弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

カテゴリ:無痛分娩事故( 52 )

「上の子は“ママに会いたい”と」

「女性自身2020年3月17日号」に「『上の子は“ママに会いたい”と』無痛分娩“医療ミス”の悲痛」が掲載されています.


谷直樹

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by medical-law | 2020-03-06 09:43 | 無痛分娩事故

無痛分娩の現在~85施設

無痛分娩の現在を知るには,まず無痛分娩関係学会団体連絡協議会: JALAのサイトをみてください.
「2019年12月11日現在、「無痛分娩施設検索」のコーナーの掲載施設数は85施設になりました。」とのことです。これ以外の施設で無痛分娩を受ける選択肢は,安全性の観点から事実上ないと言ってよいでしょう.


また,東洋経済「「無痛分娩」には一体どれだけの危険が伴うのか その産科が麻酔をしっかりとやれるかが焦点だ 」(2019年12月30日)で河合蘭氏が照井克生先生と田中基先生に聞いた記事が載っています.


◆ 照井先生のお話

「安全性が肝心だと思った照井さんは、まず、『硬膜外無痛分娩 安全に行うために』という医師向けの本を書いた。
 無痛分娩を行う医師なら知らない人はいないこの本を開くと、何度も繰り返されている言葉がある。それは「少量分割注入」という6文字である。麻酔薬は、決して、一度に全量を入れて「この硬膜外腔は本当に狭い空間で奥行きは1センチもないんです。皮膚から硬膜外腔までの深さも人さまざまで、一般的には4~5センチですが私たちの経験では2センチ少々の人から7センチくらいあった人までいました」

 もし針が硬膜を破り、それに密着したクモ膜も破いてしまったらどうなるのか。

 その場合は、麻酔薬が脊髄に直接触れるので薬が10倍くらい強力に効いてしまう。投与量が多いと脳と全身との信号のやり取りが全面的に遮断された「全脊髄くも膜下麻酔」となり、呼吸も心臓も停止する。そこで人工呼吸ができなければ妊婦が亡くなってしまう。

 「だからこそ、薬を少し入れては様子を見る『少量分割注入』は絶対に欠かせないのです。少しの量なら、くも膜下に入っても症状は軽くてすみます。ところが、この『少量分割注入』が、事故が報道されたあるクリニックでは行われていませんでした」

 劇薬・麻薬を扱うことが多い麻酔科医は、事故の防止法やトラブルシューティングをいくつもたたき込まれるが、硬膜外麻酔で最も重要な安全対策は少量分割注入だと照井さんは言い続けてきた。それをしない施設が硬膜外無痛分娩を行っていたという事実は、照井さんにとって衝撃的なことだった。」


◆ 提言後

「厚労省の研究班は、2018年、「無痛分娩の安全な提供体制の構築に関する提言」を発表して、無痛分娩実施施設に求めることを示した。

 そこでは、硬膜外痛分娩を産科医が行うなら「100例程度の経験を有することが望ましい」など一定の基準を満たすことや、麻酔科医から急変時の対応を教わる講習会に参加すべきとされた。麻酔科医が急変時に使用する医療機器や医薬品も、準備すべき物品として示された。

 ただ、始まった講習会は半日から1日程度のもの。それが対象者・目的別に4種類ある。研究班の一員だった照井さんによると、講習会は「すでに経験を積んでいる施設の危機対応能力を強化するもの」。対策は始まったばかりという印象がある。

 無痛分娩を甘く見ている施設の新規参入、提言を無視して無痛分娩を続ける施設をなくす方策は、まだ見えてこない。照井さんによると、アメリカでは、病院が医療行為と専門医制度を連動させた「プリビレッジ(権限)」という規定を設けて、医師が不勉強なまま新しい技術に手を出すことはできないようにしている。日本は、もっぱら医師個人の良心にゆだねた形だ。

 ただ、研究班は、医師が麻酔を行う医師としてふさわしいかどうかを、産む人が判断できる仕組みを作った。関連の学会・団体の手により、無痛分娩施設の情報を公開するウェブサイトが一般に公開された。「無痛分娩関係学会・団体連絡協議会(JALA; Japanese Association for Labor Analgesia)」のホームページにある「全国無痛分娩施設検索」を見ると、無痛分娩の件数、麻酔をかける医師の情報などが施設ごとに掲載されている。はいけないという意味だ。」


◆ 田中先生のお話

「麻酔担当医」の欄は、こう読む


一般人にはなじみのない言葉が並んでいるので、名古屋市立大学病院無痛分娩センター長の田中基さんにこのページの解説をしてもらった。
無痛分娩施設の情報公開ページを開き、基本ポイントを説明してくれた田中さん(筆者撮影)

「まず、このぺージに診療内容の情報を公開しているかどうかが、ひとつの目安です」と田中さん。厚労省研究班は情報を公開すべきだとしたが、実際に掲載されている施設の数は限られている。「載っていない施設は準備中なのかもしれませんが、もしかしたら、あまり公表したくない状況なのかもしれません」

情報が公開されていたら、まず見てほしいのは「麻酔担当医」の欄だという。

「『日本麻酔科学会認定麻酔科専門医』は日本麻酔科学会の試験に合格したいわゆる「麻酔科医」で、麻酔担当医としていちばん安心な資格だと考えられます。その次は『麻酔科標榜医』でしょう。これは厚労省の認定資格で、産科の先生でも麻酔科専門医の下で2年以上研修したら申請できます」

麻酔科専門医、麻酔科標榜医を持つ医師がいなかったら、講習会の受講歴が目安になる。ただ田中さんは、個人的には「産科の先生が無痛分娩を行うなら、麻酔科標榜医を取得してほしい」と考えていた。それは、やはり、呼吸や心臓が止まってしまったときの対応力が大きく変わるからだ。

「無痛分娩の麻酔は、硬膜外麻酔の注射テクニックだけではありません。産後まで続く観察やトラブルシューティングのすべてが麻酔であって、それは麻酔科診療の総合的なトレーニングのうえに成り立っているものです」




谷直樹

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by medical-law | 2019-12-31 13:26 | 無痛分娩事故

アドバンス・ケア・プランニング

厚生労働省は,批判を受け,2019年11月26日、「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」の普及啓発のため作製したポスターの自治体への発送を中止しました.

このアドバンス・ケア・プランニング(ACP)という言葉をよく聞くようになりました.
将来の意思決定能力の低下に備えて、患者家族と,ケア全体の目標や具体的な治療・療養について話し合う過程(プロセス)をアドバンス・ケア・プランニングACP)と言います.
①患者の意思は変化するものですから,医療・ケアの方針を、繰り返し話し合い,患者が価値観を確認すること、②患者が自らの意思を伝えられない状態になる前に患者の意思を推定する者について家族等の信頼できる者を前もって定めておくこと,③話合いの記録を残しておくこと,④そのための法的枠組み等が求められています.

話合いによる患者の自己決定のプロセスを重視するものですが,現実には幾多の困難があります.今回の件は,はからずもこの問題の難しさを提起した結果になったのではないでしょうか.


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by medical-law | 2019-11-27 23:42 | 無痛分娩事故

関西医科大学附属病院が無痛分娩の遠隔管理

株式会社T-ICUは,関西医科大学附属病院・総合周産期母子医療センター産科麻酔チームと共同で,無痛分娩の遠隔サポートについて取り組む試みを開始した,とのことです.

プレスリリース関西医科大学附属病院が無痛分娩の遠隔管理にT-ICUを活用〜無痛分娩の安全性と質の安定に寄与〜

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by medical-law | 2019-11-21 12:40 | 無痛分娩事故

和泉市の無痛分娩死亡事故,大阪第四検察審査会が「不起訴不当」と議決

和泉市の無痛分娩死亡事故について,遺族が平成31年4月9日の大阪地方検察庁の不起訴処分について検察審査会に審査を申し立てていました.
大阪第四検察審査会は,令和元年10月10日「本件不起訴処分は不当である。」と議決しました.(議決書作成は令和元年10月24日です.25日に郵送され,26日に私のもとに届きました.)
「議決の理由」には次のとおり記載されています.

「1 本件は,被疑者から硬膜外麻酔による無痛分娩の施術を受けた被害者が,低酸素脳症となり死亡したという医療過誤事案である。
2 当検察審査会は,被害者の死亡という痛ましい結果を踏まえ,本件不起訴記録並びに審査申立書を精査し,慎重に審査した結果,本件被疑者には,患者が自らの命を託した医師に対する信頼を根底から覆すものというべき過失があると判断し,検察官に再考を求めるため上記趣旨のとおり議決した。」


議決書は過失について具体的に特定していませんが,一般市民の良識として本件の過失が重大で不起訴が不当であることを指摘しています.
無作為に選出された日本国民11人の過半数によるこの議決を真摯に受けとめて,大阪地方検察庁が再捜査して起訴することを切に願います.
医師が添付文書に反する局所麻酔薬の使用により全脊髄くも膜下麻酔(全脊麻)の状態にしたことについては,大阪地方検察庁は捜査を十分尽くされていませんので,しっかり再捜査して起訴していただきたいと思います.
なお,私は本件遺族の代理人です.

谷直樹

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by medical-law | 2019-10-27 03:53 | 無痛分娩事故

京田辺市の医院の帝王切開時の麻酔事故,京都地裁で和解(報道)

産経新聞「出産時の麻酔ミスで母子植物状態、夫らと産院が和解 京都地裁」(2019年9月27日)は,次のとおり報じました.
「帝王切開で出産しようとした際に、麻酔のミスで妊婦だった女性(40)と生まれてきた長女(3)がともに寝たきりの植物状態になったとして、女性の夫(39)らが、京都府京田辺市の医院「○○産婦人科」(平成29年に休院)に約3億3千万円の損害賠償を求めた訴訟が、京都地裁(藤田昌宏裁判長)で和解が成立したことが27日、分かった。和解は19日付。

 和解内容は非公表だが、原告代理人によると、医院側からの解決金と謝罪が盛り込まれているという。

 訴状などによると、女性は28年5月に同医院に入院。帝王切開での出産のため、医師から硬膜外麻酔を受けたが、直後に意識不明となり、首から下が動かない状態となった。長女も出産直後から意識不明で、脳に回復困難な損傷を受けたと診断され、夫らが損害賠償を求め提訴していた。

 同医院での出産をめぐっては、出産時に麻酔で痛みを和らげる無痛分娩(べん)の際に母子が重度の障害を負ったとして、他に1件の損害賠償請求訴訟が京都地裁で係争中。」



報道の件は私が担当した事件ではありません.
大阪高裁で1件和解が成立していますので,同医院の係争中の分娩時の麻酔事件はあと1件です.


谷直樹

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by medical-law | 2019-09-30 17:16 | 無痛分娩事故

和泉市の無痛分娩死亡事故,検察審査会へ審査申立

共同通信「無痛分娩死で検審申し立て、大阪」(2019年7月2日)は次のとおり報じました.

「大阪府和泉市の産婦人科医院○○クリニックで2017年、麻酔で痛みを和らげる「無痛分娩」で出産した長村千恵さん=当時(31)=が死亡した事故で、業務上過失致死容疑で書類送検された男性院長(61)の不起訴処分を不服とし、遺族が2日までに大阪第4検察審査会に審査を申し立てた。受理は6月26日付。

 申立書によると、院長は長村さんの脊髄近くにカテーテルを入れ麻酔薬を注入する硬膜外麻酔を行う際、適切な位置に挿入されているかどうか確認を怠った。麻酔の効き具合の確認などを十分にせず死亡させた過失は重大だとしている。」


上記報道の件は,私が担当している事件です.
6月25日に審査申立書を郵送し,6月26日に受理されました.
過失については,次のとおり主張しています.

「被疑者は,アナペイン注入前の吸引テストを行わず,アナペイン注入後の下肢の運動麻痺の有無の確認もしなかった。被疑者が,カテーテルが適切に留置されているか否かを確認することを怠り,0.75%アナペイン(一般名ロピバカイン)3mLと5mLをそれぞれ注入したことは,業務上の過失にあたる。」

検察審査会の市民感覚に期待したいと思います.

【追記】
産経新聞「無痛分娩死で検審申し立て 院長不起訴に遺族」(2019年7月2日)は次のとおり報じました.

 「大阪府和泉市の産婦人科医院○○クリニックで平成29年、麻酔で痛みを和らげる「無痛分娩」で出産した長村千恵さん=当時(31)=が死亡した事故で、業務上過失致死容疑で書類送検された男性院長(61)の不起訴処分を不服とし、遺族が大阪第4検察審査会に審査を申し立てた。受理は6月26日付。

 申立書によると、院長は長村さんの脊髄近くにカテーテルを入れ、麻酔薬を注入する硬膜外麻酔を行う際、適切な位置に挿入されているかどうか確認を怠った。麻酔の効き具合の確認などを十分にせず、死亡させた過失は重大だとしている。

 2日に大阪市内で記者会見した長村さんの父、安東雄志さん(70)は「起訴すべきものは起訴にして裁判で決着をつけるのが正しいやり方」と訴えた。

 院長は29年10月、大阪府警に書類送検されたが、今年4月に大阪地検が嫌疑不十分で不起訴とした。」


MBS「無痛分娩で出産後に死亡 不起訴不服で遺族が検察審査会に申し立て」(2019年7月2日)は次のとおり報じました.

「大阪府和泉市の産婦人科医院で無痛分娩で出産に臨み死亡した女性の遺族が、院長を不起訴とした検察の処分を不服として検察審査会に申し立てを行い7月2日までに受理されました。

 おととし1月、和泉市の産婦人科医院○○クリニックで、長村千惠さんが無痛分娩で出産中に意識不明となり10日後に死亡しました。その後、クリニックの院長が業務上過失致死の疑いで書類送検されましたが今年4月、不起訴処分となりました。

 遺族らは「誤った位置に挿入されたカテーテルに院長が無痛分娩の麻酔薬を投与したため呼吸が停止した」などと検察審査会に申し立て、7月2日までに受理されたということです。」


読売新聞「無痛分娩で死亡 検審申し立て」(2019年7月3日)は次のとおり報じました.

「大阪府和泉市の産婦人科医院○○クリニックで2017年、無痛分娩(ぶんべん)をした女性が死亡した事故で、夫(35)ら遺族2人が男性院長(61)を不起訴(嫌疑不十分)にした大阪地検の処分を不服として、大阪第4検察審査会に審査を申し立てた。6月26日付。

 事故では、大阪府枚方市の長村千恵さん(当時31歳)が17年1月、出産の痛みを和らげる局所麻酔後、呼吸困難に陥り、10日後に低酸素脳症で死亡。帝王切開で生まれた次女は無事だった。

 大阪府警は17年10月、院長を業務上過失致死容疑で書類送検。地検は今年4月に不起訴としていた。遺族側は申立書で「院長は麻酔の針を深く刺しすぎたのに、刺さり具合を確認する注意義務を怠った」と主張している。」


この読売新聞の報道は正しくありません.遺族は「院長は麻酔の針を深く刺しすぎたのに、刺さり具合を確認する注意義務を怠った」などとは主張していません.麻酔針を深く刺しすぎた事実はありません.刺さり具合を確認する注意義務を主張していません.硬膜外カテーテルが適切に留置されているか否かを確認することを怠ったと主張しているのです.
また,全脊髄くも膜下麻酔は,帝王切開の適応ではありません.つまり,この件は帝王切開すべき事案ではありません.

谷直樹

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by medical-law | 2019-07-02 17:21 | 無痛分娩事故

和泉市の無痛分娩死亡事故大阪地裁に提訴

6月11日,和泉市の無痛分娩死亡事故について,遺族(夫と幼い長女,次女)の代理人として,大阪地裁に訴状を提出しました.これで,大阪地裁での産科事件は2件になりました.
被告は,産科クリニックを開設する医療法人と院長医師です.
請求金額は,9883万1468円です.

事案の概要は,次のとおりです.
被告医師は,平成29年1月10日午後3時20分頃から,被告クリニックの処置室において,妊婦に対し,
①無痛分娩目的で,硬膜外針のベベル(刃面)を硬膜外腔で180度回転させて硬膜を損傷し,
②硬膜外カテーテル(以下「カテーテル」という。)を5cm挿入し(カテーテルの先端は脊髄くも膜下腔にあった。),
③カテーテルが適切に留置されているか否かを確認するための吸引テストを行うことなく,局所麻酔薬0.75%アナペイン(一般名ロピバカイン)3mLを注入し,
④注入後下肢の運動麻痺を調べることなく,さらに吸引テストを行うことなく同アナペイン5mLを注入し,
⑤注入後下肢の運動麻痺を調べることなく,脊髄くも膜下腔に注入した計8mLのアナペインにより高位麻酔とし,
⑥同日午後3時32分に高位麻酔の症状である呼吸苦を訴えた妊婦に高位麻酔の治療を行わず,全脊髄くも膜下麻酔とし,
⑦意識レベル低下,意識消失,呼吸停止,心停止となった妊婦に全脊髄くも膜下麻酔の治療を行わず,無酸素ないし低酸素状態におき,脳機能に不可逆的損傷をあたえました。
妊婦は,同月20日搬送先の総合医療センターにおいて,脳機能損傷により死亡しました。

注意義務違反は次の3点を主張しています.

1 カテーテル挿入後,アナペイン注入前,吸引テストを行ってカテーテルが適切に留置されているか否かを確認すべき義務の違反(確認義務違反)

2 アナペイン注入後,下肢の運動麻痺を調べてカテーテルが適切に留置されているか否かを確認すべき義務の違反(確認義務違反)

3 呼吸苦を訴えた際の,麻酔域を調べ,吸引テストを行ってカテーテルが適切に留置されているか否かを確認すべき義務の違反(確認義務違反)

硬膜外腔にカテーテルを留置して,カテーテルから持続的に局所麻酔薬を注入する方法では,妊婦の体位変動などでいつのまにかカテーテルの先端が脊髄くも膜下腔に迷入することがあります.注意していても,全脊麻になってしまう場合もあります.
本件,その場合と異なります.
本件は,カテーテルを挿入した後,ただの一度も吸入テストを行わず,カテーテルの位置を確認していません.
また,局所麻酔薬を注入した後,カテーテルの先端が脊髄くも膜下腔に迷入していたら2分で下肢に症状が出ますが,本件は,局所麻酔薬注入後,下肢の状態を調べず,カテーテルの位置を確認していません.
確認は,産科医であれば誰でもでき,かつしなければならないことです.それを怠ったことは過失にあたると考えています.

毎日新聞「無痛分娩死亡事故、遺族が産婦人科医院を賠償提訴 大阪」(2019年6月11日)は次のとおり報じました.

「大阪府和泉市の産婦人科医院○○クリニック」で2017年、出産時の痛みを麻酔で和らげる無痛分娩(ぶんべん)に臨んだ女性が死亡した事故で、遺族が11日、医院側に計約9400万円の損害賠償を求める訴えを大阪地裁に起こした。遺族は「事故が二度と繰り返されないよう世の中に訴えたい」と話している。

 訴えたのは夫(35)と娘2人。訴状などによると、事故は17年1月に起きた。長村千恵さん(当時31歳)=同府枚方市=が脊髄(せきずい)付近にある「硬膜外腔(がいくう)」への麻酔を受けた後、呼吸困難となり意識不明に。別の病院に運ばれたが、低酸素脳症で10日後に死亡した。帝王切開で生まれた次女は無事だった。

 遺族側は、手術した男性院長が麻酔薬を注入する前、体内に入ったカテーテルが適切な位置にあるかを確認しなかったと主張。硬膜外腔より深い部分まで薬が入り、麻酔が効き過ぎたことが原因だと訴えている。

 院長は同年10月に業務上過失致死容疑で書類送検されたが、大阪地検が今年4月に不起訴処分(容疑不十分)にしている。

 記者会見した遺族側代理人の弁護士は「麻酔の効き目などを適切に確認すれば防げた事故だ」と指摘。夫は「あいまいな形で決着させたくない。きちんとした判決をもらいたい」と話しているという。

 医院側の代理人は「訴状が届いていないので申し上げることはない」としている。

 遺族側は近く、不起訴処分についても検察審査会に不服を申し立てる。無痛分娩を巡っては重大事故が相次ぎ、他にも訴訟も起きている。【高嶋将之、松本紫帆】」


日本経済新聞「無痛分娩死遺族、医院に損賠提訴 大阪地裁」(2019年6月12日)は次のとおり報じました.

「大阪府和泉市の産婦人科医院で2017年、無痛分娩で出産した長村千恵さん(当時31)が死亡した医療事故で、適切な治療を怠ったのが原因だとして、女性の遺族が11日、男性院長(61)と運営する医療法人に対し、計約9380万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴した。

訴状などによると、院長は17年1月、長村さんに脊髄を保護する硬膜の外側に麻酔薬を注入する「硬膜外麻酔」を施した際、管が適切な位置に挿入されて…」


共同通信「無痛分娩死で産科医院提訴、大阪 「麻酔の確認怠る」」(2019年6月11日)は,次のとおり報じました.」

 「大阪府和泉市の産婦人科医院で17年、麻酔で痛みを和らげる「無痛分娩」で出産した長村千恵さん=当時(31)=が死亡した事故を巡り、麻酔の部位や効き具合の確認を怠ったのが原因だとして、夫(35)らが11日、担当した男性院長(61)と運営元の医療法人に、計約9300万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴した。

 訴状などによると、院長は無痛分娩で次女(2)を出産予定の長村さんに、カテーテルを入れ麻酔薬を注入する硬膜外麻酔を行う際、適切な位置に挿入されているか確認しないまま注入。その後も麻酔の効き具合の確認を怠って意識不明に陥らせ、10日後に死亡させたとしている。」

時事通信「無痛分娩死で医院を提訴=遺族が賠償請求-大阪地裁」(2019年6月11日)は,次のとおり報じました.」

「大阪府和泉市の産婦人科医院で2017年、無痛分娩(ぶんべん)で出産した女性=当時(31)=が死亡した事故で、同府枚方市の遺族が11日、適切な治療を行わず死亡させたとして、運営する医療法人と男性院長を相手に、計約9380万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こした。

 訴状によると、女性は17年1月、同医院で次女を出産する際、麻酔後に呼吸困難で意識不明となり、別の病院に搬送されたが低酸素脳症で死亡した。適切に呼吸を管理すれば死亡を回避できたのに、処置が適切か確認する義務を怠ったと主張している。」 


MBS「「無痛分娩で母親死亡事故、遺族が病院院長を提訴」(2019年6月11日)は,次のとおり報じました.」

「大阪府内の産婦人科医院で、無痛分娩で出産中に意識不明となりその後死亡した女性の遺族が、病院の責任を問うため提訴しました。

 訴状によりますと、おととし1月、和泉市の産婦人科医院○○クリニック」で、長村千惠さん(当時31)が無痛分娩で出産中に意識不明となり、10日後に死亡しました。遺族は、千惠さんが死亡したのは院長が麻酔の際に適切な確認措置を怠ったことが原因だったとして、約9400万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴しました。

 「これはどういう事件だったのか、明らかにしたいという願いがありました」(遺族の代理人弁護士)

 院長は業務上過失致死の疑いで書類送検されていましたが、大阪地検は今年4月に嫌疑不十分で不起訴としていて、遺族はこれを不当として来週にも検察審査会に申し立てを行う予定です。」


読売テレビ「無痛分娩で出産後に死亡 遺族ら「病院側に過失」と提訴」(2019年6月11日)は,次のとおり報じました.」

「無痛分娩で出産後に死亡した女性の遺族が、病院側に過失があったとして、損害賠償を求める裁判を起こした。

 訴状などによると、長村千恵さん(当時31)は一昨年1月、大阪府和泉市の「○○クリニック」で痛みを麻酔で和らげる無痛分娩で出産したが、呼吸困難に陥り、10日後に死亡した。

 長村さんの遺族は、麻酔を投与した男性院長が経過観察を怠ったことなどが死亡の原因だと主張し、約9400万円の損害賠償を求めている。一方、病院側の代理人は「訴状がまだ届いていないので申し上げることはございません」とコメントしている。

 男性院長をめぐっては、業務上過失致死の疑いで書類送検されたが、今年4月、嫌疑不十分で不起訴となっていて、遺族は来週、検察審査会に審査を申し立てる方針。」

関西テレビ 「「無痛分娩」で女性死亡の事故 遺族が病院側に約9300万円の賠償求め提訴」(2019年6月11日)は,次のとおり報じました.

「おととし、大阪府和泉市のクリニックで「無痛分娩」で出産した女性が死亡した事故で、遺族が病院側に9300万円あまりの賠償を求めて提訴しました。

【長村千惠さんの父・安東雄志さん(70)】
「民事で勝っても負けても、どうなっても私の娘は帰ってきません。そんなことじゃなくて私はただ一つ、こういう事故が先進国の日本で起こってほしくない」

おととし、大阪府和泉市の「○○クリニック」で、長村千惠さん(当時31)が麻酔で痛みを和らげる“無痛分娩”で次女を出産しようとしたところ、容態が急変し死亡しました。

その後警察がクリニックの男性院長(61)を業務上過失致死の疑いで書類送検しましたが、ことし4月、検察は嫌疑不十分で男性院長を不起訴処分としました。

長村さんの遺族は院長が麻酔を打つ際に適切に効いているかの確認を怠ったため死亡したなどとして、クリニックと院長に対し、あわせて約9380万円の賠償を求めて大阪地裁に提訴しました。

【遺族の代理人 谷直樹弁護士】
「確認するのは、本当に誰でもできる。ただ、さぼっただけなんですね。怠っただけなんです。医学部の学生が勉強する教科書に書いてあるんです」

【長村千惠さんの父・安東雄志さん(70)】
「(提訴が)医療改革につながってほしいですね。医師は罰すべきじゃないという社会的な認識がある。医師でも悪い人はいる」

遺族は今後、院長を不起訴とした処分についても不当だとして一般の市民からなる検察審査会に申し立てるということです。

クリニック側は取材に対し、「訴状が届いていないので申し上げることはありません」とコメントしています。」

【追記】
第一回期日は,7月29日月曜日午後1時15分1009法廷に決まりました。


谷直樹

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by medical-law | 2019-06-12 23:00 | 無痛分娩事故

京田辺市のクリニックの無痛分娩事故,大阪高裁で和解(報道)

共同通信「無痛分娩ミス訴訟が和解 京都の夫婦と産婦人科医院」(2019年1月7日)は次のとおり報じました.

「麻酔で痛みを和らげる「無痛分娩」で出産しようとした際、医師が適切な処置をせず、生まれた長女が脳性まひを負ったとして、京都府の夫婦が同府京田辺市の医院「○○産婦人科」と院長に計約1億円の損害賠償を求めた訴訟の和解が7日までに、大阪高裁で成立した。

和解条項によると、和解金を7400万円と算定。このうち産科医療補償制度に基づき既に支払われた補償金を差し引いた5840万円を医院側が夫婦に支払う他、障害を負った事実を厳粛に受け止め遺憾の意を表し、夫婦も医院側を刑事告訴しないなどの内容が盛り込まれた。和解は昨年12月7日付。

原告側の請求を棄却した昨年3月の一審京都地裁判決によると、同医院の医師は2011年4月、無痛分娩を行うため母親に硬膜外麻酔をし、子宮収縮剤を投与。長女は帝王切開で生まれたが脳性まひなどの障害を負い、3歳だった14年に急性呼吸不全で亡くなった。

一審判決は、分娩時の子宮収縮剤の過剰投与や、分娩監視装置の未装着など医師の過失を認定。一方、長女が脳性まひを負った点について、装置の記録がなく過失との因果関係の分析に限界があるとし「夫婦の憤りは察するに余りあるが、因果関係は不明と言わざるを得ない」としていた。」


KBS京都「無痛分娩ミス訴訟が和解」(2019年1月7日)は次のとおり報じました.


「無痛分娩で出産しようとした際、医師が適切な処置をせず、生まれた長女が脳性まひを負ったとして京都府の夫婦が京田辺市の産婦人科におよそ1億円の損害賠償を求めた訴訟の和解がきょうまでに大阪高裁で成立しました。去年3月の京都地裁の判決によりますと2011年4月、京田辺市の「○○産婦人科」の医師は無痛分娩のために母親に硬膜外麻酔をし、子宮収縮剤を投与、帝王切開で生まれた長女は脳性まひなどの障害を負い、3歳で亡くなりました。一審判決は子宮収縮剤の過剰投与など医師の過失を認めたものの、長女が障害を負った点との因果関係は不明として、夫婦の請求を棄却しました。先月7日付の大阪高裁での和解条項では和解金を7,400万円と算定し、このうち、産科医療補償制度に基づき、すでに支払われた補償金を差し引いた5,840万円を医院側が夫婦に支払うほか、障害を負った事実を厳粛に受け止め遺憾の意を表すとの内容が盛り込まれました。○○産婦人科に対しては別の2組の母子も無痛分娩や帝王切開の麻酔ミスを巡り、損害賠償を求める訴訟を起こしています。」


朝日新聞「「医師のずさんな管理排除を」無痛分娩で娘亡くした夫婦」(2019年1月7日)は次のとおり報じました.

「無痛分娩(ぶんべん)で医師が適切な処置を怠ったために長女が重い障害を負ったとして、京都府内に住む夫婦が「○○産婦人科」(同府京田辺市)と男性院長に約1億円の賠償を求めた訴訟が、大阪高裁で和解した。

 原告の夫婦は和解前に朝日新聞の取材に応じ、「お金で娘は帰ってこない。ただ医師に反省してほしいだけです」と語った。

 夫婦によると、妻は2010年8月に長女を妊娠。待ち望んでいた第1子で、生まれる前から「元気な子に育ってほしい」と思いを込めた名前を考えていた。周囲で評判が良かった遠くの病院に妊婦健診に通っていたが、自宅に近い○○産婦人科に切り替えた。院長は健診の時から「血圧が高いから無痛がいい」と無痛分娩を勧めたという。

 一審判決によると、出産の日、妻は無痛分娩で異変が起きても決して苦情を言わないとする趣旨の承諾書で無痛分娩に同意したが、リスクの有無などについて説明を受けなかった。

 麻酔薬と陣痛促進剤の投与を受け、4回にわたる吸引分娩でも出産できずに帝王切開に。
 ようやく生まれた長女の産声は聞こえなかった。搬送先の病院で会った時は保育器の中で、何本もの管につながれていた。「なぜこんなことになってしまったのか。涙が止まらなかった」と妻は話す。

 退院後は家族で24時間介護を続けたが、長女は自分の意思で手足を動かすこともできないまま亡くなった。

 提訴に踏み切ったのは長女の身に何が起きたのかを知りたかったからだ。言葉を話すことはなかったが、家族の顔を見ると笑顔を見せ、大好きなアンパンマンの音楽に反応して手足をバタバタさせた。夫婦は「無痛分娩自体は悪くない。ずさんな管理をする医師をきちんと排除できる仕組みをつくってほしい」と訴えた。(大貫聡子)」


報道の件は,私が担当した事件ではありません.(私が担当たのは神戸と大阪の無痛分娩事故です.)
医療過誤訴訟で因果関係は重要な争点になります,京都地裁の判決は疑問の多いものでしたので,高裁で和解が成立してよかったと思います.




谷直樹

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by medical-law | 2019-01-07 20:31 | 無痛分娩事故

第122回産科麻酔学会学術集会サテライト企画市民公開講座(神戸)

神戸新聞「無痛分娩、利点とリスク確認を 神戸で講座」(2018年10月20日)は次のとおり報じました.

 「日本産科麻酔学会学術集会はこのほど、出産時の痛みを麻酔で和らげる無痛分娩(べん)をテーマにした市民公開講座を神戸市中央区の神戸国際会館で開催した。無痛分娩を巡る医療事故が起きていることを踏まえ、産科医と麻酔医の両資格を持つ入駒慎吾会長らが「医療を受ける側も正しい知識を身に付けることが、危険を遠ざけることにつながる」と呼び掛けた。

 無痛分娩は麻酔を使って出産時の痛みを感じにくくする方法。背中の脊髄神経に近い硬膜外腔という部分に局所麻酔薬を投与する「硬膜外麻酔」が主に用いられる。

 公開講座では入駒医師が利点とともに、陣痛促進剤の使用量増加や合併症が起こる可能性などを紹介。合併症の主な要因として麻酔薬の誤注入について取り上げた。

 血管内に誤って麻酔薬が入って起きる局所麻酔中毒は、呼吸や心臓が止まる危険性があるが「薬を薄めて使用すれば、致死的な症状を回避する方向には近づけられる」と説明した。
 また、硬膜外腔より中心にあるくも膜下に薬が入った際に起きる全脊髄くも膜下麻酔は、脳に麻酔が効くため、呼吸停止などを引き起こし、低酸素脳症を発症することもある。入駒医師は「患者さんがこのような状態になっても対応できるよう(医師が)トレーニングをし、異変を発見したら人工呼吸で対応できるようにすれば、命を失うことはなくなるはず」と話した。

 その上で、受講した妊婦らに対し、「自分の受ける医療行為を正しく知り、(医師に)一つずつ確認していくことで、危険から遠ざかることができる」と語り掛けた。

 このほか、聖隷浜松病院の山下亜貴子医師が登壇し、無痛分娩が日本で普及しにくい理由を、海外に比べて出産施設が分散し、産科医の負担が大きいことや、「おなかを痛めるのが母性」などの意見が背景にあると指摘。「無痛分娩で(痛みという)精神的な負担は減り、疲労感は少なくなる」とした。(篠原拓真)」


第122回産科麻酔学会学術集会サテライト企画市民公開講座は浜松でも9月に開催されました.
第122回産科麻酔学会学術集会は11月23日に浜松で開催されます.


谷直樹

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by medical-law | 2018-10-23 07:53 | 無痛分娩事故