弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

カテゴリ:医療事故・医療裁判( 1197 )

佐賀地裁平成29年12月11日判決,介護職員が胃瘻カテーテルを外したとするのは合理的疑いありとして無罪

佐賀新聞「胃ろう器具外し、職員無罪 佐賀地裁」(2017年12月11日)は,次のとおり報じました.
 
「佐賀県嬉野市の養護老人ホームに入所していた高齢男性の胃ろう用カテーテルをわざと外し胃の粘膜を傷つけたとして、傷害罪に問われた同県鹿島市の介護職員藤武奈緒美被告(32)の判決で、佐賀地裁は11日、『カテーテルを抜き取ったとするには合理的な疑いが残る』として無罪を言い渡した。検察側は懲役1年を求刑していた。
 判決によると、事件は2014年12月25日、ケアワーカー室で発生。前月から男性のカテーテルが外れるケースが相次いでいたことからホーム側が設置したビデオの映像に、藤武被告が男性=当時(95)=の服の中に手を入れ、腹部付近を触る様子が写っていた。
 判決理由で吉井広幸裁判官は「カテーテルを無理やり引き抜こうとすればある程度の力を込める必要があるが、その様子はうかがわれず、不自然・不合理な点が残る」と結論付けた。
 男性はこの事案の後、次第に衰弱し、15年8月に死亡した。」

報道の件は,私が担当したものではありません.
ビデオでどこまで分かるものなのでしょうか.


谷直樹

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裁判所は,胃瘻用のカテーテルが抜けた原因を何と考えたのでしょうか.


by medical-law | 2017-12-14 06:31 | 医療事故・医療裁判

神戸市地裁姫路支部平成29年12月11日判決,受刑者のギプス固定などの処置の医療過誤を認め約2800万円の賠償を命じる(報道)


朝日新聞「服役中の脱臼で後遺症 国に2800万円賠償命令 姫路」(2017年12月11日)は,次のとおり報じました.

「神戸刑務所(兵庫県明石市)で服役中にひじを脱臼した際、適切な治療を受けられず後遺障害が残ったとして、ナイジェリア国籍の男性(41)が国に慰謝料など約4300万円を求めた訴訟の判決が11日、神戸地裁姫路支部であった。惣脇(そうわき)美奈子裁判長は「2年近く放置された」と述べ、国に約2800万円の支払いを命じた。

 判決によると、男性は服役中の2007年3月、運動中に転倒し、左ひじの関節を脱臼。医師のギプス固定などの処置が十分でなかったため再び脱臼したが、痛みを訴えても、その後の診察では見落とされ、左腕の動かせる範囲が狭まったり筋力が低下したりした。」

 


神戸新聞「服役中に骨折し後遺症 国に2800万円賠償命令」は,(2017年12月11日)は,次のとおり報じました.

「判決によると、男性は服役中の07年3月、運動中に転倒して左肘を脱臼し、外部の民間病院でギプス固定などの処置を受けたが、その後に適切な治療がされず、握力が弱まるなどの後遺症が出た。

惣脇裁判長は「ギプス固定の角度が十分でなかった可能性が高い」と指摘。ギプスを外す際も、回復度合いを確認するレントゲン撮影を受けさせる注意義務を怠ったとし、国の責任を認めた。」


報道の件は私が担当したものではありません.

受刑者にも適切医療を受ける権利は当然あります.判決によると,ギプス固定の際とギプスを外す際の2回,ミスがあったことになります.

谷直樹

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by medical-law | 2017-12-11 21:31 | 医療事故・医療裁判

品川美容外科糸リフト被害訴訟,75人全員東京地裁で和解成立(報道)

NHK「美容医療集団訴訟 クリニック側が解決金支払いで和解へ」(2017年12月6日)は,次のとおり報じました.

「東京などにある大手美容クリニックで顔のたるみを取る手術を受けた70人余りが、事前の説明には無かった強い痛みや顔の腫れが出たなどとして賠償を求めていた裁判で、クリニック側が解決金を支払うことを確認することなどを条件に、6日にも和解する見通しとなったことが関係者への取材でわかりました。

この裁判は、東京などにある「品川美容外科」や「品川スキンクリニック」で、平成26年までの3年間に顔のたるみを取る手術を受けた20代から70代の男女75人が起こしたものです。

治療費は40万円から400万円ほど請求されましたが、事前に説明されたほどの効果が無かったり、説明には無かった強い痛みや顔の腫れ、それに内出血が出たなどとして、クリニックを運営する医療法人「翔友会」に対し、合わせておよそ1億6000万円の賠償を求めていました。

原告の弁護団によりますと、医療法人側は当初、裁判で「患者に誤解を与える説明は行っていない」などと主張していましたが、その後、和解協議が行われ、医療法人が被害の訴えを重く受け止めて遺憾の意を示したうえで、解決金を支払うことを確認することなどを条件に、6日にも和解する見通しになったということです。

原告の弁護団は「和解案は評価できる内容で、同じことが繰り返されないよう、行政による監視の強化を求めたい」と話しています。

一方、被告の医療法人「翔友会」の代理人を務める弁護士は「和解の内容についてコメントはしない」と話しています。」


NHK「「美容医療でトラブル」集団訴訟で和解成立」(2017年12月6日)は,次のとおり報じました.

「大手美容クリニックで顔のたるみを取る手術を受けた70人余りが、事前の説明にはなかった強い痛みや顔の腫れが出たなどとして賠償を求めていた裁判で、クリニック側が解決金を支払うことを確認することなどを条件に和解が成立しました。

この裁判は、東京などにある品川美容外科や品川スキンクリニックで、平成26年までの3年間に顔のたるみを取る手術を受けた20代から70代の男女75人が起こしたものです。

治療費は40万円から400万円ほど請求されましたが、事前に説明されたほどの効果がなかったり、説明にはなかった強い痛みや顔の腫れ、それに内出血が出たりしたなどとして、クリニックを運営する医療法人「翔友会」に対し、合わせておよそ1億6000万円の賠償を求めていました。

原告の弁護団によりますと、医療法人側は当初、裁判で「患者に誤解を与える説明はしておらず、有効性のある治療を行った」などと主張していましたが、その後、和解協議が行われ、医療法人が被害の訴えを重く受け止めて遺憾の意を示したうえで、解決金を支払うことを確認することなどを条件に6日、和解が成立しました。
原告の女性「十分な説明あれば手術受けなかった」
原告の1人で、4年前、東京・渋谷区のクリニックで美容手術を受けた都内の50代の女性は、当初、顔のしわを取る治療を受けるために訪れました。この際、医師から顔のたるみを取る治療を勧められたといいます。
ただ、治療費がおよそ280万円と高額だったため、女性が手術を受けるつもりはないと伝えると、医師は治療費を120万円に値引きし、ほかにも4つの治療をサービスで実施するなどと言って勧められたということです。

裁判で女性は、クリニックの医師から、治療後に痛みや内出血などのリスクはなく、たるみを取る効果は5年間続くと説明を受けたと訴えました。

一方、医療法人側は「治療のリスクについては書面で十分に説明したうえで有効性のある治療を行った」などと主張し、裁判で争われてきました。

女性によりますと、その日のうちに顔のたるみを取る手術を受けましたが、治療のあと、強い痛みや頭痛に悩まされたということです。女性は「十分な説明を受けていれば手術を受けなかった。再発の防止を徹底してほしい」と話しています。
原告団 厚労省に要請
和解が成立したあと原告団は、記者会見を開き、この中で50代の女性は「和解という形だが、医療法人が再発防止に向けた姿勢を示し、満足している」と話しています。

また三枝恵真弁護士は「和解は、解決金のほか医療法人が遺憾の意を示すなど、かなり踏み込んだ内容で評価している。国は、美容医療をめぐるトラブルが相次いでいることを重く見て、指導を強化すべきだ」と話しています。

さらに原告団は厚生労働省を訪れ、患者が十分考慮したうえで治療を受けるかどうか判断できるよう、勧誘したその日のうちに即座に治療を行うことを原則禁止とすることや、健康被害が起きた場合は積極的に立ち入り検査を行うことなどを要請しました。
被告の医療法人「よりよい医療の提供に努める」
被告の医療法人「翔友会」は、和解条項の中で「原告から問題点を指摘されたことを真摯(しんし)に受け止めて、改めて必要十分な説明を行い、よりよい医療の提供に努めることを約束する」などとしています。

また「翔友会」は「今後、和解に従い、誠実に医療業務に従事します」とコメントしています。

美容医療トラブル 年間2000件以上

国民生活センターによりますと、美容医療の契約をめぐるトラブルの相談は、ここ数年、年間2000件以上に上っています。

相談のおよそ半数は勧誘方法や広告の内容に問題があると見られるケースで、「注射で10年若返る」という広告を見て治療を受けた患者が、リスクの説明を十分受けずに顔に注射をされ、赤く腫れて視力が落ちたり、「400円ほどでほくろを除去」というSNSの広告を見た患者がクリニックを訪れると、別の治療をしつこく勧められ20万円余りの治療契約を結ばされた例などがあったということです。

国民生活センターの丸山琴野課長補佐は「美容医療を受けたことを周りに知られたくないと悩みを相談できない人もいて、把握できたトラブルは氷山の一角にすぎない。メスを使わないプチ整形がはやっているが、注射だけでもリスクはあるので簡単に契約しないように注意を呼びかけている」と話しています。

美容医療のトラブルが相次ぐ中、ことし6月に医療法が改正され、医療機関のホームページが広告規制の対象となり、虚偽や誇大表現が禁止されることになりました。

厚生労働省は、来年6月から治療を受けた患者の体験談や、手術前と後の写真を詳しい説明をつけずに「ビフォー」「アフター」などと掲載することを禁止する方針です。また、インターネット上の不適切な広告を探すネットパトロールを実施するなどして監視を強化しています。

専門の医師ら トラブル防止に取り組む

美容医療をめぐるトラブルが相次ぐ中、専門の医師らで作る日本美容医療協会は、不適切な広告や悪質な勧誘の防止に取り組んでいます。

西山真一郎常任理事によりますと、誤解を招く広告をホームページやチラシに掲載するクリニックがあとを絶たず、協会では発見次第、自治体などに連絡し是正を促すよう求めてきました。

具体的には、二重まぶたにする手術で、「究極に腫れづらい」などと根拠がないことを強調して内出血などのリスクを示さなかったり、治療の前後を比較する顔写真で、治療後の写真だけ化粧を施し、シワが目立たないよう明かりを強くして撮影するなどの不適切な広告があるということです。

協会では、形成外科の専門医の資格などを持ち、誇大広告をしない全国の医師を「適正認定医」とし、協会のホームページで紹介しているほか、こうした認定医によるネット相談も受け付けています。

西山常任理事は「美容外科は広告費をかけ、いかに大勢を勧誘するかという経営になりがちだ。患者の悩みを解消するための医療なのに、トラブルになってかえって悩みを作る本末転倒なことが起きている」と指摘しています。
そのうえで、「被害の入り口となる広告の取締りが重要だ。また患者側も、どんな医療行為にもリスクがあることを知り、いいことしか書いていない広告は信用せず、少なくとも勧誘されたその日に治療を受けるのは避けてほしい」と話しています。」



テレビには,三枝恵真先生,花垣存彦先生など多くの医療問題弁護団の先生が映っていました.和解は,糸リフト被害対策弁護団の先生方の御尽力の賜と思います.

谷直樹

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by medical-law | 2017-12-06 21:34 | 医療事故・医療裁判

石川県立中央病院,感染症に気づかず抗がん剤治療を行い患者が死亡した事案で示談(報道)

石川県立中央病院は,2016年7月に感染症に気づかず抗がん剤治療を開始した患者が死亡する医療事故について,損害賠償金700万円を支払う示談が成立したとのことです.

毎日新聞「県立中央病院 患者死亡、700万円賠償 責任認め示談」(2017年12月2日)は,次のとおり報じました .

「病院側によると、患者は県内の60代の女性。昨年5月20日に同病院で子宮がんの摘出手術を受け、同6月29日にはがんが転移したリンパ節の摘出手術を受けた。翌日の血液検査で「経過良好」とみなされ、同7月4日に抗がん剤治療を受けた後に吐血。肺に血が入り、同6日に呼吸不全で死亡した。

 遺族側は、手術後に発症した感染症に病院側が気づかず抗がん剤治療を行ったため、女性は体力が低下し吐血したと主張。病院側も、治療が適切に行われていれば死亡しなかった可能性を認めた。

 同病院は再発防止策として、化学療法を行う際には術後2週間の経過観察を義務づける規定を設けた。【石川将来】」


報道の件は,私が担当したものではありません.
がん治療は標準化した治療方法が実施されますが,反面,治療が流れ作業のようになってしまうと,個々の患者の状態をみることがおろそかになる場合があります.
感染に対し白血球等の数値が上昇するまでの時間差を考えると,上翌日の血液検査だけで感染なしとは判断できません.手術から抗がん剤治療までが,流れ作業のなっていたのではないでしょうか.
抗がん剤治療は抵抗力を低下させますので,感染症が悪化しがちです.
術後2週間の経過観察を義務づけること自体はよいですが,患者の状態は個々に違いますので,個々の患者をよくみて臨機応変に対応していただきたいと思います.

谷直樹

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by medical-law | 2017-12-03 08:10 | 医療事故・医療裁判

岐阜県立多治見病院,点滴チューブが外れ患者が失血死(報道)

共同通信「点滴チューブ外れ失血死、岐阜県立病院に入院の70代女性」(2017年11月25日)は次のとおり報じました.

「岐阜県立多治見病院で今年4月、入院していた70代女性の点滴チューブが接続部分で外れ、女性が失血死していたことが25日、病院への取材で分かった。多治見署は業務上過失致死の疑いもあるとみて捜査している。

 病院によると、看護師が4月11日午後6時20分ごろ、点滴を実施。午後8時ごろ、心電図モニターで異常に気付き、病室で確認したところ、点滴チューブが接続部分で外れて出血、女性は心肺停止の状態だった。司法解剖の結果、失血死と分かった。

 病院は日本医療安全調査機構に医療事故として報告。5月に医療事故調査会を設置し、来年1月までに原因や再発防止策をまとめるとしている。」



読売新聞「岐阜の病院で点滴外れ患者失血死…過失の有無、調査へ」(2017年11月27日)は次のとおり報じました.

「病院によると、4月11日午後6時20分頃、看護師が女性の首の静脈にさしたカテーテルに点滴チューブを接続し、薬剤と生理食塩水の注入を行った。同8時頃、看護師がナースステーションの監視モニターで女性の心電図の異常に気づき、病室に駆けつけたところ、カテーテルとチューブの接続器具「三方活栓」からチューブが外れて出血していた。女性は心肺停止状態で、その後、死亡が確認された。司法解剖の結果、死因は失血死だった。

 チューブと三方活栓の接続部はねじ込み式。女性はほとんど意識がなく、自分で外すことは考えにくいという。病院は日本医療安全調査機構に届ける一方、過失の有無を調べるため、外部の専門家を入れた調査会を設置した。調査会は、来年1月頃までに最終報告書をまとめる方針。」


三方活栓から容易に外れるはずのないチューブが外れた原因は何か,失血死するまえに監視モニターのアラームは鳴ったのか,もし鳴らなかったとすればその原因は何か,もし鳴ったとすればなぜ気づいたのが8時頃なのか,等疑問があります.
医療事故調査に期待したいと思います.


谷直樹

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by medical-law | 2017-12-02 00:00 | 医療事故・医療裁判

千葉県こども病院で心臓手術を受けた生後1カ月未満の男児がMRSAに感染し死亡(報道)

朝日新聞「院内感染か、心臓手術を受けた新生児が死亡 千葉」(2017年12/月1日)は,次のとおり報じました.

「千葉県こども病院(千葉市緑区)は1日、心臓手術を受けた県内の生後1カ月未満の男児がメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に感染し、死亡したと発表した。ほかに4人の0歳児からMRSAが見つかり、別の1人は感染していた。院内感染とみて第三者を含む調査委員会を設け、死亡との因果関係や感染経路などを調べる。

 発表によれば、亡くなった男児は先天性の心臓疾患があり、同病院で11月上旬に心臓手術を受けた後、17日に発熱し、19日にMRSAが検出された。血中の酸素が少なくなる「低酸素血症」を発症し21日に死亡した。ほかの5人はいずれも県内在住で0歳の男児2人と女児3人。うち女児1人は感染して発熱したが快方に向かい、菌が検出された4人に発熱などはないという。

 6人は同じ時期に、新生児集中治療室(NICU)や新生児治療室(GCU)、集中治療室(ICU)などで治療を受けていた。

 同病院では2013年にも、体重1千グラム未満の男児がMRSAに感染して亡くなっているという。

 星岡明・病院長は1日夜、千葉県庁での記者会見で「亡くなられた患者様とご遺族には深くおわび申しあげるとともに、ご心配をかけている患者様とご家族、県民の皆様におわび申し上げます」と頭を下げた。」


感染症は因果関係立証に難があり裁判になることは少ないのですが,病院には感染制御体制が求められています.とくに,抵抗力の弱いこどもが対象の病院では,いっそうの体制が求められています.感染制御システムに問題がなかったか検証する必要がります.


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by medical-law | 2017-12-01 23:34 | 医療事故・医療裁判

12月3日シンポジウム「なぜ大学病院で医療事故が繰り返される?:群大事故の事例から」

シンポジウム「なぜ大学病院で医療事故が繰り返される?:群大事故の事例から」が12月3日 全労連会館ホで開催されます.
日 時 2017年12月3日(日)13:30~16:30
会 場 東京・御茶ノ水 全労連会館ホール (文京区湯島2―4-4)
主 催 医療過誤原告の会 
共 催  医療の良心を守る市民の会 
 
小川和宏さんの報告のあと,高梨ゆき子さん,勝村久司さん,梶浦明裕さん,宮脇田正和 さんの講演があり,コーディネーター永井裕之さんでシンポジウムが開催されます.


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by medical-law | 2017-12-01 17:43 | 医療事故・医療裁判

山梨県立中央病院,6月の血液型不適合輸血事故をふまえ再発防止への取り組み公表

地方独立行政法人山梨県立病院機構山梨県立中央病院は,2017年11月29日,輸血医療事故に関する報告書と 輸血医療事故防止に関する対応を公表しました.

これは,私が担当したものではありません.
事故は,「平成29年6月23日に中央病院に救急搬送された患者に対し、大量輸血等の救命処置を実施したが、同日午前8時51分に亡くなったことが確認された。 その後の輸血バッグ点検認証で、輸血処置において不適合輸血があったことが判明した。」というものです.輸血医療事故と死亡との間には因果関係はないとされています.

報告書は,「今回の ABO 血液型不適合輸血事故は、極めて重篤な多発外傷患者の救急治療(心肺蘇生処置)の過程において発生した。輸血直前のダブルチェックが行われていれば不適合輸血を防ぐことが出来たのは言うまでもないが、事故の背景として、輸血製剤の管理・運用システム、コミュニケーション等のチーム医療体制、緊急輸血実施時のローカルルール、緊急治療時のマンパワー等の問題が認められ、これらが複合的に関与したことが事故の要因と考えられた。」とまとめています.

また,中央病院救急科主任医長が文書訓告に,中央病院院長,中央病院救命救急センター統括部長,中央病院救命救急センターセンター長の3名が厳重注意に,それぞれ処されました.

再発防止策は, (1) 緊急輸血の手順の見直し, (2) 緊急輸血に関するマニュアルの整備, (3) 必要な機器の設置, (4) 安全に緊急輸血が実施できる仕組みづくりの4点があげられています.マニュアル,ルールの整備はもちろんですが,医療者が入れ替わる中で常にそれらを遵守させることが大事だと思います.

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by medical-law | 2017-12-01 09:51 | 医療事故・医療裁判

若返り効果を訴える新聞折り込みチラシの美容クリニックの開設者を被害者が訴える(報道)

FNN「『最新治療でマイナス10歳』医師を提訴」(2017年11月30日)は,次のとおり報じました. 

「「最新治療でマイナス10歳」などとうたった広告を見て、美容クリニックを訪れた女性らが、高額な治療費を不当に請求されたと主張し、医師らを相手取って、損害賠償などを求める訴えを起こした。
原告の女性は、「鏡に映る自分を見て、『お前はだましやすい顔をしているのか』と毎日泣いたが、今はただただ、詐欺にあった料金を早く取り戻したい」と話した。
60代と80代の女性は、若返り効果を訴える新聞の折り込み広告を見て訪れた美容クリニックで、「十分な説明がないまま、注射2本でおよそ260万円を請求された」などと主張している。
女性2人はクリニックを開設した医師らを相手取り、およそ1,090万円の損害賠償などを求める訴えを東京地裁に起こした。
弁護団によると、医師らは少なくとも10のクリニックを開設し、14人が同様の被害を受けているという。」


報道の件は,私が担当しているものではありません.
取り込み詐欺にも似た,計画的,悪質なやり方ですから,集団的に対応する必要があるでしょう.
晴柀雄太先生などの会見する姿が放映されています.

同様の被害に遭った方は,泣き寝入りせずに,医療問題弁護団,電話番号03-6909-7680へ


谷直樹

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by medical-law | 2017-12-01 00:36 | 医療事故・医療裁判

横浜地裁平成29年11月29日判決,県立こども医療センターの麻酔事故で約840万円の賠償

神奈川新聞「麻酔26倍で障害 病院に賠償命令」(2017年11月30日)は,次のとおり報じました. 

「県立こども医療センター(横浜市南区)で出生直後に手術を受けた際に医療ミスで脳障害を負い、自閉症や知的障害の発症原因になったとして、横浜市の男性(15)と両親が同センターを運営する県立病院機構に約1億7千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が29日、横浜地裁であった。中平健裁判長は、病院側の不適切な医療行為を認め、慰謝料として約840万円の支払いを命じた。

 判決によると、男性は2002年、出生から2日後に消化器の外科手術を受けた。その際に当初予定の26倍に当たる麻酔導入剤を誤って投与され、一時心停止に陥った。昏睡(こんすい)状態から1週間ほどで回復したが、現在自閉症や中程度の知的障害の症状がある。

 中平裁判長は判決理由で、過剰投与により男性の脳が低酸素状態に陥りダメージを受けたと認定。「過剰投与がなければ、知的障害がなかった相当程度の可能性はあった」とし、「精神的苦痛への慰謝料を賠償すべき」と結論付けた。

 同機構は「判決文を精査して今後の対応を検討したい」とした。」



報道の件は,私が担当したものではありません.
民法709条の損害賠償請求は,①義務違反(「故意又は過失」),②因果関係(「よって」),③損害,の3つの要件をすべて原告側(請求する側)で,主張立証することが必要とされています。医療過誤に基づく場合も同じです.過失があるが,過失と損害との間に因果関係がないと,要件を充たさないので,請求は棄却されます.裁判の立証は,「高度の蓋然性」の程度まで要求されますが,その程度にはいたらないが「相当程度の可能性」が立証された場合は, 損害の一部が賠償されることが,(条文には書いていませんが)判例によって認められています.
そこで,本判決も過失と損害との間の「高度の蓋然性」が立証されていないが,相当程度の可能性」が立証されたとして,約840万円の賠償を命じたのだと思います.一時心停止に陥り1週間昏睡状態だったのですから,脳に不可逆的なダメージを受けていたとしても不思議はありません.ただ,そのことの直接的な証拠を得るのは難しいと思います.過失が大きく,そのためにまれな事態が引き起こされた事案で,直接的な証拠がないことから相当程度の可能性を認定するにとどめるのは,果たして損害賠償法の公平の理念に合致するものか,疑問なしとしません.

谷直樹

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by medical-law | 2017-11-30 23:53 | 医療事故・医療裁判