弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

カテゴリ:無痛分娩事故( 51 )

日本産婦人科医会の全国調査,2016年の分娩中無痛分娩が5.2%,その58%が診療所(報道)

日本産婦人科医会の全国調査,2016年の分娩中無痛分娩が5.2%,その58%が診療所(報道)_b0206085_12573053.jpg日本産婦人科医会が,6月に,全国の分娩を扱う約2400の医療機関に過去3年間の実施状況を聞いたところ約4割から回答があったとのことで,その内容が公表されました.

無痛分娩の実施率;
2014年度は3.9%
2015年度は4.5%
2016年度は5.2%

2016年度の無痛分娩による出産約2万1000のうち
病院での実施は約8850件(病院での出産数の4.7%)
診療所(医院)での実施は約1万2150件(診療所での出産数の5.6%)

NHK「無痛分べんの約6割 診療所で実施」(7月20日)によれば,「日本産婦人科医会の石渡勇常務理事は「無痛分べんは適切に行えば安全だが、麻酔による中毒症状や合併症を引き起こす可能性がある。診療所では対応しきれないケースがあるので、地域の医療機関と連携する態勢づくりが必要だ」と話しています。」とのことです.

読売新聞「無痛分娩 6割が診療所、16年度調査…欧米は大病院主流」(7月20日)によれば,「無痛分娩が普及する欧米では、産科医、麻酔科医、新生児科医がそろった大病院で行うのが主流だが、国内では小規模な医療機関に広がっていた。無痛分娩を巡っては、最近、大阪、兵庫、京都の4医療機関で計6件の産科麻酔を巡る事故が発覚したが、6件のうち5件が診療所での事例だった。」「無痛分娩を巡り重大事故が相次ぎ発覚する中、小規模な医療機関でより多く行われている実態が判明し、安全な体制整備の必要性が浮き彫りになった。調査結果は近く発足する厚生労働省研究班で分析し、安全対策に生かす。」とのことです.

この調査により,問題の所在が浮かび上がってきたようです.
研究班の検討に注目したいと思います.

谷直樹

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by medical-law | 2017-07-20 22:20 | 無痛分娩事故

公益社団法人日本産科婦人科学会回答,ご要望について本会のなかで十分に議論して対応を検討していきたい

公益社団法人日本産科婦人科学会回答,ご要望について本会のなかで十分に議論して対応を検討していきたい_b0206085_9511211.jpg
公益社団法人日本産科婦人科学会より,7月10日付けの下記書面が,遺族の連絡先である当事務所に届きました.
なお,原文の夫名は,Aと表記しました。

「このたびの、A様の奥様に起きた医療事故について、心よりお悔やみ申し上げます。また、お子様の病状が快方に向かわれることを心より祈念しております。
 今回、A様から「無痛分娩事故の遺族(夫)よりの要望書」をお送りいただき、大変ありがとうございます。ご要望について、本会のなかで十分に議論して対応を検討していきたいと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。」


メールで直ちに遺族に伝えました.
日本産科婦人科学会のすみやかな回答に感謝し,真摯で実効的な対応を期待いたします.

谷直樹

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by medical-law | 2017-07-11 18:00 | 無痛分娩事故

2015年に神戸市西区で起こった無痛分娩事故についての遺族の要望書

2015年に神戸市西区で起こった無痛分娩事故についての遺族の要望書_b0206085_18154100.jpg
2015年に神戸市西区で起こった無痛分娩事故についての遺族の要望書は,次のとおりです.

                                      2017年7月4日
厚生労働大臣 塩 崎 恭 久 様
公益社団法人日本産科婦人科学会 理事長 藤 井 知 行 先 生
公益社団法人日本産婦人科医会 会長 木 下 勝 之 先 生
日本産科麻酔学会 会長 海 野 信 也 先 生


             無痛分娩事故の遺族(夫)よりの要望書

1 要望
私の妻に起きた医療事故が今後起きないように、この医療事故と無痛分娩が原因と疑われる医療事故、ヒヤリハットがどれくらい起きているのか、をきちんと調べて公表してくださるようお願いいたします。そして、もしその原因が、今の医療体制にあるのであれば、医療体制の充実をはかってほしいと思いますし、産科医が外来の片手間に無痛分娩(硬膜外麻酔)を行うようなことが絶対にないようにしていただきたく、お願いいたします。

2 神戸市西区のクリニックでおきた医療事故
【2015年9月2日の経過】
9時15分 テストドーズ後院長医師は外来へ
      妻は車椅子で別の部屋(分娩室)へ移動
9時35分 硬膜外麻酔開始、院長医師は再び外来へ
9時40分 気分不良、嘔吐
9時51分 呼吸困難、看護師がドクターコール
9時58分 心電図装着 酸素投与
9時59分 搬送依頼
10時00分 呼吸できず
10時07分 呼びかけに反応せず
10時08分 血圧測定できず
10時10分 救急隊要請
10時15分 救急隊到着、心電図PEA(心静止)
10時28分 救急車内収容
10時46分 神戸大学病院に到着
10時56分 緊急帝王切開で児娩出、新生児仮死、蘇生
11時02分 妻心拍再開

2015年9月2日、無痛分娩の硬膜外麻酔によって、妻は重大な後遺障害を負い、意識を取り戻すことなく、2017年5月12日に亡くなりました。緊急帝王切開で生まれた子どもも、脳に大変重い障害を負い、現在も意識のないまま入院生活をおくっています。

私たち夫婦にとっては初めての子で、妊娠がわかってからの毎日は幸せでいっぱいでした。子どもが産まれからの日々を想像し、二人で沢山の夢を語り合ってきました。家族や友人と一緒に旅行に行こう、年の近い姪や甥と子どもを連れてショッピングに行こう、お互いの両親の家に子どもを連れて遊びに行こうといった、ごく平凡ではありますが幸せな家族の姿を思い描き、語り合ってきましたが、全てが今回の事故により失われてしまいました。

医療事故は、無痛分娩のための硬膜外麻酔のカテーテルがくも膜下腔にまで達し、くも膜下腔に局所麻酔薬が浸潤し中枢神経系の大部分に麻酔が作用した状態(全脊麻)となってしまったことが原因でした。搬送された神戸大学病院で行われた画像検査と、チューブから髄液が引けたことから、このことは確認されています。
事故後に知ったことですが、硬膜を穿破し全脊麻になると、急速に産婦は意識を消失し、徐脈、低血圧、呼吸停止と進行し、放置すると心停止に至ると木下勝之先生が監修した本に書いてありました。
これも事故後に知ったことですが、硬膜外麻酔を行う場合には、試験的に少量の麻酔薬を投入し観察すること(テストドーズ)、硬膜外麻酔の開始後も医師が産婦に付き添って観察することが求められています。

院長医師は、妻に麻酔薬を投与し、外来に行ってしまっていたために、妻の異変に気付かず、対応も遅れ、取り返しのつかない結果になってしまいました。
硬膜外麻酔自体は出産以外でも行われていますし、私は、硬膜外麻酔自体を否定するわけではありませんが、一人の医師が外来診療を行いながら硬膜外麻酔を行うのは絶対に止めてほしいと思います。

3 無痛分娩まで
里帰り出産を希望していた妻は、実家に最も近い神戸市西区のクリニックにお願いすることにしました。クリニックの口コミ評判や和室の分娩室が設置されていることも決め手となりました。妻は、無痛分娩の希望は全くありませんでしたが、院長医師に児が大きいことを理由に無痛分娩を強く勧められました。
分娩前日夜、陣痛促進剤を投与し陣痛が起きており、私は立会分娩に備え、妻と共にクリニックの病室で一緒に夜を明かしました。しかし、一夜明けても本格的な陣痛が来なかったことから、医師の強い勧めにより無痛分娩と吸引分娩を併用することとなり、硬膜外麻酔を実施することとなりました。
たしかに、「無痛分娩についての説明と同意書」には、「低血圧、頭痛(1%)、微弱陣痛による陣痛促進剤の使用、吸引分娩の頻度増加、薬剤アレルギー、血管内誤注入、感染、出血、麻酔薬のくも膜下投与による広範囲麻酔、神経障害(異常感覚)等が起こりえます。なお不明な点は、担当医にご質問ください」と印字で書いてありましたが、まさかこのような最悪の事態になるとは思いもしませんでした。

4 テストドーズ
院長医師は、9時15分に、オペ室で試験的に少量の麻酔薬を投入した(テストドーズ)後、外来に行ってしまいました。
私は、オペ室の看護師から呼び出されました。妻の足がしびれ、自足歩行ができず、車いすに乗せるに際し男性の手伝いがほしいとのことでした。私は妻を支え、車いすに乗せました。妻は、車椅子で分娩室に移動しました。
これも事故後に知ったことですが、テストドーズ後、「たとえくも膜下腔に誤注入しても、両下肢が動かなくなった段階で異常に気づく。その後の注入を止めれば、全脊麻に至ることはまずない」と木下勝之先生が監修した本に書いてありました。

5 硬膜外麻酔
院長医師は、9時35分に、分娩室に来て、本番の麻酔投与を行ない、再び外来に行ってしまいました。
麻酔投与後、妻は気分が悪くなり、吐きました。
子どもの心拍が下がり始め、看護師は何度か姿勢を変えさせたりしていました。そうこうしている間に妻の呼吸の様子が変わってきました。看護師は、妻に心拍計を付けようとしましたが、うまく心拍を計ることができず、酸素マスクを用意しながら、ドクターコールをしました。これが9時51分のことです。
妻は「息ができない」と細い声で私に言いました。その後、意識を失いました。
救急隊が到着し、妻は大学病院に緊急搬送されると聞き、私たちも急ぎ後を追いかけました。

6 搬送後
神戸大学病院の先生によると、当病院に到着した時は既に母子共に心拍停止状態となっていたものの、到着10分後に緊急帝王切開を行い、母子各々懸命に蘇生措置を行うことで、心臓の鼓動が戻ったと知らされました。
その時は一瞬助かったのかもしれないと思いましたが、その後、無呼吸状態が続いたことにより脳が低酸素状態に陥っており、大きなダメージを負っていると聞かされました。
自発呼吸はできず、人工呼吸器に繫がれ、身体には様々な計器をつけられた妻と子どもに会いました。
脳のダメージを最小限に抑えるため、脳を冷やすことにより腫れを抑えること(低体温療法)となりました。数日間低体温療法を行ったものの、やはり初期のダメージが大きく、脳機能が回復することはありませんでした。
妻は低酸素脳症と診断され、いつ心臓が停止するか分からない状態が続きました。途中、肺炎を患いながらも、何とか初期の危機的状態を脱し、集中治療室から一般病棟へ移りました。病棟を移ってからも、当然ですが意識は戻らず常に人工呼吸器管理が続き、途中腎臓機能の調子が悪くなるなど、死を覚悟することも何度もありました。
私は都内に勤務する会社員ですが、神戸にある妻の実家に宿泊し、約半年の長期に亘り、毎日病院に通いました。回復は望めないと医学的には言われてはいるものの、もしかしたら奇跡が起きるかもしれない、また厳しい状態にある中では限られた時間を少しでも共に過ごしたいという思いで妻と子どもに接してきました。

7 妻のこと
妻は面倒見もよく、人を大事にし、誰にでも好かれ、慕われる性格の女性でした。
妊娠後は、産まれてくる子どものために必要なものを準備をして、その日を待っていました。時にお腹の中で動き回る子どもの様子などを動画で撮影し嬉しそうに見せてくれたりもしました。
約1年半もの間妻は頑張り続けましたが、今年の5月12日に息を引き取りました。
亡くなったのは急でしたが、神戸で行われた告別式には、遠方にもかかわらず会社の部下、上司、同僚が東京から数多く駆け付けてくださいました。これほど多くの方にお見送りしていただけるとは思ってもみませんでした。

8 子どものこと
子どもも母体同様、出産直後の懸命な蘇生により心臓の鼓動は回復しましたが、脳に大きなダメージを受けました。産まれてから一度も意識は回復せず、自発呼吸もできず人工呼吸器による管理が続いております。胃瘻により栄養剤を胃に注入しており身体は徐々に大きくはなっておりますが、既に脳細胞はほぼ死滅しており今後の回復は望めない状態です。脳による自律的な体のバランス調整が機能せず電解質の濃度が大きく変動したり、肺炎を患うなど厳しい状態が続いております。

9 今の思い
この日の出来事をきっかけに私たちの人生は大きく変わってしまいました。
皆に愛された妻、何の罪もない我が子が、なぜ命を失い、あるいは将来の希望を断たれてしまったのか、悲しくて悔しくてたまりません。これからの人生を孤独に生きて行くことも苦しく、考えるだけで胸が張り裂けそうになります。
今でも幼い子どもを連れた家族連れを目にするだけで心が大きく痛み、しばらくの間は、家族連れが集う近所のスーパーに行くことすら苦痛でした。
事故以降、心の底から楽しいと思えた瞬間はありませんし、これからも苦しみを抱えながら生きていきます。私が今できることは、無痛分娩のリスクを伝え、二度と同じような事故が起こらないようにお願いすることだけです。

【報道】
これを受けて,朝日新聞は,次のとおり報道しました.
無痛分娩の死亡事故「調査と体制改善を」 遺族が要望書」
http://www.asahi.com/articles/ASK754SR6K75PLBJ001.html
神戸の産婦人科医院で2015年、麻酔でお産の痛みを和らげる「無痛分娩(ぶんべん)」をした女性が麻酔の直後に容体が急変し、今年5月に死亡した事故で、女性の夫は5日までに、無痛分娩に関わる事故の調査、公表や医療体制の改善を求める要望書を、厚生労働相や関係する学会に送った。
要望書では、担当した医師が1人だったにもかかわらず麻酔後に女性のそばを離れたために異変の察知や対応が遅れたと指摘。「産科医が外来の片手間に無痛分娩を行うようなことが絶対ないようにして欲しい」と要望している。
代理人の弁護士や遺族らによると、女性は15年9月、神戸市西区の「○○クリニック」で、背中に細い管を入れて麻酔薬を注入する「硬膜外麻酔」という方法で無痛分娩に臨んだが、麻酔後に容体が急変。担当医師は1人で、麻酔後に外来対応のため席を外していた。女性は運ばれた病院で意識が戻らないまま今年5月に35歳で亡くなった。帝王切開で生まれた長男(1)も、重い脳性まひという。
要望書では、第1子の誕生を楽しみにしていたことや、女性や回復が望めない長男の元を「奇跡が起きるかもしれない」と願いながら見舞い続けたことなどもつづられている。そして「私が今できることは無痛分娩のリスクを伝え、二度と同じような事故が起こらないようにお願いすることだけ」と結んでいる。(石塚翔子)


読売テレビは,次のとおり報道しました.
無痛分娩で死亡 医療体制の充実を国に要望
http://www.ytv.co.jp/press/kansai/D16445.html
一昨年、神戸市の産婦人科医院で無痛分娩を行い、今年5月に亡くなった女性の夫が、国に対して医療体制の充実を訴える要望書を提出した。要望書は塩崎厚生労働大臣や日本産婦人科医会に宛て、4日に郵送された。要望書を提出した男性の妻は一昨年9月、神戸市西区の「○○クリニック」で無痛分娩による出産に臨んだが、麻酔が効きすぎたことで意識不明になり、今年5月に死亡した。生まれた長男は今も意識不明のまま。当時、医師は1人だけで麻酔後に外来診療のために分娩室を離れていた。要望書の中で男性は「産科医が外来の片手間に無痛分娩を行うことが絶対にないようにしてほしい」と医療体制の充実を訴えている。日本産婦人科医会は、無痛分娩の実態調査を始め、秋ごろに結果をまとめることにしている。

NHK(兵庫)は,次のとおり報道しました.
無痛分べん事故 厚労相に要望書
http://www3.nhk.or.jp/lnews/kobe/2024884751.html
おととし、神戸市の産婦人科の診療所で、麻酔を使って陣痛を和らげる「無痛分べん」での事故が原因で妻を亡くした男性が、厚生労働大臣などに対し、事故の原因究明と再発防止を求める要望書を送りました。
おととし9月、神戸市西区の「○○クリニック」で、無痛分べんで出産しようとした当時33歳の女性が、陣痛を和らげるための麻酔薬を投与されてから意識不明となり、ことし5月に亡くなりました。
また、産まれてきた男の子も重い脳性まひで、今も入院しています。
この事故で妻を亡くした男性は、代理人の弁護士を通じて塩崎厚生労働大臣などに対し、4日、事故の原因究明や再発防止を求める要望書を送りました。
このなかで男性は、「妊娠が分かってからの毎日は幸せでいっぱいでした。幸せな家族の姿を思い描き、語り合ってきましたが、全てが今回の事故により失われてしまいました」と苦しい胸の内を語っています。
今回の事故では、当時、無痛分べんを院長が1人で担当し、麻酔薬を投与した後、現場を離れて外来の診療を行っていたということで、病院側は遺族に示談金を支払っています。
これについて男性は、要望書の中で、「原因が今の医療体制にあるのであれば、医療体制の充実をはかってほしいと思いますし、外来の片手間に無痛分べんを行うようなことが絶対にないようにしていただきたい」と訴えています。


共同通信は,次のとおり報道しました.
無痛分娩の実態把握要請 神戸の医療事故で出産女性の夫
https://this.kiji.is/255243747903275009?c=39546741839462401
神戸市の産婦人科医院で15年9月、麻酔で痛みを和らげる「無痛分娩」により出産した女性と生まれた男児が重い障害を負った問題で、夫(32)は5日、厚生労働省や日本産婦人科医会などに、無痛分娩が原因と疑われる医療事故の実態調査などを求める要望書を出したことを明らかにした。
女性は医療事故で脳に重い障害を負い、意識を取り戻さないまま今年5月に死亡。男児も意識がないまま入院が続いている。
夫は要望書で「子どもが生まれてからの日々を想像し夢を語り合ってきたが、全てが失われた。私ができることはリスクを伝え、二度と事故が起こらないようお願いするだけだ」と心境を説明した。


神戸新聞は,次のとおり報道しました.
「無痛分娩事故の実態調査を 被害者遺族が要望書」
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170705-00000011-kobenext-l28
神戸市西区の産婦人科医院で2015年9月、麻酔を使って出産の痛みを和らげる「無痛分娩」の際に起きた医療事故で、亡くなった女性の夫(32)=東京都港区=が5日、無痛分娩が原因と疑われる医療事故の実態調査などを求め、塩崎恭久厚生労働相や日本産科婦人科学会の藤井知行理事長ら宛てに要望書を出したことを明らかにした。
女性は無痛分娩の際の麻酔が脊髄の中心近くに達したとみられ、呼吸できなくなったという。脳に損傷を負い、意識不明の重体のまま事故から約1年8カ月後に死亡。生まれてきた長男(1)は脳細胞がほぼ死滅し、肺炎を患うなど重篤な状況が続いているという。
要望書では、女性の事故のほか、無痛分娩が原因と疑われる事故や「ヒヤリハット」事案などを調べて公表し、事故防止のための医療体制の充実を図るよう求めた。また女性の場合と同様、医師が外来診療をしながら「硬膜外麻酔」を使った無痛分娩をさせることがないよう訴えている。
夫は「皆に愛された妻、何の罪もないわが子がなぜ、命を失い、将来の希望を断たれたのか。無痛分娩のリスクを伝え、二度と同じような事故が起こらないようにお願いしたい」としている。(篠原拓真)


読売新聞は,次のとおり報道しました.
神戸の無痛分娩、遺族が要望書で心境
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20170706-OYTET50009/?catname=news-kaisetsu_news
「相次いで発覚している無痛 分娩 を巡る母子の重大事故。神戸市西区の産婦人科診療所で2015年9月、無痛分娩の麻酔後に急変し、脳に重い障害を負って寝たきりとなり今年5月に死亡した女性の夫が厚生労働相や日本産科婦人科学会など関連学会のトップあてに提出した要望書には、再発防止への願いとともに、亡くなった妻や、今も意識不明で寝たきりの我が子に対する思いが書き添えられていた。
 要望や遺族の心境などに関する内容は以下の通り(要望書より抜粋)。
・ 要望
 私の妻に起きた医療事故が今後起きないように、この医療事故と無痛分娩が原因と疑われる医療事故、ヒヤリハットがどれくらい起きているのか、をきちんと調べて公表してくださるようお願いいたします。そして、もしその原因が、今の医療体制にあるのであれば、医療体制の充実をはかってほしいと思いますし、産科医が外来の片手間に無痛分娩(硬膜外麻酔)を行うようなことが絶対にないようにしていただきたく、お願いいたします。
・ 神戸市西区のクリニックでおきた医療事故
(中略)
 2015年9月2日、無痛分娩の硬膜外麻酔によって、妻は重大な後遺障害を負い、意識を取り戻すことなく、2017年5月12日に亡くなりました。緊急帝王切開で生まれた子どもも、脳に大変重い障害を負い、現在も意識のないまま入院生活をおくっています。
 私たち夫婦にとっては初めての子で、妊娠がわかってからの毎日は幸せでいっぱいでした。子どもが生まれてからの日々を想像し、二人で 沢山 の夢を語り合ってきました。家族や友人と一緒に旅行に行こう、年の近い 姪 や 甥 と子どもを連れてショッピングに行こう、お互いの両親の家に子どもを連れて遊びに行こうといった、ごく平凡ではありますが幸せな家族の姿を思い描き、語り合ってきましたが、全てが今回の事故により失われてしまいました。
(中略)
 院長医師は、妻に麻酔薬を投与し、外来に行ってしまっていたために、妻の異変に気付かず、対応も遅れ、取り返しのつかない結果になってしまいました。
 硬膜外麻酔自体は出産以外でも行われていますし、私は、硬膜外麻酔自体を否定するわけではありませんが、一人の医師が外来診療を行いながら硬膜外麻酔を行うのは絶対に 止 めてほしいと思います。
・ 無痛分娩まで
 里帰り出産を希望していた妻は、実家に最も近い神戸市西区のクリニックにお願いすることにしました。クリニックのロコミ評判や和室の分娩室が設置されていることも決め手となりました。妻は、無痛分娩の希望は全くありませんでしたが、院長医師に胎児が大きいことを理由に無痛分娩を強く勧められました。
 分娩前日夜、陣痛促進剤を投与し陣痛が起きており、私は立ち会い分娩に備え、妻と共にクリニックの病室で一緒に夜を明かしました。しかし、一夜明けても本格的な陣痛が来なかったことから、医師の強い勧めにより無痛分娩と吸引分娩を併用することとなり、硬膜外麻酔を実施することとなりました。
 たしかに、「無痛分娩についての説明と同意書」には、「低血圧、頭痛(1%)、微弱陣痛による陣痛促進剤の使用、吸引分娩の頻度増加、薬剤アレルギー、血管内誤注入、感染、出血、麻酔薬のくも膜下投与による広範囲麻酔、神経障害(異常感覚)等が起こりえます。なお不明な点は、担当医にご質問ください」と印字で書いてありましたが、まさかこのような最悪の事態になるとは思いもしませんでした。
(中略)
・ 妻のこと
 妻は面倒見もよく、人を大事にし、誰にでも好かれ、慕われる性格の女性でした。
 妊娠後は、生まれてくる子どものために必要なものを準備をして、その日を待っていました。時にお 腹 の中で動き回る子どもの様子などを動画で撮影し 嬉 しそうに見せてくれたりもしました。
 約1年半もの間、妻は頑張り続けましたが、今年の5月12日に息を引き取りました。亡くなったのは急でしたが、神戸で行われた告別式には、遠方にもかかわらず会社の部下、上司、同僚が東京から数多く駆け付けてくださいました。これほど多くの方にお見送りしていただけるとは思ってもみませんでした。
・ 子どものこと
 子どもも母体同様、出産直後の懸命な蘇生により心臓の鼓動は回復しましたが、脳に大きなダメージを受けました。生まれてから一度も意識は回復せず、自発呼吸もできず人工呼吸器による管理が続いております。 胃瘻 により栄養剤を胃に注入しており身体は徐々に大きくはなっておりますが、既に脳細胞はほぼ死滅しており今後の回復は望めない状態です。脳による自律的な体のバランス調整が機能せず電解質の濃度が大きく変動したり、肺炎を患うなど厳しい状態が続いております。
・ 今の思い
 この日の出来事をきっかけに私たちの人生は大きく変わってしまいました。
 皆に愛された妻、何の罪もない我が子が、なぜ命を失い、あるいは将来の希望を断たれてしまったのか、悲しくて悔しくてたまりません。これからの人生を孤独に生きて行くことも苦しく、考えるだけで胸が張り裂けそうになります。
 今でも幼い子どもを連れた家族連れを目にするだけで心が大きく痛み、しばらくの間は、家族連れが集う近所のスーパーに行くことすら苦痛でした。
 事故以降、心の底から楽しいと思えた瞬間はありませんし、これからも苦しみを抱えながら生きていきます。私が今できることは、無痛分娩のリスクを伝え、二度と同じような事故が起こらないようにお願いすることだけです。」


【追記】

公益社団法人日本産科婦人科学会より,7月10日付けの下記書面が,遺族の連絡先である当事務所に届きました.
なお,原文の夫名は,Aと表記しました。

「このたびの、A様の奥様に起きた医療事故について、心よりお悔やみ申し上げます。また、お子様の病状が快方に向かわれることを心より祈念しております。
 今回、A様から「無痛分娩事故の遺族(夫)よりの要望書」をお送りいただき、大変ありがとうございます。ご要望について、本会のなかで十分に議論して対応を検討していきたいと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。」


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by medical-law | 2017-07-05 12:58 | 無痛分娩事故

当職が担当した2015年9月の神戸市西区の産婦人科医院の無痛分娩事故

神戸新聞「無痛分娩ミス女性死亡 麻酔で呼吸困難、子も障害」(2017年6月29日)は,次のとおり報じました.

「神戸市西区の産婦人科医院で2015年9月、麻酔を使って痛みを和らげる「無痛分娩」で出産した女性が、生まれてきた長男(1)とともに重い障害を負っていたことが28日、関係者への取材で分かった。麻酔が脊髄の中心近くに達したとみられ、女性が呼吸できなくなったという。女性は低酸素脳症が原因の多臓器不全のため、今年5月に35歳で亡くなった。同医院は責任を認め、示談金を遺族に支払った。

 女性の遺族と代理人弁護士によると、医院は「○○クリニック」。出産に立ち会った男性院長は、脊髄を保護する硬膜の外側(硬膜外腔)に背中から管を入れ麻酔薬を注入する「硬膜外麻酔」を施した直後、外来診察のため女性のそばを離れた。その際、麻酔薬が硬膜外腔より深部で脊髄中心近くのくも膜下腔に入ったとみられ、麻酔の効果が急速に現れた女性は呼吸困難に陥ったという。

 女性は別の病院で緊急帝王切開を受け、長男を出産したが、低酸素状態となった。脳に損傷を受けたため、長期間意識が戻らない遷延性意識障害に陥り、今年5月12日に死亡。長男は生まれてすぐ呼吸・循環不全に陥り、脳に酸素が十分に行き渡らなくなって障害を負ったため、現在も入院している。

 同クリニックは昨年12月に院長の過失を認め、その後、遺族に示談金を支払ったが、遺族によると、女性の死後も謝罪に訪れたことはないという。

 女性の夫(32)=東京都港区=は「出産にリスクがあったとしても対応できると思ってお願いした。対応できないのになぜ、院長は無痛分娩をさせたのか。なぜ、その場から離れてしまったのか。防げた事故だと思う」と話した。

 同クリニックは神戸新聞社の取材に回答していない。

 無痛分娩を巡っては全国的な実施総数さえ不明だが、今年4月以降、大阪府和泉市、神戸市中央区、京都府京田辺市などで、麻酔や陣痛促進剤の投与を受けた妊産婦の死亡、重症化が相次いで判明。神戸市中央区の産婦人科病院の担当医師に対しては、死亡した女性の遺族が刑事告訴した。これらを受け、日本産婦人科医会は実態調査に乗り出している。

最期の言葉は「息できない」 無痛分娩医療事故

「神戸市西区の産婦人科医院で2015年9月、麻酔を使って痛みを和らげる「無痛分娩(ぶんべん)」で出産した女性が、生まれてきた長男(1)とともに重い障害を負っていたことが28日、関係者への取材で分かった。麻酔が脊髄の中心近くに達したとみられ、女性が呼吸できなくなったという。女性は低酸素脳症が原因の多臓器不全のため、今年5月に35歳で亡くなった。同医院は責任を認め、示談金を遺族に支払った。

 産婦人科医院「○○クリニック」で起きた「無痛分娩」の際の医療事故。亡くなった女性の夫(32)=東京都港区=らは「『息ができない』と話したのが最期の言葉だった」と涙を浮かべながら経緯を打ち明けた。

 初産だった女性。小柄な体形に比べ、おなかが大きくなっていた。同クリニックは実家に近く、当初は自然分娩の予定だった。遺族によると、男性院長からは、出産が困難な際に吸引カップを使う「吸引分娩」をしながら無痛分娩をすることを提案されたという。女性の母親(60)=同市西区=も止めたため、女性はためらっていたが、院長から説明を受ける中で「病院だから大丈夫だよね」と、無痛分娩での出産を決めた。

 出産は朝から始まり、「硬膜外麻酔」の開始直後、院長は外来診察で呼ばれ離席。麻酔薬の投与が進むにつれ女性の体調は徐々に悪化し、おなかの子どもの心拍数も下がり始めた。

 看護師らが対処し、院長も戻ってくるが、その後、女性は意識を失った。同クリニックに駆け付けた母親が目撃したのは、手術室で横たわる女性の姿と別の病院に電話する院長の姿だったという。

 出産前にはおなかが動く様子を動画で撮影し、家族みんなに送っていたという女性。子どものために将来設計を練り直したり、名前を考えたりと、わが子の誕生を楽しみに待っていた。

 生まれてきた長男(1)は一時は肺炎で危篤状態になり、尿を管理する脳の機能が育たないため、常に水分調整などの処置を受けなければならないなど、「いつどうなってもおかしくない状態が続いている」という。

 遺族は「体制が整ってるところだったら、こんなことにはならなかったのか。分娩の痛みと引き換えに命がなくなるなんて」とうつむいた。(篠原拓真)」

報道の件は,私が担当したものです.

妊婦は昭和57年2月生まれで,事故後意識を回復することなく,今年5月に35歳で亡くなりました.
児は,きわめて重度の障害を負い,現在も入院中です.

このクリニック(2012年開業)には,2015年当時,医師は院長一人だけしかいませんでした.
院長は,テストドーズ(硬膜外麻酔のチューブをいれたあと試験的に少量の薬剤を投与すること)のあと外来に行き,戻ってきて無痛分娩のために麻酔薬の投薬を本格的に始めたところで,再び外来に行っために,観察ができなかった事案です.「硬膜外麻酔後の観察を怠った過失」は,示談書にも明記されています.,

2015年9月2日(妊娠40週5日)の事故の概略は,次のとおりです.
9時15分 テストドーズ後院長医師は外来へ,患者を車椅子で別の部屋(分娩室)へ移動させる
9時35分 硬膜外麻酔開始,院長医師は再び外来へ
9時40分 気分不良,嘔吐
9時51分 呼吸困難,看護師がドクターコール
9時58分 心電図装着 酸素投与
9時59分 搬送依頼
10時00分 呼吸できず
10時07分 呼びかけに反応せず
10時08分 血圧測定できず
10時10分 救急隊要請(救急隊指令記録10時10分)
10時15分 救急隊到着,心電図PEA(心静止)
10時28分 救急車内収容
10時46分 神戸大学病院に到着
10時56分 緊急帝王切開で児娩出(3466g),新生児仮死,蘇生
11時02分 母体心拍再開確認


神戸大学病院で撮影したCT画像とから髄液が引けた事実より,カテーテルがくも膜下腔に達していたことが証明されています.
たとえ,硬膜外麻酔のが高位麻酔になったとしても,その徴候がみえた段階で適切に対処すれば事故は回避できたはずで,観察を怠ったことは本当に残念です.硬膜外麻酔を始めたところで,外来に行ってしまうということは,ありえないことです.医師には,麻酔が固定する20分~30分間は産婦に付き添い監視する義務があります.もし医師自身が付き添わないなら,慣れた看護師が付き添い監視しないといけません.しかし,この件では,医師がすぐに立ち去っており,看護師への観察指示もきちんとなされていた形跡がありません.看護師からの報告もなされていません.また,血中酸素飽和濃度も測定されていません.血圧は測られていますが,麻酔前の血圧が測定されていませんので低下しだのかが確認できません.したがって,適切な管理がなされていたとはいえません.硬膜外麻酔開始後の観察ができない体制のクリニックは,無痛分娩を行ってはいけないと思います.

なお,クリニックの代理人弁護士から,今朝,電話がありました.
たしかに謝罪には行っていないが謝罪の申し出はしたではないか,という内容でした.
そのとおりで,示談に際し院長から謝罪の手紙をいただいておりますし,神戸中央区の産科麻酔事故が報道された日(5月19日)に,墓に詣でたいとの申し出が代理人弁護士を通じてありました.私はご遺族に申し出を伝えましたが,ご遺族は回答する気になれず今日に至っています.

院長医師は硬膜外麻酔後の観察察義を怠った過失を認めて(この点は示談書に明記されています),昨年12月に示談が成立していますが,この医療事故のために多くの人の人生が変わってしまいました.
無痛分娩は素晴らしい医療技術ですが,その実施は,それを正しく用いることのできる医師,施設に限るべきと思います.

【追記】
事務所にある医学書の一部には,次のとおり書かれています.

●「硬膜外カテーテル留置の際に硬膜穿破に気づかずに硬膜外腔に投与する予定量の局所麻酔薬を一度に投与すると,全脊髄くも膜下麻酔(全脊麻)となる危険性がある.急速に産婦は意識を消失し,徐脈,低血圧,呼吸停止と進行し,放置すると心停止に至る.
硬膜外針で硬膜を損傷したつもりがなくても,カテーテル挿入の際に硬膜を穿破してしまうこともある.カテーテルから脳脊髄液が吸引されれば,そのカテーテルを抜去するのは当然だが,カテーテルから脳脊髄液が吸引できなくても,カテーテルがくも膜下腔にないとは断定できない.そこで局所麻酔薬の少量分割注入が大切になってくる.一度に3mLしか局所麻酔薬を注入しなければ,たとえくも膜下腔に誤注入しても,両下肢が動かなくなった段階で異常に気づく.その後の注入を止めれば,全脊麻に至ることはまずない. 0.25%マーカインⓇを3mL (7.5 mg)注入したとしても0.5%マーカインⓇを用いる脊髄くも膜下麻酔(脊麻)の経験からは,広範囲な脊麻にはなりにくいからである. 0.25%マーカインⓇは,硬膜外投与では運動神経遮断をきたしたとしても軽度にとどまり,まったく動かせなくなることはまずない.局所麻酔薬のくも膜下誤注入は,両下肢の運動不能や,効果発現が通常よりも早いことで発見できる.」(川添太郎・木下勝之監修「硬膜外無痛分娩 安全に行うために改訂2版」78頁)

●「妊婦の硬膜外鎮痛に際し,血管穿刺は10~20%,血管内カテーテル留置も7~8.5%と高率に発生するとされている。これを見過ごして局所麻酔薬を注入すれば中枢神経/心毒性を呈し,最悪は死に至る。」(奥富俊之「周産期麻酔」213頁)
「特に無痛分娩に際してはこのような一般手術の麻酔に際してのテストドーズにこだわるよりも,むしろ局所麻酔薬の注入に際し慎重な吸引を繰り返した後,ゆっくりと5m1以下の少量分割投与をしながら麻酔域を調整する方が大切であると考える。」(奥富俊之「周産期麻酔」214頁)

●「脊椎麻酔と同様に麻酔域を確認する。効果の発現に10分前後を要する。」(後藤文夫「新麻酔科ガイドブック」79頁)

●「硬膜外麻酔では局麻薬の作用が発現するのに10~20分かかる。局麻薬を注入して15分間経過を観察し、何事も起こらないからといって患者のそばを5分程離れた間に血圧が測定不能となるまでに低下することもある。患者のそばは決して離れてはならない。」(芦沢直文「麻酔のコツとポイント」109頁)

●「テストドーズ:1%リドカイン3m1(1/200,000加エピネフリン)注入後,2分以内に心拍数が30bpm以上の上昇はカテーテルの血管内への迷入,5分以内にL4¬5の感覚低下はカテーテルのくも膜下への迷入による脊髄麻酔)。」(土肥修司「「イラストでわかる麻酔科必須テクニック」155頁)

谷直樹

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by medical-law | 2017-06-29 10:33 | 無痛分娩事故

勝村久司氏「『無痛分娩』で妊婦や家族が知らない重大リスク」

全国薬害被害者団体連絡協議会副代表世話人勝村久司氏の「『無痛分娩』で妊婦や家族が知らない重大リスク」がダイヤモンドオンラインに掲載されています.
勝村久司氏は次のとおり述べています.
「無痛分娩で、母親が死亡する事故が相次いで報道されています。
事故の原因は大きく分けて二つです。一つは、「麻酔」による事故。もう一つは、無痛分娩で使用されることが多い「子宮収縮薬(陣痛誘発剤・陣痛促進剤)」による事故です。
 共通しているのは、従来からリスクの高さが指摘されているそれら二つの医療介入をするにもかかわらず、(1)十分な体制がとられていない、(2)十分な監視がされていない、(3)急変時に適切な対応ができていない、そして、(4)麻酔や子宮収縮薬のリスクを妊婦や家族に十分に説明していない、という四つの点です。子宮収縮薬に関しては使用すること自体の説明さえなされていないケースもあります。・・・」


子宮収縮剤によった意見で,私の意見とは違いますが,ご一読をお奨めいたします.
陣痛促進剤の適切な使用が出来ていないための事故が多いですが,陣痛促進剤そのもののリスクによる合併症と考えられるものは少ないと思います.無痛分娩が陣痛誘発とセットではありませんし,また陣痛誘発剤を投与して日中の分娩を企図する施設では,そもそも日中でも十分な体制がとれていない場合があり,不十分な体制で無痛分娩を行い,高位麻酔に適切に対処できないことが事故を発生させていると思います.
薬や医療技術に問題があるのではなく,ルールを逸脱した用い方をする一部の医師に問題があると思います.

谷直樹法律事務所では,「無痛分娩事故調査」を調査手数料10万円+消費税と実費預り金10万円(余剰金は返金します)で行っています.日本産科麻酔科学会の産科医師1名にカルテ・分娩監視装置の記録を検討いただき,専門的医師としての意見を聞きます。調査依頼から調査報告まで原則60日以内です.
全国対応いたします.

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by medical-law | 2017-06-25 17:56 | 無痛分娩事故

京田辺市の産婦人科,医療過誤訴訟が3件!(報道)

京田辺市の産婦人科,医療過誤訴訟が3件!(報道)_b0206085_16531710.jpg
朝日新聞「帝王切開で重度障害「ミスが原因」 京都の夫婦も提訴」(2017年6月14日)は,次のとおり報じました.

 「訴状によると、母親(35)は2011年4月に長女を出産した。出産までの検診では何の異常もなかったが、医院側は出産時に分娩監視装置を装着せず、無痛分娩をするために「硬膜外麻酔」を行い、子宮収縮剤を投与した。結局、帝王切開で出産したが仮死状態で生まれ、脳性まひなどと診断された。その後、長女は14年12月に3歳で死亡した。

 夫婦側は、産婦人科診療ガイドラインは、子宮収縮剤を使う際には分娩監視装置の着用を定めていると指摘。「医院はこれを怠り、低酸素脳症を発症させた」と主張。一方、○○産婦人科は「取材には応じられない」としている。

 この医院をめぐっては、無痛分娩や帝王切開のため硬膜外麻酔をした後に呼吸などが出来なくなり、母子が重い障害を負ったなどとして、京都府内の2家族が京都地裁に提訴している。(安倍龍太郎)」


テレビ朝日「京都の産婦人科で無痛分娩“事故” 訴訟3件目」(2017年6月14日)は,次のとおり報じました.

「京都の産婦人科で「無痛分娩(ぶんべん)」の際の医療ミスが相次いでいる問題で、2011年に出産した別の夫婦の子どもも脳に重い障害を負い、損害賠償を求めて提訴していることが分かりました。

 訴状などによりますと、京都府京田辺市内に住む女性は2011年4月、「○○産婦人科」で無痛分娩によって子どもを出産しました。その際、病院側が子どもの状態を確認する「分娩監視装置」を設置しないまま麻酔処置をし、陣痛促進剤を注入したため、女性の血圧が低下。子どもは仮死状態で生まれました。子どもは脳に重い障害を負い、2014年に3歳で死亡しました。夫婦は「病院が適切な処置をしなかったことが原因」と主張。2013年に病院を相手取り、慰謝料など約1億円の損害賠償を求めて提訴しました。○○産婦人科は無痛分娩などの麻酔ミスで、他に2件の訴訟を京都地裁に起こされています。」


私は,無痛分娩事故を(複数)取り扱った経験がありますが,さすがに1クリニック・1院長医師が3件の医療過誤訴訟を抱えるのは異例と言えるでしょう.最初の事故が報道されていれば,最初の事故後適切に対応していれば,2件目,3件目の事故はなかったかもしれません.

谷直樹

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by medical-law | 2017-06-14 13:51 | 無痛分娩事故

京田辺市の産婦人科の産科麻酔過誤訴訟が2件!(報道)

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朝日新聞「無痛分娩の麻酔で母子に障害 京都の医院、別件でも訴訟」(2017年6月12日)は,次のとおり報じました.

「医院は京都府京田辺市の「○○産婦人科」。女性と家族は昨年12月、医院に損害賠償を求める訴えを京都地裁に起こした。

 訴状などによると、ロシア国籍で大学准教授だった女性(40)は無痛分娩のため、背中に細い管を差し込んで麻酔薬を注入する「硬膜外麻酔」をした後、意識を失い、心肺停止になった。別の病院へ運ばれたものの今も女性は寝たきりの状態。搬送先の病院で緊急帝王切開で生まれた女児は重い脳性まひとなった。女性側は医師が麻酔の針を本来と違う部分に過って入れたことで、呼吸などが出来なくなる「全脊椎(せきつい)麻酔」になったと主張。麻酔薬の過剰投与もあったとしている。

 出産時に赤ちゃんが重い脳性まひになった場合に一時金などを払う産科医療補償制度の原因分析報告書も「硬膜外麻酔に起因する全脊椎麻酔によるものである可能性が最も高い」と指摘している。医師は産婦人科医の院長1人だった。医院は「取材に応じられない」としている。

 ロシアの医師である女性の母親(62)は「ただ一人の産婦人科医しか働いていないような個人病院で出産することの危険性を警告したい。出産は複数の医師がいる体制のあるところですべきだ」などとする文書を代理人を通じて出した。

 この医院では昨年5月に別の女性(38)が帝王切開の手術の際、硬膜外麻酔の後に呼吸などが出来なくなり、母子ともに重い障害を負ったとして、家族らが医院を相手に京都地裁に提訴。訴状によると、この件でも麻酔の針が本来と違う部分に入ったことが原因と主張している。医院側は争う姿勢を示している。(合田禄)」


私は産科麻酔事故を担当したことが複数回ありますが,報道の件は,私が担当したものではありません.
同じ医師で産科麻酔の裁判が2件というのは,そうあるものではありません.

谷直樹

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by medical-law | 2017-06-13 11:43 | 無痛分娩事故

京田辺市の産婦人科医院の硬膜外麻酔で母児ともに重度の障害を負った事案が裁判へ(報道)

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朝日新聞「帝王切開の麻酔で母子に重い障害 京都、医師1人で対応」(2017年6月6日)は,次のとおり報じました.

「京都の産婦人科医院で昨年5月、帝王切開でお産するときの麻酔で母子が重い障害を負っていたことがわかった。家族らは医院の医師らを相手取り、損害賠償を求めて京都地裁に提訴。産婦人科医らでつくる日本産婦人科医会はこの事例について調査を始めた。

 医院は京都府京田辺市の「○○産婦人科」。同市の女性(38)の代理人弁護士によると、女性は帝王切開の手術を受ける際、背中に細い管を差し込んで麻酔薬を注入する「硬膜外麻酔」の後、昏睡(こんすい)状態になった。医師は1人だった。別の病院へ搬送中に心臓が止まり、蘇生されたが、いまも寝たきりの状態という。また、搬送先の病院で帝王切開によって女児が生まれたが重度の脳性まひという。

 訴状では、麻酔の針が本来とは違う部分に入り、呼吸などが出来なくなったが、気道の確保が遅れて低酸素脳症になったと主張している。5月にあった第1回口頭弁論で医院側は争う姿勢を示した。院長は取材に「その件は裁判になっているので一切コメントは控える」と話した。

 女性の夫(37)は取材に「こんなことが起こるとは考えられなかった。事故が起こったときのリスクが高すぎる。麻酔を使った高度なお産は1人の医師でやってはいけないのではないか」と話した。医会は大阪府や兵庫県であった無痛分娩(ぶんべん)での妊産婦の死亡例とともに、この件について安全体制に問題がなかったか診療記録などを調査し、必要があれば直接指導するという。(合田禄)」




京都新聞「麻酔ミス」母子に重度障害 京都、産婦人科を提訴」(2017年6月6日)は,次のとおり報じました.

「帝王切開の麻酔のミスで昨年5月、妊婦の女性(38)と長女(1)が重度の障害を負ったとして、女性の夫(37)と両親らが、京都府京田辺市の「○○産婦人科」を相手取り、計約3億3千万円の損害賠償を求める訴訟を京都地裁に起こしたことが、6日までに分かった。女性は首から下が動かず意思疎通も困難な重度障害となり、長女は現在も意識不明で、脳性まひなどを負ったという。」
「日本産婦人科医会によると、同会には会員の医師から重大事故を年ごとに報告してもらう制度がある。同事故に関しては昨年の発生だが、報告はなかった。同会として事故があったことは先週までに把握しており今後、対応を検討するという。」


読売新聞「帝王切開時の麻酔で母子に重度障害…報告せず」(2017年6月6日)は,次のとおり報じました.

「出産の痛みを麻酔で和らげる無痛分娩をした妊産婦に相次ぎ死亡例が判明する中、京都府の産婦人科診療所が昨年、帝王切開で同じ方法の麻酔をして母子が重度障害を負う例があったにもかかわらず、日本産婦人科医会に報告していなかったことがわかった。

 同医会はこの診療所に報告を求めて調査するとともに、無痛分娩に限らず、産科麻酔の安全体制についても実態を調べることにしている。

 母子が重度障害を負ったのは、京都府京田辺市の「○○産婦人科」。昨年5月、同市内の女性(38)が、予定していた帝王切開の前に、背中に細い管をさし込んで麻酔薬を注入する「硬膜外麻酔」を受けた。これは無痛分娩と同じ方法で、女性はその後、急変し、他の病院に搬送されたが寝たきりの重い障害が残った。赤ちゃんも重い脳性まひという。

 この事例は今年1月、家族が診療所を相手取り、損害賠償を求め京都地裁に提訴し、係争中。訴状によると、硬膜外麻酔の針が誤って脊髄の周囲にある「くも膜下」まで達し、呼吸筋まひを引き起こしたが対応が遅れ、母子ともに低酸素脳症を来したという。

 同医会には、重大事故事例を報告する制度があるが、この事例について、診療所から報告はなかった。同医会は、大阪府や兵庫県で相次いだ無痛分娩を巡る妊産婦死亡例と同様、麻酔をはじめ診療経過や体制に問題がなかったか調べている。

 障害を負った女性の夫(37)は読売新聞の取材に応じ、「院長から『分娩時にもう一人、医師がいれば結果は違ったかもしれない』と言われた。麻酔のリスクについて事前に十分な説明はなかった。事故が起きた時に対応できない体制のまま、こうした医療を続けさせていいのか」と話している。

 診療所は「取材にはお答えできない」としている。」



私は産科麻酔事故を担当したことが複数回ありますが,報道の件は,私が担当したものではありません.
報道からすると,硬膜外麻酔で高位麻酔になったようにみえますが,病院は麻酔のショック症状として争うようです.
医院のサイトをみると,院長医師は,救命救急センターにて麻酔研修し,無痛分娩など産科麻酔に自信をもっているようですが.
今後の推移に注目したいと思います.

谷直樹法律事務所では,「無痛分娩事故調査」を調査手数料10万円+消費税と実費預り金10万円(余剰金は返金します)で行っています.日本産科麻酔科学会の産科医師1名にカルテ・分娩監視装置の記録を検討いただき,専門的医師としての意見を聞きます。調査依頼から調査報告まで原則60日以内です.
全国対応いたします.



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by medical-law | 2017-06-06 20:18 | 無痛分娩事故

神戸市中央区の病院の無痛分娩事故で,遺族が院長を刑事告訴(報道)

神戸市中央区の病院の無痛分娩事故で,遺族が院長を刑事告訴(報道)_b0206085_11195128.jpg神戸新聞「無痛分娩で医療ミス、妊婦死亡 刑事告訴へ 神戸」(2017年5月19日)は次のとおり報じました.

「神戸市中央区の「○○病院」で2015年8月、麻酔を使い出産時の痛みを和らげる無痛分娩(ぶんべん)で女児を産んだ女性が、担当した男性院長のミスで亡くなり、示談金を支払うことで遺族と同病院が示談していたことが18日、分かった。遺族は19日、男性院長を業務上過失致死の疑いで刑事告訴する方針。

 亡くなったのは篠原稚子(わかこ)さん=当時(36)。遺族などによると、15年8月19日、同病院で無痛分娩による出産をした際、陣痛促進剤を多量に投与され、出産後に子宮内からの大量出血により重度の低酸素脳症を発症。意識不明の重体となり、約1年後に急性循環不全で死亡した。

 病院側は当初、羊水が血管内に流れ、血流を遮る「羊水塞栓症(ようすいそくせんしょう)」として責任を認めなかったが、後に過強陣痛の緩和や帝王切開など適切な対応をしていなかったとして男性院長のミスを認め、示談金を支払った。・・・」


上記報道の件は,私が担当したものではありません.
報道からすると,陣痛促進剤多量投与→過強陣痛→大量出血→搬送→遷延性意識障害→死亡という経過をたどった事案のように思います.
陣痛促進剤の適正使用に問題があった事案と考えられます.
医師の過失により患者が死亡した事案は少なくありませんが,医師を業務上過失致死罪で起訴され,有罪になるのはきわめてまれです.
検察官は,本件について医師を業務上過失致死罪で起訴できるのか,注目したいと思います

谷直樹

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by medical-law | 2017-05-23 11:19 | 無痛分娩事故

和泉市の産婦人科医院の痛分娩事故で妊婦が死亡,医師を書類送検へ

和泉市の産婦人科医院の痛分娩事故で妊婦が死亡,医師を書類送検へ_b0206085_21175283.jpg
NHK「「無痛分べん」で女性死亡 医師を書類送検へ 大阪」(2017年4月25日)は,次のとおり報じました.

「ことし1月、大阪・和泉市の産婦人科医院で、「無痛分べん」で出産した31歳の女性が意識不明になり、その後、死亡していたことがわかりました。
警察は、女性が呼吸不全になった際に、医師が人工呼吸などの十分な対応をしなかったとして、業務上過失致死の疑いで書類送検する方針です。

捜査関係者などによりますと、ことし1月、大阪・和泉市の産婦人科医院「○○レディスクリニック」で、31歳の女性が、麻酔で陣痛の痛みを和らげる「無痛分べん」で出産中に意識不明の状態になりました。
赤ちゃんは無事に産まれましたが、女性は、およそ10日後に低酸素脳症で死亡したということです。

これまでの捜査で女性は、59歳の院長が背骨に局所麻酔の注射をした際に容体が急変し、呼吸不全になったと見られることがわかったということです。

警察は、人工呼吸を続けて体の状態を回復させるなどの十分な対応をしなかったとして、近く院長を業務上過失致死の疑いで書類送検する方針です。」

「厚生労働省の研究班の調査では平成20年の時点で全国およそ250の施設が無痛分べんを実施していたということですが、陣痛の痛みを感じずに、出産できることなどから、妊婦の間で人気が高まっていて、ここ数年でさらに増えていると見られます。

一方、麻酔をかける必要があることから、副作用には細心の注意が必要だとされています。無痛分べんでは背骨の中に注射をするなどして局所麻酔をかける「硬膜外麻酔」と呼ばれる方法が一般的です。
硬膜外麻酔は、一般の産科の医師でも行うことが認められていますが、麻酔科の専門医によりますと、誤って血管や脊髄などに麻酔薬を投与してしまうと意識を失って呼吸ができなくなるケースや血圧が急激に低下するケースなど深刻な合併症が起こるということです。
いずれも迅速に対応すれば回復するということで、麻酔をかける際には患者の変化を見逃さないよう細心の注意が必要だということです。」


無痛分娩が普及したこと自体はよいことですが,無痛分娩により異変が起きたとき適切迅速に対応できる産科医師・施設が少ないように思います.


谷直樹

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by medical-law | 2017-04-28 10:04 | 無痛分娩事故