弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

カテゴリ:医療( 799 )

インフォームドコンセントの意味

インフォームドコンセントについて,未だに臨床医療の実践の中では正しく理解されていないことがあるように思います.

医療行為の最終的判断主体は患者です.つまり,患者自身の価値判断により医療行為が行われるのです.インフォームドコンセントはそのために必要不可欠です.

医療者は,患者に病態,診断についての情報,選択可能な検査,治療の情報,さらにその治療の見通しについての情報を提供します.
患者は,専門的情報を与えられただけで,ただちにその専門的な情報を理解し判断することができませんので,平易な言葉で情報を提供することが必要ですし,情報についての解説も必要です.一方的な情報提供ではなく,患者と医師とが十分コミュニケ-ションをとった情報提供が必要とされます.
治療方法(メニュー)を提示し,お好きなものをお選び下さい,でも選択できる患者もいますが,そうではない患者も多数います.利害得失を示すことが求められています.
そして,医療者には,提供した情報を患者が正確に理解したことを確認することも求められています.
さらに,「情報提供」と「判断」は密接な関係にありますので,医療者は,患者の判断の過程にも関与します.医療行為の最終的判断主体が患者であることは,医療者が判断の過程に関与することを否定するものではありません.「最終的」という言葉は,医療者も自身の判断を示すことを当然の前提としています。医療者と患者が意見を交わし,情報と判断を共有することになります.
インフォームドコンセントは「説明と同意」ではありません.

木村理人氏は,「人間が、専門家と非専門家とを問わず、平等な関係に立ち、相互に持つ情報と決断と方策を共有することが、バイオエシックスの公共政策づくりとして極めて重要なこととなる」と述べています.

また,インフォームドコンセントは単なる手続きと誤解されがちですが,インフォームドコンセントによって悪い結果が起きることを防止できる場合も少なくありません.一般に「療養指導義務としての説明義務」(医師法23条)が認められています.最高裁平成7年5月30日判決は,退院に際し「黄疸の増強や哺乳力の減退などの症状が現れたときは速やかに医師の診察を受けるよう指導すべき注意義務」を認め,「退院時における被上告人の適切な説明、指導がなかったことが上告人A2らの認識、判断を誤らせ、結果として受診の時期を遅らせて交換輸血の時機を失わせたものというべきである。」と認定しています.

谷直樹

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by medical-law | 2018-11-11 11:01 | 医療

12 月1日シンポジウム「患者の権利侵害の予防と救済に向けて=医療基本法法制化の実現をめざし みんなで動こう!」

日時:12 月1日(土)/2018年 ➤ 13時30分〜16時30分 (13時開場)
場所: 明治大学駿河台キャンパス 研究棟2階9会議室 (東京都千代田区神田駿河台1−1)
主催: 患者の権利法をつくる会
e-mail info@kenriho.org TEL 092-641-2150 FAX 092-641-5707
〒812-0054 福岡市東区馬出1-10-2 メディカルセンタービル 九大病院前6階
共催:明治大学法務研究科医事法センター

【基調報告】
●小林洋二(患者の権利法をつくる会事務局長:弁護士)

【各パネリストの報告】
●永井裕之さん(医療事故被害者遺族・医療の良心を守る市民の会代表)
  ●藤崎陸安さん(全国ハンセン病入所者協議会事務局長)
  ●浅倉美津子さん(薬害肝炎全国原告団代表)
  ●前田哲兵さん(優生保護法被害東京弁護団:弁護士)
  ●身体拘束事件原告の方(匿名)・三枝恵真さん(弁護士)

【パネルディスカッション】
【会場との質疑応答】
【総括】
●鈴木利廣(弁護士・明治大学学長特任補佐)

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by medical-law | 2018-11-11 10:00 | 医療

リスクマネジメントとクオリティマネジメント

医療安全・医療の質に関連し,以前は「リスクマネージャー」「リスクマネジメント」という言葉を聞きましたが,最近は,「クオリティマネージャー」「クオリティマネジメント」という言葉を聞くことが多くなりました.

表面的な(その場しのぎの)リスクマネジメントは,経済的損失を減らすことに目を奪われ,患者の安全を損ない,医療の質を低下させることがあります.今は,そのような目先のリスクマネジメント,医療裁判を減らすことを目的とするリスクマネジメントは行われていません.

今のリスクマネジメントは,医療に内在する不可避なリスクを管理し,いかに患者の安全を確保すること(医療安全管理)をめざします.ただ,ルール,マニュアル策定に重点がおかれてしまうこともあり得ます.医療事故のリスクマネジメントは,医療事故には類型があることから,事故予防対策は立てやすい反面,その対策遵守は難しいものです.毎年新人が入ってきて,人が移動する医療現場では,策定したルール,マニュアルを遵守し続けることは本当に大変です.また,リスクの高い医療に手を出さないのが最も優れたリスクマネジメントとすれば,ときに医療の萎縮をもたらしかねません.

今,求められているリスクマネジメントは,医療に内在する不可避なリスクを管理し患者の安全を確保するのと同時に,医療の質を向上させることをめざすことです.高コストになる可能性はありますが,エンパワーメントにより,患者の安全と医療の質の向上をもたらすことが期待できます.策定したルール,マニュアルを遵守することの意味,必要性を共有することで,実効的なリスク管理を実現できる筈です.

他方,「クオリティマネジメント」は,医療の質を向上させることをめざすことのみならず,当然ですが,医療に内在する不可避なリスクを管理することも含みます.
そうすると,「リスクマネジメント」も「クオリティマネジメント」も内実に大差がないことになります.ただ,「リスク」より「クオリティ」のほうが,前向きで良い印象をあたえるため,最近「クオリティマネジメント」「クオリティマネージャー」という言葉をよく聞くようになったのではないか,と思います.


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by medical-law | 2018-11-08 21:56 | 医療

医療基本法,鈴木利廣弁護士・平川俊夫医師が語る

毎日新聞「医療基本法 望む声 患者の権利法をつくる会常任世話人・鈴木利広弁護士、日本医師会常任理事・平川俊夫医師に聞く」(2018年9月12日)で, 鈴木利廣弁護士・平川俊夫医師が医療基本法について語っています.




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by medical-law | 2018-09-14 08:51 | 医療

東京医大不正入試ホットライン3時間で55件

赤旗「東京医大不正入試 成績開示、受験料返せ 弁護士ら相談 電話鳴りやまず」(2018年2月27日)は次のとおり報じました.

「東京医科大学が医学部一般入試で女性受験者などの点数を操作し、合格者数を抑えていた問題で、有志の弁護士らによる「医学部入試における女性差別対策弁護団」は25日、電話窓口「医学部入試における女性差別のための緊急ホットライン」を行いました。

 窓口が始まってすぐ、同大を受験した人や、その家族からの電話が鳴りやまず、8人の弁護士らは3時間の受付時間内に55件の相談に応じました。

 最も多いのは成績の開示や受験料の返還を求めるもので、「(不合格は)自分が悪かったと諦めていた」「知っていれば受けなかった」など電話口で悔しさや憤りを訴える声もありました。

 弁護士らは受験者の要望を聞きとり、個別の面談を設けるなどの対応をしました。
弁護団の折井純弁護士は「予想以上に多くの相談があった」と話し、「多くの人が、自分がなぜ落ちたかを知りたいと同時に、医学界や社会全体に問題意識を持っている」と反響の背景を語りました。

 同弁護団事務局長の山崎新(あらた)弁護士は「自分が被害者か分からないとの相談もある。匿名でもかまわないので、まず相談を。引き続きメールなどで相談を受け付ける」と話しました。」



私は弁護団に加わっていませんが,知り合いの弁護士が弁護団に入っています.
試験の成績だけで医師の優秀さが決めるわけはないとは言っても,医学部入試の不正は医師・医療の質に影響します.
患者は,優秀な女性医師とそうではない男性医師がいれば,優秀な女性医師に診てもらいたいと思うでしょう.
北欧東欧では女性医師のほうが多いのですが,格別問題は生じていません.

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by medical-law | 2018-08-27 07:42 | 医療

公立の特別支援学校に在籍する医療的ケアが必要な子1.4倍に増加し,文科省看護師300人増要求(報道)

共同通信「医療ケア児支援で看護師増 文科省、1800人要求(2018/8/24)は,次のとおり報じました.

「文部科学省は24日、学校に通う重い障害のある子どもの増加を踏まえ、学校生活で必要な医療的ケアを担う看護師を300人増やして1800人配置することを決めた。他の特別支援教育の関連政策とも合わせ、2019年度予算の概算要求に28億円を盛り込む。
 文科省によると、公立の特別支援学校に在籍する医療的ケアが必要な子どもは06年度に5901人だったが、17年度は約1.4倍に増加した。
 同省は専門職である看護師の配置を充実させることで、付き添う保護者の介助負担の軽減にもつなげたい考えだ。
 具体的には、自治体や学校法人が看護師を学校に配置する際、費用の3分の1を補助。看護師が配置先から幼稚園や高校などを巡回することも認める。
 要求には、発達障害などの子どもの支援が進学や就労のタイミングで途切れないよう、関係機関で情報を適切に引き継ぐ仕組み構築に向けた費用補助も含めた。 障害で通常の教科書の利用が困難な子ども向けに、教科書の文字をパソコン上で拡大したり、音声で聞いたりできる教材の作成や普及も推進する。」

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by medical-law | 2018-08-24 12:38 | 医療

薬害オンブズパースン会議,コクランレビューに対する批判的見解をコクランに送付

薬害オンブズパースン会議は,6月7日に公表したコクランレビューに対する批判的見解を英訳し,8月13日,コクランとその各部門の関係者に送付したとのことです.

HPVワクチンに関するコクラン・レビューに対する批判的見解



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by medical-law | 2018-08-13 23:54 | 医療

PMDA 医療安全情報 No.55「誤接続防止コネクタの導入について(神経麻酔分野)」

独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)は,2018年8月6日,PMDA 医療安全情報 No.55「誤接続防止コネクタの導入について(神経麻酔分野)」及び医療現場での切替え業務のチェックリストの例を公開しました.

早ければ本年秋頃より新規格製品の準備が整い次第販売が開始され,旧規格製品の出荷は2020年2月末に終了するそうです.
平成30年8月6非付け「厚生労働省医薬・生活衛生局医薬安全対策課事務連絡」参照

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by medical-law | 2018-08-06 22:18 | 医療

A Randomized Trial of Epinephrine in Out-of-Hospital Cardiac Arrest

The New England Journal of Medicineに掲載されたA Randomized Trial of Epinephrine in Out-of-Hospital Cardiac Arrestが注目されています.

英国で院外心停止患者8014人を対象とし,非経口エピネフリン(アドレナリン)を投与した4015人の患者と生理食塩水を投与した3999人の患者の無作為比較試験の結果が報告されました.
エピネフリンの使用は、プラセボの使用よりも30日間の生存率が有意に高かったが、良好な神経学的転帰の割合に有意差はなかった.命は助けられるが,神経学的後遺症が残るという結論です.
心肺蘇生,除細動を迅速に開始することが何より重要と思います.

A Randomized Trial of Epinephrine in Out-of-Hospital Cardiac Arrest



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by medical-law | 2018-08-01 09:08 | 医療

厚労省通知,カルテ開示費用,請求内容によって費用が変わりうる場合や一律の料金設定は「不適切な場合がある」と注意

朝日新聞「カルテ、コピー1枚で5千円も 厚労省「不適切」と注意」(2018年7月24日)は次のとおり報じました.

「診療録(カルテ)のコピーを患者らが請求した際に求められる料金が、病院間で大きく違うことが厚生労働省の調査でわかった。対象となった全国の主要病院の2割近くは、白黒コピー1枚でも5千円以上かかる設定だった。厚労省は20日、自治体に通知を出し、実際の費用を積み上げて料金を決めるよう医療機関に周知するよう求めた。

 カルテや検査結果などの診療記録は、治療をめぐるトラブルがある場合や、自身の病状や治療を詳しく知りたい場合に請求される。2003年に厚労省が指針を作成。個人情報保護法は、本人が希望すれば病院や診療所は原則開示する義務があるとし、実費を勘案した合理的な範囲で手数料をとれると定めている。

 厚労省が昨年、高度な医療を提供する特定機能病院と大学病院の計87施設を調べると、白黒1枚の請求でも16%は手数料などで5千円以上になり、3千円台も15%あった。一方、67%は1千円未満で手数料がないか、低額だった。また、5%の病院は渡す際に医師の立ち会いが必須だった。そのために高額になるケースもある。

 通知では、請求内容によって費用が変わりうる点や一律の料金設定は「不適切な場合がある」と注意を求め、医師の立ち会いを必須とするのは「不適切」としている。(阿部彰芳)」


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by medical-law | 2018-07-24 17:58 | 医療