弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

カテゴリ:医療( 783 )

日本医学放射線学会,エビデンスのない過剰な画像検査が行われている調査結果を公表

毎日新聞「不適切な画像検査 2種類、認定病院の半数で「頻繁」 放射線学会委」(2018年1月7日)は,次のとおり報じました.

「日本医学放射線学会が、「医学的根拠がない」などとして推奨していない画像検査のうち、早期乳がん患者に関する検査など2種類が、認定病院の半数で頻繁に行われていたとする調査結果を、同学会の委員会が公表した。不適切な画像検査の実態が明らかになったのは初めて。

 学会は「医学的根拠がない」もしくは「効果がない」との理由から、37種類のコンピューター断層撮影(CT)装置や磁気共鳴画像化装置(MRI)などを使った画像検査を「推奨しない」としてガイドライン(指針)に示している。

 調査は昨年1月、常勤の放射線科医が1人以上いるなど学会認定の189の専門医研修病院を対象に、37種類それぞれについて、実施状況をオンラインで尋ねた(165病院が回答)。

 その結果、認定病院の半数で「非常に頻繁」もしくは「頻繁」に実施されていたのは、遠隔転移を調べるため早期乳がん患者に行う手術前の胸部CT検査(54%)と、重い病気が原因とみられない頭痛を訴える成人への頭部CT・MRI検査(50%)の2種類。遠隔転移を調べるため早期乳がん患者に行う手術前の腹部画像検査(43%)が続いた。

 主治医が依頼する画像検査で疑問に感じたケースを放射線科医に尋ねたところ、撮影依頼の範囲が広すぎる▽明らかな兆候がないのに全身の撮影を依頼する▽頻繁に(または長期間)繰り返す--などが多かった。

 また、20%の認定病院で主治医が放射線科医からのアドバイスをほとんど受けることなく、推奨されない検査を依頼していた。その理由としては、患者をみて検査を決めた主治医に放射線科医が助言するのは難しい(59%)▽放射線科医が主治医に助言するだけの時間がない(56%)などの回答が多かった。

 調査した同学会委員会メンバーの隈丸加奈子・順天堂大准教授(放射線医学)は「CT検査は患者の被ばく問題もあり、慎重に行われるべきだ。指針に基づいた画像検査が行われるよう検査を依頼するシステムの改善が求められる」と指摘する。【河内敏康】


これは難しい問題です.
放射線科医は,検査を実施することのエビデンス(医学的根拠)を重視しますが,患者は,遠隔転移があるならできるだけ早く発見してもらいたいと考えますし,頭痛が重大な疾患の徴候であったとしたらできるだけ早く発見してもらいたいと考えます.
患者からすると,乳がん患者の遠隔転移を調べる胸部腹部のCT検査,頭痛を訴える成人への頭部CT・MRI検査などは,行ってもらいたいという強い希望があるところです.遠隔転移のために命を落としたり,脳腫瘍等の重大な疾患により後遺症を残したりした場合,検査してくれなかったことについて医療過誤の疑いを抱く相談者も多いのです.

谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!

  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

by medical-law | 2018-01-07 10:00 | 医療

訃報,岡井崇先生

b0206085_15515464.jpg

読売新聞「産科医療に尽力、愛育病院・岡井崇院長が死去」(2017年12月23日)は,次のとおり報じました.

 「産科医療の安全性向上に取り組んだ昭和大客員教授で愛育病院(東京都港区)病院長の 岡井崇 さんが21日、肺がんで死去した。70歳だった。告別式は近親者で行う。喪主は長男・巌さん。後日、 偲 ぶ会を開く。

 超音波診断の専門家で、皇族の診療にも携わった。出産事故で脳性まひになった子どもに補償金を支払い、原因分析や再発防止策の検討も行う「産科医療補償制度」の創設に尽力。日本医療機能評価機構が運営する同制度の原因分析委員長や、日本産婦人科医会副会長などを務めた。

 産科医療の抱える課題を広く認識してもらおうと、10年前から計3作の小説を発表。出産事故や訴訟に揺れる医療現場を描いた「ノーフォールト」、生殖医療の問題点を問う「デザイナーベイビー」は、ともにテレビドラマ化された。」


私が岡井崇先生にはじめてお会いしたのは,2000年のことでした.昭和大学病院の産科事故についての説明会の席でした.岡井先生が昭和大学に教授として着任する前の医療事故でしたが,私の質問に岡井先生は誠実に回答しました.その件は,東京地裁に提訴し,早期にほぼ原告の請求どおりの和解が成立して終わりました.
昭和大学病院で超緊急帝王切開ができる体制が整えられたのも,岡井先生の御尽力の賜です.
また,岡井先生が中心となって創設した産科医療補償制度は,原因分析,再発防止提言により,日本の産科医療の改善・向上に役立っています.

ご冥福をお祈り申し上げます.


谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!

  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

by medical-law | 2017-12-23 15:15 | 医療

定例立入検査の実施状況報告,都内240病院すべてに問題あり


リスク対策comによれば,
「東京都は18日、『東京都医療安全推進協議会』の今年度第2回会合を開催。2016年度「医療法第25条第1項に基づく定例立入検査の実施状況報告書」を公表した。2016年5月から今年3月にかけて240病院に監視員が立ち入り、書類や現場確認を実施。全く問題のない「指摘・指導事項なし」はゼロだった。」
とのことです.

なお,患者の権利オンブズマン東京副幹事長の重村奈津代さんも,この東京都医療安全推進協議会の委員の一人です.



谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!

  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
by medical-law | 2017-12-20 04:54 | 医療

神奈川県立がんセンター,重粒子線治療をめぐり医師退職,放射線治療に影響

朝日新聞「「先進医療」拠点で医師対立か…専門医4人相次ぎ退職へ」(2017年12月15日)は,次のとおり報じました.
「大川病院長によると、今年の夏に放射線治療に携わる幹部医師が退職し、放射線治療科に所属する医師4人も、11月初旬までに相次いで退職の意向を伝えてきたという。いずれも「一身上の都合」というが、厚労省の定める「先進医療」の継続を巡っての見解の相違や、医師間の対立などが背景にあるとみられる。」
「県は2005年、同センターに施設設置方針を定め、総事業費約120億円をかけて15年12月に完成。同時に治療を開始したが、治療費が一部を除き全額自己負担で350万円と高額なことなどから患者数は伸び悩み、16年度は1年間で200件の治療件数目標に対して実績は149件にとどまっている。(岩堀滋)」


「先進医療」という言葉は,標準医療より優れた医療というイメージを与えますがそうではありません.先進医療は,有効性と安全性が確認されていない医療です.自由診療で行われます.保険を使用できませんので,患者は高額の自己負担を強いられます.

切除できない骨がんに対する重粒子線治療は,優位性を示すデータがあり,保険診療で行われます.それ以外は優位性を示すデータがなく,先進治療に残っていますが,実施に消極的な考えの医師も少なくありません.
120億円をかけて作ったから重粒子線治療を行う患者を増やそう,というのは本末転倒でしょう.

【追記】
日本経済新聞「神奈川県、がんセンターの専門医退職で調査委」(2017年12月19日)は,次のとおり報じました.

「神奈川県は19日、県立がんセンター(横浜市)で重粒子線治療に携わる専門医6人のうち4人が退職の意向を示している問題で、原因究明を目的とした調査委員会を設置した。県職員らによるワーキンググループが同センター職員ら関係者に聞き取りをしたうえで、12月中に事実関係をまとめる。
 委員会は県の保健福祉局長以下、関連部局の職員と弁護士で構成。19日初の会合を開いた。ワーキンググループの調査をもとに、病院経営で問題があったと認めた場合は是正に向けた必要な措置を取る。
 同センターでは重粒子線治療に関わる放射線治療科の6人の専門医のうち、2人が12月末、さらに2人が2018年1月末までに退職する意向を同センター側に伝えており、医師の確保が間に合わなければ医療体制の継続に支障が出る懸念がある。
 県は退職する医師の補充策については同センターと同センターを管轄する県立病院機構(同市)に委ねる。」


谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!

  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

by medical-law | 2017-12-16 04:44 | 医療

厚生労働省とドラマ『コウノドリ』がタイアップ

厚生労働省は,TBSテレビのドラマ『コウノドリ』とタイアップし,TBSテレビの協力により、厚生労働省が行っている施策の啓発メッセージを掲載したリーフレットを3種類作成したとのことです。
1 マタニティマークの理解促進
2 助産師の役割と効果的な活用
3 地域の周産期医療体制と産婦人科医不足

啓発メッセージの効果はわかりませんが.注目はされると思います.


谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!

  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
by medical-law | 2017-12-15 16:02 | 医療

Googleが医療や健康に関連する検索改善

Google は,2017年12月6日,日本語検索におけるページの評価方法をアップデートし,医療や健康に関連する検索結果の改善した,とのことです.

「例えば医療従事者や専門家、医療機関等から提供されるような、より信頼性が高く有益な情報が上位に表示されやすくなります。本アップデートは医療・健康に関連する検索のおよそ 60% に影響します。」とのことです.

医療や健康に関連する検索結果の改善について


谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!

  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
by medical-law | 2017-12-12 22:18 | 医療

12月18日,医療従事者の需給に関する検討会医師需給分科会

医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会(第16回)が12月18日に開催されます.
前回(11月22日)に医師が少ない区域で勤務した医師を認定医師とし,認定医師になれば利益があるようにする方向でまとまりましたが,具体的な詰めが行われるそうですので,注目したいと思います.
長く議論がされてきましたが,来年には医療法改正案が提出されるようです.

谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!

  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
by medical-law | 2017-12-11 09:59 | 医療

都内でインフルエンザの流行開始

東京都は,2017年11月30日,都内419か所のインフルエンザ定点医療機関からの第47週(11月20日から11月26日)の患者報告数は1.86人/定点(週)で,流行開始の目安となる定点当たり1.0人を超えたと発表しました.インフルエンザ様疾患の集団感染事例は、11月26日までに95件報告されたとのことです.

弁護士は裁判期日があり休めない仕事なので,私は人混みに出るときはマスクを着用し,頻繁にマスクを替えるようにし,また替える際には手を洗うようにしています.また,室内の湿度を上げるようにしています.
それでも罹患するときは罹患してしまうのでしょうが.

谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!

  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

by medical-law | 2017-12-02 00:41 | 医療

湘南学園高校1年生のフィールドワーク(最新医療)

先日,突然,高校生から電話があり,フィールドワーク最新医療の課題が与えられたので話してほしい,と言われました.
湘南学園高校では,「生命の尊厳」について考えるとともに,「一人一人が尊重され,人間らしく生きられる社会とはどういう社会か」というテーマをかかげ,各自の問題意識に即したフィールドワークを実施しているとのことです.
昨日,藤沢市松が丘の湘南学園に行って,高校生5人に,最新医療とくに先進医療について話してきました.
以下は,その内容です.

1 自由診療と保険診療

もともと医療は自由診療でしたが,保険診療により有効性と安全性な医療を受けやすくなりました.
医療技術の有効性と安全性を,臨床試験,臨床研究によって,調べます.
臨床試験,臨床研究は,有効性,安全性が確認されていないものをテストするのですから,(無効で危険かもしれないことを受けるのですから)もちろん無料です.
そのようにして,有効性と安全性が確認された医療(標準医療)だけが,保険診療の対象になります.
自由診療と保険診療を同時に行うと「混合診療」となり,全額患者の負担になります.

2 先進医療

「先進医療」として定められた約100の医療技術については,定められた約1000の医療機関で,全額患者の費用になりますが,先進医療を受けることができます 先進医療は保険診療と同時に行っても,混合診療にはならず,患者は保険診療については自己負担分だけ払えばよいことになります.

「先進医療」という名前が,優れた医療技術のような誤解を与えているのは,問題です.
「先進医療」は,有効性,安全性が確認されていない医療技術です.

3 先進医療の説明義務,インフォームドコンセント

医療は,専門家である医師が患者に情報を提供し,患者がそれを理解し,決定,同意する過程が重要です.

先進医療では,保険で行われる標準医療以上に,説明が必要です.
先進医療は,とくに期待が大きいので,有効性,安全性が確認されていない医療技術であること,リスクの具体的な内容・割合,他の手段について説明する必要があります.
詳しいペーパーが渡され丁寧に説明がされていますが,患者の期待が大きなため,正しく伝わっていない場合もあります.
一方的な説明ではなく,対話が重要です.

一般的ではない医療が行われた場合に,説明義務違反が認められた裁判例があります.
150万円~200万円の3例の裁判例がありますが,裁判になっていないものは,もっとあるでしょう.

4 医療事故と医療過誤

医療事故は,予期されない悪い結果が生じた場合です.
医療事故は,調査が行われ,原因が究明され,再発防止策が提案されます.

その医療事故のうち,過失があるものが医療過誤です.
過失とは,予期されない悪い結果について予見可能性があり,回避義務があるものです.
医療過誤は,被害者が請求すれば,賠償請求の問題になります.
弁護士を依頼して示談,訴訟が行われます.

5 先進医療の医療事故,医療過誤

先進医療でも,保険医療と同様に医療事故,医療過誤がおきます.
レジメンを誤った医療事故などが起きています.

6 手術支援ロボット

手術支援ロボットダヴィンチを使った手術は,2つを除いて保険診療ではありません.
一部が「先進医療」になっていますが,多くは「先進医療」にすらなっていません.

7 最新医療と標準医療

専門家は技術の進歩のために日々努力しています.
標準治療以上のものを求めて,最新の医療技術が開発されています.
そのようにして医療は進歩してきました.
ただ,最新医療は,開発途上のもので,必ずしも有効性と安全性が確認されたものではありませんので,期待が大きい反面,結果的に期待外れのこともありますし,悪い結果が生じることもあります.
最新医療がつねに良いもの,優れたものというわけではありません.
有効性と安全性が確認されている標準医療が基本です.


谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!

  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
ます.
by medical-law | 2017-11-22 06:36 | 医療

11月27日,ワンヘルスに関する連携シンポジウム-薬剤耐性(AMR)対策-

畜産業では発育促進等を目的に抗菌剤が飼料に混ぜて多用されています.
その結果,耐性菌に置き換わり,家畜の排泄物の薬剤耐性菌が環境を汚染し,またヒトが食肉を摂取することにより薬剤耐性菌が広がことが世界的に深刻な問題となっています
ワンヘルス(一つの健康)は,ヒトの健康を守るため動物や環境にも目を配って取り組もうという考え方です.
薬剤耐性(AMR)の現状と抗微生物剤の適正使用等の対策の重要性について,広く普及・啓発するとともに,分野間の連携を推進するために,11月27日,日本医師会大講堂で,「ワンヘルスに関する連携シンポジウム-薬剤耐性(AMR)対策-」が,厚生労働省の主催,農林水産省,日本医師会,日本獣医師会の共催で開かれます.

詳しくは,厚労省のサイトをご覧ください.

谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!

  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
ます.
by medical-law | 2017-11-20 07:27 | 医療