弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

カテゴリ:弁護士会( 97 )

公立学校教職員に君が代斉唱の際に起立・斉唱を強制する大阪府条例案提出に関する日弁連会長声明

b0206085_6374458.jpg公立学校教職員に君が代斉唱の際に起立・斉唱を強制する大阪府条例は,憲法違反である,と考えられます.

日弁連は,平成23年5月26日,「公立学校教職員に君が代斉唱の際に起立・斉唱を強制する大阪府条例案提出に関する会長声明」を発表しました.
以下のとおりです.

橋下徹大阪府知事が代表を務める「大阪維新の会」府議団は、本年5月25日、大阪府議会議長に対し、政令市を含む府内公立学校の入学式や卒業式などで君が代を斉唱する際、教職員に起立・斉唱を義務づける条例案を提出した。さらに、橋下府知事は、「国旗・国歌を否定するなら公務員を辞めればいい」と述べ、政令指定都市の教職員も含めて、起立・斉唱しない教職員について免職処分の基準を定める条例案を9月の府議会で審議する意向を示している。

地方自治体の首長が当該自治体の教職員に対し、免職を含む処分の制裁を公言して君が代斉唱時の起立・斉唱を求め、これを条例によって強制することはかつてない事態であり、思想・良心の自由等の基本的人権の保障に加え、教育の内容及び方法に対する公権力の介入は抑制的であるべきという憲法上の要請に違反するものとして、看過できない。

個人の内心の精神的活動は、外部に表出される行為と密接に関係しているものであり、自己の思想・良心に従って君が代斉唱時に起立を拒否する外部的行為は、当然、思想・良心の自由の保障対象となる。そして、君が代については、大日本帝国憲法下において天皇主権の象徴として用いられた歴史的経緯に照らし、現在においても君が代斉唱の際に起立すること自体が自らの思想・良心の自由に抵触し、抵抗があると考える国民が少なからず存在しており、こうした考え方も憲法19条の思想・良心に含まれるものとして憲法上の保護を受けるものと解されるから、国や地方自治体が、教職員に対し君が代を斉唱する際に起立・斉唱を強制することは、憲法の思想・良心の自由を侵害するものと言わざるを得ない。なお、地方公務員である教職員は、「全体の奉仕者」ではあるが、そのことが、公務員の職務の性質と無関係に、一律全面的に公務員の憲法上の権利を制限する根拠となるものではないことは言うまでもない。

また、国旗・国歌法制定時には、上記の過去の歴史に配慮して、国旗・国歌の義務づけや尊重規定を設けることは適当でない旨の政府答弁が国会でなされ、同法に国旗・国家の尊重を義務づける規定が盛り込まれなかった経緯がある。こうした立法経緯に照らせば、君が代斉唱時に起立を義務づける条例は、条例制定権を「法律の範囲内」とした憲法94条に反するものである。

さらに、教師と子どもとの間の直接の人格的接触を通じてその個性に応じて行わなければならないという教育の本質的要請に照らし(1976年5月21日旭川学力テスト事件最高裁大法廷判決)、子どもの学習権充足の見地からは、教育の具体的内容及び方法に関して、子どもの個性や成長・発達段階に応じた教師の創意や工夫が認められなければならない。したがって、子どもの学習権に対応するため、教員には、公権力によって特定の意見のみを教授することを強制されないという意味において教育の自由が保障されている。この趣旨は、教育行政の独立を明確に定めた教育基本法16条1項にも現れている。

ゆえに教員の思想・良心の自由及び教育の自由に対する強制は特に許されず、教育の内容及び方法に対する公権力の介入も抑制的でなければならない(当連合会2007年2月16日付け「公立の学校現場における『日の丸』・『君が代』の強制問題に関する意見書」、2010年3月18日付け「新しい学習指導要領の問題点に対する意見書」、2011年2月9日付け「『国旗・国歌』を強制する都教委通達を合憲とした東京高裁判決に対する会長声明」)。

当連合会は、上記観点に立って、大阪府議会に対し、提出された条例案が可決されることのないように求めるとともに、大阪府議会及び府知事に対して、府内公立学校の教育現場に介入して、教職員に対し君が代斉唱の際の起立・斉唱を含め国旗・国歌を強制することのないよう強く要請する。


弁護士は,人権を守り,人権のために戦う側にあるべきで,決して人権を侵害することがあってはいけないはずです.

大阪府警の巡査部長が,平成23年5月2日,ウガンダ国籍の男の頭を叩いたり耳を引ぱったりし「自分には叩く権利がある。お前には人権がない」などと述べたという事件が明るみになりました.
大阪高裁は,平成23年5月26日,大阪府警の巡査が,職務質問の際許容限度を超えた違法な行為を行ったことを認め,大阪府に約300万円の賠償を命じました.
このような大阪府警に人権を守らせることこそ,必要なことです.

弁護士である橋下知事が,人権を軽くみていることは,残念です.
ちなみに,橋下知事は,私と同期です.
残念です.

谷直樹
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by medical-law | 2011-05-27 06:38 | 弁護士会

第二東京弁護士会人権擁護委員会 

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4月から,第二東京弁護士会人権擁護委員会の委員になりました.
委員の顔ぶれをみると,21期の光石忠敬先生以下錚々たるメンバーです.
5日のニュースの深層『「東京電力会見は信用できるのか」に出演した日隅一雄先生も委員です,

人権擁護は弁護士の使命です.
「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。」(弁護士法1条1項)とされています.
基本的人権を擁護し社会正義を実現するために,弁護士になったわけですから,どんなに忙しくても,人権擁護のための活動を怠るわけにはいきません.

第二東京弁護士会のホームページには,次のとおり記載されています.

「人権擁護委員会では、刑務所内などから申し立てられる人権救済申立事件の処理を中心としながら、4つの研究部会において調査研究活動を行っています。
 (1)「報道・情報に関する部会」
   名誉毀損・プライバシー侵害等のメディア問題、表現の自由に関わる問題など
 (2)「民族的マイノリティの人権に関する部会」
   外国人研修生・技能実習生問題、入管制度問題及び民族差別問題など
 (3)「精神医療・高度先端医療に関する部会」
   尊厳死問題など
 (4)「死刑問題に関する部会」
   死刑問題の在り方
また、各研究部会では、それぞれ勉強会やシンポジウムの開催を企画しています。」

いずれも重要なことです.
さらに,受動喫煙による健康被害の問題も,人権問題としてとりあげてやっていきたいと思います.

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谷直樹
by medical-law | 2011-04-08 09:42 | 弁護士会

セカンドオピニオン

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東京は弁護士の数が多いからでしょうが,すでに他の弁護士に依頼している人,依頼していた人が相談にみえることもすくなくありません.

弁護士職務基本規程は,次のとおり定めています.

(名誉の尊重)
第七十条 弁護士は他の弁護士弁護士法人及び外国法事務弁護士(以下「弁護士等」という。)との関係において、相互に名誉と信義を重んじる。

(弁護士に対する不利益行為)
第七十一条 弁護士は、信義に反して他の弁護士等を不利益に陥れてはならない。

(他の事件への不当介入)
第七十二条弁護士は、他の弁護士等が受任している事件に不当に介入してはならない。


私は,事件についてのセカンドオピニオンはできるだけ丁寧に述べますが,その弁護士の職務について論評することはいたしません.
多くは依頼者と弁護士の相性,意思疎通の問題ではないかと思います.
ただ,実際にその弁護士が作成した書面をみせていただき,しばしば愕然とすることもあります.明らかに誤っている書面を前に,何と言っていいのか・・・.
同業者をかばって相談者に不利益,損害を与えるわけにはいきませんので,言い方に気をつけながら,指摘すべきことは指摘するようにしていますが,複雑な気持ちです.

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谷直樹
by medical-law | 2011-02-21 23:06 | 弁護士会

専門弁護士とは

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写真は,軽井沢です.

私は,取り扱い事件に占める医療事件の比率は高いのですが,医療事件100%になっても,「医療事件専門」という表示はできません.
専門表示ができないので,医療事件以外の依頼もきてしまいます.頼まれれば断れない性分なので,医療事件100%にはなりません.

「専門」というのは,本来,単に取り扱い事件を限定している,というだけの意味です.

ところが,専門表示について,日本弁護士連合会は,誤導のおそれがあり現状ではその表示を差し控えるのが望ましい,としています.
「誤導のおそれ」というのは,「専門」という言葉が「経験が豊富で能力が優れていること」を期待させるおそれがある,ということらしいのです.
もし,「経験が豊富で能力が優れていること」を「専門」とするなら,真に「経験が豊富で能力が優れていること」を認定する試験や評価等が必要です.
たとえば,TOEICのような専門弁護士試験を設けて,点数を表示すれば,依頼者の選択に役立つでしょう.
そのような試験や評価システムがない現状で「専門」と表示することは,望ましくないということなのです.

ところで,今日,離婚事件の取り扱い比率の高い弁護士と食事をしたのですが.未婚の人が結婚について尋ねたら「心配ありません,円満に離婚できますよ.」とおっしゃいました.


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by medical-law | 2010-11-24 22:18 | 弁護士会

反論のタイミング

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写真は,北海道庁の池です.

今は昔の話になりますが,司法修習生のとき,弁護修習(実務)は札幌協和法律事務所の伊藤誠一先生から丁寧に教えていただきました.
当時,札幌地裁には,北海道の炭鉱で働きじん肺にかかった患者と遺族が国・企業に損害賠償を求めた事件が係属していました.伊藤誠一先生はその北海道石炭じん肺訴訟弁護団の事務局長でした.原告への聴き取り,合宿などにも連れて行っていただきました.伊藤誠一先生は,他にも,多数の民事事件,刑事事件を担当していました.

或る民事事件の弁論準備のとき,照会結果がまだ裁判所に来ていないのでなんとも言えない段階なのですが,原告代理人の伊藤誠一先生は,○○と主張しました.私も伊藤誠一先生と一緒に現場を見ています.ところが,被告代理人の弁護士は.即座に,その時間帯ではないけれど自分も現場に行った,△△だった,と反論しました.(事案は若干修正して記載しています,)その後,伊藤誠一先生は,あのように即座に反論する弁護士はいい弁護士だ,と褒めちぎっていました.そこで,私は.即座に反論すること,と弁護士の心得を1つ学びました.

そのときの被告代理人が高橋智(さとる)先生です.
高橋智先生も患者側で医療事件を担当し.ブログ書いています.
ブログは,充実し,綺麗な写真が掲載されています.
もっと,広く読まれてよいブログと思います.

2010年10月3日には,
「裁判官が刑事訴訟法の要件を厳密に認定すれば、人質司法や調書裁判は無くせるはずです。日本の刑事司法はあまりに検察官寄りになっていたと言わざるを得ません。裁判官が変わらねば、刑事裁判は変わりません。
 ついでに言うなら、医療事故も同じです。裁判所があまりに医師に気を遣いすぎです。医療事故裁判は立証の壁が高すぎます。」
と書いています.
同意です.

高橋智先生が,昨日,日本ブログ村のブログランキング(弁護士の部・札幌情報の部)に登録しました.http://www.takahashi-law.com/news/2010/10/post-711.html
是非,高橋智先生のブロクも読んでください.



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by medical-law | 2010-10-25 10:01 | 弁護士会

『弁護士列伝』

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今日,弁護士ドットコムの「弁護士列伝」担当の学生記者さんのインタビューを受けました.
詳細は,いずれ掲載される弁護士ドットコムののHPをみてください.とりあえず,要旨を記します.

Q1 弁護士になろうと思ったきっかけ.
A1 高校生のときから人権に関心があり,人のためになる仕事をしたかったので.

Q2 学生時代,ゼミ活動.
A2 学生運動が盛んでロックアウトとなり,あまり授業は受けていません.中央大学正法会研究室に入りました.

Q3 勉強をする上で工夫したこと.
A3 合格の前の年は,教科書と定義集に絞り,定義・概念・制度趣旨を記憶しました.

Q4 司法試験勉強と実務.
A4 合格に必要ない勉強が実務に役立ちました.

Q5 司法修習時代の思い出.
A5 年齢,経験.進路の異なる人と親しくなりました.

Q6 最初に入所した事務所を選んだ理由.入所当時苦労したこと.
A6 クロロキン薬害事件,水俣事件などを手がけた山口紀洋弁護士の事務所でしたので入所しました.苦労したことはありません.

Q7 依頼者に特に気をつけていること.
A7 依頼者の話をよく聴き,依頼者の真意を理解すること.

Q8 休日の過ごし方.
A8 仕事.

Q9 弁護士として特に関心のある分野.
A9 医療過誤事件.

Q10 今後の弁護士業界の動向について.
A10 裕福な人以外の人が法曹になりにくい仕組になってしまったことはとても残念です.

Q11 弁護士に求められるもの.
A11 公正さ.患者,医師どちらからみても公正な結論をめざすこと.

Q12 一般市民へのメッセージ.
A12 患者と医師のコミュニケーションに努めてほしい.医療過誤かどうかは法律的問題なので自分で決めつけないで弁護士と相談してください.

Q13 法曹を目指す学生へのメッセージ.
A13 基本的な能力を身につけるため常に努力を惜しまないこと.

Q14 医療過誤事件を担当する理由.
A14 被害者は何も悪くないのに突然の災難に遭い,医学的に困難な立証を強いられる.その大変さを最初の2件で実感し,自分がやらねばと思いました.とことん調べるのが好きなので医療事件が自分に合っているとわかりました.



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by medical-law | 2010-10-20 19:37 | 弁護士会

弁護士にとって一番重要な能力とは?

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写真は,ハウステンボスです.

このお仕事を始めたばかりのころ,谷先生に,弁護士にとって一番重要な能力は何かと伺ったことがありました.
すると,谷先生は
「依頼者の話をきちんと聞くことです.」
と即答しました.

当時,学生だった私は,弁護士にとって一番重要なのは「相手方を言い負かす論理力」や「相手方の反論に負けない心の強さ」だと思っていて,谷先生からもそれに似た答えが返ってくると思っていたので,意外な答えに驚いたのを覚えています.

もちろん,論理力や心の強さも重要なのだとは思いますが,依頼者の方との信頼のうえに成り立つお仕事ですから,一番大切なのは依頼者の方を知り,理解しようとすることなのですね.

当時の私にとって,目からうろこなお話でした.

事務局H

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by medical-law | 2010-09-15 09:02 | 弁護士会