弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

カテゴリ:医療事故・医療裁判( 1328 )

青もみじ

青もみじは清々しく美しいです.
秋の紅葉を想像するので趣があります.
見えていないものこそ美しいと思います.
霧に霞む山,雲に隠された月こそ美しい,と思います.
このように,日常生活は想像力でなりたっています.

これに対し,裁判では証拠により事実を証明することが求められます.
医療過誤裁判でも,できるだけ一点の曇りもなく明解明確な主張立証が求められます.
こちらの世界では想像力は排斥されます.
裁判官は,極力,想像力を用いないようにしています.

ところで,行うべきことを行わなかったという不作為の医療過誤があります.
これは,単に事実を示しても,何が問題かが伝わりません.
何をすべきか,注意義務を示して,はじめて不作為の意味が伝わります.
悪い結果を回避し,良い結果を実現するために,注意義務が課せられています.
注意義務立証には,ほん少しですが,想像力が必要になります.

谷直樹

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by medical-law | 2019-06-08 09:57 | 医療事故・医療裁判

モニター発信機の電池切れで呼吸停止に気づかず,患者死亡(報道)

神戸新聞「神戸・西市民病院で死亡の男性 発信機が電池切れ」(2019年6月4日)は次のとおり報じました.


 「神戸市立医療センター西市民病院(長田区)は4日、救急病棟に入院していた県内の40代男性患者が3月に亡くなった際、心電図などのデータをナースステーションのモニターに送る発信機の電池が切れていたと発表し、謝罪した。

 病院によると、男性は昨年11月、頸椎椎間板ヘルニアで入院。その後、誤嚥性肺炎を発症し、人工呼吸器を一時装着したが、2月13日からは自発呼吸で治療を受けていた。

 3月24日午前零時前、看護師が血糖値を測定した際は異常なかったが、約1時間後に別の看護師が同室を訪ねた際、呼吸停止に気付いた。当時同病棟で電池式発信機を使っていたのはこの男性だけで、マニュアルで定める電池の入れ替えもされていなかった。また電池切れを示すアラーム音量を小さくしていたため、同病棟の当直スタッフ4人の誰も気付かなかった。

 外部有識者も含めた「医療事故検討・対策委員会」が5月に開かれ、死因は特定できなかった。」


上記報道の件は私が担当したものではありません.
呼吸停止による死亡かも解明されていないようですが,仮に呼吸停止による死亡であると仮定すると,その原因が解明できなくても,多くの場合モニターで異変を発見しすみやかに対応すれば救命できます.異変に気づくのが遅れたことと死亡との間の関連性は否定できないのではないでしょうか.

谷直樹

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by medical-law | 2019-06-07 00:54 | 医療事故・医療裁判

癒着胎盤帝王切開の母体死亡事案で賠償(報道)

毎日新聞沼津市立病院 16年医療事故 妊婦遺族に賠償へ」(2019年6月1日9は次のとおり報じました. 
 「沼津市立病院で、帝王切開手術での医療死亡事故があり、市が亡くなった妊婦の遺族に5000万円の損害賠償を支払う示談が成立する見通しとなった。市が31日、損害賠償の議案を6月7日開会の市議会定例会に提出すると明らかにした。・・・」

上記報道の件は,私が担当したものではありません.
母体死亡は件数は少ないですが,通常の注意義務を尽くせば回避可能な事案もあるように思います.

谷直樹

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by medical-law | 2019-06-03 13:47 | 医療事故・医療裁判

初期胃がんの手術の縫合不全で開腹手術,別の出血もあり死亡の事案で病院と医師が提訴される(報道)

琉球新報 「「医療ミスで死亡」遺族が南部徳洲会を提訴」(2019年5月31日)は次のとおり報じました.
 
「胃がん摘出手術で医療ミスが重なり沖縄県糸満市の60代男性が死亡したとして、遺族が30日までに、南部徳洲会病院や担当医師を相手に約8900万円の損害賠償を求める訴訟を那覇地裁に起こした。遺族側は主治医が「ほぼ100%成功する」と説明したにもかかわらず死亡したことなどから「明らかに医療行為に過失があった」と訴えている。同意書の存在や事実関係について同病院は「係争中のためコメントできない」と述べるにとどめた。

 訴状によると、男性は2015年9月、同院で受けた特定健診で初期の胃がんが発見された。その後、手術の主治医となった同院の外科部長に「この手術は簡単な手術であるから、ほぼ100%成功する」と説明されたことから、手術を決意し同意書に署名した。外科部長が執刀医となることも確認したが、実際には大半を研修医が執刀した。

 3日後には縫合不全が見つかり、男性の容体は悪化。再び開腹手術がなされたが、別の出血なども発症して手術から20日後に死亡したという。

 遺族側は同意書を証拠提出したほか、調査を依頼した県外の医師も「複数の医療ミスが重なった結果」と指摘しているとして「医療過誤は明らか。病院側は患者一人が死亡した重大さを真摯(しんし)に受け止め、原告の声に耳を傾けてほしい」と訴えている。」


報道の件は私が担当したものではありません.
縫合不全は,一般に,手技上の過失と術後管理の過失が問題になります.
縫合不全の手技上の過失の立証について,高いハードルを課した裁判例もあります.
一般社会の常識では,複数の医療ミスがあった場合には責任が容易に認められると考えるのですが,裁判所では,複数の医療ミスが重なった結果については,過失と因果関係のあてはめの関係で難しい判断になることも多いです.
裁判の帰趨に注目したいと思います.


谷直樹

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by medical-law | 2019-06-01 00:39 | 医療事故・医療裁判

医薬品ゼリーによる大腸穿孔死亡事案で国立病院機構が提訴される(報道)

共同通信「患者遺族、国立病院機構を提訴 名古屋医療センター処置不適切と」(2019年5月30日)は次のとおり報じました.

 「国立病院機構名古屋医療センター(名古屋市)で2015年、肺炎のため入院していた愛知県内の女性=当時(69)=が死亡したのは、医師の不適切な処置が原因として、女性の遺族が約3300万円の損害賠償を国立病院機構に求める訴訟を名古屋地裁に起こしたことが30日、分かった。提訴は7日付。

 訴状によると、女性は14年12月に入院、高カリウム血症の患者に使う医薬品ゼリーの投与を受けた。高度の便秘や下血、大腸潰瘍の症状が出たが、投与は続けられ、15年1月19日、腸に穴が開き、同月27日に死亡した。

 名古屋医療センターは「上部機関と協議して適切に対応する」としている。」


上記報道の件は私が担当したものではありません.
おそらく,アーガメイト20%ゼリーを投与したのでしょう.
アーガメイト20%ゼリーの添付文書には,「腸管穿孔、腸閉塞、大腸潰瘍があらわれることがあるので、高度の便秘、持続する腹痛、嘔吐、下血等の異常が認められた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと。」と書かれています.
添付文書違反の投薬行為には過失が推定されます.
国立病院機構は対応が遅いことが多いようですので,そのため2015年死亡の事件が2019年の提訴となったのでしょう.


谷直樹

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by medical-law | 2019-05-30 19:54 | 医療事故・医療裁判

CT画像の硬膜下血腫を見逃し2日に死亡した事案で病院が遺族に300万円支払い(報道)

神戸新聞「三田市民病院で診断ミス 遺族に300万円支払いへ」(2019年5月28日)は次のとおり報じました.

「三田市民病院(兵庫県三田市けやき台3)で3年前、市内の男性(当時76)に対する診断ミスがあったとして、三田市は28日、遺族に300万円を支払うと発表した。6月4日に開会する市議会定例会に損害賠償の議案を提出する。

 市によると、男性は2016年8月26日、午前と午後に自宅で転倒してそれぞれ同病院に救急搬送された。当時勤務していた脳神経外科の20代の男性医師が診察し、頭部コンピューター断層撮影(CT)検査の画像から2回とも「異常なし」と診断。男性は帰宅したが、翌日も自宅で倒れ、入院した別の病院で2日後に亡くなった。死因は急性硬膜下血腫だったという。

 翌17年3月、遺族から画像診断のミスを指摘され、三田市民病院が調査したところ、2回目に撮影したCT画像に右硬膜下血腫があったと認められ、5月に遺族に謝罪した。同病院は、診断ミスが男性の死亡に直結したかどうかは不明としたが、過失は免れないと判断した。(山脇未菜美)」


上記報道の件は私が担当したものではありません.
具体的な部位,大きさは分かりませんが,一般に急性硬膜下血腫は急激に悪化し死亡する率が高いので,診断ミスと死亡との因果関係(急性硬膜下血腫を診断し手術適応があって手術していたら死亡しなかったという関係)がはっきりしないということで300万円という金額になったのでしょう.
法律では,過失があっても因果関係が立証できないと損害賠償は認められないのですが,それは社会の常識とは違います.そこで,裁判所は,相当程度の可能性,期待権侵害(最近はあまり使われませんが)などの構成で,若干の賠償を認めることがあります.できれば,裁判ではなく,このように示談で解決するのが望ましいと思います.

谷直樹

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by medical-law | 2019-05-28 23:44 | 医療事故・医療裁判

未滅菌の器材が手術に使用された事故

さいたま赤十字病院院は,2019年5月26日,「未滅菌の器材が手術に使用された事故について」を発表しました.

経過は次のとおりです.

「10月25日夜、清拭法など器材に応じた消毒を施した後、さらに洗浄乾燥し最終段階として行うべき滅菌処理のための高圧蒸気滅菌器のスタートボタンを押し忘れ、翌日に滅菌が完了しているものと思い込み取り出してしまいました。これらの器材が未滅菌であることに気づかないまま、10月26日の一部の手術に使用してしまいました。同日14時頃、高圧蒸気滅菌器の運転記録がなかったことからこの事実が発覚いたしました。2.対象患者様は、7名であることが特定されました。3.対象物品は、開創器など16品です。」<br>

原因は次の3点とのことです.

「(1)高圧蒸気滅菌器の作動スイッチの入れ忘れがありました。
(2)滅菌完了と思い込み、確認をしないまま、高圧蒸気滅菌器から器材を、手術室に移動しました。
(3)手術室内に於いて、滅菌バッグの滅菌済インジケーターを確認せず、使用してしまいました。」


再発防止策は次の7点です。


「(1)滅菌完了時にこれを確認し器材を取り出す手順が明確になるように高圧蒸気滅菌器に表示しました。
(2)滅菌業務委託業者の標準作業手順書(高圧蒸気滅菌装置)を改訂し、実施しております。
(3)高圧蒸気滅菌装置操作手順(滅菌運転時)および操作手順(滅菌取出し時)を改訂し、実施しております。
(4)滅菌物の払出し作業手順を改訂し、実施しております。
(5)当院中央滅菌材料室の手術室看護師向け洗浄・消毒・滅菌マニュアルを作成し、実施しております。
(6)滅菌バッグのインジケーターが滅菌済になっていることの確認について、声出し確認、指差し確認、タイムアウト時に全員で確認を行うように徹底しております。
(7)滅菌バッグのインジケーターについて、メーカー毎に表示や色に違いがあるため、滅菌バッグのメーカーを統一しました。」


谷直樹

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by medical-law | 2019-05-27 21:06 | 医療事故・医療裁判

標準投与期間2カ月の抗結核薬を約6カ月投与し,薬の副作用で視力0・01に

神戸新聞「抗結核薬を過剰投与、患者の視力0・01に 加古川医療センター」(2019年5月24日)は,次のとおり報じました.

兵庫県病院局は24日、県立加古川医療センター(加古川市)で、標準投与期間が2カ月と定められている抗結核薬を医師が誤って約6カ月、患者に過剰投与していたと発表した。患者は副作用で両目の視力が0・01まで低下したという。

 同病院局によると、患者は加古川市内に住む70代女性で、左脚の化膿性股関節炎の治療で入院。昨年6月、結核菌の陽性反応が出たため、主治医だった整形外科の20代男性医師が、感染症内科医の助言を受けて4種類の抗結核薬を投与した。

 うち1種類は、厚生労働省の基準で標準投与期間が2カ月だったが、男性医師は約6カ月過剰投与した。今年2月、女性が視力の低下を訴えて来院。薬の副作用で視神経炎を発症していたため、投薬を中止した。病院側は女性に謝罪し、視力回復治療を進めている。

 男性医師は薬の標準投与期間を知らなかったといい、県病院局は「今後は合併症を含む結核診療でも、感染症内科医が主治医を務めるようにする」としている。(前川茂之)」


上記報道の件は私が担当したものではありません.
おそらく,ファンピシン,イソニアジド,ピラジナミド,タンブトールの4剤を使ったのでしょう.2か月かったら,ファンピシン,イソニアジドで4か月治療しますが,報道の件は,そのまま4剤を使い続けたのでしょう.
ピラジナミドの副作用には,肝毒性のみならず視力障害等があります.継続的に感染症内科医のコンサルトを受けるべきなのに,受けなかったことに問題があります.

谷直樹

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by medical-law | 2019-05-25 15:02 | 医療事故・医療裁判

群馬大学病院遺族が医師に対する行政処分を求める6363人分の署名を厚生労働省に提出

共同通信「群馬大遺族が署名提出 6千人分、医師処分求め」(2019年5月22日)は次のとおり報じました.

「群馬大病院で男性医師(退職、懲戒解雇相当)の手術を受けた患者が相次いで死亡した問題で、遺族会が22日、男性医師と上司だった元教授(諭旨解雇)に対する行政処分を求める6363人分の署名を厚生労働省に提出した。医師免許の取り消しや3年間の医業停止などを想定している。遺族会はこれまで2回、同省に要望書を出しており、署名を提出するのは初めて。

 2014年に、この医師の腹腔鏡手術や開腹手術を受けた18人が死亡していたことが判明。病院の調査でさらに12人の死亡も明らかになった。」



医師に対する行政処分は,刑事罰の後追いばかりで,医療過誤ではなかなか処分されません.しかし,群馬大学病院事件は,病院としての体制の問題もありますが,当該医師の医療行為としての逸脱の程度に鑑みると,遺族が行政処分を求めるのも理解できます.


谷直樹

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by medical-law | 2019-05-23 12:59 | 医療事故・医療裁判

県総合医療センター,胸部エックス線画像の入れ歯を見逃す(報道)

「81歳女性の入れ歯誤飲見落とす 奈良県総合医療センター」(2019年5月18日)は次のとおり報じました.

 「奈良市の奈良県総合医療センターで3月、発熱の症状を訴えて受診した女性患者(81)が入れ歯を誤飲していたのを男性当直医が見落とし、そのまま帰宅させていたことが17日、同センターへの取材で分かった。受診翌日に女性の家族の指摘で胸部エックス線画像を再確認し、誤飲が判明。内視鏡手術で取り除いた。女性は数日間入院したが、現在は快方に向かっているという。

 県総合医療センターによると、女性は3月26日午後8時ごろ、発熱の症状があり家族と同センターを受診した。当直医は胸部エックス線検査などを行った上で、発熱の治療として点滴の処置を実施。女性はその日のうちに入所している奈良市内の老人ホームに帰された。

 だが、老人ホームの職員が女性の入れ歯がなくなっていることに気づき、翌27日に家族が同センターに連絡。同日午後7時45分ごろに同センターに救急搬送され、手術で胃から入れ歯を取り出した。26日に撮影されたエックス線画像には食道部分に入れ歯らしき影が写っていたが、当直医が見落としたという。

 同センターの村田庄司・特命院長補佐は「患者と家族に大変な苦労と心配をかけてしまった。再発防止に努める」としている。同センターは近く女性と家族に面会して改めて謝罪し、詳しい経緯や再発防止策の説明をする。

女性の家族は「高度医療拠点にあってはならない初歩的なミス。損害賠償請求も検討する」と話した。」


上記報道の件は私が担当したものではありません.
賠償を求めても快方に向かっていることから賠償額は少額になると思います.金額の問題ではなくレントゲン画像を見逃し帰宅させたことが許せないという気持ちの部分が大きいと思います.奈良県総合医療センターが,約2か月間,事故を公表もせず,患者家族に誠実な対応をしてこなかったことが問題です.

谷直樹

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by medical-law | 2019-05-18 13:56 | 医療事故・医療裁判