弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

カテゴリ:人権( 78 )

フロントランナーの肖像,榊原富士子先生

月刊弁護士ドットコムvoL49」の「フロントランナーの肖像」に榊原富士子先生のインタビューが掲載されていました.最近はタバコ関係の訴訟もなく,先生とはすっかりご無沙汰です.

榊原先生は「離婚は珍しくなくなったとはいえ、多くの人は離婚や、婚外子・養子であることに大きな引け目を感じています。今の日本はまだ、婚姻して嫡出子がいて離婚しない家族が一番上の模範型という家族ランキングがある社会です。2015年の最高裁判決では裁判長がまさに、この家族の規格化、嫡出親子であることを周りに示すことが重要で、そのために夫婦同氏が必要だと述べています。しかし、こうしたランキングは模範通りに生きられない多くの人を苦しめます。夫婦別姓訴訟は、『別姓でも、同姓でも、どちらも家族として等価値、家族の形は多様なもので優劣はない』という価値観の体現なのです」と述べています.
記事は「長い間、家族間の苦しみの中でさまざまな橋渡しを担ってきた榊原氏。家族を「つなぐ」役割を若い世代に引き継ぎつつ、自身の最後の大仕事として夫婦別姓訴訟の違憲判決を勝ち取る努力を弛ます、進み続けている。」とまとめます.
別姓訴訟はそういう意義があるのですね.
そんな家族ランキングがあるとは知りませんでした.家族のありかたは多様で,上下や標準があるとは思いもしませんでした.婚姻して嫡出子がいて離婚しない家族はおそらく東京には2,3割もいないでしょう.
私は,人が結婚しようが離婚しようが,子どもがいようがいまいが,まったく関心なく,そのためお祝いのタイミングを逸するすることも度々ありました.

谷直樹

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by medical-law | 2019-10-12 08:52 | 人権

札幌地裁令和元年9月19日判決,HIV感染を伝えなかったことによる内定取消しは違法

読売新聞「HIV感染理由に内定取り消し「違法」…165万円賠償命令」(2019年9月17日)は次のとおり報じました.

エイズウイルス(HIV)感染を理由に病院職員の内定を取り消されたとして、北海道内の30歳代の男性が病院を運営する北海道社会事業協会を相手取り、約330万円の損害賠償を求めた訴訟があり、札幌地裁(武藤貴明裁判長)は17日、「内定取り消しは違法」だとして、同協会に約165万円の賠償を命じる判決を言い渡した。

 男性は2018年7月に提訴していた。訴状によると、男性は17年12月、道内の病院の求人に応募し、社会福祉士として内定を得た。病院はその後、同院に受診歴があった男性のカルテを調査。18年1月、男性が面接時に「持病はない」と虚偽説明したことを理由に、内定の取り消しを告げた。

 男性は09年にHIV感染が判明したがエイズは発症しておらず、訴訟で「エイズ患者への偏見による人権侵害だ」と主張していた。

 判決では、同協会がカルテを調査した点について「医療情報を採用活動に利用し、プライバシーを侵害した」として違法性を認定。男性には、HIV感染を同協会に伝える義務はなかったとして、「内定取り消しは許されない。感染の危険性は小さく、原告の精神的苦痛は甚大だ」として、男性側の主張を認めた。

 判決後、男性は取材に対し「泣き寝入りしなくてよかった。差別や偏見がなくなるわけではないが、社会の認識が変わってくれればうれしい」と話した。

 同協会は「判決内容が届いていないので現時点ではコメントできない」とした。」



報道の件は私が取り扱ったものではありません.
HIV感染についての情報を集め,採用・不採用の判断事由とするのは差別的で合理的理由がないと考えられます.裁判所は,病院側からHIV感染を確認されて否定したことについても,今もなおHIV感染者に対する差別や偏見が解消されていない社会状況を考慮すると非難することはできないとしています.

谷直樹

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by medical-law | 2019-09-17 22:36 | 人権

アウティングされたトランス女性が勤務先病院を提訴(報道)

過去の性別変更を職場でアウティングされたトランス女性が勤務先を提訴」と報じられています.
原告代理人弁護士は仲岡しゅん先生らです.被告は大阪府吹田市の病院と報じられています.
LGBTの人権に配慮が足りない病院は患者の人権にも配慮が足りないのではないかと心配になります.

谷直樹

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by medical-law | 2019-08-30 16:13 | 人権

徳田弁護士50周年講演会

大分合同新聞ハンセン病「衝撃忘れぬ」 徳田弁護士50周年講演会(2019/07/16)は次のとおり報じました.


「徳田靖之弁護士(75)=別府市=の弁護士活動50周年記念講演会が15日、大分市内であった。自身が携わってきた両訴訟や薬害エイズ訴訟、障害のある人や家族らと続けている市民運動などを振り返り、「出会いを大切に生きてきた。50年は通過点。命ある限り、皆さんと共に歩んでいきたい」と語った。」

徳田先生は人に感銘を与える数少ない弁護士の1人です.

谷直樹

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by medical-law | 2019-07-17 05:20 | 人権

元ハンセン病家族訴訟控訴断念

国は元ハンセン病家族訴訟の控訴を断念したとのことです.
朝日新聞が誤報したところからすると,控訴の方針がぎりぎりで転換したのでしょう.
よかったです.
国が作り出した偏見と差別を解消するための取り組みが必要です.
救済の枠組み作りはこれからです.


谷直樹

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by medical-law | 2019-07-09 14:53 | 人権

熊本地裁令和元年6月28日判決,ハンセン病家族訴訟

熊本地裁令和元年6月28日判決(遠藤浩太郎裁判官,鹿田あゆみ裁判官,村井佳奈裁判官)は,元患者家族561人が,国に1人当たり550万円の損害賠償と謝罪を求めた訴訟で,国の責任を認め,原告541人に対し、1人あたり33万から143万円(総額3億7675万円)を支払うよう命じました。
隔離政策見直しの遅れだけでなく,1996年のらい予防法廃止後も,国民への啓発など国が十分な偏見差別除去の措置をとってこなかったことも過失と認めました.

弁護団は,次の声明を発表しました.

「本日、熊本地方裁判所は、ハンセン病であった者の「家族」ら561名が原告となり提起した訴訟において、ハンセン病隔離政策が病歴者本人のみならずその家族らに対しても違法な人権侵害であったことを認める判決を言い渡した。
 本判決は、らい予防法及びそれに基づく隔離政策が、病歴者の家族に対しても違法であったとして、厚生大臣及び国会議員の責任を認めたのみならず、らい予防法廃止後にも厚生及び厚生労働大臣、法務大臣、文部及び文部科学大臣に対し、家族に対する差別偏見を除去すべき義務に反した責任を認めた画期的判決である。

 その一方で、平成14年以降の国の違法行為を認めず、一部の原告の請求を棄却した点は不当と評価せざるを得ない。
 しかし、違法行為の終期に関する法的評価にかかわらず、いまだ社会的に無視できない程度のハンセン病患者家族に対する差別被害が残っていることは、裁判所も認めたとおりであり、その解消に国が責任を負うべきことに変わりはない。

 家族らは、誤った強制隔離政策が実行されていた当時はもちろんのこと、同政策が廃止された後も、その多くが病歴者と切り離され続け、誰にも打ち明けることができず、孤立させられていたために、被害の実態を自ら明らかにし難かった。しかし、国の隔離政策により作出され助長されたハンセン病に対する差別偏見は、患者本人だけでなく、家族らも確実にその渦中に陥れてきたのであり、家族らは、偏見差別をおそれるあまり秘密を抱えて生きることをも強いられ、まさに人生の有り様を変えられてしまう「人生被害」を受けてきた。

 本訴訟は、当初59名の原告で始まった第1次提訴後、裁判の存在を知った多くの家族から声が上がり、わずか数カ月で500名を超える原告による第2次提訴となった。この原告数こそ、家族被害の深刻さと現在性、ひいては社会内におけるハンセン病問題が全面解決に至っていないことを如実に示すものである。

 国は、本判決を真摯に受け止め、控訴することなく直ちに同判決の内容を履行するとともに、差別・偏見の解消、家族関係の回復に向けて、直ちに我々と協議を開始すべきである。
 我々は、ハンセン病問題の真の解決に向けて、なお一層の力を尽くす所存である。本訴訟を支援していただいた市民の方々に、心から御礼を申し上げるとともに、真の全面解決まで、一層のご理解とご支援をお願いする次第である。」


なお,遠藤浩太郎判事は東京地裁にいたことがあります.
鹿田あゆみ判事補も東京地裁にいたことがあります.裁判所と法律事務所の交流で,東京パブリック法律事務所にいたこともあります.
村井佳奈判事補も東京地裁にいたことがあります.
ということは,東京地裁は国寄りという説がありますが,この説はあてにならないようです.

谷直樹

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by medical-law | 2019-07-01 16:53 | 人権

「らい予防法による被害者の名誉回復及び追悼の日」

「ハンセン病療養所入所者等に対する補償金の支給に関する法律」が施行された2001年6月22日にちなみ,6月22日が「らい予防法による被害者の名誉回復及び追悼の日」とされています .
今年は,曜日の関係で,6月21日に厚生労働省の式典が開かれました.
慰霊碑献花の後,厚労大臣、総理大臣(メッセージ)、法務大臣の式辞があり,ハンセン病違憲国賠訴訟全国原告団協議会,全国ハンセン病療養所入所者協議会,遺族代表の挨拶がありました.

谷直樹

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by medical-law | 2019-06-22 08:19 | 人権

東京弁護士会,社会福祉法人の児童養護施設の複数の虐待を認定し是正勧告


東京新聞「「中野の施設で児童虐待」 弁護士会が是正勧告」(2019年5月23日)は次のとおり報じました.

「虐待など事情のある子どもが生活する社会福祉法人の児童養護施設「愛児の家」(東京都中野区)で複数の職員から複数の児童への虐待があったとして、東京弁護士会(東弁)が児童の権利を侵害しないよう今年二月に勧告したことが分かった。二〇一五年に人権救済の申し立てがあり、施設の児童らから独自に聞き取り調査をしていた。この施設については都も通告を二度受けて調査したが、いずれも虐待に当たらないと判断。東弁は都の調査手法も「著しく不適切」と改善を勧告した。 (岡本太、石原真樹、森川清志)

 関係者や入手資料によると、都が虐待通告を受けたのは二〇一三年三月と一四年一月で同じ通告者らからだった。都は一部の児童や職員から聞き取り調査を行い、一度目は職員の強い口調や差別的な発言が不適切などとして口頭で指導する一方、虐待には当たらないと判断。二度目も「特段指導の必要はない」とした。

 東弁は一五年六月に人権救済の申し立てを受け、ほぼ全ての児童らから聞き取り調査を実施。勧告では、高校進学時などに、施設のルールを守らない場合、施設にいられないと約束させる誓約書に署名を求めていたことを問題視。複数の職員で取り囲んで署名を迫ったとし、厚生労働省の虐待対応ガイドラインで「脅かし、脅迫」に当たる心理的虐待だとした。施設側は一七年に誓約書の一部を修正している。

 また、男性職員が反抗的な児童の首周辺を腕で絞め、ソファに押し付けるなどの身体的虐待もあったと判断。施設の女性職員が児童に聞こえるように「ぶす」「死ねよ」などと述べ、男性職員が児童に「頭おかしい」と発言したとした。

 愛児の家の石綿徳太郎施設長は取材に「勧告は事実関係があまりに違う」と事実関係を否定し、施設の職員に弁明の機会がなかったなどとして、東弁に異議申立書を提出したことを明らかにした。

 東弁は都の一度目の調査に対しては、施設を介して聴取対象児童を選び、施設内で聞き取りをしたとして調査手法を問題視。この調査では誓約書の存在も確認できておらず、東弁は厚労省ガイドラインに違反し「著しく不適切」と指摘した。このほか、児童が都児童相談所の職員に「施設の職員に怒鳴られる」と相談したのに都が調査せず、相談内容を施設側に伝えたとも指摘。相談時の事実確認などを定めた児童福祉法に違反するとした。東弁は近く勧告書をホームページに公表する方針。

 都の桑田朋子担当課長は「都の調査は適切に行われたと考えている。児相職員が相談内容を施設側に伝えたとの事実は確認していない」とし、どう対応するか検討するため東弁に問い合わせているとした。

<弁護士会の人権救済申立制度> 弁護士法第1条の「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする」に基づき、各地の弁護士会や日本弁護士連合会が行っている人権救済活動。申し立てがあると調査の必要性や人権侵害の程度などを判断し、勧告や要望などの措置を取る。勧告などに法的拘束力はない。


家庭で虐待されて施設に収容された児童が,もし施設でも虐待を受けていたとしたら足りきれない気持ちです.
施設側は,誓約書を書かせたこと自体は認め,虐待の事実を否認し異議申立を行うようですので,今後さらに調査が行われるでしょう.


谷直樹

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by medical-law | 2019-05-24 08:45 | 人権

憲法記念日(USA)

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今日は,アメリカ合衆国の憲法記念日です.アメリカ合衆国憲法 (United States Constitution)は,1787年9月17日に作成されました.

憲法前文は,次のとおりです.
We the People of the United States, in Order to form a more perfect Union, establish Justice, insure domestic Tranquility, provide for the common defense, promote the general Welfare, and secure the Blessings of Liberty to ourselves and our Posterity, do ordain and establish this Constitution for the United States of America.

第1条で立法,第2条で行政,第3条で司法,第4条で州と連邦,第5条で憲法修正,第6条で最高法規,第7条で批准を,それぞれ定めていました.
連邦国家の創設は,人権侵害の脅威でもあり,憲法制定反対派との取引として権利章典が約束され,1789年に第1修正から第10修正として権利章典が加えられました.
その後,修正第13条で奴隷制廃止,修正第14条でデュー・プロセス,法の下の平等,修正第15条で黒人参政権,修正第19条で女性参政権,修正第26条で18歳以上の選挙権が加えられました.
アメリカ合衆国憲法の修正は人権保障の歴史でした.


谷直樹

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by medical-law | 2018-09-17 05:48 | 人権

京都弁護士会の調査に,京都拘置所は「熱中症が起こらないことは不可能」と回答

毎日新聞「京都拘置所20人 今月24日間 弁護士会が環境調査」(2018年7月26日)は,次のとおり報じました.

「京都弁護士会の人権擁護委員会は25日、連日の猛暑を受けて京都拘置所(京都市伏見区)の収容者に対する熱中症対策について、拘置所で環境調査をした。同日午前10時半ごろの計測で、居室や廊下の気温は34~35度に達しており、今月1~24日の24日間に、計20人が熱中症の症状を訴えて何らかの処置を受けていた。19日午前には、60代と30代の男性収容者2人が救急搬送され、60代男性は一時意識不明になっている。

 弁護士2人が訪れ、職員からの聞き取りと、実地調査を行った。担当した石側亮太弁護士によると、定員は452人で、現在220~230人を収容し、うち女性が約10人。冷房は病舎6室と女性居室2室にしかない。男性の居室は大部屋71室に壁付けの扇風機があるだけで単独室にはなく、廊下の端に大型扇風機があるが、壁やドアで隔てられ、室内に風は入らないという。

 拘置所は各フロアで1日5回室温計測しており、期間中最高だったのは17日午後2時の36・1度。夜間の最高は19日午前0時の34度。収容者にはお茶の他、1日に500ミリリットル入りのスポーツドリンク2本、塩タブレット6個を支給し、就寝時に保冷枕を配布しているという。施設が1961年築と古く、エアコンや扇風機を増設するための配線や電気容量確保が難しいといい、拘置所側は調査に「熱中症が起こらないことは不可能。なるべく症状の軽減を図っている」と回答したという。

 石側弁護士は「それ自体がすごい話。畳に寝転がってみたが、熱が籠もっていて熱く、とても過ごせる環境ではない。推定無罪の収容者に、憲法で禁じられた身体刑を与えているに等しく、法律の拘禁の目的を超えている」と批判。弁護士会から、収容環境の改善を求める勧告などを行うとしている。【澤木政輝】」


ちょうどこの日,京都地裁の期日があり,京都の暑さを体感しました.
京都御所の蝉の声がすさまじく,まさに真夏という感じでした.

24日に名古屋刑務所で1人死亡していますので,緊急に対策が必要でしょう.
弁護士会の勧告ではどのような具体策が提案されるのでしょうか.

谷直樹

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by medical-law | 2018-07-28 09:41 | 人権