弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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看護師が,強い睡眠薬を飲んで就寝していた入院患者にわいせつな行為をした疑いで書類送検

看護師が,強い睡眠薬を飲んで就寝していた入院患者にわいせつな行為をした疑いで書類送検_b0206085_1043107.jpg熊本県○○市にある精神科病院の看護師(男性)が,2011年5月上旬、夜勤当直の際、重度のうつ病で入院中の患者(20代女性)が病室で寝ているところを起こし、トイレに連れ込んでわいせつな行為をした疑いで,同年9月に県警○○署から書類送検されていたことが報じられています.
病院は看護師を懲戒解雇にしている,とのことです.
          
朝日新聞「看護師が入院女性に強制わいせつ容疑 熊本の精神科病院」(2011年12月22日)ご参照

刑法第176条は,「13歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。」と定めています.これが強制わいせつ罪です.
第178条は,「人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第176条の例による。」と定めています.これが準強制わいせつ罪です.

患者が13歳以上ですから,わいせつな行為の有無だけではなく,暴行又は脅迫を用いたか,抗拒不能に乗じたか,がポイントになります.
起訴には,患者の供述に公判を維持できるだけの十分な信用性があるのか,が検討されます.

看護師がこのようなことをする筈はないと思うのですが,患者が虚偽を述べる理由もなく,もしこれが事実とすると大変なことです.

谷直樹
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by medical-law | 2011-12-23 04:59 | 医療

日弁連,「法曹養成制度の全体的な見直しと給費制の維持に関する会長声明」

日弁連,「法曹養成制度の全体的な見直しと給費制の維持に関する会長声明」_b0206085_10473949.jpg日弁連は,国会で継続審議となっている司法修習生の給費制について,「来年1月の通常国会で、早期に裁判所法の一部改正案についての審議を尽くし、早急に法曹養成制度の見直しを行うとともにその間は給費制を維持するとの上記修正案に沿った修正を加えたうえ成立させることを強く求める」という内容の会長声明を12月22日発表しました.

その会長声明は,次の点を指摘しています.

12月「6日の法務委員会での審議は、司法修習制度の本質や法曹養成制度が抱える問題点、司法試験の合格者の問題等、極めて重要な論点、示唆を含むものであった。

つまり、

1 現行の司法修習制度は、新憲法の人権保障の理念の下に、司法制度を担う法曹三者を対等・平等に国が養成する統一修習制度として60年以上にわたり営まれてきたものであって、給費制はこの統一修習制度と不可分の関係にあること。

2 新たな法曹養成制度には、法曹志願者が大幅な減少をしているとの大きな問題があり、その原因として司法試験の合格率の低迷、法科大学院の学費に加え司法修習貸与制導入による経済的負担、新人弁護士の就職難と経済的困難などが指摘できること。

3 さらに、5年間3回の受験制限が法曹志望者に大きな委縮効果をきたしており、その改善が必要であること。

4 現在年間2000名程度まで増員された司法試験合格者のうち、少なくない者が法曹として活躍できない事態が生じており、合格者の減少を図り、法曹人口増加のスピードを低減する必要があるのではないか、などである。

この国会審議は、当連合会の問題意識とも共通するものである。当連合会は、本年10月28日付け会長声明でも、「修習資金の取扱を含む法曹養成制度全体について、制度的な裏付けを持った見直し作業を直ちに開始し、地域適正配置に配慮しつつ法科大学院の統廃合と大幅な定数削減、受験回数制限の緩和、修習開始時における集合的な修習などを柱とする根本的な改革を進めるべきであると考える」と提案している。また、司法試験合格者数についても、本年3月27日の法曹人口政策に関する緊急提言において「当面の緊急対策として、司法試験合格者数を現状よりさらに相当数減員することを求める」との見解をまとめている。」


一括登録日時時点の弁護士未登録者は,60期32名,61期89名,62期133名,63期214名,64期400名と年々増しています.
登録者は,60期839名,61期1494名,62期1693名,63期1571名,64期1423名と,この3年減少しています.
この数字は,司法試験合格者数大幅削減,法科大学院の統廃合と大幅な定数削減が必要な情勢になっていることを示唆します.

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by medical-law | 2011-12-23 04:04 | 司法

第4回医療の質の向上に資する無過失補償制度等のあり方に関する検討会

第4回医療の質の向上に資する無過失補償制度等のあり方に関する検討会_b0206085_10532538.jpg

12月22日の第4回医療の質の向上に資する無過失補償制度等のあり方に関する検討会で,厚労省は,検討会の下に「医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」を設置することを提案し,検討会は了承しました.

検討部会では,医療事故調査の仕組みと医療事故の再発を防止するための仕組みを検討します.
検討会は,無過失補償の仕組みを検討します.

医療事故調査,医療事故の再発防止,無過失補償の3点は元来セットとなるものですので,討議の場が別でも,全体として整合的なシステム設計を期待いたします.

谷直樹
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by medical-law | 2011-12-22 20:08 | 医療

オセルタミビル(タミフル)の害に関する新知見

オセルタミビル(タミフル)の害に関する新知見_b0206085_9204658.jpg浜六郎氏,マーク・ジョーンズ氏らの「オセルタミビルと突然型死亡:2009A/H1N1インフルエンザの相対死亡率研究」は,タミフルと突然型死亡との関連を指摘したはじめての疫学研究です.
この報告は、タミフル使用が、特に使用12 時間以内の突然型死亡を誘発しうる、と結論づけました.突然型死亡の危険度(オッズ比)は5.9です.

「処方患者数は、タミフルとリレンザで約10対7(1000万人対700万人と推定)でしたが、タミフル処方後に死亡した人が119人いました。そのうちの38人は12時間以内に急変した後死亡しました(うち28人は6時間以内の急変)。
リレンザ処方後の死亡は15人でした。突然型死亡(12時間以内急変後死亡)はいませんでした。」


浜六郎氏らによると「薬にたよることなく、暖かくしてゆっくりと休養し、睡眠をとることが、最善の方法であるということを、あらためて強調しておきたいと思います」とのことです.

「『薬のチェックは命のチェック』インターネット速報版No151」(2011年12月21日)
ご参照

谷直樹
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by medical-law | 2011-12-22 01:46 | 医療

14693分の8733

14693分の8733_b0206085_9363722.jpgこれまでにフィブリノゲン製剤投与が判明した患者数は1万4693名ですが,そのうち医療機関が投与の事実をお知らせした患者数は8733名にすぎません.
            
⇒ 厚労省「フィブリノゲン製剤納入先医療機関の追加調査について」ご参照

残りの患者を探し出し,フィブリノゲン製剤投与の事実をお知らせし,C型肝炎ウイルスに感染しているかの検査をお奨めする必要があります.

もし,C型肝炎ウイルスに感染していれば,治療が必要な場合も多いです.
「特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第IX因子製剤によるC型肝炎感染被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法(平成二十年一月十六日法律第二号)」の対象になります.この特別処置法は5年の時限立法です.延長の声もでていますが,急いだほうがよいでしょう.

谷直樹
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by medical-law | 2011-12-21 18:33 | 医療

大学病院の診療拒否訴訟,患者側控訴の方針

大学病院の診療拒否訴訟,患者側控訴の方針_b0206085_405382.jpg毎日新聞「弘前大の診療拒否:損賠訴訟 簡裁、夫婦の訴え棄却 原告、控訴の方針 /青森」(2011年12月17日)は,次のとおり報じています. 

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「青森市に住んでいた40代夫婦(現在は山形市在住)が、不妊治療を受けられなかったのは診療拒否に当たるとして、弘前大と医学部付属病院の産科教授を相手取り140万円の損害賠償を求めた訴訟で、弘前簡裁(齋藤健一裁判官)は「病院が実質的に診療を拒絶したと解釈できるが、拒絶には正当な理由がある」として原告の訴えを棄却した。原告代理人は青森地裁に控訴する方針。

 判決などによると、夫婦は08年から同病院で不妊治療を受診。培養器のトラブルで同年10月に人工受精卵5個が成育不能となったのは病院の過失だとして10年8月、同大に慰謝料など1830万円の支払いを求める訴訟を地裁弘前支部に起こした。病院側は翌9月、妻に転院と診療延期を求める文書を通知したため、夫婦は「医師法19条(応招義務)違反の診療拒絶に当たる」として11年4月、弘前簡裁に別の訴えを起こした。

 齋藤裁判官は「不妊治療は予約なしにできず、実質的に診療を拒絶したと解することができる」とした上で、「先行する訴訟で信頼関係が失われ、患者の治療に緊急性がなく、不妊治療を行う別の病院もあることから、病院には診療拒絶できる正当な事由がある」と述べた。先行する訴訟は審理が続いている。【松山彦蔵】」


弘前簡裁は,訴訟を理由に診療を拒否できるか,という問題について,緊急性がなく,他院で治療できる場合には,診療拒否できると判断しました.

しかし,病院が医療過誤を起こし,患者がその賠償を求めても病院は賠償に応じず,患者がやむなく提訴したら病院が信頼関係喪失を理由に診療拒否ができる,というのは,疑問です.
このような裁判例が定着すると,診療拒否されたら困る状況でば,患者は医療過誤に遭っても損害賠償請求すらできず,泣き寝入りしかない,ということになります.

東京電力を訴える人には,信頼関係が壊れたから,他に自家発電があるから,電力供給を止めてもよい,というのと同じです.
正当な権利行使に対し診療拒否が許されるのは,いかにもおかしいと思います.
控訴審に注目しましょう.

谷直樹
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by medical-law | 2011-12-21 02:36 | 医療事故・医療裁判

日弁連の法曹人口政策会議,司法試験合格者数1500人提言へ

日弁連の法曹人口政策会議,司法試験合格者数1500人提言へ_b0206085_5443136.jpg

毎日新聞「司法試験:「合格者1500人に減員を」日弁連、初の具体案提言へ」(2011年12月19日)は,次のとおり報じています.

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「日本弁護士連合会の「法曹人口政策会議」が17日の会合で、司法試験の年間合格者数について、現状の約2000人を1500人に減員するよう求める提言案をまとめたことが関係者の話で分かった。3000人への増員を目指す政府方針に反する初の具体的な削減案。日弁連は今後、地方の各弁護士会からの意見を踏まえ、来年3月の提言を目指す。

 提言案は「法曹人口増員のペースが急激すぎ、司法の現場に深刻な問題を引き起こしている」と指摘。その上で「合格者をまず1500人程度にまで減員し、さらなる減員は法曹養成制度の成熟度などを検証しつつ対処すべきだ」とした。

 新しい司法制度のあり方を議論した政府の司法制度改革審議会は01年、「国民の期待に応える司法制度」のためとして人的整備の必要性を掲げ、「10年ごろには、司法試験の合格者を年間3000人とすることを目指すべきだ」とする意見書を作成した。政府は02年、意見書に沿った増員計画を閣議決定した。

 以後合格者数は増加し、10年には政府方針には届いていないものの、約2000人に到達。今年も同じ規模を維持した。しかし、それに応じた法的需要の拡大が進まず、新人弁護士の就職難が深刻化している。日弁連は今年3月、「司法試験の年間合格者数を現状より相当数減員すべきだ」とする緊急提言を発表していた。【伊藤一郎】」


2000人はもちろんですが,1500人でも多いと思います。
需要からすれば,1000人でやっと何とかよいくらいです.
もともと3000人という目標の算定根拠が間違っています.
当然,法科大学院も見直しが必要でしょう.

今年法曹資格を得た約2000人のうち200人弱が裁判官,検察官になり,1800人強が弁護士になるはずが,弁護士会への未登録者が約400人います.弁護士会に登録しなければ,弁護士としての仕事はできません.この約400人は,法律事務所に就職できなかったから,弁護士会に登録しないのです.就職できなかったのは,個人的資質の問題ではなく,法律事務所の側に新規採用の需要がなかったからなのです.

弁護士には,先輩弁護士の指導を受け,力をつけていく期間が必要です.
法律事務所に就職すれば,事務所の仕事を先輩弁護士の指導を受け,実際の事件を解決していく過程で,力をつけていくことができます.

法律事務所の側からすると,所属弁護士の人数は仕事に応じた適切な人数に抑えないと,経営上好ましくない事態になります.ですから,弁護士の新規採用人数は仕事量により,制約されます.

回転寿司経営にのりだした法律事務所が,約400人を半年のノキ弁として採用してもよい,と呼びかけていますが,法律関係の仕事が頭打ちで他業種に進出しようとしているのですから,約400人分の法律関係の仕事はありません.ですから,ノキ弁(法律事務所の軒先を借り,主に自分で仕事を探す弁護士)なのでしょう.

ソクドク(即独立開業)・ノキ弁もいれると,約2000人のうち500人くらいは,法律事務所への就職ができなかったものと思われます.そこで,1500人という数字になるのでしょうが,この数年,各法律事務所は拡張方向で精一杯の努力をして採用を増やしてきました.その採用が継続するものではありません.そのような事情も考慮し,需要と供給のバランスを判断すると,1000人という数字が一定の合理性をもつように思います.

もともと競争原理により,弁護士の質を向上し,市民の弁護士へのアクセスを容易にし,法的サービスを向上させるために,増員をしてきたのですが,需要のないところに過剰な供給をすると弊害が生じる可能性があります.

ソクドク・ノキ弁がでてきた時点で,法律事務所内で育成可能な適正な数以上の弁護士が輩出されたことが示唆されました.そもそも数が増えれば質が低下するのはどの世界でもみられる現象です.質が低下し,先輩による育成システムの限界を超えた状態では,マクロでみれば,弁護士の市民への法的サービスは低下します.

TPPにより,医療に過度の市場競争原理がもちこまれ,医療が悪化すると予測されているのと同じです.
市民への法的サービスの質を担保するには,弁護士の数は適正でなければなりません.

谷直樹
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by medical-law | 2011-12-19 20:17 | 司法

患者側勝訴率の低下

患者側勝訴率の低下_b0206085_5491183.jpg

J-CASTニュース「医療訴訟は「冬の時代」 患者側の勝率はガタ落ち」(2011年12月18日)は,次のとおり報じています.

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「「医療過誤原告の会」 (宮脇正和会長) の20周年シンポジウムが2011年12月3日、東京で開かれた。この会は文字通り、本人や家族が医療事故に遭遇し、訴訟を起こしたか、訴訟を起こそうと決意している人たちの会だ。

 長野市の故・近藤郁男さんは79年、次男が虫垂炎手術を受け、植物状態になった。病院を訴えた時の名古屋市の加藤良夫弁護士に勧められ、近藤さんを中心に91年10月に会が発足した。シンポジウムでは著名な演者がこの20年を語った。

日本では事故の報告も不十分
  鈴木利広弁護士は日本の医療訴訟の歴史を概観した。明治36年 (1903年) に東大産婦人科助教授がガーゼを取り忘れで訴えられたのが最初で、これまでを5期に分類した。70年代後半から「医療理解期」、90年代の「患者の権利台頭期」を経て、08年の福島県立大野病院事件をきっかけに「冬の時代」だという。一時期の患者側の勝率4割から今は1割台に低迷している。

  大阪府八尾市の病院理事長で鑑定グループ医療事故調査会代表の森功医師によると、約1000例の鑑定で医療過誤率は7割。「ほとんどが初歩的なミス、医療はまだまだ運・不運の要素が強い」と指摘した。また、大阪で医師会を挙げて医療過誤対策を実現させるとの計画を披露した。

  99年の都立広尾病院事件で妻を亡くした永井裕之さんは、医療には「報告文化」「正直文化」「安全文化」が不可欠とし、日本は事故を報告する「報告文化」すら不十分だと嘆いた。

  同会の設立から20年、医療過誤への認識は高まったが、医療の実態は大きく変わっていないように見える。患者や遺族が求めているのは、賠償金ではなく、より安全な医療だとの気持ちがひしひしと感じられた。
(医療ジャーナリスト・田辺功)」


この5期の分類は,鈴木利広先生の完全なオリジナルではないのですが,社会の風潮と勝訴率に連動関係があるという話として,鈴木先生はよく話されています.

民法709条は,「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」と定めています.
生命,健康被害は,権利又は法律上保護される利益の侵害にあたりますので,医療訴訟は,通常,民法709条以下の不法行為法に基づく損害賠償請求訴訟として争われます.(民法415条以下の債務不履行を根拠とする場合もあります.)
そこで,原告(患者側)は,「過失」,「損害」,「過失と損害との間の相当因果関係」(=「よって」)を主張立証することが必要となります.

「過失」,「損害」,「過失と損害との間の相当因果関係」は法的な概念で,法的な判断によって認定されます.
法的な判断は,証拠によって認定された事実をもとに,「医療者が有する医学・医療についての知見」と「一般人の医学・医療に対する合理的な期待」の両者をみながら,法が規範として求めるものを具体的に判断することになります.
その意味では,裁判官の判断は,時代の風潮に左右される部分もあるのでしょう.

とはいっても,昨今の患者側勝訴率の低下は異常で,裁判官の法的判断が一方に偏ったものになっているように思います.

今は,「冬の時代」というより「暗黒の時代」と言ったほうが適切かもしれません.
そのような患者側に厳しい判決が続くと,医療に求める規範が低くなり,安全な医療が達成されなくなりそうです.

例えば,黎明期の最初の医療事件は,ガーゼを忘れた事案でしたが,裁判所は「過失」を否定しました.その後の裁判例で,ガーゼを忘れるのは「過失」と判断されるようになって今日まできているのですが,もし今後,裁判所がガーゼを忘れるのは「過失」にあたらないという法的判断を下すと,医療者がガーゼを忘れないための取り組みを行う必要がなくなり,ガーゼはいっそう忘れられることになるでしょう.

同様に,もし裁判所が手技上のミスを「避けられない合併症」と判断すると,医療者が手技上のミスをしないための取り組みを行う必要がなくなり,手技上のミスがふえることになるでしょう.

原発事故の原因の一つは司法が原発行政に甘かったからだ,と言われていますが,同様に,医療事故の原因は2010年代の裁判所が医療に甘かったからだ,と後に言われることのないように,適正な勝訴率まで回復することを期待したいと思います.

また,このような波及的な効果をひとまずおいて,交通事故被害などと比較しても,医療事故被害については,権利又は法律上保護される利益を侵害された者が損害賠償を受けられない場合が増えていることになりますが,法は,元来,そこまで厳しく医療における「過失」,「過失と損害との間の相当因果関係」を求めているのか,甚だ疑問に思います.

谷直樹
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by medical-law | 2011-12-18 20:57 | 医療事故・医療裁判

刈谷市にある病院,時間外割増賃金請求訴訟で和解

刈谷市にある病院,時間外割増賃金請求訴訟で和解_b0206085_7324791.jpg12月15日、名古屋地裁で、勤務医が病院に2009年4~9月の時間外割増賃金約280万1千円の支払いを求めていた訴訟(2010年10月提訴)は,ほぼ全額の280万円を病院が支払うことで,裁判上の和解が成立しました.

原告医師は,複数の分娩の処置をし帝王切開手術をするなど昼間と同様の仕事をこなしたので,時間外割増賃金が支払われるはずなのに,より安い当直手当しか支払われなかったため,病院の就業規則で決められた時間外勤務の割増率に基づいて賃金を計算そ,受け取った当直手当を差し引いた金額を請求していました.

中日新聞「時間外賃金訴訟で和解 刈谷の病院」(2011年12月16日)は次のとおり報じています.

「厚生労働省の指針では、医師の当直勤務は、病室の巡回や検温などの軽い業務に限るとし、昼間と同じ労働は時間外勤務として扱うことを求めているが、浸透せず全国で過重労働の実態が指摘されている。

 女性医師は「病院が不当な労働を認識したと和解を受け止めた。全国では医師の労働環境が悪い病院が多く、環境改善につなげてほしい」と話した。刈谷豊田総合病院は「長期間の紛争を続けるのは本意ではない。円満な和解による解決をした」とコメントを出した。」


宿直時間でも,通常の勤務時間帯と同じような仕事をさせているなら,宿直手当ではなく,時間外割増賃金とを支払わねばなりません.このことは誰もが知っていることと思います.ところが,通常の勤務時間帯と同じような仕事をさせていないという病院側の勝手な判断で時間外割増賃金が支払わないケースがあり,これは明らかに違法です.

この病院の件がたまたま訴訟になり報道されただけで,全国の他の病院でも多かれ少なかれ同様の状況だと思います.
勤務医の業務内容にみあった時間外割増賃金を支払うよう改善すべきと思います.

日本の医師の平均労働時間は週70時間です.ヨーロッパは平均は48時間です.日本の勤務医は働きすぎ,働かされすぎでしょう.

谷直樹
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by medical-law | 2011-12-18 11:31 | 医療事故・医療裁判

12月26日第10回厚生科学審議会医薬品等制度改正検討部会

12月26日第10回厚生科学審議会医薬品等制度改正検討部会_b0206085_5511678.jpg

12月16日の「第9回厚生科学審議会医薬品等制度改正検討部会」では,第三者組織のあり方等についてとりまとめができませんでした.12月26日の第10回会議に持ち越しとなりました.傍聴はコチラ
第9回厚生科学審議会医薬品等制度改正検討部会資料は,コチラ

谷直樹
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by medical-law | 2011-12-18 04:34 | 医療