弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

カテゴリ:医療( 805 )

論文撤回で再生医療臨床研究中止

共同通信「心臓の再生医療、一時停止 論文撤回で東京・榊原記念病院」(2019年4月23日)は次のとおり報じました.

「患者の心臓組織の一部を体外で培養し、再び患者の体に戻して心筋梗塞の治療を行う再生医療の臨床研究を、榊原記念病院(東京)が一時停止したことが23日分かった。治療の効果を示した海外の論文が撤回されたことが原因。既に2人の患者にこの治療を行ったが、健康被害はないとしている。

 研究責任者で同病院の細田徹部長は、他にも治療効果の根拠となる論文はあるとして研究を続けたい意向を示しており、国の認定を受けた再生医療の審査委員会に継続可否の判断を仰ぐ。」


治療効果の根拠となる論文が他にあるなら示してもらいたいものです.

谷直樹

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by medical-law | 2019-04-24 09:04 | 医療

透析中止問題

プレジデントオンラインに沙鴎一歩氏の 「安倍政権は33万人の透析患者を殺すのか 福生病院の透析中止は納得できない」が掲載されています.
小見出しは次のとおりです.

患者の命を救うのが医師の使命のはずだ
福生病院が取材に応じたのは、毎日のスクープから21日後
ほかにも20人以上が人工透析中止で死亡していた
「サイコネフロロジー」を少しでも理解していたのか
透析患者を救うには、現時点では腎臓移植しかない
延命治療を無意味なものとして中止する「ACP」
透析中止は尊厳死やACPを都合よく判断した結果
捜査のメスを入れて白黒をはっきりさせるべき
「文書指導」で済む問題ではないはずだ
患者の意思を本当に尊重していたのだろうか


安倍政権と関連付けたタイトルはさておいて,一読をお薦めします.

谷直樹

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by medical-law | 2019-04-20 08:05 | 医療

国体優勝の病院管理課職員の過労死で賠償命令(報道)

共同通信「国体選手自殺で賠償命令、月100時間超える残業」(2019年4月19日)は次のとおり報じました.

「2012年に開かれた岐阜国体のライフル射撃で優勝した鈴田潤さん(当時26)が自殺したのは、勤務先の病院で長時間の残業をし、精神障害を患ったことが原因として、鈴田さんの両親が病院を運営するJA岐阜厚生連に約9000万円の損害賠償を求めた訴訟で、岐阜地裁は19日、約7100万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

訴状などによると、長崎市出身の鈴田さんは10年4月、国体での活躍を期待され厚生連に就職。13年4月から岐阜県瑞浪市の東濃厚生病院で勤務し、同年10~12月には月100時間を超える残業が続いた。

同年12月に「これ以上は耐えられそうにない」「生きてるとつらいだけ」などと記したメールをパソコンに残し行方不明となり、翌月、愛知県内のパーキングエリアに止めた車内で練炭自殺しているのが見つかった。

鈴田さんを巡っては、多治見労働基準監督署が17年9月、自殺は長時間労働が原因として労災認定した。

両親は「心身の健康を損なわないよう配慮する義務を怠り、国体強化選手としての立場も考慮しなかった」と主張、病院側は「長時間労働はあったが、他の職員と比べ度を超えたものではなかった」と反論していた。(共同)」


報道の件は私が担当したものではありません.
過労死は医師だけではありません.
病院側の反論にならない反論が問題の深刻さを示していると思います.

谷直樹

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by medical-law | 2019-04-20 07:44 | 医療

第3回妊産婦に対する保健・医療体制の在り方に関する検討会

2019年4月17日「第3回妊産婦に対する保健・医療体制の在り方に関する検討会」が開催されました.
2019 年3 月20 日~3 月29 日に行われた「妊産婦の医療や健康管理等に関する調査」の以下の結果概要が報告されました.

【対象】
回答者の年齢別の割合は、30~34歳が36.0%と最も多かった。また、回答者の80%が妊娠中であり、残りの20%が出産後であった。
約63%が「かかりつけ医はいない」と回答した。約52%が妊娠中に妊婦健診以外の目的で診療を受けていた。


【産婦人科受診】
妊娠中の産婦人科への受診回数(妊婦健診を除く)は平均約3回であった。妊娠中の産婦人科以外の診療科への受診回数は平均約3回であった。
妊娠中の産婦人科への受診理由は、妊娠に直接関わる症状(つわりなど)が最も多く、妊娠中の産婦人科以外の診療科への受診理由は、感染症状(熱、せき、たんなど)が最も多かった。


【産婦人科以外の受診】
産婦人科以外の受診先は、内科、歯科・歯科こうくう外科・耳鼻いんこう科の順であった。産婦人科以外の受診に当たり、約60%は妊娠前からのかかりつけを受診した。
回答者のうち、約15%は、産婦人科以外の診療科にかかろうとしたとき、他の医療機関への受診を勧められたことがあった。また、約18%は、産婦人科以外の診療科を受診した際に、産婦人科も受診するよう勧められたことがあった。
産婦人科以外の診療科を受診した回答者のうち58%は、産婦人科以外の医師から産婦人科の主治医に対する情報提供等はなかったと回答した。
産婦人科以外の診療科を受診した回答者のうち、約88%は、「気配りが不十分と感じた経験はない」と回答した。また、回答者全体のうち約81%が「説明文書を手渡して説明を行うことが大切」と考えている。
出産後1年以内の産婦人科以外の受診先は、内科、歯科・歯科こうくう外科、耳鼻いんこう科の順に多かった。受診理由としては、感染症状が最も多かった。
出産後1年以内の産婦人科以外の診療科の受診時に、「気配りが不十分と感じた経験はない」と回答した人は約85%であった。また、回答者全体のうち約76%が「説明文書を手渡して説明を行うこと」が大切と考えている。


【薬局】
薬局において、「気配りが不十分と感じた経験はない」と答えた回答者は、全体の約70%であった。また、薬局での対応について、「妊娠や授乳に気を配って薬の説明をすることが大切」と考える妊婦は全体の約62%であった。

【妊娠前の健康管理】
妊娠前の健康管理で気をつけていたこととしては、「葉酸を積極的に摂るようにする」が最多であった。妊娠中の健康管理で困ったこと等としては、「飲んでよい薬かどうか」が最多であった。

【妊娠中の保健指導】
妊娠中の保健指導について、全体として約50%程度の回答者が「指導を受けて満足している」と回答しており、その中で、「出産・産後の準備についての指導」が最も多かった。

【産後健診等】
産後健診の平均受診回数は、出産後1~2週の期間で0.8回、3~5週で1.0回、6週以降で0.5回であった。出産後の健康管理で困ったこと等については、「授乳に関すること」が最も多かった。
出産後の健康管理に関する支援として、サービスを受けて気に入ったと答えたサービスとしては、「産後健診」、「専門家による産婦訪問・新生児訪問」の順に多かった。



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by medical-law | 2019-04-18 02:17 | 医療

プレジデント2019年4月29日号,人工透析の中止事件は何が問題だったのか

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『プレジデント2019年4月29日号』93頁の村上敬氏の「人工透析の中止事件は何が問題だったのか」をお読みいただきたく思います.
私が医師による選択肢の提示について答えたものが記事になっています.
人工透析の中止は「死」を意味しますので,医師が死の選択肢を示すことのできるときは限られています.公立福生病院の件は,報道から判断する限り,死期が迫っていたわけではありませんので,尊厳死でも安楽死でもありません.抑うつ状態の患者に,本来必要な心のケアが行われず,死の選択肢を示した事案と考えます.

谷直樹

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by medical-law | 2019-04-06 14:26 | 医療

平成31年なのに

神奈川新聞「押印ミスで「平成30年」の領収書約2千枚 三浦市立病院」(2019年1月/30日)は,今月4日から22日に患者らに発行した領収書のうち,1番窓口が作成した2037枚が「平成30年」だった、と発表したとのことです.
ゴム印のスタンプを変えるのを失念したようです.
領収書の「年」は意外に見ていないのですね.

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by medical-law | 2019-02-01 04:04 | 医療

「医療基本法から始まる修復的正義のすすめ」

弁護士の鈴木利廣氏とジャーナリストの神保哲生氏と社会学者の宮台真司氏が議論する動画が公開されています.ダイジェスト版は誰でも,完全版はビデオニュースに会員登録すると,見ることができます.

鈴木氏は,現状は,患者と医師が対立し,ぞれぞれが正義を主張する「正義の取り合い」の関係にあるが,医療基本法の制定により,両者が互いに信頼し協力しながらより安全な医療を実現していく修復的正義の実現へと移行していくことを期待しています.
修復的正義とは,コミュニティを巻き込んだ対話の中から,被害者には補償と癒やしを,医師側には責任と贖罪意識を促し,社会復帰をサポートすることを目指すものです.
医師と患者とコミュニティの三者が一体となって,より効果的に医療の安全を促進できる可能性がある,と述べています.



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by medical-law | 2019-01-16 02:40 | 医療

インフォームドコンセントの意味

インフォームドコンセントについて,未だに臨床医療の実践の中では正しく理解されていないことがあるように思います.

医療行為の最終的判断主体は患者です.つまり,患者自身の価値判断により医療行為が行われるのです.インフォームドコンセントはそのために必要不可欠です.

医療者は,患者に病態,診断についての情報,選択可能な検査,治療の情報,さらにその治療の見通しについての情報を提供します.
患者は,専門的情報を与えられただけで,ただちにその専門的な情報を理解し判断することができませんので,平易な言葉で情報を提供することが必要ですし,情報についての解説も必要です.一方的な情報提供ではなく,患者と医師とが十分コミュニケ-ションをとった情報提供が必要とされます.
治療方法(メニュー)を提示し,お好きなものをお選び下さい,でも選択できる患者もいますが,そうではない患者も多数います.利害得失を示すことが求められています.
そして,医療者には,提供した情報を患者が正確に理解したことを確認することも求められています.
さらに,「情報提供」と「判断」は密接な関係にありますので,医療者は,患者の判断の過程にも関与します.医療行為の最終的判断主体が患者であることは,医療者が判断の過程に関与することを否定するものではありません.「最終的」という言葉は,医療者も自身の判断を示すことを当然の前提としています。医療者と患者が意見を交わし,情報と判断を共有することになります.
インフォームドコンセントは「説明と同意」ではありません.

木村理人氏は,「人間が、専門家と非専門家とを問わず、平等な関係に立ち、相互に持つ情報と決断と方策を共有することが、バイオエシックスの公共政策づくりとして極めて重要なこととなる」と述べています.

また,インフォームドコンセントは単なる手続きと誤解されがちですが,インフォームドコンセントによって悪い結果が起きることを防止できる場合も少なくありません.一般に「療養指導義務としての説明義務」(医師法23条)が認められています.最高裁平成7年5月30日判決は,退院に際し「黄疸の増強や哺乳力の減退などの症状が現れたときは速やかに医師の診察を受けるよう指導すべき注意義務」を認め,「退院時における被上告人の適切な説明、指導がなかったことが上告人A2らの認識、判断を誤らせ、結果として受診の時期を遅らせて交換輸血の時機を失わせたものというべきである。」と認定しています.

谷直樹

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by medical-law | 2018-11-11 11:01 | 医療

12 月1日シンポジウム「患者の権利侵害の予防と救済に向けて=医療基本法法制化の実現をめざし みんなで動こう!」

日時:12 月1日(土)/2018年 ➤ 13時30分〜16時30分 (13時開場)
場所: 明治大学駿河台キャンパス 研究棟2階9会議室 (東京都千代田区神田駿河台1−1)
主催: 患者の権利法をつくる会
e-mail info@kenriho.org TEL 092-641-2150 FAX 092-641-5707
〒812-0054 福岡市東区馬出1-10-2 メディカルセンタービル 九大病院前6階
共催:明治大学法務研究科医事法センター

【基調報告】
●小林洋二(患者の権利法をつくる会事務局長:弁護士)

【各パネリストの報告】
●永井裕之さん(医療事故被害者遺族・医療の良心を守る市民の会代表)
  ●藤崎陸安さん(全国ハンセン病入所者協議会事務局長)
  ●浅倉美津子さん(薬害肝炎全国原告団代表)
  ●前田哲兵さん(優生保護法被害東京弁護団:弁護士)
  ●身体拘束事件原告の方(匿名)・三枝恵真さん(弁護士)

【パネルディスカッション】
【会場との質疑応答】
【総括】
●鈴木利廣(弁護士・明治大学学長特任補佐)

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by medical-law | 2018-11-11 10:00 | 医療

リスクマネジメントとクオリティマネジメント

医療安全・医療の質に関連し,以前は「リスクマネージャー」「リスクマネジメント」という言葉を聞きましたが,最近は,「クオリティマネージャー」「クオリティマネジメント」という言葉を聞くことが多くなりました.

表面的な(その場しのぎの)リスクマネジメントは,経済的損失を減らすことに目を奪われ,患者の安全を損ない,医療の質を低下させることがあります.今は,そのような目先のリスクマネジメント,医療裁判を減らすことを目的とするリスクマネジメントは行われていません.

今のリスクマネジメントは,医療に内在する不可避なリスクを管理し,いかに患者の安全を確保すること(医療安全管理)をめざします.ただ,ルール,マニュアル策定に重点がおかれてしまうこともあり得ます.医療事故のリスクマネジメントは,医療事故には類型があることから,事故予防対策は立てやすい反面,その対策遵守は難しいものです.毎年新人が入ってきて,人が移動する医療現場では,策定したルール,マニュアルを遵守し続けることは本当に大変です.また,リスクの高い医療に手を出さないのが最も優れたリスクマネジメントとすれば,ときに医療の萎縮をもたらしかねません.

今,求められているリスクマネジメントは,医療に内在する不可避なリスクを管理し患者の安全を確保するのと同時に,医療の質を向上させることをめざすことです.高コストになる可能性はありますが,エンパワーメントにより,患者の安全と医療の質の向上をもたらすことが期待できます.策定したルール,マニュアルを遵守することの意味,必要性を共有することで,実効的なリスク管理を実現できる筈です.

他方,「クオリティマネジメント」は,医療の質を向上させることをめざすことのみならず,当然ですが,医療に内在する不可避なリスクを管理することも含みます.
そうすると,「リスクマネジメント」も「クオリティマネジメント」も内実に大差がないことになります.ただ,「リスク」より「クオリティ」のほうが,前向きで良い印象をあたえるため,最近「クオリティマネジメント」「クオリティマネージャー」という言葉をよく聞くようになったのではないか,と思います.


谷直樹

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by medical-law | 2018-11-08 21:56 | 医療