弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

2020年 06月 04日 ( 4 )

東京地裁令和2年6月4日判決,入院患者の呼吸の異常を知らせるアラームがオフになっていたことと患者が植物状態となりその後死亡したこととの因果関係を認め6000万円余りの賠償を命じる(報道)

NHK「日本医科大学病院に6000万円余の賠償命じる 東京地裁」(2020年6月4日)は次のとおり報じました.

「5年前、日本医科大学付属病院で入院患者の呼吸の異常を知らせるアラームがオフになっていたため、植物状態となり、その後死亡したと遺族が訴えた裁判で、東京地方裁判所は病院側の過失を認め、6000万円余りの賠償を命じました。

判決によりますと、平成27年、東京 文京区の日本医科大学付属病院にくも膜下出血で入院していた、当時60代の男性の呼吸が止まって植物状態となり、およそ4年半後に死亡しました。

遺族は、モニターのアラームがオフになっていたため、看護師らが気付くのが遅れたのが原因だとして、病院を開設する大学などに賠償を求めました。

4日の判決で、東京地方裁判所の佐藤哲治裁判長は「病院では、アラームの設定を1日2回、看護師が確認することになっていたのに、急変までのおよそ5日間、設定がオフになっていたことに誰も気付かなかった」と指摘し、病院側の過失を認めました。

そのうえで、大学に対し、6000万円余りの賠償を命じました。

判決について、日本医科大学は「判決文を見ていないので、コメントできません」としています。」

上記報道の件は,私が担当したものではありません.
モニターのアラームをオフにし,その状態に気づかなかったことは,当然,過失にあたります.
このような事案では,患者の具体的な病態を前提に適切に対応しても同じ結果が生じたかが争われ,因果関係が問題になることが多いように思います.上記報道の判決は,因果関係を認めた判例として参考になります.
なお,患者の具体的な病態を前提に適切に対応しても同じ結果が生じたと考えるに足る具体的な事情は,被告側が立証すべき事実のように思います.

谷直樹

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by medical-law | 2020-06-04 23:54 | 医療事故・医療裁判

東京地裁令和2年6月4日判決,抗てんかん薬の規定の16倍の過剰投与と死亡とのンが関係を認め約1500万円の賠償を命じる(報道)

時事通信「東京女子医大に賠償命令 患者死亡、投薬ミス認定―東京地裁」(2020年06月04日)は次のとおり報じました.

「東京女子医大病院(東京都新宿区)で治療中に死亡した女性患者の遺族らが「薬の過剰投与が原因」などとして、同大と担当医2人に計約4300万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が4日、東京地裁であった。佐藤哲治裁判長は過剰投与と死亡の因果関係を認定し、同大などに計約1500万円の賠償を命じた。

 訴えていたのは長浜裕美さん=当時(43)=の夫と両親。判決によると、長浜さんは2014年8月にけいれん発作を起こし、搬送先の同病院で抗てんかん薬を処方された。翌9月、副作用で発症した皮膚障害による肺炎や肺出血で死亡した。
 佐藤裁判長は、担当医が薬の添付文書に記載された量を大きく超えて投与したと指摘し、「合理的な理由がないのに用法・用量を順守せず、過失が認められる」と認定。投与が重篤な皮膚障害を発症させる恐れについても十分な説明をしなかったと判断した。
 閉廷後に厚生労働省で記者会見した夫の明雄さん(45)は「非常にうれしく思っている。妻にも報告ができる」と語った。原告代理人の弁護士も「主張が全面的に受け入れられた」と評価した。
 東京女子医大病院は「判決を重く受け止め、謝罪の意を表します」などとする病院長のコメントをホームページに掲載した。」



読売新聞「死亡女性への投薬巡り訴訟、病院側に支払い命令の判決…医師の過失認定」(2020年6月4日)は次のとおり報じました.

「東京女子医科大病院で治療を受けていた女性が2014年、処方された薬の副作用で死亡したのは、医師が用法を守らなかったためだとして、女性の夫ら遺族3人が同病院側に計約4300万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁(佐藤哲治裁判長)は4日、計約1540万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

 判決によると、脳腫瘍を患っていた長浜裕美さん(当時43歳)は同年8月、けいれん発作を起こし、同病院で抗てんかん薬「ラミクタール」を1日200ミリ・グラム処方されて服用。中毒性表皮壊死症を発症し、肺炎を併発して死亡した。

 薬の添付文書には、重い皮膚障害が起きる可能性があるとの警告が記され、投与する量を徐々に増やすよう求めていたが、医師は従わなかった。判決は「医師には合理的な理由もないのに薬の用法や用量を守らなかった過失がある」と認定。副作用を十分説明すべき義務にも違反したと判断した。

 判決後、都内で記者会見した夫の明雄さん(45)は「妻には悔しい思いをさせたが、真実を明らかにできたと報告したい」と話した。同病院の田辺一成病院長は「判決を重く受け止め、謝罪の意を表します」とのコメントを出した。」


上記報道の件は,私が担当したものではありません.
の添付文書に記載された量の16倍の量を投与した事案です.過失が推定されます.死亡との因果関係を認めて当然と思います.ただ,病院側としては投与にいたる理由,事情があるようです.

病院は,以下の「令和2年6月4日付の判決について」をそのサイトに掲載しています.

「当院において再発膠芽腫の患者様が亡くなられたことに対して、あらためて哀悼の意を表します。事案の概要につきましては、当該患者様が、平成26年8月20日に添付文書記載の用量を超えた量の抗てんかん薬の投与を受けたのち、平成26年9月9日に中毒性表皮壊死症による両側肺炎及び肺出血により亡くなられたものです。今般、東京地方裁判所より、当該患者様に対する当院での薬剤処方の結果、患者様が亡くなられたとの判断が下されました。判決を重く受け止め、ここに謝罪の意を表します。

患者様は平成25年9月に他病院において脳腫瘍摘出術を受けておられますが、平成26年8月に当院にて腫瘍の再発が確認されたため、当院で脳腫瘍摘出術を受けることをご希望になりました。しかしながら、手術を延期してでも他に優先したい行事があるとの患者様及びご主人の強い希望があり行事に支障をきたさないようにとの配慮から当該薬剤の処方がなされ ました。また、ご主人からは患者様ご本人 には病名・余命等は一切告げないよう強い依頼があったため主治医としては苦渋の決断であったのも事実であります。

本学としては、本事案に先立つ平成26年2月に鎮静薬の投与後に幼児の患者様が亡くなられたことを受け、院内全体として薬剤処方の厳格な審査システムの採用、教育指導強化等、再発防止策を実施してきたところであり、その中でそのわずか半年後に本事案が生じたことについて誠に遺憾であると考えております。今後も、病院職員が一体となって、患者様の安心安全を至上命題として、大学病院としての高い期待に応えるべく邁進する覚悟です。


谷直樹

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by medical-law | 2020-06-04 22:58 | 医療事故・医療裁判

《雨の庭》

クロード・ドビュッシー氏の《版画》(Estampes 1903年)は,各曲見事に雰囲気が違います.
1曲目《塔(パゴダ)》は,1889年のパリ万博でジャワ島の音楽から着想しています.
2曲目《グラナダの夕べ 》は,スペイン情緒たっぷりです.
3曲目《雨の庭》(Jardins sous la pluie)は,パリ気分です.フランス人が子どものときに聞いた「Dodo l’engant do」と「Nous n’irons plus au bois」の旋律を題材にしています.雨が踊っているという感じです.短いですが,ドビュッシー氏のピアノ曲の醍醐味が詰まった曲です.

アレクシス・ワイセンベルグ(Alexis Weissenberg)氏の演奏スタイルと音の響きは,ドビュッシー氏の音楽にあっていると思います.

なお,村上春樹氏の『ノルウェイの森』は,ドビュッシー氏の《版画》から『雨の庭』として書かれ,最終段階で標題が変わったそうです.

谷直樹

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by medical-law | 2020-06-04 00:51 | 趣味

《曇り空の下の積み藁》

《曇り空の下の積み藁》_b0206085_00021091.jpg

《曇り空の下の積み藁》(Wheat Stack under a Cloudy Sky クレラー=ミュラー美術館所蔵)は,フィンセント・ファン・ゴッホ (Vincent van Gogh)氏の1890年の作品です.不吉な鴉の群れがいます.
亡くなる年の作品です.

ゴッホ氏の作品の一部分が白く変化していく現象が起きています.
以前、研究者が「曇り空の下の積み藁」の白くなった部分にplumbonacriteという鉛の成分が含まれていることが分かった,と報じられていました.
ゴッホ氏は,当時新製品の赤色の合成絵の具を使っていました.
plumbonacriteは,その赤い合成絵に含まれ,光に曝されると色を劣化させてしまうそうです.
美術館の展示が薄暗いのは,変色を避けるためなんですね.

谷直樹

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by medical-law | 2020-06-04 00:03 | 趣味