弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

カテゴリ:医療事故・医療裁判( 1278 )

患者の権利侵害の予防と救済に向けて= 医療基本法法制化の実現をめざし みんなで動こう!『医療基本法 』シンポジウムパートⅣ

日時:12 月1日(土)/2018年 ➤ 13時30分〜16時30分 (13時開場)
場所: 明治大学駿河台キャンパス 研究棟2階9会議室 (東京都千代田区神田駿河台1−1)
【基調報告】
●小林洋二(患者の権利法をつくる会事務局長:弁護士)
【各パネリストの報告】
●永井裕之さん(医療事故被害者遺族・医療の良心を守る市民の会代表)
  ●藤崎陸安さん(全国ハンセン病入所者協議会事務局長)
  ●浅倉美津子さん(薬害肝炎全国原告団代表)
  ●前田哲兵さん(優生保護法被害東京弁護団:弁護士)
  ●身体拘束事件原告の方(匿名)・三枝恵真さん(弁護士)

【パネルディスカッション】
【会場との質疑応答】
【総括】
●鈴木利廣(弁護士・明治大学学長特任補佐)

主催: 患者の権利法をつくる会
共催:明治大学法務研究科医事法センター


http://www.iryo-kihonho.net/

谷直樹

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by medical-law | 2018-12-01 09:51 | 医療事故・医療裁判

大阪地裁平成30年11月28日判決,阪大医学部附属病院の手術ミスを否定(報道)

朝日新聞「阪大病院の子宮摘出「手術ミス」の訴え棄却 大阪地裁」(2018年11月28日)は,次のとおり報じました.
 
「子宮頸(けい)がんの手術ミスで排尿機能を失ったとして、大阪府の50代女性が大阪大学医学部付属病院(同府吹田市)に約9千万円の賠償を求めた訴訟の判決が27日、大阪地裁であり、野田恵司裁判長は女性の請求を棄却した。

 判決などによると、女性は2012年5月に同院で子宮の摘出手術を受けた。その後、尿管が損傷し、尿が漏れ出ていると判明。再手術を受けるなどしたが排尿機能は回復せず、自分で尿を排出する作業が必要になった。判決は尿管損傷の原因について、血流不全や手術後に尿を出そうといきんだことによる破裂の可能性を指摘。病院側に過失はなかったと結論づけた。」


報道の件は私が担当したものではありません.
民法709条は,「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は,これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」と定めています.そこで,民事の損害賠償請求訴訟では,①義務違反(「故意又は過失」),②因果関係(「よって」),③損害,の3つの要件をすべて原告(患者)側で立証することが必要とされています.
さらに,機序・原因(結果発生に至る事実の経過,メカニズム)についても,原告(患者)側で立証する必要があります.機序・原因が不明だと,どうすれば回避できたかが分からないからです.
報道の件は,尿管損傷の機序・原因が手術によるものであることを立証できなかった事案と言えるでしょう.

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by medical-law | 2018-11-30 16:55 | 医療事故・医療裁判

「腫瘍摘出手術後のCT実施義務違反について-いわゆる期待権侵害を否定した最高裁判決-」

ドクターズマガジン12月号34~35頁に「医療過誤判例集189 腫瘍摘出手術後のCT実施義務違反について-いわゆる期待権侵害を否定した最高裁判決-」を書きました.関心のある方はご一読ください.


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by medical-law | 2018-11-27 09:44 | 医療事故・医療裁判

京都大学医学部附属病院,大動脈弁置換手術で心臓内に縫い込まれた肺動脈カテーテルを引き抜いた際に大量出血,4か月後に死亡した事案を公表

京都大学医学部附属病院は,平成30年11月26日,「心臓手術時の肺動脈カテーテル使用に関連した心臓損傷事故について」を公表しました.
https://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/press/20181126.html

 「本院にて、心臓の状態を監視するための肺動脈カテーテルに関連した事故が発生し、心臓手術を受けられた患者さんがお亡くなりになられました。
 肺動脈カテーテルは、直径約3mmのチューブであり、その先端部分に心臓の状態を監視するセンサーがついています。手術前に使用を開始し、手術後も状態が安定するまで使用します。

 肺動脈カテーテルは心臓内に挿入するものです。人工心肺を用いる手術中には、手術直後に人工心肺用の管を留置した部位を閉鎖するための縫合を行うため、肺動脈カテーテルが縫い込まれる可能性があります。肺動脈カテーテルが縫い込まれたままで肺動脈カテーテルを引っ張ると、心臓を損傷することがあります。肺動脈カテーテル縫込みに関する死亡事故は、過去に、本邦でも海外でも発生しております。

 今回の事故では、縫込みのあった部分が肺動脈カテーテルを操作している際に引っ張られ、心臓を損傷するに至りました。直ちに修復術を実施しましたが、手術後、意識が回復しないまま、事故の4ヵ月後、患者さんはお亡くなりになられました。

 この事故の発生後に、外部委員を含む調査委員会を設置し、外部の専門家による検証・分析を受けました。本調査に関わった外部委員から、以下の指摘がございました。

・類似例の発生防止のために、肺動脈カテーテル挿入時に、肺動脈内に留置できない場合の対応ルール、及び、肺動脈カテーテルの位置異常が認められた場合の対応ルールを設定することが必要と考える。

・肺動脈カテーテル留置に関しては、現状では明確な医療安全ガイドラインはなく、他医療機関においても重篤な合併症がこれまでに報告されており、関連する領域医学会において、肺動脈カテーテル留置に関する医療安全上の標準ガイドライン策定等を進める必要性がある。

 心臓手術を安全に行うための肺動脈カテーテルの使用に関するルールに不十分な点があり、患者さんがお亡くなりになられたことを、本院は大変重く受け止めております。本事故の調査を今後の医療安全の向上につなげるために、心臓手術時の肺動脈カテーテル使用に関するガイドラインの作成等に尽力することが本院の務めであると考えております。

 患者さんのご家族に深くお詫び申し上げますとともに、重大な医療事故として公表いたします。」



朝日新聞「手術で心臓を損傷、患者死亡 京大病院、医療事故を公表」(2018年11月26日)は,次のとおり報じました.

「京都大学病院は26日、心臓の手術を受けた60代後半の女性患者が死亡する医療事故があったと発表した。

 手術中に使用したカテーテルを引き抜く際に心臓を損傷し、意識が回復しないまま4カ月後に亡くなったという。

 京大病院によると、患者は大動脈弁狭窄(きょうさく)症で今年6月、人工の弁に置き換える手術を実施した。心臓の機能を詳しく確認するため、首の辺りから肺動脈まで届くカテーテルを入れて手術を開始。人工心肺につなぎ、弁を置き換えた。手術後にカテーテルを動かしたところ、体内で多量に出血。すぐに開胸する手術をしたが、心臓が大きく傷ついていたという。

 京大病院は調査委員会を設置。調査委は、手術で心臓に入れた別の管を縫合した際に肺動脈カテーテルも一緒に縫い込んでしまったと推定。一方で、「縫い込みに気付くのは難しい。類似例の発生防止のためにルールが必要」とした。

 稲垣暢也(のぶや)病院長は「肺動脈カテーテルの使用に関するルールに不十分な点があり、患者さんがお亡くなりになられたことを大変重く受け止めている。患者さんのご家族に深くおわび申し上げます」と話した。また、「当時の医師の判断に過ちがあったかについて、そこまでは申し上げられない」と述べた。(後藤一也、合田禄)」


読売新聞「京大病院手術ミス、大量出血の女性4か月後死亡」(2018年11月26日)は次のとおり報じました.

「京都大病院(京都市左京区)は26日、今年6月に心臓手術を実施した60歳代の女性患者の心臓に誤ってカテーテルを縫い込み、女性が4か月後に死亡したと発表した。担当医師が縫い込みに気づかず、引き抜いた際に大量出血したという。

 発表などによると、女性は、心臓の弁の開きが悪くなる「大動脈弁狭窄症」で、今年6月15日、人工の大動脈弁の取り換え手術を受けた。担当医らは手術前、心臓の状態を監視するセンサー付きカテーテルを肺動脈に挿入しようとしたが、先端が肺動脈まで進まなかったため、心房の中にとどめたまま、手術を始めた。

 人工弁を取り換えた後、カテーテルを引き抜こうとした際、大量に出血。先端から約5センチの位置に縫合糸がかかっており、手術の過程で心臓内に縫い込まれていたという。心臓の損傷部は修復したが、約30分にわたって脳に血液が十分行き渡らず、女性は4か月後に低酸素脳症で死亡した。

 事故後、病院は事故調査委員会を設置し、26日、結果を公表した。稲垣暢也病院長は「亡くなった患者や家族に深くおわびし、再発防止に努める」と陳謝した。

 遺族側弁護士によると、遺族は調査内容が不服として、第三者機関の「医療事故調査・支援センター」に再調査を申し立てたという。」


上記報道の件は私が担当したものではありません.
ガイドラインがないことは注意義務がないことを意味しません.過去にも同様の事故が起きていることは,必ずしも不可避の合併症であることを意味しませんし,むしろ注意を喚起するものです.そのように考えると,肺動脈カテーテルを縫い込んだことには注意義務違反(過失)があるのではないでしょうか.とは言え、心臓外科の分野で手技ミスが認定されるのは少ないので、本件についても注意義務違反(過失)はないと考える心臓外科医もいるかもしれません.

谷直樹

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by medical-law | 2018-11-26 18:22 | 医療事故・医療裁判

中津川市民病院,動脈瘤を伝えず,3年後に動脈瘤の破裂によるくも膜下出血で死亡の事案で訴訟上の和解(報道)

中日新聞「中津川市民病院が脳動脈瘤発見伝えず 市が遺族に賠償へ」(2018年11月17日)は,次のとおり報じました.

「中津川市は十六日、二〇一四年にくも膜下出血で死亡した県内の女性=当時(87)=について、原因となった脳動脈瘤(りゅう)を中津川市民病院が検査で見つけていながら、かかりつけ医に伝えなかったとして、四百万円の損害賠償を遺族に支払うと発表した。

 病院によると、女性は一一年七月に同院で認知症の診断を受け、八月に頭部の断層写真による検査を受けた。担当医は細い血管に動脈瘤があるのを見つけたが、認知症の原因とは直接関係がなく手術が必要な大きさでもなかったとして、かかりつけ医などに伝えなかった。

 女性は一四年七月、入所していた高齢者介護施設で全身の脱力と頭痛を訴えて市民病院に入院。三日後、動脈瘤の破裂によるくも膜下出血で亡くなった。昨年四月、遺族は病院側のミスを主張して四千二百万円の損害賠償を求める訴訟を名古屋地裁に起こし、今年十月に和解が成立した。

 安藤秀男院長は「主張の隔たりはあったが、患者さんとご家族の期待に応えきれなかったのは事実」と述べた。再発防止策として、認知症で重要な画像診断をする際、担当医と放射線科診断医のダブルチェックを導入した。(福本雅則)」


かかりつけ医に伝えなかったことが問題にされたようですが,患者家族に伝えなかったことが問題になります.
頭部CT検査実施前に,患者家族に,もし動脈瘤が見つかったときに伝えるか否か予め意思を確認し,患者家族の意思にそった取扱をするのが適切です.
2011年にかかりつけ医に伝えていれば,予防的に対処し,2017年の動脈瘤の破裂がなかったと言えるかは,動脈瘤の大きさ,部位にもよる医学的危険性評価とそれをふまえた患者の判断によるところが大きく,原告・被告間に争いがあったのでしょう.

谷直樹

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by medical-law | 2018-11-17 09:17 | 医療事故・医療裁判

平成29年の医事関係訴訟,提訴は857件,審理期間は24.2月,認容率(患者側勝訴率)は20.5%,和解54.6%

1 新受(提訴)857件

裁判所の集計によると,平成29年の医事関係訴訟(新受)は857件でした.前年の878件より21件減少ですが,前年が前々年より52件増加でしたから,これが平均的な数字と思います.
医療ADRなど裁判外の紛争解決手段が充実してきたにもかかわらず,平成29年に提訴された医事関係訴訟が857件もあったということは,(1)医療過誤の疑いのあるケースが表面化することが増えてきたためと(2)弁護士へのアクセスが容易になってきているためではないか,と思います.

2 1審平均審理期間24.2月

1審の平均審理期間は24.2月(速報値)です.
平成25年以降,審理期間は2年を切っていましたが,2年をわずかに超えました.
平均は2年程度と考えてよいでしょう.

3 認容率(患者側勝訴率)20.5%

平成29年の地裁民事第一審通常訴訟事件・医事関係訴訟事件の認容率(原告=患者側が勝訴した率)は,20.5%と著しく低率です.
平成28年が17.6%ですから,一応回復したとは言えますが,通常訴訟の認容率84.9%(証拠調べを実施した場合の認容率61.4%)と比較すると,著しく低率です.
医療事件に不慣れな裁判官にとっては過失・因果関係が立証されていないと判断するほうが容易であることも影響している可能性も考えられますし,高裁での患者側勝訴の逆転判決の報道もみられることから,地裁裁判官の力量不足による可能性も考えられますが,何よりも患者側弁護士の準備不足,努力不足が大きいのではないか,と思います。

4 判決は32.5%,和解は54.6%

平成29年終了事件のうち,判決は32.5%,和解は54.6%でした.
和解内容は,判決以上に担当弁護士の力量を反映します.原告側(患者側),被告側(医療側)双方に経験のある弁護士がつくと,先が見えるので,和解で終わることが多いように思います.

谷直樹

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by medical-law | 2018-11-11 09:20 | 医療事故・医療裁判

同姓の患者に誤ってインスリンを3回投与(報道)

北海道新聞「同姓患者にインスリン誤投与 函館の病院 一時意識不明」(2018年10月26日)は,次のとおり報じました.

 【函館】函館市の共愛会病院(水島豊院長、378床)で8月末、足のむくみで入院した女性患者=当時(91)=が、糖尿病患者向けのインスリンを誤って3回投与され、低血糖で一時、意識不明になっていたことが25日、分かった。担当医が同姓の別の患者と勘違いしたミス。女性は回復したが、病院は「非常に大きなインシデントだと受け止めている。再発防止に努めたい」と話している。

 病院や女性の家族によると、女性は8月20日に入院。同月23~25日の毎日1回、インスリン0・14ミリリットルを投与された。その結果、25日に血糖値が1デシリットル当たり20ミリグラム以下となり、低血糖発作で意識を失った。

 女性の容体は、検査を経てブドウ糖が投与されたことで落ち着いたが、道内のある糖尿病専門医は「血糖値がここまで低くなると、30分も続けば脳の機能が落ち、さらに続けば植物状態や死亡する恐れもある」と指摘する。」



同姓の患者は多いでしょうに.
医師の勘違いに誰も気付かないのも問題です.


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by medical-law | 2018-10-26 22:09 | 医療事故・医療裁判

バランスボールで転倒した産婦が子宮破裂,大阪市東淀川区の産婦人科クリニックを提訴(報道)

朝日新聞「『バランスボール使わされ子宮破裂』大阪の産科医を提訴」(2018年10月24日)は,2次のとおり報じました.

「分娩(ぶんべん)中にバランスボールを突然使うよう指示されて転倒し、子宮が破裂して生まれた男児もその後死亡したなどとして、山梨県の30代の夫婦が大阪市東淀川区の産婦人科クリニックと担当医を相手取り、約9千万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こした。24日に第1回口頭弁論があり、クリニック側は争う姿勢を示した。

 バランスボールは、トレーニングに用いる軟らかい大きなボール。産科医療関係者によると、一部の産科や助産院では、陣痛緩和のため用いるという。

 訴状によると、妻は大阪府内に住んでいた2013年6月、破水して入院した。ベッドに置かれたバランスボールに上半身を覆いかぶせるように乗せたが、片方の腕に点滴がつながれていたうえ陣痛もあり、バランスを崩して転倒。担当医が急きょ帝王切開すると子宮が破裂していた。男児は仮死状態で生まれて脳性まひが残り、1歳7カ月で死亡した。

 夫婦は子宮破裂は転倒が原因とし、「触ったこともないバランスボールを使うよう突然指示され、介助の看護師もいなかった」と主張。手術でガーゼを体内に置き忘れ、翌日に除去するため再手術を受けるなどの医療ミスや子宮破裂のショック、男児の介護疲れで夫婦が精神疾患にかかるなど精神的苦痛を受けたと訴え、逸失利益や慰謝料を求めている。

 医療事故の分析にあたる第三者機関「日本医療機能評価機構」の報告書は今回の件について、「子宮破裂の原因は転倒による衝撃の可能性もあるが、断定は困難」とした上で、「バランスボールを使う場合、使用方法を十分に説明し、安全に十分に配慮することが望まれる」と指摘している。

 夫は取材に、「なぜ子どもが亡くなったのか、本当のことを知りたい」。被告側の代理人弁護士は「現時点ではコメントは差し控えたい」としている。(畑宗太郎)」


報道の件は私が担当したものではありません.
過失は明らかでしょう.
問題は因果関係でしょう.
因果関係は,裁判では,断定できなくても,真実の高度な蓋然性で足ります.
「元来訴訟上の証明は、自然科学者の用いるような実験に基くいわゆる論理的証明ではなくして、いわゆる歴史的証明である。論理的証明は「真実」そのものを目標とするに反し、歴史的証明は「真実の高度な蓋然性」をもつて満足する。言いかえれば、通常人なら誰でも疑を差挾まない程度に真実らしいとの確信を得ることで証明ができたとするものである。」(最判昭23・8・5刑集2巻9号1123頁)とされています.
つまり,転倒と子宮破裂との関係は,自然科学的に断定できなくても,通常人なら誰でも疑を差挾まない程度に真実らしいとの確信を得られれば,認定できます.


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by medical-law | 2018-10-25 06:52 | 医療事故・医療裁判

京都地裁平成30年10月24日判決,乳癌と誤診され乳房の一部切除や放射線治療を受けさせられた事案で750万円の賠償を認める

京都新聞「乳がん誤診で一部切除、検査機関などに慰謝料命じる判決」(2018年10月24日)は,次のとおり報じました.

「生体検査で乳がんと誤診され、必要のない乳房の一部切除や放射線治療を受けさせられたとして、京都府内の女性(54)が検査を行った京都病理研究会(京都市伏見区)や宇治病院(宇治市)に対し、3千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が24日、京都地裁であった。久保田浩史裁判長は「良性・悪性の判断が困難な場合、悪性であると確定診断することは病理医の注意義務に反する」と過失を認め、同会と病院に対して慰謝料など740万円の支払いを命じた。

 判決によると、女性は2005年9月、宇治病院での触診検査などでがんの疑いがあると診断された。同病院から委託を受けた京都病理研究会の病理医が乳房の生体検査を行い「がんはある」との報告書を作成。同月、病院側は報告書を基に、女性の左乳房の一部とリンパ節の切除手術を行った。女性はリンパ節の切除により左肩に関節障害が残った。

 その後、同病院などで約5年間、放射線治療やホルモン治療を受けた。しかし、10年6月に別の病院で検査した結果、手術前や手術時の生体から、がんは見つからなかった。

 久保田裁判長は、女性の生体は確定的判断が困難だったとした上で「がんと診断することは、患者に不要な治療による身体的侵襲や経済的・心理的負担を与えることになり、病理医の注意義務に反する」と指摘。生体検査の委託を行った宇治病院に対しても「履行補助者として責任を負う」として過失を認めた。

 京都病理研究会は「判決文を読んでいないのでコメントできない」と話した。」


報道の件は私が担当したものではありません.
過剰診断例について,過失を認めた裁判例として参考になります.

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by medical-law | 2018-10-24 23:43 | 医療事故・医療裁判

遺族が山形済生病院を告訴(報道)

時事通信「山形済生病院で輸血ミス、患者死亡=遺族が告訴」(2018年10月18日)は次のとおり報じました.

「山形済生病院(山形市)で昨年9月、手術を受けた50代女性への輸血時に担当医らが使用するフィルターを誤り、術後に女性が死亡していたことが18日、同病院への取材で分かった。遺族からの告訴状を受理した県警が詳しい経緯を調べている。

 同病院によると、女性は手術で出た自分の血液を、術後に体内へ戻す輸血を受けた。血を戻す際、手術で削った微細な骨を取り除くため目の細かいフィルターを通す必要があったが、担当医らは装置の説明書の記載と異なる目の粗いフィルターを使っていた。

 手術自体は成功したが、女性はその後容体が急変して死亡した。同病院は詳しい死因を明らかにしていない。

 病院側は外部の医師などで構成する医療事故調査委員会を設置し、原因を調査。9月に結果を遺族に伝え、賠償について協議している。」


報道の件は私が担当したものではありません.
医療事件では,起訴について慎重な判断がなされることが多いのですが,なかには起訴相当の事案もあります.
この件は,手術で出た患者の血液を術後に体内へ戻すという,普通は行わない相当に危険な方法をとりながら,フィルターを誤るという重大ミスをおかしていますので,起訴されてもおかしくない事案と思います.
日本自己血輸血学会のサイトには,回収法の長所として,「心臓手術のように大量に出血する手術や、人工膝関節置換術などのように手術中はほとんど出血がなく手術後にだけ出血する手術には有効とされています。」,短所として「回収した血液に細菌や脂肪が混じる危険があります。また、癌細胞が全身に広がる危険性があるため、癌手術には使用できません。」と記載されています.


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by medical-law | 2018-10-18 19:03 | 医療事故・医療裁判