弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2020年 05月 20日 ( 4 )

日本医師会のCOVID-19有識者会議「新型コロナウィルス感染パンデミック時における治療薬開発についての緊急提言」,アビガンの拙速な特例的承認に反対

日本医師会のCOVID-19有識者会議は,5月17日,「新型コロナウィルス感染パンデミック時における治療薬開発についての緊急提言」を発表し,アビガン等のCOVID-19治療の候補薬につおいて,エビデンスが十分でない候補薬、特に既存薬については拙速な特例的承認を行うべきではないと提言しました.そのとおりと思います.
他の疾患を適応として承認を得ているもの(既存薬)は,適応外処方であるものの,日本の医療保険制度のもとでは,医師の裁量及び患者のインフォームドコンセントにより,現時点においてもCOVID-19 に対する処方は可能であることから,「科学」を軽視した判断は最終的に国民の健康にとって害悪となり、汚点として医学史に刻まれることなると強い懸念を表明しています.


「新型コロナウィルス感染症(COVID-19)は人類にとって経験のない疾患であり、この新規病原体に対する有効な薬剤が模索されている。すでに複数の既存薬や候補化合物が、COVID-19に対する有効性を期待して用いられてきた。そのなかで4月末、予備的解析が実施されたプラセボ対照ランダム化二重盲検比較臨床試験(ACTT1試験)の結果に基づき、レムデシビルが、高いエビデンス・レベルでCOVID-19に対する有効性が確認された初めての薬剤となった。これを受けて米国は5月1日にレムデシビルの緊急使用を承認した。わが国でも特別承認制度による承認を取得し、5月8日以後臨床使用が可能となった。今後レムデシビルは、他の有効性および安全性に優れた薬剤の登場までの間、COVID-19に対する標準治療薬と位置づけられ、これを基準に薬剤開発が進められると予想される。

ACTT1試験は、米国立衛生研究所アレルギー感染症研究所(NIH/NIAID)が主導し、日本からも登録参加した国際共同臨床試験である。主要評価項目は回復までの時間とされ、参加1063例が1:1の割合でレムデシビル群又はプラセボ群に割り付けられた。606例の回復例が得られた時点で実施された予備的解析の結果、回復までの時間の中央値はレムデシビル群で11日、プラセボ群で15日とレムデシビル群と有意に短縮された(ハザード比:1.31、95%信頼区間:1.12〜1.54、p<0.001)1)。周到な研究デザインのもとにレムデシビルの効果を証明したこの結果は画期的ではあるが、COVID-19の特効薬に位置づけられるかどうかは、肝障害などの副作用の問題もあり未知数である。そこで承認後も慎重に適正使用を心がけ、未知・重篤な副作用が生じた場合は、速やかな報告が必須である。しかしCOVID-19を標的として創薬された真の特効薬登場までの時間的猶予を得るためには、本剤は有力な薬剤といえる。レムデシビルは、元来エボラ出血熱を標的として開発された薬剤である。しかし世界のいずれの国においても薬事承認取得には至っておらず、今回のCOVID-19を適応症として初めて承認を得た新薬である。従って治療薬として使用するためには、今回のように早期に承認を得る必要があった。一方で、現在治療薬の候補として検討されている薬剤には、すでに他の疾患を適応として承認を得ているもの(既存薬)もあるが、これらの既存薬は、適応外処方であるものの、日本の医療保険制度のもとでは一律には禁止されておらず、医師の裁量及び患者のインフォームドコンセントにより、現時点においてもCOVID-19 に対する処方は可能である。

今回のCOVID-19パンデミックは医療崩壊も危惧される有事であるため、新薬承認を早めるための事務手続き的な特例処置は誰しも理解するところである。しかし有事だからエビデンスが不十分でも良い、ということには断じてならない。日本が主体的に活動している薬事規制当局国際連携組織(ICMRA)はCOVID-19治療薬開発のためには、「適切に設計され、かつ適切なコントロール群(即ち抗ウイルス薬または免疫調整剤を含まない群)を含むランダム化2比較試験(RCTs)」を実施することを求めており2)、十分な検出力確保のための症例数設計が重要である。特にCOVID-19のように、重症化例の一方で自然軽快もある未知の疾患を対象とする場合には、症例数の規模がある程度大きな臨床試験が必要となる。さらに、観察研究だけでは有意義な結果を得ることは難しいことを指摘しておきたい。「観察研究により有望とされた事項は、質の高いランダム化比較試験により厳格に確認または否定されなければならない」3)と述べられているとおり、適切な臨床試験の実施は必須である。

一般にランダム化比較試験に患者を登録するよりも、観察研究の方が患者の同意も取得しやすい。また試験参加医師の負担も少ない。パンデミック下の臨床研究ではその傾向がさらに顕著である。しかしLancetのcommentでJD Norrie氏が警告するように、「エビデンスの判定基準を下げる」という誘惑には抗うべきである。そうしないと当該薬の有効性は承認前には証明されず、有効かつ安全な治療薬の開発にも悪影響を及ぼすであろう3)。有効性を永遠に証明できなかった薬剤は過去にも存在した。科学的に有効性が証明された治療を選ばずに証明されていない薬剤を患者が強く希望したために、治癒するチャンスをみすみす逃した事例が過去にあったことを忘れるべきではない。そして「科学」を軽視した判断は最終的に国民の健康にとって害悪となり、汚点として医学史に刻まれることなる。

最近COVID-19に感染した有名人がある既存薬を服用して改善したという報道や、一般マスコミも「有効』ではないかと報道されている既存薬を何故患者が希望しても使えないのか、と煽動するような風潮がある。またパンデミック下のランダム化比較臨床試験不要論を主張する医師も存在する。しかし我が国が経験したサリドマイドなど数々の薬害事件を忘れてはならない。品質、有効性、および安全性の検証をないがしろにした結果の不幸な歴史をのりこえるべく、今日の薬事規制が存在している。ある既存薬のランダム化比較試験は進行中であり、近く結果の発表が見込まれる。

有効性が科学的に証明されていない既存薬はあくまで候補薬に過ぎないことを改めて強調し、エビデンスが十分でない候補薬、特に既存薬については拙速に特例的な承認を行うことなく、十分な科学的エビデンスが得られるまで、臨床試験や適用外使用の枠組みで安全性に留意した投与を継続すべきと提言する。

References
1)レムデシビル・水性注射液、注射用凍結乾燥製剤(商品名ベクルリー)添付文書
2)COVID-19治 療 薬 開 発 に 関 す る 世 界 規 制 当 局 ワ ー ク シ ョ ッ プ; https://www.pmda.go.jp/int-activities/int-harmony/icmra/0006.html
3)John David Norrie. The Lancet(https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)31023-0).」



安倍首相が5月4日の会見で「5月中の承認を目指す」と強く推しているアビガンについて,第三者委員会は,中間解析で有効であると判断できなかったことが,本日報道されました.アビガン拙速承認の危機は遠のいたと思いたいですが,そうでもないようです.

ブルームバーグ「5月中のアビガン承認は時期尚早、根拠欠くー臨床研究の藤田医大教授」(2020年5月20日)は次のとおり報じました.

「新型コロナウイルス感染症治療薬としての承認に注目が集まる「アビガン」を巡り、臨床研究を進めている藤田医科大学の土井洋平教授は19日、ブルームバーグの取材に対し、5月中の承認は根拠に欠けており時期尚早の可能性があるとの認識を示した。

安倍晋三首相が5月中のアビガンの薬事承認を目指すと発言していることについて、土井氏は臨床研究がまだ終わっていないため、何を根拠にしたのかが分からないとコメント。中立性を保つため、第三者が取りまとめた中間段階での研究の解析結果は把握していないとした上で、効果が顕著であるとの明確な結論には至っていない可能性が高いと述べた。

NHKは19日、この中間解析結果として、有効性を判断するには時期尚早で臨床研究を継続する必要があるとの意見が出されたと報じた。厚労省の鎌田光明医薬・生活衛生局長は「さまざまな有効性、あるいは安全性に関する情報を収集している」とし、「有効性が確認されれば承認するという方向」だとコメントした。

菅義偉官房長官は20日午前の記者会見で、「企業からの承認申請があればデータに基づき速やかに審査を行い、審議会での専門家の議論を経て有効性、安全性が確認されれば5月中の承認を目指す考えに変わりはない」と発言した。」



朝日新聞「アビガン「安全性問題なし」 藤田医大、臨床研究を継続」(2020年5月20日)は次のとおり報じました.

「アビガンの新型コロナウイルスへの治療効果を研究している藤田医科大(愛知県)が20日、インターネット上で会見し、学外の専門家による評価委員会による中間解析の結果、安全性に大きな問題はみつからず、研究を続けると発表した。有効性については「中間解析は有効性を評価するものではない」とし、現段階では判断できないと説明した。

 同大は3月から患者計86人を目標に臨床研究を行っている。初日から10日間アビガンを使うグループと、6日目から15日目まで使うグループの二つに分け、体内のウイルス量の減少や安全性を調べる。会見した研究責任医師の土井洋平教授によると、半数の患者の結果に基づく中間解析では、中止の要件となる安全性の問題、極めて高い有効性のいずれにも当たらないと判断された。

 会見は中間解析の結果、有効性を示せなかったとする一部報道に反論するために開かれた。「(中間解析は)薬剤の効果を判定するものではない。違う形で報道されている」と話した。」


谷直樹

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by medical-law | 2020-05-20 23:01 | 医療

日本医師会COVID-19有識者会議「COVID-19感染対策における PCR検査実態調査と利用推進タスクフォース」 中間報告書,PCR検査の利用に関する国の司令塔設置提言

日本医師会COVID-19有識者会議の5月13日の「COVID-19感染対策におけるPCR検査実態調査と利用推進タスクフォース」中間報告書は,PCR検査がすすまない行政側要因の解消のために,PCR検査の利用に関する国の司令塔機能(情報収集、戦略、指揮、調整、広報等)の設置等を求めています.
つまり,保健所は機能を果たせず,電話すらつながらない状況ですので,保健所に代わる司令塔が必要ということです.

また,緊急事態の発動・解除および社会・経済活動の起動の判断と対策効果の基本評価指標に活用するために,PCR検査件数の拡大が必要で,そのための財源の確保が必要としています.
PCR検査の件数がきわめて少ない中で,不十分な評価指標によって判断がなされようとしている現状に鑑み,賛同できます.

さらに,信頼性あるPCR検査のための精度確保のためには,調査(外部精度評価)と施設間差の是正、精度管理物質の利用の促進とその実施が必要で,それに向けた財源の確保が必要としています.
これも全くそのとおりです.抗体検査も行われるようですが,外国のものではなく日本のもので行うべきと思います.
不安定な海外発注に依存しない試薬供給,ニーズに合う需給調整機能を構築することも必要で,そのための財政支援も必要としています.

第2波,新たな病原体によるグローバル・パンデミック感染症(新興感染症)への対応のために,長期的な国家戦略として,次の3点を提言しています.
1 国家戦略的なPCR検査件数の拡大推進と精度確保
2 国家戦略的な国内医療産業基盤
3 国家戦略的な医療機関の機能整備
第2波,COVID-19以外の感染症の世界的流行に備えることも重要です.


谷直樹

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by medical-law | 2020-05-20 22:45 | 医療

新型コロナウイルスの感染可能期間と検査

新型コロナウイルスが感染する期間についての報告が相次いでいます.
韓国疾病予防管理局(KCDC)によると,再陽性の判定が出たのは、感染力がなさそうなウイルスの微細な断片が患者の体内に残っていたためであり、実際には偽陽性だったとのことです.また,台湾とドイツからも,軽症で治る人についてですが,発症1週間が感染する期間で,その後は感染しないとの報告があったとのことです.
そうすると,今まで日本では4日発熱が続いて保健所に連絡してPCR検査を受けて入院となることが多く,入院まで発症からほぼ1週間かかっていました.
上記報告は十分検証されていませんが,仮に発症1週間が感染する期間で,その後は感染しないとすると,日本は軽症者について隔離が必要な時期に隔離せず,隔離が不要になってから隔離していたことになります.

治療の観点からすると早期に診断治療を行うほうがよく,隔離の観点からも仮に発症後1週間が重要とすると,いずれにしても早期検査をめざすべきことになると思います.

朝日新聞「コロナ、1週間で感染リスクなし? 隔離2週間は必要か」(2020年5月17日)は,次のとおり報じました.

「新型コロナウイルスに感染して入院した場合、現状では、症状が落ち着いてからPCR検査で2回続けて「陰性」と判定されないと退院できない。自宅やホテルでの療養者や、患者の濃厚接触者は、原則2週間の待機が求められる。しかし難治性血液疾患などを専門とする小島勢二・名古屋大名誉教授は、最新の知見では、発症から1週間経てば他人に感染させるリスクはほぼなくなるという。本当なのか。小島さんが解説した。

陰圧状態を保った新型コロナウイルス感染患者の専用病棟で対応に当たる医師(右)。感染防止のために作られた仕切りを挟んで看護師(手前)と連絡をとっていた=2020年4月24日午前10時43分、川崎市多摩区、福留庸友撮影

その答えは台湾の研究に

 東京や大阪など8都道府県をのぞき、ようやく新型コロナウイルスに対する緊急事態宣言が解除されることになった。一方で、第2波への備えの必要性が叫ばれている。第1波で科学的根拠に基づく対応がとれなかったのも仕方ないが、第2波については、科学的根拠に基づいた対策を取る必要がある。

 新型コロナウイルスの陽性者および濃厚接触者は、いつまで隔離すべきであろうか? 現在の基準では、隔離を解くには、陽性者はPCR検査で2回続けて陰性が確認されることが必要だ。自宅やホテルでの療養者も、検査で2回陰性が確認されるか、2週間の隔離が求められる。濃厚接触者も原則、患者に接触した時点から2週間の自宅待機を求められる。

 最近、台湾からこの問いの答えになる研究結果が報告された(https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/2765641別ウインドウで開きます)。

 台湾で、新型コロナウイルス感染の確定診断がついた100人に濃厚接触した2761人について、濃厚接触者が最初に患者に接触した時期と、感染の有無との関係について調べた。患者のうち9人は無症状であった。濃厚接触者の内訳は、家族が219人、病院関係者が697人、その他が1755人である。

二次感染、発症6日目以降はなし

 2761人の濃厚接触者のうち、二次感染したのは22人(0.7%)であった。軽症患者よりも重症患者に接触した人の方が、感染するリスクが高かった。無症状の患者に接触した91人のうち、二次感染をおこした人はいなかった。

 二次感染した22人のうち、10人は患者に症状が出る前の接触歴があり、9人は症状が出た日から3日以内、3人は4日目あるいは5日目だった。すなわち、発熱やせきなどの症状が表れてから6日目以降に接触しても、感染することはなかったのだ。

 無症状の患者に接触した人についても、PCR検査が陽性となった日から数えて6日目以降になると感染者はいなかった。二次感染者の半数には患者に症状が出る前に接触歴があったが、この時期に患者との接触を避けるのは不可能であろう。

PCR検査でわかること、わからないこと

 コロナ禍を機に、「PCR検査」という単語がわが国で市民権を得ることになった。しかし、PCR検査には「定性検査」と「定量検査」があることはあまり知られていない。

 ウイルスのDNAは目では見えないので、定性検査では、特殊な装置を使って目的とするDNAを増やす。目で確認できれば陽性、確認できなければ陰性と判定する。新型コロナウイルスの診断には、通常のPCR法で十分である。

 一方、どれくらいウイルスがいるか(定量)を測定できるリアルタイムPCRという方法もある。PCRの1サイクルで目的とするDNAは2倍になるが、増やしたDNAがある量に達するのにPCRを何サイクル回したかがわかれば、最初に存在するDNAの量を推定することができる。

 ウイルスが感染した時に症状がでるには、一定以上のウイルス量が必要である。新型コロナウイルスについても、海外からリアルタイムPCR法でウイルスの量を測定した研究が数多く報告されている。これらの研究によると、症状の発症前後が最も多量のウイルスが検出され、感染から1週間を境にウイルス量は急速に減少する。

 台湾からの報告と合わせると、新型コロナウイルスが他人に感染するには一定のウイルス量が必要で、発症から1週間経てば、この値を下回ると想像される。

 ウイルスの診断は、元来、綿棒でのどをぬぐってとった液体などからウイルスを分離して確認していた。細胞を培養中のフラスコ内に、ウイルスが含まれていると思われる検体を加え、細胞が変化するのを顕微鏡で観察するのだ。煩雑なので、簡便なPCR法がとって代わったが、感染力がある生きたウイルスがいるかどうかは、この方法に頼らなければならない。

 PCR法では、感染力のない死んだウイルスも併せて検出されるので、感染する力があるかどうかは、ウイルスの分離培養の結果を待たなければならない。

ドイツでも8日目以降はウイルスなし

 新型コロナウイルスについて、診断時から時間を追うごとに分離培養を行ったドイツからの報告(https://www.nature.com/articles/s41586-020-2196-x別ウインドウで開きます)では、診断直後は高い確率でウイルスを分離することができたが、日を経るごとに減少し、発症から8日目以降では、検査した全員において分離することができなかった。

 新型コロナウイルスの分離培養は、もっとも危険な病原体を扱える限られた研究所しかできない。ウイルスの定量や分離培養の結果も、台湾から報告された研究と符合しており、これらの研究結果を総合すると、新型コロナウイルスは、症状が出てから1週間経てば、すでに感染力を失っていると考えられる。

 この研究結果は、今後の新型コロナウイルスの感染対策に極めて重要な意味を持つ。今回の知見をもとに、これまでのわが国における新型コロナ感染対策を顧みるとともに、今後の対策にこの結果をどう生かすかについて論じてみたい。

 従来、保健所が窓口になっている帰国者・接触者相談センターでは、PCR検査を受ける基準は、発熱などの症状が表れてから4日以上経過してからとされてきた。加藤勝信厚生労働大臣が保健所や国民の誤解であったと発言して物議をかもしているが、実際、ほとんどの患者が、PCR検査を受けるのは発症から5日目以降であったと思われる。

 さらに、PCR検査の結果が届いて陽性が判明し、隔離されるのは、多くは発症から1週間以上経過してからであった。すなわち、最も感染リスクが高い時期には隔離されておらず、すでに感染のリスクがなくなってから厳重な隔離管理をされていたことになる。

 台湾では、今回の結果をもとに、発症後1週間経過し、病状が悪化する恐れがなければ隔離する必要はないとして、自宅療養を勧めることになった。

海外の知見から言えること

 わが国では、自宅待機中の患者の中に病状が急激に悪化して死亡した例が続いたため、自宅療養患者を減らす方針である。しかし病状が悪化するリスクのある期間が過ぎても入院させるのが隔離の目的のみであれば、自宅での療養が推奨されてもよいかもしれない。

 家族を含め周囲への感染リスクがないとなれば、発症後1週間経った患者の多くは自宅療養を希望すると考えられる。新型コロナウイルス感染症で入院する患者の大部分は発症から1週間以上が経過していることから、患者に接触する医療従事者の感染防御も簡素化できるかもしれない。

 折しも、5月13日から新型コロナウイルス感染の診断に抗原検査が保険適用となった。抗原検査は30分間で判定結果が出るので、今後は新型コロナウイルスの診断の際に、最初に使われるようになるであろう。抗原検査は定性検査であるので、リアルタイムPCR法を併用することで重症化や感染力の有無を予測できれば、コロナ患者に対して、より的確な対応が可能となるであろう。

 今回の提案は、台湾を始め、海外の研究結果に基づいたものである。この提案を確固たるエビデンスとして診療現場に導入するには、これまで紹介してきた研究結果について、わが国でも確認する必要がある。

 残念ながらわが国からは、新型コロナウイルスの診療に有用な情報は、ほとんど発信されていない。今回のコロナ禍にあっては、中国からは怒濤(どとう)のように重要な研究結果が報告されている。

 今回紹介した台湾からの報告は台湾疾病コントロールセンター(CDC)が主導した研究であるが、武漢での新型コロナウイルス感染の流行を知り、直ちに研究計画が立てられたようだ。台湾で最初の新型コロナ感染の患者が確認されたのは1月21日であるが、この研究は1月15日から始まっている。今回のコロナ禍に対する台湾CDCの対応が世界で高く評価されている一端をみる思いがした。(構成・岡崎明子)」



谷直樹

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by medical-law | 2020-05-20 09:44 | 医療

《交響曲第10番第1楽章アダージョ》

グスタフ・マーラー氏は,チャールズ・アイヴズ氏の交響曲第3番に注目し,初演しようとしていましたが,グスタフ・マーラー氏の死により実現しませんでした.
また,同氏の死により《交響曲第10番》は未完に終わりました.
長らく,ほぼ完成していた第1楽章アダージョが演奏されていました.
第1楽章アダージョ冒頭のヴィオラからただならない雰囲気で,魅力的な曲です.

《交響曲第10番》は,妻の裏切りに苦しめられたグスタフ・マーラー氏の精神状態が強く影響しています.そのアルマ・マーラー氏が相続により著作権者となったため,補訂版の出版と演奏が差止められるなどありました.
私は,70~80年代は第1楽章アダージョのみを聞いていました.

現在では,デリック・クック氏の補訂第3稿(1972年)を同氏没後にゴルトシュミット氏らが改訂した補訂第3稿第2版(1986年)により演奏されることが多くなりました.未完成の曲を完成した形で聞くことができるのは不思議な感じです.
やはり第1楽章アダージョは名曲と思います.

谷直樹

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by medical-law | 2020-05-20 05:46 | 趣味