弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

カテゴリ:医療( 839 )

薬害オンブズパースン会議「HPVワクチンに関する『生物学的製剤基準の一部を改正する件(案)について』、及び『HPVワクチンに関する検定告示の改正案』に対する意見(パブリックコメント)」

薬害オンブズパースン会議は,2020年6月21日、「HPVワクチンに関する『生物学的製剤基準の一部を改正する件(案)について』、及び『HPVワクチンに関する検定告示の改正案』に対する意見(パブリックコメント)」を提出しました。

「1 意見の趣旨
シルガード9は承認すべきではない。
シルガード9の承認を前提とした生物製剤基準の改正、及び告示の改正は行うべきではない。

2 意見の理由

(中略)
シルガード9は、子宮頸がんとして備えるべき安全性を有しておらず、その危険性を上回るベネフィットがあるとも認められない。
また、シルガード9については、新型コロナウイルス感染症に関する緊急事態宣言の最中、Web会議および電子メールを用いた持ち回り審議をもって部会での承認を可とする決定が行われているが、承認申請は5年前であり、後述するようにHPVワクチンの安全性をめぐっては論争が続いていることなどを勘案すると、手続的にも問題がある。 以上により、シルガード9は承認するべきではなく、シルガード9の承認を前提とした生物製剤基準の改正、及び告示の改正は行うべきではない。
なお、ガーダシルとサーバリックスは再審査中である。また、副反応の発生を受けて、定期接種ワクチンでありながら、2013年6月から7年間にわたって接種の積極的勧奨が中止されており、その安全性については論争が続いている。 以上の点に鑑み、シルガード9は、「薬事分科会における確認事項」(平成13年1月23日薬事分科会確認)が定める「副作用等からみて慎重に審議する必要がある」ものに該当する。従って、薬事分科会の審議対象とするとともに、「社会的関心の極めて高いもの」として、主要な資料の概要を公表した上でパブリックコメントを実施し、副反応被害者や研究者も参加する公開の検討会を開催するべきである。 」



谷直樹

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by medical-law | 2020-06-25 13:07 | 医療

イギリスで新型コロナウイルスの新しいワクチンの臨床試験を開始

インペリアル・コレッジ・ロンドンのロビン・シャトック教授らが,新型コロナウイルスの新しいワクチンの臨床試験を開始した,と報じられています

BBC「新型ウイルスワクチン、英大学が臨床試験を開始 300人対象」(2020年6月25日)は,「多くの従来のワクチンは、弱体化させたウイルスや改変したウイルスなどがもとになっている。しかし今回のワクチンは新しいアプローチに基づいたもので、遺伝子のRNA(リボ核酸)を使う。
筋肉に注射すると、RNAは自己増殖し、新型ウイルスの表面にみられるスパイクタンパク質のコピーをつくるよう、体内の細胞に指示を出す。
この方法で、COVID-19(新型ウイルスによる感染症)を発症することなく新型ウイルスを認識して戦うための免疫システムを訓練できるという。」
と報じています.

谷直樹

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by medical-law | 2020-06-25 12:20 | 医療

山中伸弥教授「日本は他の国と違う理由で医療体制がかなり危ない」

山中伸弥教授は,TOKYO FM「TOKYO SLOW NEWS」(6月9日)で,「日本は他の国と違う理由で医療体制がかなり危ない」と語っています.

「第2波までに間違いなくできることは、検査体制の確立や、アプリなどを使って検査を行ったりと、そういうことは絶対にできます。ただ日本は他の国と違う理由で医療体制がかなり危なくなって、それは偏見や中傷などの理由で、医療従事者が(精神的に)参ってしまいましたので、もし第2波がやってきたら、ぜひともそれは防ぎたい。そのためにもきちっと検査するべきところは検査して、「大丈夫です」ということをちゃんと示していくと、随分“マシ”になると思います。」


緊急事態宣言が全国で解除されました。しかし新型コロナウイルスへの対策はこれからが本番です。まだ青信号ではなく、黄色信号が点滅している状態です。・・・


谷直樹

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by medical-law | 2020-06-21 21:42 | 医療

新型コロナウイルス感染症の治療薬治験疑惑の波紋

新型コロナウイルス感染症の治療薬についての治験で,データが捏造されていた疑惑に応えることが出来ず,雑誌に掲載された論文が撤回になりましたが,政治的背景も指摘されています.また,ワクチン開発についても,そのエビデンスをしっかり検証する必要があります.

毎日新聞「政治化された「エビデンス」 新型コロナ研究不正疑惑の波紋」(2020年6月21日) は,次のとおり報じました.

「新型コロナウイルス感染症の治療に関わる研究で不正疑惑が浮上した。複数の欧米の一流医学誌がこの研究論文のデータが信頼できないとして、掲載の撤回を発表したのだ。米国のトランプ大統領をも巻き込み、国際的に大きな注目を集めた研究だった。波紋は学術界の外へと広がっている。

 ◇ 有名医学誌が相次いで論文を撤回

 英国の「ランセット」誌と米国の「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)」誌は6月4日、既存薬を利用した新型ウイルスの治療に関する研究論文の掲載撤回を相次いで発表した。

 どちらも筆頭著者は米ハーバード大関連病院の医師で、シカゴに拠点を置くサージスフィア社がデータ分析を担っていた。

 ランセットの論文は、抗マラリア薬ヒドロキシクロロキンが新型ウイルスの治療に有効かどうかを検証したもの。世界の671病院で治療を受けた約9万6000人の患者データを分析した結果、新型ウイルスへの有効性が確認できないばかりか、死亡リスクが高まる可能性があると指摘した。

 だが5月22日に論文が発表されると、データの信ぴょう性について研究コミュニティーなどから疑問の声が上がった。新型ウイルスの被害が深刻な米国や欧州でサージスフィア社に患者データを提供したと認める医療機関が現れなかっただけでなく、論文で示された死者数などのデータも各国政府の公式発表と食い違いがあった。研究チームはデータの再検証にサージスフィア社の協力が得られないとして、二つの論文の撤回を申し入れた。

 ◇ 渦中の企業はホームページを閉鎖

 サージスフィア社は、新型ウイルスの流行が世界的に広がった2020年3月まで目立った活動歴がない無名の企業だった。ホームページでは、世界1200の医療機関と協力して2億4000万人の匿名化された世界最大級の患者データベースを管理していると誇示。データ分析には人工知能(AI)を活用するとの記載もあった。しかし、英紙ガーディアンは、従業員に医学や機械学習のキャリアがあるとみられる人物は少なかったとして、サージスフィア社の活動実態に懐疑的な見方を示している。サージスフィア社は論文に疑義が生じた直後、ホームページで「独立した学術監査が行われることで、私たちの研究の質が強調される」との声明を発表したが、その後、ホームページは閉鎖された。

 疑惑の企業が研究に参加した経緯をたどる前に関係者を整理しておこう。撤回された論文には、米国を拠点とする3人の心臓外科医が共通して名を連ねていた。

 ▽マンディープ・メフラ氏 …米ハーバード大学医学部教授で、関連施設のブリガム・アンド・ウィメンズ病院心臓血管センターの責任者。学術誌に200本以上の査読付き論文を発表した実績があり、米科学誌サイエンスは「スター研究者」と評する元共同研究者の声を伝えている。ランセットとNEJM論文の研究を統括した。

 ▽サパン・デサイ氏 …サージスフィア社の最高経営責任者。米メディアによると、研修医だった00年代後半に同社を創業した。当初は医療用の教科書などを扱っていたが、最近は主要なサービスとして患者データベースの提供と分析を掲げていた。今回の論文撤回を受けて、デサイ氏が過去に発表した別の論文にも不正の疑いが指摘されている。

 ▽アミット・パテル氏 …論文発表時の所属は、米ユタ大学生体医工学部で無給の非常勤講師だった。ユタ大学の広報担当者によると、論文撤回翌日の6月5日付で「相互の合意」に基づいて解任された。大学側は解任の理由は「コメントできない」としている。過去には再生医療分野でランセットに掲載された共著論文がある。

 ◇ ハーバード大教授の謝罪

 毎日新聞の取材依頼に対し、ハーバード大のメフラ氏は病院を通じて文章を寄せた。

 それによると、メフラ氏は新型ウイルスのパンデミックを受けて「科学と患者のケアに寄与するタイムリーなデータの提供が不可欠」だと考えていた。そこに旧知のパテル氏を通じてデサイ氏とサージスフィア社を紹介され、共同研究に合意したという。メフラ氏の提起した研究課題に対して、サージスフィア社が保有するデータの分析結果を提供。それを基にランセットとNEJMの論文を執筆した。

 掲載直後にデータが不自然だとして複数の研究者から疑義が浮上すると、メフラ氏はサージスフィア社に再解析を求め、さらに独立した第三者機関に調査を委託した。これに対し、サージスフィア社は「機密情報を含み、提供者との合意」に反するとして元データの開示を拒んだという。

 これを受けてサージスフィア社のデサイ氏を除く共著者は、「データの出所や信ぴょう性、そしてそのデータから導いた知見に確証がなくなった」として両誌に撤回を申し入れた。メフラ氏は「非常に必要性の高い研究に貢献したいという希望があり、使用するデータが適切であるかを十分に確認しなかった。直接的にも間接的にも、混乱を招いたことを心より申し訳なく思う」と謝罪した。

 以上は、あくまでメフラ氏による説明である。

 デサイ氏とサージスフィア社にもメールでコメントを求めているが、6月12日現在で返答はない。英紙フィナンシャル・タイムズによると、ランセットを発行する学術出版大手エルゼビアは、サージスフィア社が関与した20本近い論文を調査するという。改ざんの有無、あるいはサージスフィア社が保有していると主張するデータベースが実在しているかが今後の焦点となる。

 なぜ権威ある学術誌がずさんな論文を掲載してしまうのか。研究不正が表面化するたびに繰り返されてきた問いだが、いまだに決定的な防止策は存在しない。

 学術誌が論文の掲載を決める際のチェック機能の一つに査読(審査)がある。論文のテーマごとに実績ある複数の研究者が正体を隠してボランティアで行うことが多い。ただし査読者には意図的な不正を見抜くことは期待できない。論文が首尾一貫しているか、新規性があるかを確認するのが主な役割だからだ。

 しかし、ひとたび問題がある論文が発表されると、「クラウド査読」と例えられる集合知を生かした検証がウェブ上で始まる。STAP細胞事件(※1)などはその典型例だった。今回の事案でも研究者コミュニティーによって問題点があぶり出され、英紙ガーディアンなどの調査報道が後押しした結果、掲載から数週間で撤回に至った。この点では、今回もアカデミアやジャーナリズムによる浄化作用が発揮されたと評価することができる。

 問題は、今回の撤回論文がもたらした政治的な影響の大きさだ。

 ◇ トランプ批判に使われた「エビデンス」

 抗マラリア薬ヒドロキシクロロキンは、トランプ米大統領が新型ウイルスの治療に効果があると主張し、5月18日の記者会見で毎日服用していると明かして波紋を呼んだ。ヒドロキシクロロキンが新型ウイルスの予防や治療に有効であることを明確に示す研究成果はないが、トランプ氏は電話や手紙で肯定的な話を聞いたなどと説明していた。

 「新型ウイルスへの有効性が確認できなかった」とするランセット論文が4日後に発表されると、トランプ氏の主張を否定する成果だとして米国内外で大々的に報じられた。世界保健機関(WHO)や英国、フランスでは、安全上への懸念からヒドロキシクロロキンを使った臨床試験が一時的に中断されるなどの影響も広がった。

 筆頭著者のメフラ氏は論文発表後、メディアのインタビューで「新型ウイルス治療でヒドロキシクロロキンの使用は直ちにやめるべきだ」と主張。英スカイニュースに対しては「我々の研究の結果かどうかは知らないが、(トランプ)大統領はヒドロキシクロロキンの服用をやめたと聞いた」と誇らしげに語っていた。

 こうした言動を見る限り、メフラ氏は科学を軽視するトランプ氏の主張を正すことに意義を感じていたのではないか。しかし彼らが依拠した「エビデンス(科学的根拠)」もまたフェイクだったのは、実に皮肉な結果である。

 トランプ氏の主張を支持する研究はその後も発表されていない。ヒドロキシクロロキンを新型ウイルス治療薬の候補として臨床試験を行っていた英オックスフォード大は6月5日、新型ウイルスに対する効果は認められなかったとして臨床試験の打ち切りを発表した。

 一方、メフラ氏ら3人は撤回された2論文とは別に、抗寄生虫薬イベルメクチンが新型ウイルスの治療に有効とした研究成果を4月半ばに報告しており、査読前の論文ながら国際的に注目を集めた。イベルメクチンはノーベル医学生理学賞受賞者の大村智・北里大学特別栄誉教授が開発に貢献し、寄生虫が原因の熱帯感染症の特効薬としてアジアやアフリカで多くの人の命を救ってきた薬だ。

 米科学誌サイエンスによると、メフラ氏らの報告を受けて、ペルーでは新型ウイルスの治療指針にイベルメクチンが加えられたほか、ボリビアでも新型ウイルス治療薬として使用が認められ、無料配布も計画されたという。しかし、この研究でもサージスフィア社のデータが使われており、査読前の論文を公開するウェブ上のプラットフォームから告知なしに削除された。

 ◇ 拙速なワクチン開発への警鐘

 今回の事案は、新型ウイルスのワクチンと治療薬をめぐる過度な開発競争にも一石を投じている。

 とりわけ社会経済活動の正常化につながるワクチンは、米中を中心に莫大(ばくだい)な研究費が投じられ、政治が介入して前例のない速さで開発が進む。薬事承認のための治験は法律で厳しいデータ管理が求められ、改ざんなどの違反時に罰則があるため、不正に対する一定の抑止力がある。それでも専門家からは拙速な動きに懸念の声が上がる。研究公正に詳しい京都薬科大の田中智之教授は「医学の世界は(薬が作用する)メカニズムが分からなくても効果があれば良いという時代が長く続いてきた。そのため、今回のパンデミックのような緊急時には人体実験やむなしといった判断に傾きがちだ」と語る。

 日本でも安倍晋三首相が、国内企業が開発した抗インフルエンザ薬アビガンについて、新型ウイルスの治療薬として「5月中の承認」をめざすと明言。現在も治験は続いているが、結果が出ていない段階で国のトップが医薬品の承認時期を明示するのは異例だ。これに対し、日本医師会の有識者会議は5月中旬に発表した緊急提言で「有事だからエビデンスが不十分でも良い、ということには断じてならない」と指摘。過去の薬害事件などに言及した上で、「『科学』を軽視した判断は最終的に国民の健康にとって害悪となり、汚点として医学史に刻まれる」と警鐘を鳴らした。

 新型ウイルスをめぐる研究の緊急性・公益性は極めて高い。「打つ手がないときに何もしないことは非常に忍耐が必要になるが、一方で詐欺的な主張に惑わされる患者の不利益に目を向ける必要がある。緊急時であるからこそ、ワクチンや治療薬開発のステップを監視する独立した国際組織(レッドチーム)を結成するといった配慮が求められる」。田中教授は、今回の研究不正疑惑がもたらした教訓を重く受け止めるべきだと考えている。」




谷直樹

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by medical-law | 2020-06-21 20:25 | 医療

日本医師会,「医療を支える人材の養成・確保に関する要望書」提出

公益社団法人日本医師会 は,2020年6月16日,「医療を支える人材の養成・確保に関する要望書」を厚生労働大臣に提出しました.

1.看護師等学校養成所への遠隔授業の環境整備に関する補助
 新型コロナウイルスの感染拡大・長期化により、看護師等学校養成所においても休講や実習中止等を余儀なくされています。そのような中で、文部科学省では、令和2年度補正予算及び第二次補正予算で、「大学等における遠隔授業の環境構築の加速による学習機会の確保」として、遠隔授業を行うための機材整備等の補助事業が創設されました。しかしながら、対象となる専修学校は、学校法人または準学校法人立に限定されています。
 各地域医師会や医療機関では、医療人材の確保という社会的要請に応えるべく、助産師・看護師・准看護師学校養成所を運営していますが、学校法人立ではないため、同事業の補助を受けることができません。
 今後の感染第2波に備えるためにも、早急な遠隔授業の環境構築や学生への支援が必要であり、設置法人の差によって学生の学習に差が生じることのないよう、厚生労働省として、社団法人や医療機関立の看護師等学校養成所に対する同様の補助を実施していただくよう要望いたします。

2.学生支援緊急給付金の支給対象の拡大
 新型コロナウイルス感染症の影響により進学・修学をあきらめることのないよう「学生支援緊急給付金」が創設されましたが、専修学校については専門課程に通う学生に限定されています。准看護師学校養成所(高等課程)に通う学生も対象としていただきたく、厚生労働省からもご支援をお願いいたします。

3.労災保険の上乗せ補償
 感染経路が不明な新型コロナウイルス感染患者が発生している状況においても通常の診療体制を確保するため、医師、看護職員、介護従事者等の補償が必要と考えます。業務従事中に新型コロナウイルスに感染した場合に、労災保険では給付されない収入を補償する制度(保険)に関して、費用の補助を要望いたします。

4.医療関連サービス事業者への支援
 医療関連サービス事業者も、医療従事者と同様に国民医療のために不断の努力を続けています。医療関連サービス事業の従事者が、安全に業務を提供できるよう、個人防護具や消毒液等の配備や補償等の支援を要望いたします。」


ワシントン大学保健指標評価研究所(IHME)がアメリカでは新型コロナ感染の第2波が8月第4週から始まり10月1日までの死者数は累計で16万9890人に達するとの予測を6月11日に発表したことが伝えられています.
日本では下水に含まれる新型コロナウイルスの量から第2波を予測する研究が行われているそうです.
日本の専門家会議は第2波の時期について明言していませんが,低い抗体陽性率からすると第2波は必至とみられています.
医療体制を第2波に備えるものにする必要があるでしょう.


谷直樹

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by medical-law | 2020-06-19 23:04 | 医療

厚労省,新型コロナウイルス抗体率が低いことを発表

NHK「新型コロナ抗体保有割合 東京0.1% 大半が抗体保有せず 厚労省」(2020年6月16日)は次のとおり報じました.

「新型コロナウイルスに感染したことがあるかを調べる抗体検査について、厚生労働省が3都府県でおよそ8000人を対象に行ったところ、抗体を保有している人の割合は東京で0.1%などとなりました。厚生労働省は、大半の人が抗体を保有していないことが明らかになったとしています。一方、抗体によって2回目の感染を防げるかはわかっていないということです。
抗体検査は、ウイルスなどに感染すると体内でつくられる「抗体」と呼ばれるたんぱく質が血液中にあるかを分析し、過去に感染したことがあるかどうかを調べます。

厚生労働省は、今月1日から7日にかけて人口が一定規模ある地域のうち、10万人当たりの感染者数が最も多い東京と大阪、最も少ない宮城の3都府県で、無作為抽出した20歳以上の男女合わせて7950人を対象に、新型コロナウイルスの抗体検査を実施しました。

その結果、抗体を保有している人の割合は、東京で0.1%、大阪で0.17%、宮城で0.03%だったと16日発表しました。

これまでに確認されていた、感染者数が人口に占める割合は先月末時点で、東京で0.038%、大阪で0.02%、宮城で0.004%で、これと比べると抗体を保有する人の割合は高いものの、厚生労働省は大半の人が抗体を保有していないことが明らかになったとしています。

一方、新型コロナウイルスの抗体が、体内でどれくらいの期間持続するかや、2回目の感染を防げるのかなど、詳しい性質は現時点ではわかっていないということです。
抗体検査の詳細内容
今回の抗体検査は、日本国内で過去に新型コロナウイルスに感染した人の割合を推定するため、厚生労働省が今月1日から7日にかけて行いました。

実施する地域については、100万人以上の都市がある人口が200万人以上の都道府県のうち、人口10万人当たりの累積の感染者数が多い東京と大阪、また、最も少ない宮城の3都府県が選ばれました。

対象者は無作為に抽出された20歳以上の男女7950人で、東京では1971人、大阪で2970人、宮城で3009人が、それぞれ検査を受けました。

海外企業のロシュ社とアボット社が製造する2種類の試薬を使った検査で、いずれも陽性となった場合に「陽性」=「抗体を保有している」としました。

その結果、東京は1971人のうち2人、大阪は2970人のうち5人、宮城は3009人のうち1人が陽性と確認され、抗体保有率はそれぞれ、東京が0.1%、大阪が0.17%、宮城が0.03%となりました。

一方、今回の抗体検査では、2種類の試薬のほか、別の海外企業のモコバイオ社のキットを使った検査も行われました。

キットがアメリカ食品医薬品局への申請中であることから、これを使った検査は参考値とされていますが、東京が21人で1.07%、大阪が37人で1.25%、宮城が36人で1.2%の陽性が確認されました。

「海外との単純比較は難しい」厚労省

今回の検査で得られた抗体を保有している人の割合について厚生労働省は、検査の方法や対象者の選び方が異なるため、海外の数値との単純な比較は難しいとしています。

厚生労働省は今回、判定をより正確に行うため2種類の検査試薬を用いて、ともに陽性となった場合に限って「陽性」=「抗体を保有している」としましたが、海外の調査では、1種類の検査で判断しているケースもあるということです。

また、検査対象については、無作為抽出して選んだ一般市民を対象に行いましたが、海外の調査では医療従事者など、対象の範囲を狭めているケースもあるということです。

「東京0.1%は妥当な結果」東京都医師会

厚生労働省が行った、新型コロナウイルスに感染したことがあるかを調べる抗体検査で、抗体を保有している人の割合が東京都で0.1%となったことについて、東京都医師会の角田徹副会長は「今回の検査は相当精密で、信用できると考えている。0.1%という結果は、人口に対する、これまでに確認された感染者数などから判断すると妥当な結果だと言える」と述べました。

そのうえで、今回の結果から分かったことについては「新型コロナウイルスの感染の形態は、インフルエンザウイルスのように普通の生活の中で、たとえば満員電車に乗っているだけで次々にうつるものではないと考えられる。感染の形態はある程度、限定されるので、過度に恐れる必要はなく、3密を避けるなどすれば予防できるとみている」と説明しました。

一方で「今回の結果は、ほとんどの人はウイルスに感染していなかったことを示すもので、ワクチンができるまでは多くの人に感染する可能性が残っているとも言える。第2波は普通の生活に戻ると必ず来るので、一人一人が引き続き、感染しないための行動をとることが重要だ」と話しました。

「99%以上が未感染 対策継続の必要」専門家

厚生労働省が行った新型コロナウイルスに感染したことがあるかを調べる抗体検査について、日本感染症学会の理事長で、東邦大学の舘田一博教授は「抗体を保有している人の割合が東京で0.1%というと、単純に人口に当てはめて1万4000人程度で、実際に感染が確認された人数よりは多いが、予想していたよりも少ないと感じる。感染が拡大しないか、あれだけ危ぶまれていたことを考えると、うまく感染拡大を抑え込めていたと考えることができる」と話しています。

そのうえで「一方で、まだ99%以上の人が感染していないということは今後、流行の第2波や第3波が来た場合、第1波と同様に感染が広がっていくリスクがあると考えねばならず、いわゆる『3密』の回避やマスク着用の徹底など、対策を継続する必要がある」と指摘しています。

また、抗体の保有率が10%を超えたという地域もある海外との比較については「海外と比べても抗体の保有率は明らかに低く、マスクを着用して飛まつの飛散を防いだり、手洗いを頻繁に行ったりするなど、日本人ならではの文化や習慣が影響している可能性がある。まだ明確なことは分からないが、感染拡大を考えるうえで重要なポイントで、今後、検証が必要だ」と指摘しています。

一方、東京都で16日、新たに27人の感染が確認されたことについては「きのう、おとといより人数は少ないが、感染者数が、あすは50人に、あさっては100人にと増えていっても、おかしくはない状況だ。一日一日の感染者数の変化にとらわれずに、長いスパンで感染対策を継続することが大切だ」と話しています。
米NY州では12.3%
新型コロナウイルスに感染したことがあるかどうかを調べる抗体検査は、世界各国で行われています。

このうち、感染者数、死者数ともに最も多いアメリカでは、東部ニューヨーク州で、先月2日までの2週間に1万5000人を対象に抗体検査を実施し、12.3%の人に抗体が確認されたということです。

ヨーロッパでは、外出制限などの厳しい措置をとっていないスウェーデンで、公衆衛生局が8週間にわたる抗体検査を実施しています。

このうち、4月下旬の1週間に採取した合わせて1104件のサンプルを分析したところ、抗体を保有している割合は首都ストックホルムで7.3%だったということです。

また、イギリスの国家統計局によりますと、イングランドでは、4月26日から先月24日までの1か月間で885人の抗体検査を実施し、6.78%に抗体があると確認されたということです。」

感染していない人が多かったということです.
これからも感染を防ぐことができるのかが問題です.

谷直樹

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by medical-law | 2020-06-17 00:45 | 医療

民医連,医療崩壊を回避し、新型コロナウイルス感染症の次なる波に備えるために、全ての医療機関に対し、減収額に応じた緊急財政支援を求める要請書

民医連は,2020年6月9日,「医療崩壊を回避し、新型コロナウイルス感染症の次なる波に備えるために、全ての医療機関に対し、減収額に応じた緊急財政支援を求める要請書」を発表しました.

「今般の新型コロナウイルス感染症に対する貴職のご尽力に敬意を表します。
 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、全国の医療機関では大幅な減収が4月以降続いており、医療機関の経営は深刻な事態を迎えています。多くの医療機関で経営の存続が危ぶまれ、新型コロナウイルス感染症の「次なる波」を前に「経営破綻による医療崩壊」が迫っています。しかも、この経営危機は、一般診療の患者減や感染防御のための費用増など、新型コロナウイルス感染症の対応をする特定の医療機関に限定されたものではなく、全国の医療機関にもたらしています。
 しかし、第二次補正予算案は、わずか365億円にとどまり、その中身は新たに医療機関に借金を負わせるものです。新型コロナウイルス感染症に伴う減収への対策はまったくありません。医療従事者への慰労金給付は反対するものではありませんが、給付対象も限定的であり、そもそも医療従事者の職場が失われては本末転倒です。仮に医療機関が倒産を免れたとしても、このままでは新型コロナウイルス感染症との闘いの最前線で奮闘してきた、医療労働者の処遇が下がることになりかねません。
 経営破綻による医療崩壊を回避し、国民のいのちを守るために。そして、次の感染の波に備えるために以下、緊急に要請します。



1. 新型コロナウイルス感染症に伴い、減収した全ての医療機関に対し、減収額に応じた支援金を第二次補正予算に盛り込むこと。
2. 支援金を支給した以降は、全ての医療機関に対し、診療報酬の引き上げなどにより、新型コロナウイルス感染症に伴う減収や費用増への財政補償を行うこと。」


第2次補正予算は「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金」に2兆2370億円をあてています.これで足りるわけがないのは明らかです.他方,予備費は10兆円です.政府は何を考えているのでしょうか.
医療機関の減収分の補填は必要です.民医連の提案は,1,2ともそのとおりです.

なお,感染を警戒し受診控えが起きていることで,医療機関の経営が苦しくなっていると同時に,患者にも悪い影響がでていろと考えられます.検査を先送りにしたり,診療が必要な疾患についても受診がなされなかったりしている可能性もあります.医療機関の感染予防体制を支援することで,適正受診ができるようにすることも必要でしょう.

【追記】
第2次補正予算案は,反対したのは日本共産党だけで,衆議院を通過しました.

谷直樹

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by medical-law | 2020-06-10 11:51 | 医療

新型コロナ関連の海外論文2点撤回

忽那賢志医師が「新型コロナ 英文誌での論文撤回 ここから私たちが学ぶべきこと」を書いています.
NEJMに掲載された,新型コロナと心血管疾患や薬剤との関係を検討した臨床研究とLancetに掲載された,クロロキン,ヒドロキシクロロキンによる新型コロナに対する治療に関する観察研究が取り消されたそうです.いずれの論文もサージスフィアが関与しています.
忽那賢志医師は「メジャージャーナルと言えども新型コロナ関連の論文は査読が不十分である可能性があり、結果をそのまま受け取るのではなく、これまで以上に批判的吟味が求められると言えるでしょう。」と述べています.
権威ある雑誌に掲載された論文でも信用することができないとすると,結構大変なことです

谷直樹

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by medical-law | 2020-06-06 22:28 | 医療

塩野義製薬,新型コロナウイルスIgG/IgM抗体検出キットの研究用試薬発売

塩野義製薬は,マイクロブラッドサイエンスと業務提携し,6月3日,新型コロナウイルス感染の有無を10分で判定できる抗体検査キットを発売したとのことです.
診断ではなく、感染者数の調査などの使用を想定しています.
国産のほうが安心ですね.


おりしも,プロ野球選手の新型コロナウイルス感染確認が発表されました.
抗体検査を実施した結果4人に新型コロナウイルスの感染歴を示すIgG抗体が確認され,さらにPCR検査を実施したところ2人が陽性と確認されたとのことです.

日経メディカル「抗体定性検査、陽性者の9割が定量検査で陰性に」(2020年6月3日)は次のとおり伝えています.

「東京大学先端科学研究センターなどのメンバーからなる新型コロナウイルス抗体検査機利用者協議会の研究グループは5月31日、680人の医療・介護従事者を対象に行った新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の抗体検査の結果を発表した。680人のうち51人が定性検査の簡易検査キットでは陽性だったが、このうち定量検査で陽性と判断されたのは6人(全体の0.88%)であり、定性検査で陽性判定された人の約9割が定量検査では陰性となった。同グループは、疫学調査としての抗体検査では、定量検査を行うべきとの見解を示している。

 血液中のIgG抗体やIgM抗体を検出する抗体検査には、イムノクロマト法による簡易検査キットを用いて陽性・陰性を判定する定性検査と、化学発光による自動測定を行う自動化血液検査機を使用し、定量的に抗体価を測定する精密検査(定量検査)がある。同協議会では、感染既往歴の診断として、IgG抗体価が10AU/mL以上で陽性、5AU/mL以上~10AU/mL未満では要経過観察、5AU/mL未満で陰性とする基準を示しており、本研究でもその基準を用いている。

 同研究グループは、ひらた中央病院(福島県平田村)に勤務する医療・介護従事者680人に対して、IgG抗体の定量検査を実施。その結果、0.88%に当たる6人が陽性だった。同院では院内感染は起こっておらず、有症状者やPCR検査での陽性者はいなかったが、既に行われていた抗体定性検査で680人中51人が陽性と判定されていた。定量検査で陽性と判定された6人は、いずれも定性検査でも陽性だった。

 同研究グループは5月に東京で500人を対象とした抗体定量検査を実施しており、その際には3人(0.6%)が陽性と判定されていた。新型コロナウイルス抗体検査機利用者協議会のアドバイザー会議代表を務める児玉龍彦氏(東京大学先端科学技術研究センター名誉教授)は「サンプル数は限られているものの、福島と東京での調査でほぼ一貫した結果が得られた」としている。

「疫学調査には定量検査を」

「定性検査を疫学調査に用いるのは望ましくない」と語る東京大の児玉龍彦氏。

 抗体定性検査については現在、多数の簡易検査キットが存在するが、今回どのキットが使用されたかは明らかにされていない。定性検査で陽性だった人の多くが定量検査で陰性となった今回の結果を受けて、児玉氏は「抗体検査は感度が高く、定性検査では抗体価が低くてもノイズの影響で陽性と判定される場合がある。ノイズはキットによっても異なり、定性検査を疫学調査に用いるのは望ましくない」と指摘する。

 大規模集団に対する既感染率の評価を行う際には、「検診時の残余血清などを活用して定量検査を実施していくべき」と児玉氏。ただし、抗体検査は定性・定量検査とも感度が高いことを踏まえ、「診断時に定性検査を迅速に行った上で、陽性者に対して追加でPCR検査を行うといった使用法は考えられる」としている。

 なお、同協議会では、感染既往歴の診断において、IgG抗体価10AU/mL以上を陽性としており、IgMは単体では診断に使用していない。ただし、「IgG抗体価が高い人に対して、感染の状態を推定する補助的手段としてIgMが活用できる」と児玉氏。具体的には、IgGが陽性(10AU/mL以上)かつIgM抗体価が10AU/mL以上の場合、その時点でも感染している可能性があり、引き続き注意深く観察が必要としている。一方、IgGが陽性でもIgM抗体価が10AU/mL未満で、2週間以内の症状がなければ、既感染と推定できる。」

谷直樹

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by medical-law | 2020-06-03 21:19 | 医療

COVID-19と胎盤機能異常

時事通信「無事出産でも胎盤に異常 妊娠中の新型コロナ感染で 米大学」(2020年5月26日) は,次のとおり報じました.

「新型コロナウイルスに感染したものの、健康な赤ちゃんを無事出産した母親の胎盤を調べたところ、異常が見つかる例があったと、米ノースウエスタン大の研究チームが26日までに発表した。

 感染患者では血管に血栓が生じるケースが注目されており、胎盤でも胎児との間の血流に障害が生じていたとみられる。

 研究チームは、胎盤の機能には余裕があり、少し低下した程度では影響がなかったとの見方を示す一方で、感染した妊婦については胎児への酸素供給や成長ペースを注意深く観察すべきだと指摘している。論文は米医学誌「アメリカン・ジャーナル・オブ・クリニカル・パソロジー」電子版に掲載された。

 胎盤に異常が見つかったのは、シカゴにある同大付属病院で出産した15人の母親(23~41歳)。1人は妊娠34週の早産だったが、残り14人は37~40週で出産。赤ちゃんはPCR検査で全員陰性だった。」 



Placental Pathology in COVID-19

Abstract 

Objectives

To describe histopathologic findings in the placentas of women with coronavirus disease 2019 (COVID-19) during pregnancy.
Methods

Pregnant women with COVID-19 delivering between March 18, 2020, and May 5, 2020, were identified. Placentas were examined and compared to historical controls and women with placental evaluation for a history of melanoma.

Results

Sixteen placentas from patients with severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 (SARS-CoV-2) were examined (15 with live birth in the third trimester, 1 delivered in the second trimester after intrauterine fetal demise). Compared to controls, third trimester placentas were significantly more likely to show at least one feature of maternal vascular malperfusion (MVM), particularly abnormal or injured maternal vessels, and intervillous thrombi. Rates of acute and chronic inflammation were not increased.

The placenta from the patient with intrauterine fetal demise showed villous edema and a retroplacental hematoma.

Conclusions

Relative to controls, COVID-19 placentas show increased prevalence of decidual arteriopathy and other features of MVM, a pattern of placental injury reflecting abnormalities in oxygenation within the intervillous space associated with adverse perinatal outcomes. Only 1 COVID-19 patient was hypertensive despite the association of MVM with hypertensive disorders and preeclampsia. These changes may reflect a systemic inflammatory or hypercoagulable state influencing placental physiology.


COVID-19が全身性の炎症状態または凝固亢進状態をひき起こし,胎盤の生理機能に影響を与えている可能性が指摘できるということですね.

谷直樹

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by medical-law | 2020-05-27 07:24 | 医療