弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

カテゴリ:医療事故・医療裁判( 1184 )

小牧市民病院,祝日の救急外来の医師帰宅させた女児が劇症型心筋炎で死亡した事案で300万円和解

中日新聞「医療過誤で女児死亡の遺族と300万円で和解 小牧市民病院」(2018年2月20日)は,次のとおり報じました.

「愛知県小牧市は二十日、小牧市民病院を受診した翌日に劇症型心筋炎で死亡した市内の女児に対する過失を認め、遺族に損害賠償金三百万円を支払うことで和解したと発表した。

 市によると、女児は体調が悪く、ぐったりしていたため二〇一六年二月十一日夕、市民病院の祝日の救急外来を受診。当直だった研修医は翌日の一般外来受診を指示して帰宅させた。翌十二日未明、女児は心肺停止となり、市民病院に救急搬送されたが死亡した。

 市民病院は、研修医は診察内容を先輩医師に相談して判断するというルールを怠り、相談しなかったことに問題があったと認定した。再発防止のため、救急外来が混雑する時間帯に医師を一人増員するなど措置を取り、研修医が先輩医師に相談しやすいようにした。」


上記報道の件は私が担当したものではありません.
心筋炎は,症状症候から疑い,トロポニンT,心電図,心エコーを実施し,劇症型 である可能性を常に考え心臓救急施設に送ります.急場を凌げば予後がよい疾患です.
休日救急の宿直医の役目は,今診るべき緊急の患者を見逃さないことです.
その意味で残念な事件です.

谷直樹

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by medical-law | 2018-02-20 20:34 | 医療事故・医療裁判

高知医療センター,医師が胃全摘と勘違いし血管を切断し胃全摘(報道)

共同通信「勘違いで患者の胃を全摘、高知 医療センター、賠償支払いへ」(2018年2月19日)は次のとおり報じました.

「高知医療センター(高知市)で昨年末、50代女性の食道がんの手術中に医師が勘違いし、摘出する必要がなかった胃を全摘していたことが19日、分かった。センターは過失を認め、女性に賠償金を支払う方針。

 がんの摘出自体は成功し、女性は現在退院して自宅療養中。胃全摘の影響については今後慎重に経過を観察する。

 センターによると、手術は消化器外科の医師5人が担当。本来は胃の一部のみを切り取る予定だったが、うち1人の医師が施術過程で胃は全て切除するものと勘違いし、切る必要のない血管を切断。すぐにミスに気付いたものの、胃は全摘せざるを得ない状況になったという。(共同通信)」


報道の件は私が担当したものではありません.
過失は当然です。
後遺症等級損害が問題になることがあります.
胃全摘により生じ得る症状は,消化吸収障害,ダンピング症候群及び逆流性食道炎です
基本的に3症状で7級,2症状で9級,1症状で11級と考えられますが,具体的に労働に及ぼす影響を検討して後遺症等級を決める必要があります.

谷直樹

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by medical-law | 2018-02-20 15:40 | 医療事故・医療裁判

医師が少ない日本に世界一病院が多いことの問題

豊田剛一郎メドレー代表取締役医師が,東洋経済に執筆した「医師少ない日本に世界一病院が多いという謎 国民皆保険制度はこのままでは維持できない」(2018年2月16日)を読みました.

「たとえば、脳神経外科において、専門医は日本全体で約7000人登録されています。専門医を取る前の若手脳外科医は1学年300人×5年分として約1500人程度と推定されますので、計8000~9000人程の脳外科医が日本にいることになります。

一方、脳神経外科を標榜している病院は、日本全体で約2500病院存在しています。仮にすべての脳外科医がクリニックではなくて病院で働いているとしても、1病院あたり平均3~4人しかいない計算となります。

現場にいた僕の感覚ではありますが、計3~4人の脳外科医のチームでは、提供できる医療はかなり限られてしまいます。脳外科の手術には最低でも3人ほどの医師は必要ですし、その間の外来や病棟や救急対応を行う医師も必要です。

日本には3人程度の脳外科医チームで踏ん張っている病院が同じエリアに複数存在していることがありますが、このような3つの病院がくっついて、脳外科チームをつくったほうが患者さんのためにも働く側にとってもいいだろう、と思ってしまいます。」


脳外科に限りませんが,医師少ない日本に世界一病院が多いことは,患者の安全,医師の労働環境に不利な状況を作り出しているでしょう.行政が病院医院を規制することは現状では難しいですが,患者が病院医院を選ぶことはできます.脳外科,産科など外科系では,自宅からの距離より,医師スタッフの数で選ばれるようになってくると思います.

谷直樹

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by medical-law | 2018-02-18 23:12 | 医療事故・医療裁判

堺市立総合医療センター,担当医師が病理検査の結果を見ず胃癌発見が約7か月遅れたことを発表(報道)

読売新聞「「胃がん」検査結果見逃す…堺市医療センター、治療7か月遅れ」 (2 018年2月15日)は,次のとおり報じました.

「地方独立行政法人・堺市立病院機構は14日、運営する市立総合医療センター(堺市西区)で、男性主治医が70歳代の女性患者の検査結果を見落とし、がんの発見が約7か月遅れる医療ミスがあったと発表した。

 女性は治療開始から約1年後に死亡。同機構は「治療の遅れを招いた」として遺族に謝罪した。

 発表によると、女性は16年2月、胃の痛みを訴え、同センターで胃の内視鏡検査と病理検査を受診。病理検査の担当医師は胃がんを見つけ、電子カルテに添付された報告書に記載したが、主治医がこれに気付かず、カルテに書かれた内視鏡検査の所見だけで胃潰瘍と判断した。

 約7か月後に女性が吐き気を訴えたため、別の医師が再検査した際、以前の検査結果に気付いた。女性は16年10月、胃の一部を切除する手術を受け、抗がん剤治療を続けたが、昨年9月に死亡した。

 主治医は既に退職し、別の病院に勤務中。調査に「内視鏡検査の結果が『胃潰瘍』と書かれており、そう思い込んでしまった」と話しているという。

 同機構は「ミスと死亡の因果関係は不明だが、がんは当初からかなり進行していたと考えられる」と説明。一方で、医師間の情報共有が不十分だったとして、病理検査結果の連絡体制やカルテの記載方法を見直すなどの再発防止策をまとめた。

 花房俊昭院長は「情報共有とチェック体制の不備で医療ミスを起こし、患者のご家族に深くおわびする」と陳謝した。」


報道の件は私が担当したものではありません.
連携ミスは癌の見逃しの典型的例です.
必ず病理検査記録を患者に渡して説明するようにすればこのような見逃しはなくなります.
民事の賠償責任については,見逃しと死亡との因果関係が問題になります.裁判になれば,約7か月の治療の遅れが死亡にどの程度影響したかが争点になります.病院が誠意ある対応を行えば,多くは示談交渉で解決すると思います.

谷直樹

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by medical-law | 2018-02-18 22:22 | 医療事故・医療裁判

秋田地裁平成30年2月16日判決,薬の副作用で両目失明の事案で市立秋田総合病院に賠償命じる

NHK「薬で失明 慰謝料など命じる判決」(2018年2月16日)は,次のとおり報じました.

「医師に処方された薬の副作用で両目を失明した61歳の男性が市立秋田総合病院に損害賠償を求めている裁判で、秋田地方裁判所は、「医師の説明が不十分だった」として、病院に慰謝料など165万円を支払うよう命じました。

秋田市の61歳の男性は、市立秋田総合病院で処方された薬の副作用で3年前に両目を失明したのは、医師が検査を怠るなど過失があったためだとして、病院に1億4000万円余りの損害賠償を求めています。
秋田地方裁判所の齊藤顕裁判長は、判決で、「薬には副作用のおそれがあり、医師は男性に視力に異常があればすぐに連絡するように説明すべきだったが不十分だった」と指摘し、男性の訴えを一部認めました。
一方で、「説明が足りなかったために失明したとまでは認められない」として、病院に慰謝料など165万円を支払うよう命じました。
判決について、市立秋田総合病院は「判決の内容が届いていないので、まだコメントできない」としています。」


上記報道の事案は,私が担当したものではありません.
説明義務違反は認めたが,説明義務違反と結果との因果関係を認めなかった判決です.
診療の選択のための説明義務違反ではこのような判決が数多くあります.例えば,手術のリスクを説明されても,手術を受けたであろうと考えられるからです.
これに対し,療養指導義務としての説明義務に違反した場合では,むしろ因果関係が認められるのが一般的です.一般的な裁判例からすれば,本件も説明していれば早期に異変に気付き検査を行うなどし,適切に副作用に対処でき悪しき結果(失明)発生を防止できたと考えられるのではないでしょうか.毎日新聞では,「エブトール」と報道されていますが,エタンブトール製剤については,「本剤による視力障害は、早期に発見し投与を中止すれば可逆的であるが、発見が遅れ高度に進行すると非可逆的になることがある。」とされています.

谷直樹

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by medical-law | 2018-02-17 09:06 | 医療事故・医療裁判

広島高裁で患者側逆転勝訴,県立総合医療センター受診するも帰され腹部大動脈瘤破裂で死亡した事案

産経新聞「医師の過失認定、山口県の病院に3200万円賠償命令 原告側が逆転勝訴」(2018年2月16日)は,次のとおり報じました.

「平成23年に山口県防府市の県立総合医療センターを受診後、腹部大動脈瘤破裂で死亡した男性=当時(69)=の遺族が、治療が不十分だったとしてセンターに約6千万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、広島高裁は16日、約3200万円の支払いを命じた。1審の山口地裁は請求を棄却していた。

 野々上友之裁判長(退官のため三木昌之裁判長代読)は判決理由で、男性が病院を訪れた時にはすでに緊急手術が必要な状態だったと指摘。処置に当たった医師の責任を認め、「手術をすれば救命できた」とした。

 1審判決は、診察時に腹部大動脈瘤破裂の状態だったとは認められず、医師の過失を示す証拠はないと判断していた。

 判決などによると、男性は23年11月に腰の痛みを訴えてセンターを受診。帰宅後に意識を失って搬送され、死亡した。

 男性の次女(42)は判決後「父の死を無駄にせず、病院はベストな診療態勢を整えてほしい」と語った。」


上記報道の件は,私が担当したものではありません.九州合同法律事務所の小林洋二先生らです.→小林先生の解説はコチラ
野々上友之裁判長は四国電力伊方原発3号機の運転停止命令を下した判事で,昨年12月20日に定年退官しました.
裁判は証拠に基づきますが,医療過誤において,あまりにも厳密な証拠を要求するとかえって不合理な結果になります.原審判決がそのようなこのだったのでしょう.
裁判官には合理的な推論を積み重ねて事実を認定することが期待されます.この判決は,初診時に大動脈瘤破裂の状態にあったか(事実認定),適切な診療が行われていたなら結果は発生しなかったか(不作為の因果関係)について,参考になります.

谷直樹

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by medical-law | 2018-02-17 07:15 | 医療事故・医療裁判

日大歯学部付属歯科病院,首のリンパ節へ転移した舌癌の手術後に患者がが死亡した件で警察が捜査

産経新聞「口腔がん手術直後に男性死亡 警視庁が捜査、日大歯学部付属歯科医院」(2018年2月16日)は次のとおり報じました.

 「昨年9月、日大歯学部付属歯科病院(東京都千代田区)で口腔がんの手術を受けた都内の70代の男性の容体が手術直後に急変し、死亡していたことが15日、関係者への取材で分かった。手術やその後の処置に何らかの問題があった可能性があり、警視庁神田署が男性が死亡した詳しい経緯を調べている。

 関係者によると、男性は口腔がんの一種である「舌がん」と診断され、昨年9月25日に同病院で首のリンパ節に転移したがんの切除手術を受けたが、数時間後に容体が急変。搬送先の別の病院で死亡が確認された。術後の出血により、出血性ショックや窒息などで死亡した可能性がある。医師法に基づく「異状死」として神田署に届け出があり、同署が男性の遺体を解剖するなどして詳しい死因を調べている。

 遺族側の代理人弁護士によると、病院側は手術前、「出血も少なく、輸血を必要とするような手術ではない」などと説明、死亡の可能性についても言及はなかったという。病院は院内に外部の有識者を含む検証委員会を立ち上げたが、医療事故調査制度に基づく第三者機関への発生報告は行っていなかった。同院は「患者が死亡したことは重く受け止めている。再発防止に努めたい」としている。」


上記報道の件は,私が担当したものではありません.
搬送先の別の病院が「異状死」として神田署に届け出,司法解剖が行われたことが分かります.
日大歯学部付属歯科病院は,検証委員会を立ち上げたが,医療事故調の事故としての届出は行っていなかったとのことです.
報道の件については,死亡原因等が分からない段階では何とも言えないのですが,一般論としては,術中,術後の出血死について裁判所が過失がないと認定するのはきわめて例外的なケースで,多くは過失を認めるものと思います.

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by medical-law | 2018-02-16 23:58 | 医療事故・医療裁判

大阪市立総合医療センター,気管にチューブ誤挿入で女児が現在も意識不明で低酸素性脳症のため重度の障害が残る

読売新聞「チューブ誤挿入で一時心肺停止 大阪の総合医療センター」(2018年2月14日)は,次のとおり報じました.

「地方独立行政法人・大阪市民病院機構は14日、運営する大阪市立総合医療センター(同市都島区)で昨年9月に心臓手術後の生後2カ月の女児に対し、気管に入れるチューブを誤って食道に入れ、一時的に心肺が停止する事故が起きたと発表した。

 同機構によると、手術後に呼吸を管理するため、女児の気管にチューブを入れていた。状態が安定したため、一度チューブを抜いたが、呼吸状態が悪化したことから、再びチューブを入れた。その後、血圧が急激に下がって心肺停止の状態に陥り、再開するまでに29分間かかったという。

 原因を調べた結果、チューブを誤って食道に入れていたことが判明。現在も意識不明で、低酸素性脳症で重度の障害が残るとみられるという。

 同機構は「気管挿入時に呼吸音や胸の膨らみを確認するなど、再発防止策を徹底する」としている。」


報道の件は私が担当したものではありません.
気管チューブを誤って食道に入れてしまうという事故は時々起きています.
気管チューブを誤って食道に入れた時点で,医療ミス(過失)です.
ただちに誤りに気づいて気管に入れ直しをして何事も生じなければ,単なる医療ミス(過失)であって,賠償責任は生じません.
ところが,誤りに気づくのが遅れ,患者の生命身体に悪しき結果が生じた場合は,医療ミス(過失)と因果関係がある医療過誤として,賠償責任を負います.
単なる医療ミス(過失)と医療過誤は,混同されがちですが,悪しき結果が生じなかったものが単なる医療ミス(過失)で,過失に因って悪しき結果が生じたものが医療過誤です.
上記報道の件は,過失によって悪しき結果が生じていますから,医療過誤にあたります.
なお,食道挿管は,気管チューブを誤って食道に入れたことが過失なのか,気管チューブを誤って食道に入れたことに気づくのが遅れ入れ直しが遅れたことが過失なのか,という問題があります.どちらも過失である,というべきでしょう.
裁判所は,新生児の誤挿管(食道挿管)事案で,麻酔科医師には気管内挿管を的確に行う注意義務があることから過失を認め,産科医師には挿管後に肺の酸素化ができていることを確認する義務があることから過失を認めています(福岡地裁平成11年7月20日判決).


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by medical-law | 2018-02-15 20:31 | 医療事故・医療裁判

富士市立中央病院,麻酔事故で遺族に1億2012万円賠償和解(報道)

毎日新聞「富士市立中央病院 医療過誤、遺族に1億2012万円賠償 和解案盛る」(2018年2月9日)は,次のとおり報じました.

「富士市は、2月定例会の提出議案に、市立中央病院で2014年に死亡した市内の男性(当時45歳)の遺族に損害賠償として1億2012万円を支払う和解案を盛り込んだ。

 市によると、男性は14年9月4日、入院した。腸閉塞(へいそく)の緊急手術を行うため全身麻酔をかけたところ、容体が急変して呼吸不全と循環不全を発症し、同日死亡した。

 遺族は17年5月、死亡は病院側のミスが原因として、管理する市に対し1億5000万円の賠償を求める訴訟を静岡地裁沼津支部に起こした。同支部から11月、遺族側の主張をほぼ認める和解案が示され、両者は1月に合意したという。

 同病院は死亡直後、院内の調査委員会で医療過誤とは言えないと結論づけたが、外部を交えて再検討したという。柏木秀幸院長は「医療過誤の責任を痛感し、患者様とご遺族に深くおわび申し上げます。良い医療の提供と信頼される病院づくりに努めます」とコメントした。【高橋秀郎】」


報道の件は,私が担当したものではありません.
院内の調査委員会で医療過誤とは言えないと結論づけた事案でも,裁判では遺族側の主張をほぼ認める和解案が示されることがあります.和解案を拒み,判決となると病院側敗訴の判決が下されます.

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by medical-law | 2018-02-13 12:54 | 医療事故・医療裁判

新潟県立がんセンター新潟病院,電気メスの火花が気化した消毒アルコールに引火し熱傷を来した事案で調停成立

新潟県は,2018年2月8日,県立がんセンター新潟病院で,電気メスの火花が気化した消毒アルコールに引火し熱傷を来した事案について,829万8970円で調停が成立する旨公表しました.

「下記の医療事故に係る民事調停案件について、裁判所の調停案に双方が同意する見込みとなったことから、平成30年2月議会に損害賠償額の決定について提案します。

1 病院名  県立がんセンター新潟病院

2 患 者  新潟市在住の女性(40歳代)

3 事故概要
(1)  平成29年3月、肝がん治療のため全身麻酔下で開腹術を順調に終了し、引き続いて術前の抗癌剤治療に使用した中心静脈ポート(注)を抜去するため、アルコールによる皮膚消毒後、皮膚切開を行ったところ、電気メスの火花が気化したアルコールに引火し、右頚部、右肩部に熱傷を来した。
(2) 熱傷に対して植皮等の治療を行い、症状は改善したものの瘢痕が残存。
(3) 同年12月、解決を図るため民事調停手続を開始。(新潟市内の簡易裁判所)
(4) 同月、裁判所の調停案が提示され、患者が同意する旨意思表示。

※ 議決後、早期に民事調停が成立する予定。

[注 中心静脈ポート:心臓近くの中心静脈にカテーテルを留置し、必要な時に体外から接続して確実に薬剤等を投与できるようにするための器具]

4 損害賠償額(平成30年2月議会提案予定)
 8,298,970円


報道の件は私が担当したものではありません.
本件事故前から「電気メスによる薬剤の引火」(医療安全情報No.34)等で,引火事故への注意喚起はなされてきています.
日本外科学会医療安全管理委員会の「気管切開時の電気メス使用に関する注意喚起」では,「引火事故の要因として、1) 発火元(電気メス、レーザー)、2) 可燃物(アルコール系消毒剤、可燃性気管チューブ、体脂肪や凝固血液、など)、3) 助燃性の気体(高濃度酸素(30%以上や笑気の併用)が挙げられます。」としています.
過失が明らかな事案です.
東京では弁護士会の医療ADRによることが多いのですが,新潟県には医療ADRがありませんので,民事調停が選択されたものと思います.

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by medical-law | 2018-02-09 08:58 | 医療事故・医療裁判