弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

カテゴリ:医療事故・医療裁判( 1342 )

医療安全情報「画像診断報告書の確認不足」と厚労省通知「画像診断報告書等の確認不足に対する医療安全対策の取組について」

公益財団法人日本医療機能評価機構医療事故防止事業部は,医療事故報告を分析し,月に1回医療安全情報をだしています.
医療安全情報に注意し,自院で事故が起きていなくても,起きうる事故については,対策をとることが必要と思います.

1 医療安全情報No.63
医療安全情報No.63(2012年2月)「画像診断報告書の確認不足」では,2008年1月1日~2011年 1 2 月31日お集計期間で3件の医療事故が報告されていました.
「画像検査を行った際、画像診断報告書を確認しなかったため、想定していなかった診断に気付かず、治療の遅れを生じた可能性のある事例が報告されています。と注意を喚起していました.

事例が発生した医療機関の取り組みは,次のとおりでした.
・主治医は、放射線科専門医の画像診断報告書を確認後、患者に画像検査の結果を説明する。
・放射線科専門医は、読影で検査の主目的以外の重大な所見を発見した場合、依頼した医師に注意喚起する。

総合評価部会の意見は,次のとおりでした.
・入院(特に退院直前)、外来を問わず、画像診断報告書が確認できる仕組みを医療機関内で構築する。

2 医療安全情報No.138
医療安全情報No.138 (2018年5月)「画像診断報告書の確認不足(第2報)」では,2015年1月1日~2018年3月31日の集計で37件の医療事故が報告されていました.
「画像を確認した後、画像診断報告書を確認しなかったため、検査目的以外の所見に気付かず、治療が遅れた事例が報告されています。」と注意を喚起していました.

事例が発生した医療機関の取り組みは,次のとおりでした.
・画像診断報告書を確認してから患者に説明する。
・画像診断報告書が未読の場合に気付ける仕組みを構築する。

総合評価部会の意見は,次のとおりでした.
・「画像検査~画像診断報告書の確認~患者への説明」の流れを整理し、業務工程を確立しましょう。

3 厚生労働省の通知
厚生労働省医政局総務課医療安全推進室は,令和元年12月11日,通知「画像診断報告書等の確認不足に対する医療安全対策の取組について」を発しました.
その内容は,次のとおりです.

「医療機関における画像診断報告書等の確認不足を防止するため、これまで、画像診断報告書等の確認不足に関する医療安全対策について」(平成29年11月10日付け医政局総務課医療安全推進室事務連絡)及び「画像診断報告書等の確認不足に関する医療安全対策について(再周知のお願い)」(平成30年6月14日付け医政局総務課医療安全推進室事務連絡)により注意喚起を図ってきたところです。
 しかし、その後も公益財団法人日本医療機能評価機構が実施する医療事故情報収集等事業において同種の事案報告が続いており、一般社団法人日本医療安全調査機構においても平成31年4月に医療事故の再発防止に向けた提言第8号「救急医療における画像診断に係る死亡事例の分析」が公表されました。
 こうした状況を踏まえ、今般、平成30年度厚生労働科学研究費補助金(地域医療基盤開発推進研究事業)による「医療安全に資する病院情報システムの機能を普及させるための施策に関する研究」において取りまとめられた研究報告書(別添1)より、今後、画像診断報告書等に記載された重要所見の見逃しを防止するために留意して頂きたい組織的な対応について、下記のとおり整理しました。なお、この組織的な対応については日本学術会議臨床医学委員会放射線・臨床検査分科会から令和元年9月に公表された「CT検査による画像診断情報の活用に向けた提言」(別添2)においても言及されております。また、医療機関において工夫されている取組についても、あわせて情報提供いたします。
 つきましては、貴管下の医療機関、関係団体等に周知いただくようお願いいたします。
                記

・ 報告書に記載された緊急度の高い所見や重要所見を受けて必要な対応がとられるためには、組織的な伝達体制や確認体制を構築することが推奨される。
・ 具体的には、診断結果の説明を担当する医師が重要所見を認知しやすくするための通知方法の工夫や報告書の未読・既読の管理、更には、その後適切に対応されたかを組織的に確認できる仕組みが構築されることが望ましい。


(参考)医療機関において工夫されている取組の紹介
・ 画像読影医が緊急度の高い所見を指摘した場合、検査依頼医に電話するとともに、報告書を検査依頼医が所属する診療科の責任者に送付する。
・ 患者自らが結果をいつ聞くことができるかを主治医に確認するように促す等、患者の参画を図る。
・ 画像診断や病理診断を専ら担当する医師が診断を行った場合、その診断結果が確実に患者へ伝わるよう、説明を担当する医師はその結果を丁寧にわかりやすく患者に説明し、その旨を診療録に記載する。


医師に画像診断報告書を見る,確認する,という注意義務があることは明らかで,それをしない医師に注意義務違反(過失)があることも明らかです.しかし,現実にそのような医師がいる以上,医療機関としての対策が必要です.
医療機関において,画像診断報告書の確認不足による医療事故が起きないようにシステムとして実効的な対策がとられることを強く願います.

谷直樹

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by medical-law | 2020-01-18 04:31 | 医療事故・医療裁判

岩手県知事の会見について


NHK「二戸病院医療ミス 知事が陳謝」(2020年1月16日)は次のとおり報じました.

「県立二戸病院でCT検査でガンの疑いが診断されたにもかかわらず、主治医が3度にわたって検査結果を見落とし、患者が死亡する医療事故があったことについて、達増知事は16日の記者会見で「ご家族の方々におわびを申し上げたい」と陳謝しました。

県立二戸病院では、平成27年に60代の男性患者がCT検査を受けた際、放射線科の医師が腎臓のガンが疑われると診断しましたが、主治医の呼吸器内科の医師が3度にわたって検査結果を見落としました。
男性はその後、ガンが転移し、平成29年1月に死亡しました。
県は先月、医療事故と認めた上で遺族に謝罪し、示談が成立しました。
この事故について、達増知事は16日の会見で、「示談が成立しているとはいえ、そもそもあってはならないことだ。改めてご家族の方々におわびを申し上げたい」と陳謝しました。
また、事故の公表が、男性が死亡してから3年たってから行われたことについて、「工夫の余地があったのかとも思うが、基本的には医療局の経営判断にゆだねられる。遺族との合意が大事なので、それに基づいた措置がとられたと理解している」と述べ、公表の方法に大きな問題はないとの認識を示しました。
一方で、遺族の弁護士は「他の医療事故と違って速やかに公表されず、はなはだ遺憾だと以前、県に伝えていた。示談するまで公表しないよう県に求めたことはない」と話しています。」


岩手放送「知事 二戸病院の医療事故で陳謝/岩手」(2020年1月16日)は次のとおり報じました.
「県立二戸病院で「がん」の発見を見落とし男性患者が死亡した医療事故について、達増知事は16日の定例会見で陳謝しました。会見では医療事故の公表のあり方が問われました。

県医療局は15日、今年度上半期に県立病院で5件の医療事故の報告があったと発表しました。そのうち二戸病院では、「腎細胞がん」の発見が遅れ60代の男性が死亡しています。

(達増知事)
「ご家族の方々に私からもお詫びを申し上げたいと思います」

達増知事はこのように述べ、医療事故について陳謝しました。県立病院での医療事故について、医療局は2004年度から患者や家族の同意が得られた場合に限り公表してきましたが、その方法は医療局や病院のホームページでの発表にとどまっています。達増知事は「ホームページでの公表は患者やその家族、遺族との合意の上での方法」としたうえで…。

(達増知事)
「様々な工夫の余地があるのかと思いますし、ここは基本的には医療局の経営の判断として、情報の発表の仕方については委ねられる部分だと考えます」

このように述べ、今後の公表のあり方について具体的な言及を避けました。」


 上記記事が報じているとおり,遺族側からはむしろ公表を求めていました.

「千葉大学医学部附属病院は,2018年6月8日会見し,60代女性が2013年6月に画像診断報告書で腎がんが疑われると指摘されながら担当医が確認せず,2017年10月に腎癌が確認され,同年12月に亡くなった事案について,2013年の時点で治療していれば,その後の経過に大きな違いがあったとしています。
横浜市立大学附属病院は,2018年6月25日会見し,同市の60代の男性がCT検査で腎がんの可能性を指摘されながら院内で情報共有されず,検査から約5年半後に死亡した事案を公表し,病院長らが謝罪しました。
このような対応に比し,岩手県の本件についての対応は甚だ遺憾と言わざるをえません。」という書面を県の代理人に送っています.

 また,県がホームページで公表することに同意しましたが,遺族は病院が会見を行わないよう求めていたわけではありません.

【追記】
岩手日日新聞「あってはならない」 二戸病院がん疑い見落とし 会見で知事陳謝」(2020年1月17日)は,「達増拓也知事は16日の定例会見で、県立二戸病院で腎細胞がんを疑わせる所見を見落とし、治療が遅れ男性患者が死亡した医療事故について、「そもそも ...」と報じました.

河北新報「患者死亡の医療ミスを岩手県がHPで公表 知事「局の判断を尊重」」(2020年1月17日)は,次のとおり報じました.

「岩手県立二戸病院(二戸市)で、コンピューター断層撮影(CT)の画像診断報告書の所見見落としによって60代の男性患者が死亡した医療ミスに絡み、県医療局が事実の公表をホームページ上で済ませたことについて達増拓也知事は16日の定例会見で「医療局の判断を尊重する」との考えを示した。
 知事は「情報公開の方法や事故の対策は医療局の経営判断に委ねられている」と説明。「県と遺族がホームページで公表するとの内容で示談した。決めたことに従った」と話した。
 患者は2015年3月にCT検査を受診。診断報告書に記載された腎細胞がんを疑う所見を非常勤医師が見落とし、適切な治療が行われないまま17年1月、腎細胞がんで死亡した。」


谷直樹

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by medical-law | 2020-01-16 19:38 | 医療事故・医療裁判

県立病院のがん見落とし報道

県立病院のがん見落としについて,次のとおり報道されています.

時事通信「がん疑い見落とし患者死亡=ミス認め、遺族に謝罪―岩手県立二戸病院」(2020年1月15日)は次のとおり報じました.

「岩手県立二戸病院(同県二戸市)で、60代男性患者の腎細胞がんを疑わせる所見を見落とし、治療が遅れたために男性が死亡する医療事故があったことが15日明らかになった。同病院はミスを認めており、遺族との間で昨年12月に示談が成立し、遺族に謝罪したという。

 同病院が県を通じ15日に発表した。遺族代理人によると、男性は2015年3月に呼吸器内科を受診。コンピューター断層撮影(CT)で腎細胞がんを疑わせる所見が認められ、放射線科の医師が画像診断報告書に記載したが、担当医師がこれを精査せず、同年6月と9月の再検査の際にも記載を見落とした。このため治療が遅れ、男性は16年8月にがんが転移して脳出血で病院に搬送され、17年1月に死亡した。

 遺族は15日、「事故が分かった時点で説明と謝罪をしてほしかった」とコメントを発表。同病院は再発防止のため、画像診断報告書をパソコンで閲覧する際、画面上に既読を確認するボタンを設置したり、重要所見を強調文字で表示したりするシステム改修を行ったことを明らかにした。

 岩手県医療局は「全県立病院が一丸となり、医療安全対策の徹底を図る」とコメントを出した。」 


共同通信「医師がん3度見落とし、男性死亡 岩手県立病院、示談が成立」(2020年1月15日)は次のとおり報じました.

「岩手県は15日、県立二戸病院で2015年にCT検査を受けた60代男性の担当医が、画像診断報告書に記載された腎臓がんを疑わせる所見を見落としたため判明が約1年5カ月遅れ、その後死亡したと発表した。病院では計3回CT検査を受けたが、いずれも見落としていた。県は死亡との因果関係を認め昨年12月、遺族と示談が成立した。

 県や遺族側の弁護士によると、男性は15年3月にCT検査を受診。放射線科の医師は腎臓がんの疑いがあるとする画像診断報告書を書いたが、呼吸器内科の医師が精査していなかった。

 男性は同年6月と9月にも同病院でCT検査を受けたがいずれも見落とされた。」


NHK「ガン検査結果見落とし患者死亡」(2020年1月15日)は次のとおり報じました.

「県立二戸病院は、CT検査でガンの疑いが診断されたにもかかわらず、主治医が検査結果を見落とし、患者が死亡する医療事故があったとホームページで公表しました。
県は、遺族と示談した上で謝罪したということです。

県や遺族の代理人の弁護士によりますと、平成27年3月に、60代の男性患者が県立二戸病院でCT検査を受けた際、放射線科の医師が腎臓のガンが疑われると診断しましたが、主治医の呼吸器内科の医師が検査結果を見落としたということです。
男性は、同じ年の6月と9月にもCT検査を受けましたが、同じ医師がその際も検査結果を見落としたということです。
その後、平成28年8月に男性が脳出血で救急搬送され、検査結果の見落としがはじめて分かったということです。
男性は、ガンの治療を受けましたが、5か月後に死亡しました。
県は遺族と話し合いを続けた結果、先月示談が成立し、遺族に謝罪の文書を送ったということです。
遺族は弁護士を通じて、「早く治療を始めていれば、苦しい思いをしなくて済んだのはないかと憤りを感じました。再発防止に努めてほしい」とコメントしています。
県立二戸病院はホームページ上で「応援の医師が診察していたが、画像診断の報告書を既読したと確認する体制が構築できていなかった。再発を防止するため、システムを改修した。関係者におわび申し上げます」とコメントしています。
また、県医療局業務支援課の鎌田隆一総括課長は、「関係者の方々に心よりお詫び申し上げます。全ての県立病院が一丸となって医療安全対策の徹底を図り、安心安全をさらに推進していきたい」と話しています。」


岩手放送「がんの発見遅れ60代男性死亡 県立病院で医療事故報告5件/岩手」(2020年1月15日)は次のとおり報じました.

「医療局は15日、今年度上半期に県立病院で5件の医療事故の報告があったと発表しました。そのうちの1件では「がん」の発見が遅れたことで60代の男性が死亡しています。

県医療局によりますと、今年度上半期に医療事故の報告があったのは県立遠野病院が2件、中央病院、中部病院、二戸病院がそれぞれ1件のあわせて5件で、いずれも家族の同意を得て公表されたものです。そのうち二戸病院では2015年に60代の男性が受診した際、CT検査で「腎細胞がん」が疑われたにもかかわらず担当医師がこれを見落としていました。遺族の弁護士によりますと、その後、男性はがんの発見と治療が1年5か月近く遅れ、2017年1月に「腎細胞がん」で死亡しました。この事故を受け県医療局は画像診断の報告の際に重要な箇所を強調して表示するなどの再発防止策を取るとしました。」


岩手日報「医師がん3度見落とし、男性死亡 岩手県立病院、示談が成立」(2020年1月15日)・河北新報「医師がん3度見落とし、男性死亡 岩手県立病院、示談が成立」(2020年1月15日)は次のとおり報じました.

「岩手県は15日、県立二戸病院で2015年にCT検査を受けた60代男性の担当医が、画像診断報告書に記載された腎臓がんを疑わせる所見を見落としたため判明が約1年5カ月遅れ、その後死亡したと発表した。病院では計3回CT検査を受けたが、いずれも見落としていた。県は死亡との因果関係を認め昨年12月、遺族と示談が成立した。

 県や遺族側の弁護士によると、男性は15年3月にCT検査を受診。放射線科の医師は腎臓がんの疑いがあるとする画像診断報告書を書いたが、呼吸器内科の医師が精査していなかった。」

 男性は同年6月と9月にも同病院でCT検査を受けたがいずれも見落とされた。


朝日新聞「がん見落とし、死亡 検査報告、確認怠る 岩手の県立病院」(2020年1月16日)は次のとおり報じました.

「岩手県は15日、県立二戸病院の医師がCT検査の報告書の確認を怠るなどして腎細胞がんを見落とし、60代の男性が死亡したと発表した。

 病院や遺族の代理人によると、男性は健康診断で肺に影があることが分かり、2015年3月に同病院の呼吸器内科でCT検査を受けた。放射線科医は画像診断報告書で腎細胞がんの疑…」


読売新聞「がん見落とし患者死亡 二戸病院 主治医CT報告書読まず」(2020年1月16日)は次のとおり報じました.

「岩手県立二戸病院(二戸市)で2015年、60歳代の男性患者がコンピューター断層撮影装置(CT)の検査で腎細胞がんの疑いを指摘されていたにもかかわらず、主治医が報告書の内容を読まず、患者が死亡していたことがわかった。県医療局が15日に公表した。

 同局や患者遺族の代理人弁護士によると、男性は15年3月にCT検査を受け、「腎細胞がんが疑われる」との所見が画像診断報告書に記されたが、呼吸器内科の主治医が読まなかった。男性は16年8月、別の疾患の治療のため同病院で検査を受けた際に腎細胞がんが見つかり、17年1月に死亡した。県医療局と遺族の間では示談が成立したという。

 同局によると、この主治医は応援医師で、スタッフと連絡を取り合うことが少なかったという。周囲の医師らは、主治医が報告書を読んで男性の状況を把握していたと思い込んでいた。

 県医療局の鎌田隆一・業務支援課総括課長は「関係者におわび申し上げる」と陳謝し、再発防止策として、院内の電子カルテに「既読」ボタンを設定し、重要な所見がある場合は表示を強調するシステムに改修した。

 県医療局は04年度から、県立病院の医療事故について患者や家族から同意を得たうえで半期ごとに公表しているが、患者が死亡したケースは確認できた13年度以降でほかにないという。」


デーリー東北「二戸病院で医療ミス、がんの疑い見落とし男性死亡」(2020年1月16日)は次のとおり報じました.

「岩手県医療局は15日、2015年3月に二戸市の県立二戸病院を....」

岩手めんこいテレビ「県立二戸病院 がん見落とし患者死亡」(2020年1月16日)は次のとおり報じました.

「岩手・県立二戸病院で、がんの疑いが見つかったものの、医師が見落とし、患者が亡くなっていたことががわかった。

県医療局は15日、2015年、県立二戸病院で市内の60代の男性がCT検査を受け「腎細胞がん」を疑わせる所見があったものの、担当していた呼吸器内科の医師が見落とし、男性が死亡していたことを発表した。

遺族の弁護士によると、CT検査はあわせて3回実施されたものの、医師がいずれも見落とし、男性は腎細胞がんの転移による脳出血で病院に運ばれ、その後亡くなった。

遺族と県は示談が成立しているが、遺族は「思い出すと、とても辛い。再発防止に努めてほしい」とコメントしている。

県は、この他にも2019年9月まで3つの県立病院で合わせて4件の医療事故があったことを公表した。」


県立病院の呼吸器内科の医師は,肺の疾患を疑ってCT検査をオーダーし,3か月ごとの定期的な経過観察を行っていました。CTの肺の部分だけは見ていました.しかし,放射線科医の作成した画像診断報告書は見ていませんでした.
放射線科医はCT画像のスライスを上から下まで全部を見て報告書を作成します.平成27年3月には「腎臓がんを疑います」,6月と9月には「left renal cell carcinoma」(左腎細胞がん)と明記していました.本件は,呼吸器内科の医師がこの画像診断報告書を見ていれば容易に防止できた事故なのです.医師間で医療情報の共有がなされなかったことが事故の原因です.
システムの改善により,このような事故の再発が防止されることを願います.

谷直樹

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by medical-law | 2020-01-16 05:57 | 医療事故・医療裁判

県立病院でがんを見落とされた遺族の思い

岩手県医療局は,2020年1月15日,サイトに「岩手県立病院等医療事故等の公表について」をアップし,5件の医療事故を公表しました.

私は,5件のうち,平成27年3月に県立二戸病院でがんを見落とされた患者の遺族の代理人です.
60歳代の男性は,健康診断で肺の陰影を指摘され,受診したクリニックで県立病院を紹介されました.
県立病院の平成27年3月のCT検査の放射線科医作成の画像診断報告書に「腎細胞がんを疑います」と記載されていたにもかかわらず,呼吸器内科の主治医はそれを見ていませんでした.
この主治医は,肺の疾患を疑って実施した同年6月,9月のCT検査の画像診断報告書(放射線科医の臨床診断「腎細胞がん」が記載されている)も見ていませんでした.
平成28年8月にがんが脳に転移して脳出血で県立病院に運ばれ救急の医師がカルテを見て腎細胞がんが発見されました.
患者は平成29年1月に腎細胞がんで死亡しました.
なお,民事的には令和元年12月に訴訟は行わず示談により解決しております.
病院からの謝罪は,令和元年12月に書面でありました.
遺族の思いを以下紹介します.

県立二戸病病院でがんを見落とされた遺族の思い

父は、仕事を忙しくしていましたが、かかりつけ医からの紹介状をもらった翌日、県立二戸病病院に行っています。定期検査もきちんと受けていて、父には何の落ち度もありません。
2度の定期検査も同じ医師が担当し、画像診断報告書が読まれることはありませんでした。

私たち家族が見落としを知ったのは、父が転移による脳出血で入院したときでした。ショックや今後の生活の心配でいっぱいで、後遺症に苦しむ父を見て、早く治療を始めていれば脳出血を防ぐことができたんじゃないか、苦しい思いをしなくて済んだんじゃないか、と憤りを感じました。

父はがんを告知されたとき『(定期検査で)良くなってたんだけどなぁ』と言って、頭をガクッと落としていました。その姿を見て、父が受けていた定期検査は医師の見落としにより全く意味を成しておらず、こんなにも無念なことはあるだろうか、と胸が押し潰される思いでした。
苦しんで亡くなった父を見て、何も悪いことをしていない父が、人生の最期にどうしてここまで辛い思いをしながら亡くならなければならなかったのか、今でも思い出すのがとても辛いです。
見落としがなかったら、母の存命中に告知を受け闘病ができ心強かったと思いますし、旅行など家族で過ごす時間や思い出を作ることができたはずです。そういった、人生の過ごし方や生き方を自分で決める時間を奪われたことは許されません。

病院側には、事故がわかった時点で説明と謝罪をして欲しかったです。
再発防止として、患者が検査票や報告書を見ることが出来ればよいと思います。
父や私達と同じ思いをする人が今後二度とあらわれないよう、再発防止に努めて欲しいです。(2020年1月15日)



谷直樹

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by medical-law | 2020-01-15 11:20 | 医療事故・医療裁判

肺がん検診,区の検診仕様(二方向撮影)と異なる都の指針(原則一方向撮影)に基づく方法で842件中16件見逃し(報道)


読売新聞「区が委託の肺がん検診「異常なし」16人、実は「要精密検査」」(2020年1月9日)は次のとおり報じました.

「東京都品川区は8日、○○クリニックで2013年10月~昨年8月に実施された肺がん検診で「異常なし」と診断された16人が、実際は肺がんなどの疑いがある「要精密検査」だったと発表した。ミスは同クリニックが区の委託仕様書と異なる方法で検診したために起きたといい、区は調査委員会を設置し、原因解明と再発防止に乗り出す。

 発表によると、肺がん検診は同区医師会に業務委託し、同クリニックではこの16人を含めた842人が「異常なし」とされていた。16人のうち肺がんの疑いがあるのは7人。ほかの7人には肺がん以外の疾患の疑いがあり、うち1人はすでに死亡しているが、区では「死因は不明で因果関係はわからない」としている。残りの2人は別の医療機関で診断を受け、肺がんではないことが判明したという。

 区などの調べでは、同クリニックでは、区の委託仕様書で「正面と側面の各1枚を撮影する」と規定されていた胸部エックス線撮影を、正面の1枚しか行っていなかった。また、医師2人以上で行う画像診断で、1人は経験豊富な呼吸器か放射線の専門医を含めるはずだったが、専門医は診断していなかったという。

 昨年9月、同クリニックが仕様書に基づかない検診を行っている可能性があるとの報告があり、区や区医師会が842人の画像を改めて診断し、発覚した。同クリニックは区などに対し、「都の検診指針では正面1枚の撮影を規定しているので十分だと考えた」と説明しているという。区は「信頼を損ねる結果となり、受診者と家族に深くおわびしたい」とコメントした。」


報道の件は私が担当したものではありません.
肺がん検診の胸部レントゲン撮影は,CT撮影等の精密検査の必要な例を拾い上げるためのものです.
1枚だけでは病変が臓器に重って見えないことがありますので,肺がん検診の場合,少なくとも最近は通常撮影方向を変えて2枚撮影されています.
公益財団法人東京都予防医学協会 のサイトには「肺は立体的な臓器のため、1枚の写真では臓器と病変が重なって見えなくなることがあります。肺がん検診の場合には撮影方向を変えて2枚撮影することがよく行われます。」と記載されています.

東京都の指針より区の仕様のほうが優先しますので,クリニックの言い分はとおらないのですが,東京都の指針にも問題がありそうです.

たしかに,「東京都肺がん検診の精度管理のための技術的指針」(平成30年2月)には次のとおり「背腹一方向撮影を原則とし」と記載されています.二方向撮影がなされている施設と一方向撮影がんさされている施設があることを考慮し,「原則とし」という表現になったと思います.

「胸部エックス線検査
65歳未満を対象とする胸部エックス線検査は、肺がん検診に適格な胸部エックス写真を撮影し、読影する。
65歳以上を対象とする胸部エックス線検査は、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号)」第53条の2第3項に規定する定期の健康診断等において撮影された肺がん検診に適格な胸部エックス線写真を用い読影する。
なお、肺がん検診に適格な胸部エックス線写真とは、背腹一方向撮影を原則とし、肺尖、肺野外側縁、横隔膜及び肋骨横隔膜角等を十分に含むようなエックス線写真であって、適度な濃度とコントラスト及び良好な鮮鋭度を持ち、縦隔陰影に重なった気管、主気管支の透亮像並びに心陰影及び横隔膜に重なった肺血管が観察できるものであり、かつ、次のいずれかにより撮影されたものとする注)。撮影機器、画像処理、読影用モニタの条件については、下記のサイト(日本肺癌学会ホームページ、肺がん検診委員会からのお知らせ)に掲載された最新情報を参照すること。https://www.haigan.gr.jp/modules/kaiin/index.php?content_id=47」


これについて,東京都医師会の「肺がん検診Q&A」は次のとおり書いています.

「東京都の技術的指針では2方向で撮影しなければならないとは書かれていません。
実際に行われている撮影方向について東京都医師会公衆衛生委員会が対策型肺がん検診を自治体から受託している33医師会に対して行ったアンケート調査があります(平成27年度に実施された検診について平成28年に調査、平成28年10月に公表)2)。この調査の撮影方法の項目をみると、正面のみ撮影しているのが15施設(46.8%)、正・側2方向が13施設(40.6%)、その他(正・側・背)が12.6%となっています。
検診の受診者総数は都内で426,928人、肺がん発見数は247人で発見率は0.05%(2,000人に1人)です。
肺がん発見率を撮影方法の異なる施設別で見ると、正面のみ、正・側2方向、その他の方法で撮影しても発見率には有意の差はありません。この結果から考えると検診は正面のみの撮影で良いと結論づけたいところですが、果たしてそう言いきってよいでしょうか。
正面像だけでは発見しにくい、あるいは発見できない部位があります。心臓の後ろと横隔膜の背部の下に病変がある場合です。この部位の病変は正面像では心臓、横隔膜に隠れてしまいます。直径3~4cmの大きさの肺がんを見落とすことすらあります。これらの部位に病変があっても側面像があれば発見しやすくなります。」


「上述したように正面像だけでは発見しにくい部位の病変を側面像で発見することができる場合があります。
もう一つメリットがあります。それは正面像で読み取れる葉間胸膜は右肺の上・中葉間胸膜(minor fissure)とまれに右の上・下葉間胸膜だけですが、側面像では左右肺のすべての葉間胸膜が読み取れるということです。
右肺の上・中葉間胸膜(minor fissure)、上・下葉間―中・下葉間胸膜(major fissure)と左肺の上・下葉間胸膜とすべての葉間胸膜の位置を読みとることができます。
その結果左右肺のすべての肺葉の大きさが側面像で分かるのです。
各肺葉の太い気管支(上・中・下葉支)内に肺がんができるとその先の肺葉に空気が入りにくくなるため、肺葉が小さくなります(無気肺)。正面像だけでは各肺葉が小さくなっていることを読みとることは難しいのですが、側面像があれば肺葉の縮小から気管支内の肺がんの存在を疑うことができるのです。
つまり正面像では発見しにくい肺門部肺がん(気管支の東京都医師会公衆衛生委員会作成(2019.3)太い部分にできるがん)の存在を側面像で推定することができるのです。
側面写真をとるメリットは①正面写真だけでは分かりにくい部位にある異常影の発見と、②肺葉の容積減少から太い気管支(葉支)にできた肺がんの存在を推定できるという2点にあります。」


また東京都の指針は二重読影については次のとおり「望ましい」にとどまっています.

「2名以上の医師(うち1名は、肺癌診療に携わる医師もしくは放射線の専門医が望ましい。)が同時に又はそれぞれ独立して読影すること。読影結果の判定は、「肺がん検診の手引き」(日本肺癌学会編)の「肺がん検診における胸部X線検査の判定基準と指導区分(別紙2)」によって行い、仮判定区分「d」及び「e」のものについては、比較読影を行う。」

「東京都肺がん検診の精度管理のための技術的指針」では,842人中16人の肺がん疑いが見逃されることが分かったのですから,指針改訂の必要があるのではないでしょうか.


谷直樹

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by medical-law | 2020-01-10 05:34 | 医療事故・医療裁判

倉敷市にある2病院,帝王切開が遅れ挿管で気胸となり新生児遷延性肺高血圧症に陥り脳性まひの障害を負った事案で訴えられる(報道)

山陽新聞「出生時の処置に誤り 損賠請求へ 両親ら、倉敷の2病院相手に」(2019年12月28日 )は次のとおり報じました.

 「生後間もない長男が重い脳性まひになったのは、複数の医師による処置の誤りが重なったためとして、岡山県内の両親らが、○○センター(倉敷市)と、○○病院(同市)を運営する○○を相手に、総額約1億9千万円の損害賠償を求めて近く岡山地裁に提訴することが27日、分かった。

 訴えによると、長男は2014年2月に○○センターで出生。呼吸状態などに異常があり、人工呼吸で対応することになったが、小児科の医師が気管にチューブを挿入する操作を誤り、肺から空気が漏れる気胸になった。治療のため転院した○○病院でも、応対した医師が胸腔(きょうくう)内にたまった空気を排出する処置を十分に行わず、死亡の危険もある新生児遷延性肺高血圧症に陥り、脳性まひの障害を負ったという。

 そもそも出生時の呼吸異常は、同センターの産科の医師が、母親や胎児の状態から帝王切開の必要性を認識しながら、胎児の心拍数が急低下するまで実施しなかったために生じたとしている。

 長男は現在5歳。身体障害1級の手帳を交付され、歩行や意思の疎通が難しいという。両親側は「不適切な処置が重なり、元気に生まれてくるはずの長男が重度の障害を負ったショックはあまりにも大きい」と主張。両医療機関に申請して入手したカルテを第三者の医師に示し、「医療過誤がある」との所見を得て提訴することを決めた。」


上記報道の件は私が担当したものではありません.
一般的には複数の病院を被告にするのは少ないと思います.
最初の病院が過失により原因を作り,次の病院が過失により治療を怠ったという主張になるのでしょう.

谷直樹

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by medical-law | 2020-01-08 19:56 | 医療事故・医療裁判

2019年の医療過誤に基づく請求認容判決10件

2019年に報道された医療過誤に基づく請求認容判決10件を新しい順に書き出してみました.
こうしてみると,少しの注意を払うことで容易に防止できた事故もあると思います.
また,地裁判決を取り消した高裁判決は影響は大きいと思います.
なお,いずれも私が担当したものではありません.

1 京都地裁令和元年12月26日判決,全身麻酔で死に至る可能性を説明する義務の違反を認め,慰謝料計100万円の支払いを命じる

2 東京高裁令和元年12月5日判決,帝王切開後の移動にストレッチャーを使う注意義務違反を認め原判決を破棄し,8300万円余りの支払いを命じる

3 秋田地裁令和元年10月23日判決,注射針による神経損傷で約1320万円の支払いを命じる

4 高松高裁令和元年8月30日判決,インスリンを注射後の死亡事案で院内での経過観察義務反を認め,請求棄却の原判決を変更し880万円の支払いを命じる

5 福岡地裁令和元年6月21日判決,脳腫瘍の疑いの記載を見落とし後遺障害を負った事案で,約1億5700万円の支払いを命じる

6 福岡高裁平成31年4月25日判決,術後再出血で脳に重い障害を負った事案で賠償額を増額し約1億7千万円の支払を命じる

7 神戸地裁平成31年4月9日判決,未破裂脳動脈瘤を見落とした事案で330万円の支払いを命じる

8 宮崎地裁平成31年3月28日判決,十分な量の輸液投与を怠り循環血液量減少性ショックで死亡させた事案で約2720万円支払いを命じる

9 山口地裁下関支部平成31年3月13日判決,再手術を行って血腫を取り除く義務の違反を認め4600万円支払い命じる

10 東京地裁平成31年1月10日判決,大学病院の看護師が医師を呼ばす吸引を続けた過誤を認定し,約1億5千万円の支払いを命じる


谷直樹

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by medical-law | 2019-12-31 04:41 | 医療事故・医療裁判

不正診断の疑いのある例を「服薬支援成功例」と学会に発表(報道)

毎日新聞「不正診断の事故死疑い患者 「服薬支援成功例」と学会発表」(2019年12月29日)は次のとおり報じました.

「毎日新聞が入手した資料には、○○病院が日本結核病学会の総会で発表した○○さんの症例が記載されていた(画像の一部を加工しています)

 ○○病院(大阪府寝屋川市)が、身寄りのない男性入院患者の死因を不正に肺結核と診断しながら、今年6月の日本結核病学会総会で服薬支援の成功例として発表していた。男性は2年前に入浴中の事故で亡くなった疑いがあるが、発表では死亡した事実を明かしていない。専門家から「非常識で医療モラルに欠ける」と批判が出ているが、病院は「男性に生前、同意を得たので問題ない」としている。

【食い違う病院の説明とカルテ】不正死亡診断の主な経緯

 ◇当時の副院長ら「患者に寄り添った支援」強調

 同学会は年に1度、総会を開催。今年は6月上旬に大分市内で開かれ、各地の専門医や看護師らが研究成果などを報告した。

 毎日新聞が入手した資料によると、○○病院が発表した演題は「服薬困難患者への服薬支援方法の検討」。副院長や事故当時の看護部長、看護師長らが発表者に名を連ね、2017年10月に急死し、死因を不正に肺結核とされた○○さん(当時72歳)の症例を「A氏」と匿名で取り上げていた。

 病院側の発表内容によると、17年6月に入院した堂園さんには軽度の認知症状があった。治療を始めた当初、看護師が個別に抗結核薬の服薬を確認する支援を取り入れたが、嘔吐(おうと)が続き、○○さんは服薬を頻繁に拒んだ。

 薬への苦手意識など精神的な要因が考えられたため、他の結核患者とともに集団で服薬を促す支援に切り替えると、薬を飲めるようになったと学会で説明。「患者に寄り添った支援が服薬の意欲向上につながる」と成果を強調していた。

 ○○さんの肺結核は回復傾向にあったが、病棟浴室の浴槽内で心肺停止の状態で発見され、翌日に死亡した。看護師の入浴支援の連携ミスによる事故死が疑われたが、医師が遺体を詳しく調べず、死因を肺結核と診断した。

 ◇「現場で適切に手続きしており、発表に問題はなかった」と主張

 副院長や看護部長らは○○さんが死亡した経緯を把握しながら、症例を学会で報告していた。病院側は、この発表が○○さんの症例だと認めた上で「学会から17年に、服薬困難な患者の対応事例があれば報告してほしいと依頼された」と説明。昨年の学会報告に間に合わず、今年の発表になったという。発表資料は○○さんが死亡した経緯なども記されたカルテを基に作られたが、死亡については触れなかった。

 病院によると、学会発表への同意は、看護師長が○○さんに口頭で確認した。病院の事務部長は「現場で適切に手続きしており、発表に問題はなかった」との認識を示したが、同意を巡る内部文書を残す必要はなく、堂園さんから承諾を得た時期は不明だという。

 日本結核病学会の藤田明理事長は取材に「当学会は直接の当事者ではないためコメントする立場にはない」と書面で回答した。【近藤大介、遠藤浩二】

 ◇事故死疑い把握し「学会発表する姿勢は医療モラルに欠ける」

 ◇医療ガバナンス研究所の上昌広理事長

 医療機関の危機管理に詳しいNPO法人「医療ガバナンス研究所」の上昌広理事長の話 患者が事故死した疑いを把握していたのに、学会で発表する姿勢は医療モラルに欠けている。学会で症例報告する場合、患者や遺族と信頼関係を築けているかが重要だ。大阪病院は患者から生前に同意を得たと言うが、死亡診断書が不正に作成されていた経緯などを考えると、同意の前提が崩れていたと言える。また、都合の悪い情報を隠したまま症例報告すれば、発表内容に疑念を持たれかねない。」


報道の件は私が担当したものではありません.
入浴中に事故で亡くなった疑いがある場合は,適切な対応をとることが,結局は,病院の利益になると思います.

【追記】
病院は,12月29日,次の文書を公表しました.

「初めに、亡くなられた患者様におきましては、ご冥福をお祈りするとともに、一連の対応に不備がありましたことをおわび申し上げます。

12月18日から複数回毎日新聞社により、2017年10月13日、当院結核病棟にて、入院患者様(72歳)が浴室にて心肺停止状態にて倒れているのが発見され、一旦蘇生するもその後死亡された事例が報道されました。12月29日にも、毎日新聞社から、この亡くなられた患者様に関する、当院の学会発表についての報道がされました。この報道について、ご説明させていただきます。

結核は世界における感染症死因の第一位であり、日本におきましても高齢者の結核の増加ならびに服薬困難者が増えており、社会的問題になっております。結核治療において抗結核薬の服用が最も大切な治療であり、抗結核薬が服用できなければ、過去の「不治の病」となり、死亡してしまうと言っても過言ではありません。この患者様におきましても、服薬が困難で肺結核治療ができず、本来なら亡くなってしまう可能性が高いところでした。しかしながら、担当医、看護師の努力で服薬できるようになり、残念な結果となるまでは、順調に回復されておりました。

学会発表におきましては、本来なら治療できずに亡くなってしまう例でも、副作用か否かを見極めて丁寧に治療することにより、改善する例もあることを知っていただき、少しでも多くの高齢者結核の方々の治療ができ、結核死を防ぐ助けになるだろうとの判断で発表いたしました。発表した看護師一同は、亡くなられた件を報告した後、院内調査等もなかったことから、総合的に問題なしと判断されたと認識しておりました。個人情報についても学会発表において個人が特定されないよう、十分配慮しておりました。そのため、副院長が学会での発表事例が、この亡くなられた患者様であった事を知ったのは、学会発表の当日でした。発表内容については、別紙を添付いたします。

最後は残念な結果になりましたが、亡くなられた患者様の治療におきまして、スタッフ一同服薬支援を含めた結核治療、そして心肺停止状態で見つかった状態からの蘇生と、当時の持てる力を尽くして治療にあたってきました。今後、学会発表のチェック体制改善、繰り返しになりますが医療安全体制を改善し、患者様が安心して治療を受けられる病院に改善していきます。」


谷直樹

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by medical-law | 2019-12-29 11:41 | 医療事故・医療裁判

京都地裁令和元年12月26日判決,全身麻酔で死に至る可能性を説明する義務の違反を認め,慰謝料計100万円の支払いを命じる(報道)

毎日新聞「100万円の賠償命令 説明義務に違反 地裁判決」(2019年12月26日)は次のとおり報じました.
 
「京都市下京区の○○病院で2013年6月、手術のため全身麻酔を受けた直後に心停止し、約12日後に死亡した男性(当時54歳)の妻が、治療が不適切だったなどとして、病院を運営する医療法人社団○○会と麻酔科医に慰謝料4500万円を求めた訴訟の判決が25日、京都地裁であった。島崎邦彦裁判長は「全身麻酔で死に至る可能性を説明する義務があったのにしなかった」として同会と医師に慰謝料計100万円の支払いを命じた。」

報道の件は私が担当したものではありません.
全身麻酔で死に至る確率は一般的には10万円分の1程度ではないでしょうか.

谷直樹

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by medical-law | 2019-12-27 02:57 | 医療事故・医療裁判

大阪府の病院で肺がん見落とし(報道)

ABCテレビ「肺がん見落とし治療遅れる 大阪急性期・総合医療センター」(2019年12月26日)は次のとおり報じました.

「大阪急性期・総合医療センターは、60代の男性患者の肺がんを見落とし、治療が2年近く遅れる医療ミスがあったと発表しました。

大阪急性期・総合医療センターの後藤満一総長は会見で「あってはならないことであり、当該の患者様とその家族の皆様に対して心からおわび申し上げる」と謝罪しました。大阪急性期・総合医療センターによりますと、去年1月、「不整脈」と診断された60代男性が受けた心臓のCT検査で、検査を担当した医師ががんの疑いのある影を見つけ、「精密検査が必要」と報告書に記載。しかし、主治医である心臓内科の医師がこれに気づかず、治療が1年9ヵ月遅れたということです。10月に男性が別の症状で入院した際、肺がんであるとわかり、事態が発覚しました。男性は今も肺がんの治療を受けていて、病院側は報告書の確認を徹底するなど再発防止につとめたいとしています。」


報道の件は私が担当したものではありません.
画像診断科の医師が主治医に画像診断書が作成されたことを伝えるべきだったと思います.

谷直樹

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by medical-law | 2019-12-26 06:45 | 医療事故・医療裁判