弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

カテゴリ:医療事故・医療裁判( 1197 )

大阪市立総合医療センター,気管にチューブ誤挿入で女児が現在も意識不明で低酸素性脳症のため重度の障害が残る

読売新聞「チューブ誤挿入で一時心肺停止 大阪の総合医療センター」(2018年2月14日)は,次のとおり報じました.

「地方独立行政法人・大阪市民病院機構は14日、運営する大阪市立総合医療センター(同市都島区)で昨年9月に心臓手術後の生後2カ月の女児に対し、気管に入れるチューブを誤って食道に入れ、一時的に心肺が停止する事故が起きたと発表した。

 同機構によると、手術後に呼吸を管理するため、女児の気管にチューブを入れていた。状態が安定したため、一度チューブを抜いたが、呼吸状態が悪化したことから、再びチューブを入れた。その後、血圧が急激に下がって心肺停止の状態に陥り、再開するまでに29分間かかったという。

 原因を調べた結果、チューブを誤って食道に入れていたことが判明。現在も意識不明で、低酸素性脳症で重度の障害が残るとみられるという。

 同機構は「気管挿入時に呼吸音や胸の膨らみを確認するなど、再発防止策を徹底する」としている。」


報道の件は私が担当したものではありません.
気管チューブを誤って食道に入れてしまうという事故は時々起きています.
気管チューブを誤って食道に入れた時点で,医療ミス(過失)です.
ただちに誤りに気づいて気管に入れ直しをして何事も生じなければ,単なる医療ミス(過失)であって,賠償責任は生じません.
ところが,誤りに気づくのが遅れ,患者の生命身体に悪しき結果が生じた場合は,医療ミス(過失)と因果関係がある医療過誤として,賠償責任を負います.
単なる医療ミス(過失)と医療過誤は,混同されがちですが,悪しき結果が生じなかったものが単なる医療ミス(過失)で,過失に因って悪しき結果が生じたものが医療過誤です.
上記報道の件は,過失によって悪しき結果が生じていますから,医療過誤にあたります.
なお,食道挿管は,気管チューブを誤って食道に入れたことが過失なのか,気管チューブを誤って食道に入れたことに気づくのが遅れ入れ直しが遅れたことが過失なのか,という問題があります.どちらも過失である,というべきでしょう.
裁判所は,新生児の誤挿管(食道挿管)事案で,麻酔科医師には気管内挿管を的確に行う注意義務があることから過失を認め,産科医師には挿管後に肺の酸素化ができていることを確認する義務があることから過失を認めています(福岡地裁平成11年7月20日判決).


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by medical-law | 2018-02-15 20:31 | 医療事故・医療裁判

富士市立中央病院,麻酔事故で遺族に1億2012万円賠償和解(報道)

毎日新聞「富士市立中央病院 医療過誤、遺族に1億2012万円賠償 和解案盛る」(2018年2月9日)は,次のとおり報じました.

「富士市は、2月定例会の提出議案に、市立中央病院で2014年に死亡した市内の男性(当時45歳)の遺族に損害賠償として1億2012万円を支払う和解案を盛り込んだ。

 市によると、男性は14年9月4日、入院した。腸閉塞(へいそく)の緊急手術を行うため全身麻酔をかけたところ、容体が急変して呼吸不全と循環不全を発症し、同日死亡した。

 遺族は17年5月、死亡は病院側のミスが原因として、管理する市に対し1億5000万円の賠償を求める訴訟を静岡地裁沼津支部に起こした。同支部から11月、遺族側の主張をほぼ認める和解案が示され、両者は1月に合意したという。

 同病院は死亡直後、院内の調査委員会で医療過誤とは言えないと結論づけたが、外部を交えて再検討したという。柏木秀幸院長は「医療過誤の責任を痛感し、患者様とご遺族に深くおわび申し上げます。良い医療の提供と信頼される病院づくりに努めます」とコメントした。【高橋秀郎】」


報道の件は,私が担当したものではありません.
院内の調査委員会で医療過誤とは言えないと結論づけた事案でも,裁判では遺族側の主張をほぼ認める和解案が示されることがあります.和解案を拒み,判決となると病院側敗訴の判決が下されます.

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by medical-law | 2018-02-13 12:54 | 医療事故・医療裁判

新潟県立がんセンター新潟病院,電気メスの火花が気化した消毒アルコールに引火し熱傷を来した事案で調停成立

新潟県は,2018年2月8日,県立がんセンター新潟病院で,電気メスの火花が気化した消毒アルコールに引火し熱傷を来した事案について,829万8970円で調停が成立する旨公表しました.

「下記の医療事故に係る民事調停案件について、裁判所の調停案に双方が同意する見込みとなったことから、平成30年2月議会に損害賠償額の決定について提案します。

1 病院名  県立がんセンター新潟病院

2 患 者  新潟市在住の女性(40歳代)

3 事故概要
(1)  平成29年3月、肝がん治療のため全身麻酔下で開腹術を順調に終了し、引き続いて術前の抗癌剤治療に使用した中心静脈ポート(注)を抜去するため、アルコールによる皮膚消毒後、皮膚切開を行ったところ、電気メスの火花が気化したアルコールに引火し、右頚部、右肩部に熱傷を来した。
(2) 熱傷に対して植皮等の治療を行い、症状は改善したものの瘢痕が残存。
(3) 同年12月、解決を図るため民事調停手続を開始。(新潟市内の簡易裁判所)
(4) 同月、裁判所の調停案が提示され、患者が同意する旨意思表示。

※ 議決後、早期に民事調停が成立する予定。

[注 中心静脈ポート:心臓近くの中心静脈にカテーテルを留置し、必要な時に体外から接続して確実に薬剤等を投与できるようにするための器具]

4 損害賠償額(平成30年2月議会提案予定)
 8,298,970円


報道の件は私が担当したものではありません.
本件事故前から「電気メスによる薬剤の引火」(医療安全情報No.34)等で,引火事故への注意喚起はなされてきています.
日本外科学会医療安全管理委員会の「気管切開時の電気メス使用に関する注意喚起」では,「引火事故の要因として、1) 発火元(電気メス、レーザー)、2) 可燃物(アルコール系消毒剤、可燃性気管チューブ、体脂肪や凝固血液、など)、3) 助燃性の気体(高濃度酸素(30%以上や笑気の併用)が挙げられます。」としています.
過失が明らかな事案です.
東京では弁護士会の医療ADRによることが多いのですが,新潟県には医療ADRがありませんので,民事調停が選択されたものと思います.

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by medical-law | 2018-02-09 08:58 | 医療事故・医療裁判

中津川市民病院,医師が病理診断の結果を確認せず治療が約9か月遅れた事案で和解(報道)

岐阜新聞「中津川市民病院が賠償金、和解」(2018年2月8日)は次のとおり報じました.

 
「中津川市民病院(同市駒場)で2016年、急性胆のう炎で入院していた男性(73)が手術前検査と病理診断で胃がんが見つかったが、医師が診断結果の確認を忘れ、胃がんの治療が約9カ月遅れる医療ミスがあった。市が男性に200万円の賠償金を支払うことで和解合意した。7日に市が発表した。

 病院によると、男性は16年9月から約1カ月間、急性胆のう炎で入院。当時勤務していた消化器内科の男性医師(36)が、胆のうを摘出する手術前の検査で胃カメラを行うよう指示。外部の専門医が検査して胃の粘膜に炎症が見つかり、病理診断で早期の胃がんと分かった。

 男性は退院していたが、同11月に消化器内科を外来で受診。男性医師は病理診断の結果を確認しておらず、胃がんを伝えられなかった。男性は17年2月に外科で胆のうを摘出し、治療を終えた。

 5カ月たって診療情報管理士が、がん患者の情報を登録する業務を行っていたところ、治療方針が明確でない電子カルテを発見。男性の病理診断結果が見落とされていることが判明した。病院はすぐに男性に説明し、同8月に胃を全て摘出する手術を行った。がんの進行や転移はなかったといい、現在も再発はないという。

 安藤秀男院長が会見で謝罪。今後は電子カルテでの報告に加え、紙の報告書を消化器内科部長ら関係医師が目を通し、情報共有を図って再発を防ぐ。」


報道の件は私が担当したものではありません.
病院内部の連絡・確認ミスのため,がんの治療が遅れることは少なくありません.
紙も見逃される場合もありますので,もっと踏み込んだ再発防止策が必要と思います.
例えば,病理診断等の検査結果を必ず患者に渡すようにすれば,当然主治医も見ざるをえませんので確認ミスはなくなると思います.

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by medical-law | 2018-02-08 12:55 | 医療事故・医療裁判

岡崎市民病院,手術方法の説明が不十分で同意なく変更し,術後検査を怠った死亡事案で約2400万円支払

産経新聞「手術後死亡、慰謝料支払い 愛知県岡崎市、医療過誤訴訟で」(2018年1月23日)は,次のとおり報じました. 

「愛知県岡崎市は23日、直腸が肛門から出る「直腸脱」の手術を市民病院で受け、翌日に死亡した同市の60代女性に対し、事前に同意を得ていたのとは別の方法で手術したとして、遺族に慰謝料など約2400万円を支払う方針を明らかにした。

 市によると、女性は平成28年1月、約10センチの直腸脱が見つかり、体外に出た部分を切らずに戻す手術法に同意し、3月に手術を受けた。しかし手術中に出ている部分が約20センチあることが分かり、担当した医師らは機械で切除する方法に変更。その際、来院していた家族らの許可を得なかったという。

 女性は手術後に腹痛を訴え、翌日未明に死亡。死因は腸に空いた穴から便が入ったことによる腹膜炎で、切除部の縫合が不十分だったとみられる。

 記者会見した木村次郎院長は「手術に明らかなミスはなかったが、術後に検査していれば異常に気付いたかもしれない」と述べた。」


上記報道の件は,私が担当したものではありません.
術式変更についての単なる説明義務違反だけではなく,医療行為の内容についても問題があった事案のように思います.

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by medical-law | 2018-01-23 23:23 | 医療事故・医療裁判

群馬大医学部附属病院が遺族説明会開催,遺族会は改革目標や実施状況を評価するも懸念表明

上毛新聞「患者もカルテ閲覧 群馬大病院が新システム」(2018年1月22日)は,次のとおり報じました.

「群馬大医学部附属病院(前橋市)で腹腔(ふくくう)鏡や開腹の手術を受けた患者が相次いで死亡した問題で、群馬大は22日、患者が自身の診療内容を記録した電子カルテを閲覧できるシステムを新年度導入する方針を明らかにした。医療安全の向上に向け、病院が遺族や患者と定期的に意見交換する場を設ける考えも示した。群馬大は21、22の両日、遺族説明会を開き、問題を改めて謝罪した。

 説明会終了後、田村遵一病院長らが記者会見して表明した。入院中の患者や家族が電子カルテにアクセスできる仕組みの導入は、手術死問題を検証した医療事故調査委員会(事故調)も提言。昨年9月、事故調が改革状況を確認した際は未達成とされていた。

 説明会には2日間で計21遺族31人が出席。平塚浩士学長や田村病院長が直接謝罪した。再発防止策として、群馬大は患者の希望に基づき、インフォームドコンセント(十分な説明と同意)を録音できるなど情報開示を強化する方針を説明した。

 一部遺族でつくる遺族会も22日記者会見し、病院の掲げた改革目標や実施状況を評価。今後、損害賠償の交渉を進めていくとした。一方、「目標が高いのは良いが、本当に実施できるのか」「病院職員の多忙問題が改善されていない」といった懸念も示した。代表の木村豊さん(49)は「病院は目に見える取り組みを進め、今後も説明の場を設けてほしい」と訴えた。」



報道の件は私が担当していません.安東先生,梶浦先生らが担当しています.
改革,解決に至るまで時間がかかるようです.

谷直樹

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by medical-law | 2018-01-23 07:05 | 医療事故・医療裁判

福井県立病院,2カ月の児に筋弛緩剤を過量投与し心肺停止・低酸素脳症を起こしたとして提訴される(報道)

福井新聞「生後2カ月、術後障害で両親が提訴 福井県に1億4300万円」(2018年1月19日)は,次のとおり報じました.

「生後2カ月の長女が福井県立病院で受けた手術で、薬剤投与や術後の管理に過失があり重い後遺障害を負ったとして、福井県坂井市の20代両親らが18日までに、県に約1億4300万円の損害賠償を求めて福井地裁に提訴した。

 原告は両親と長女の3人。訴状によると、長女は2016年に生まれ、2カ月後に左鼠径(そけい)ヘルニアを治す手術を受けた。病室に戻って50分後、顔色が悪いことに父親が気付き看護師を呼んだが、一時心肺停止に陥った。最終的に後遺障害等級1級相当の呼吸器機能障害を負った。

 原告側は▽手術で麻酔医が筋弛緩(しかん)剤を過量投与した▽動脈の酸素飽和度などを測る指に付けるモニターを術後に装着しないまま放置した―などと主張。「適正に行われていれば心肺停止やその後の低酸素脳症は発生せず、障害を回避できた可能性は高い」としている。これまでの交渉で病院側からは「当院に過失はない」と回答があった。」


報道の件は私が担当したものではありません.
2か月ですから,筋弛緩剤を投与するには細心の注意が必要でしょう.



谷直樹

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by medical-law | 2018-01-20 20:15 | 医療事故・医療裁判

松江市立病院が産科医療事故で提訴される(報道)

産経新聞「「帝王切開せず長女が重い後遺症」夫婦が松江市に賠償請求 長女はその後死亡」(2018年1月19日)は,次のとおり報じました.

「松江市立病院が出産時に帝王切開を行わなかったため、長女が重い後遺症を負ったとして、関西在住の40代の夫婦が慰謝料など約6100万円の損害賠償を同市に求める訴えを松江地裁に起こしたことが19日、分かった。提訴は昨年11月29日付。

 訴状によると、妻は松江市に里帰りして平成24年3月に長女を出産。その際に吸引分娩に時間がかかったため、帝王切開を行う必要があったが、同病院の医師らが適切な処置を取らなかったとしている。

 長女は重度の新生児仮死の状態で生まれ、低酸素状態によって脳性まひの後遺症を負ったという。26年に呼吸不全で死亡している。」


上記報道の件は私が担当したものではありません.
ときに帝王切開を避けようとするあまり,娩出が遅れ,児が低酸素状態継続のために重度の障害を負う例があります.
産科ガイドラインでは,吸引の時間は20分までとされています.20分を超える場合は,鉗子分娩か帝王切開を行うとされています(推奨レベルB).
ガイドラインにそった診療が必要と思います.

谷直樹

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しかし,産科ガイドラインでは,吸引の時間は20分までとされています.20分を超える場合は,鉗子分娩か帝王切開を行うとされています(推奨レベルB).
ガイドラインにそった診療が必要と思います.

by medical-law | 2018-01-19 12:39 | 医療事故・医療裁判

グレン・フライさんの遺族が医療過誤で病院を提訴(報道)

イーグルスのグレン・フライ(Glenn Frey)さんは,2年前の今日(2016年1月18日)に亡くなりました.
医師が潰瘍性結腸炎の適切な治療を行わず,感染症の治療や,治療の副作用についての助言などを行わなわかったとして,シンディ・フライさんが病院を提訴したとのことです.

潰瘍性大腸炎の治療薬は,5-アミノサリチル酸かステロイドです.
ステロイドは炎症を抑えますが,感染症を発症しやすくなります.
ステロイドを使って感染症を発症した事案なのでしょうか.

谷直樹

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by medical-law | 2018-01-18 08:49 | 医療事故・医療裁判

岡山の歯科医師が不必要な歯を削った傷害容疑で逮捕される(報道)

毎日新聞「<傷害容疑>不必要に患者の歯削り損傷 歯科医師を逮捕」(2017年1月17日)は,次のとおり報じました.

 「患者の歯を不必要に削って損傷させたとして、岡山県警は17日、岡山市北区津島新野1の歯科医師、××××容疑者(53)を傷害の疑いで逮捕した。「患者を傷付ける行為はしていない」と容疑を否認しているという。」

 「県警は昨年5月末ごろ、男性が受診した別の歯科医師から相談を受けて捜査を開始。似たような被害情報が医師や患者から複数寄せられており、関連を調べている。」


NHK「親知らずの治療で関係ない歯削った疑い 歯科医師を逮捕 岡山」(2017年1月17日)は,次のとおり報じました.

「男性は、治療の内容に不審な点を感じて、別の歯科医院で診察を受け直したところ、無関係な歯が削られていることを知らされたということです。


また、男性からの相談を受けて警察が調べた結果、歯を削ったところに雑菌が入るのを防ぐ処置が適切に行われていなかったこともわかったということです。」


報道の件は私が担当したものではありません.現在依頼件数が多い関係で歯科事件は取扱から外しています.
傷害罪の成立には,臨床的に歯を削る必要がなかったことにくわえ,歯を削る必要性のないことを認識していたこと(故意)が必要です.歯科医師が歯を削ったことについて傷害の疑いで逮捕されるのは希有なことです.注目したいと思います.

谷直樹

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by medical-law | 2018-01-18 08:26 | 医療事故・医療裁判