人(修道女)がヴィオリンの名手であったことから,独奏ヴィオリンと弦楽合奏の曲が多数作られました.

《協奏曲第1番ホ長調 RV 269「春」》は,ヴィヴァルディ氏のヴァイオリン協奏曲集『和声と創意の試み』作品8の第1曲です.
第1曲から第4曲まで「春」「夏」「秋」「冬」の副題がありますが,作曲者が付けたものではありません.イ・ムジチ合奏団の1955年の「四季」がベストセラーとなったそうです.イ・ムジチ合奏団は何度も録音し直していますが,いずれも,優雅な演奏で,暗い中世のイメージはありません.

谷直樹

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by medical-law | 2020-03-04 03:31 | 趣味