弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

<   2012年 02月 ( 62 )   > この月の画像一覧

米国外科医とアルコールと医療ミス

b0206085_10723.jpgMichael R. Oreskovich, MDらの報告によると,米国では, 7197名のうち1112名 (15.4%)の外科医は,アルコール使用障害識別テスト(AUDIT)で,アルコール中毒または依存症と評価されました.
また,過去3か月に大きな医療ミスを報告した外科医は,アルコール中毒または依存症である可能性が高い,とのことです.

Prevalence of Alcohol Use Disorders Among American Surgeons”ご参照

Arch Surg. 2012;147(2):168-174. doi:10.1001/archsurg.2011.1481

Results Of 25 073 surgeons sampled, 7197 (28.7%) completed the survey. Of these, 1112 (15.4%) had a score on the Alcohol Use Disorders Identification Test, version C, consistent with alcohol abuse or dependence. The point prevalence for alcohol abuse or dependence for male surgeons was 13.9% and for female surgeons was 25.6%. Surgeons reporting a major medical error in the previous 3 months were more likely to have alcohol abuse or dependence (odds ratio, 1.45; P < .001). Surgeons who were burned out (odds ratio, 1.25; P = .01) and depressed (odds ratio, 1.48; P < .001) were more likely to have alcohol abuse or dependence. The emotional exhaustion and depersonalization domains of burnout were strongly associated with alcohol abuse or dependence. Male sex, having children, and working for the Department of Veterans Affairs were associated with a lower likelihood of alcohol abuse or dependence.

Conclusions Alcohol abuse and dependence is a significant problem in US surgeons. Organizational approaches for the early identification of problematic alcohol consumption followed by intervention and treatment where indicated should be strongly supported.

谷直樹
ブログランキングに参加しています.下記バナーを1日1回クリックお願いします.7日間のクリック数合計が順位に反映します.

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2012-02-22 01:50 | 医療事故・医療裁判

薬害イレッサ,厚労省が和解案に否定的な見解を学会に発表させた裏側が次第に明らかになりつつあります

b0206085_10241969.jpg

1年以上前の話ですが,イレッサ訴訟1審裁判所の和解勧告(平成23年1月7日)に対し,日本臨床腫瘍学会,日本血液学会,日本肺癌学会と日本学術会議などが否定的な見解を発表して,世論を誘導し,国は和解を拒否しました.

後に,裏で,厚労省が見解の下書きをしていたなどの事実が判明し,間杉純医薬食品局長が訓告処分を受け,平成23年8月15日辞職しました.

しかし,その働きかけの具体的な事実は,闇に埋もれたままでした.

薬害オンブズパースン会議は,情報公開を請求し,公開されたのはごく一部でしたので,情報公開を求める訴訟を提訴し,国は情報公開訴訟で理由をつけにくいものについて,メールなど一部を開示しました.

東京新聞「学会に「和解案なら新薬承認困難」イレッサ訴訟で厚労省」(2012年2月21日)は,次のとおり報じています.

(厚労省が学会に送ったメールは)「裁判所の所見に従うならば,あらゆる未知の危険まで明らかにならないと抗がん剤のような新薬の承認ができなくなる」と強調。添付文書にある副作用に対してまで,注意が足りない,その責任は国であると言われるならば,今後リスクのある医薬品の承認はますます困難」とし,和解勧告の内容で合意すれば,薬事行政に支障が出ると読める内容だ。」

イレッサ薬害の責任を認めると,新薬承認に支障がでる,という飛躍した論理は,厚労省が学会を煽って言わせたものだったのです.

谷直樹
ブログランキングに参加しています.下記バナーを1日1回クリックお願いします.7日間のクリック数合計が順位に反映します.

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2012-02-21 15:07 | 医療事故・医療裁判

産科医療補償・再発防止委員会,診療記録の40%に不備を指摘

b0206085_1034229.jpg産科医療補償制度・再発防止委員会は,2012年2月20日,4月に発表を予定している報告書案を検討しました.

NHK「産科医療補償 40%で記録に不備」(2012年2月21日)は,次のとおり報じています.

「出産に伴って脳性まひになった子どもに補償金を支払う「産科医療補償制度」で、これまでに分析が終わった79例のうちおよそ40%に、異常が現れたときの記載がないなど診療記録に不備があったことが分かりました。

産科医療補償制度は、出産に伴って脳性まひになった子どもに、医療機関に過失があるかどうかにかかわらず補償金を支払うもので、再発防止策を検討する委員会が20日、これまでの分析をまとめた報告書の案を示しました。
この中で、去年12月までに補償金の支払いが決まった79例について分析した結果、39%に当たる31件でカルテなどの診療記録に不備があったことが分かりました。
具体的には、赤ちゃんの状態や救命処置について記していないものが8件と最も多く、次いで、生まれる前の心拍数を評価していないものが7件など、異常が現れたときの詳しい記載がない事例が目立っています。
このうち呼吸を始めるまでに30分近くかかったケースでは、処置が的確でなかった可能性があるものの、記載が不十分で検討できなかったとしています。
再発防止委員会は「原因分析や再発防止には診療記録の情報が不可欠で、特に異常が現れたときの母子の状態や医師の判断については、詳細に記載するよう医療機関に求めていきたい」としています。」


原因分析とそれをふまえた再発防止は,事実の正確な認定の上に可能となります.診療記録に正確な事実を記載されていることは,原因分析等の検討のために不可欠ですです.
異常が現れたときの詳しい状態や救命処置など最も大事な部分が記載されていないのは,大変困ったことです.

また,医療事件では,当然記載すべき事項が記載されていないため,原因が不明,したがって過失の有無が不明,というケースは,しばしばあります.医学的に未解明で原因不明というのではなく,単に観察が不十分で記載がないため原因不明という場合です.
さらに,カルテに記載がないため,事実経過の認定が争われる場合もあります.
このような無用の争いを避けるためにも,カルテには正確な事実を記載していただきたいと思います.

谷直樹
ブログランキングに参加しています.下記バナーを1日1回クリックお願いします.7日間のクリック数合計が順位に反映します.

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2012-02-21 09:49 | 医療事故・医療裁判

抗インフルエンザウイルス薬「イナビル」を使用した10歳代の患者の転落死で通知

b0206085_8554238.jpg転落までの状況が明らかになっておらず,異常行動が発現したのか否かについても不明ですが,抗インフルエンザウイルス薬のラニナミビルオクタン酸エステル水和物を使用した10歳代の患者の転落死が報告されました.

厚生労働省医薬食品局安全対策課長は,平成24年2月14日,薬食安発0214第9号「抗インフルエンザウイルス薬の使用上の注意に関する 注意喚起の徹底について」を発し,以下のとおり注意喚起を引き続き徹底するよう指示しました.

「因果関係は不明であるものの、本剤を含む抗インフルエンザウイルス薬投薬後に異常行動等の精神神経症状を発現した例が報告されている。小児・未成年者については、異常行動による転落等の万が一の事故を防止するための予防的な対応として、本剤による治療が開始された後は、1)異常行動の発現のおそれがあること、2)自宅において療養を行う場合、少なくとも2日間、保護者等は小児・未成年者が一人にならないよう配慮することについて患者・家族に対し説明を行うこと。なお、インフルエンザ脳症等によっても、同様の症状があらわれるとの報告があるので、上記と同様の説明を行うこと。」

通知は「ラニナミビルオクタン酸エステル水和物」と記しているのみですが,商品名でいうと「イナビル吸入粉末剤」です.臨床試験でオセルタミビル(タミフル)の5日間投与と同等の効果が確認されているとのことで,タミフルの5倍効くとして宣伝されているようです.いずれにしても抗インフルエンザウイルス薬は要注意です.

谷直樹
ブログランキングに参加しています.下記バナーを1日1回クリックお願いします.7日間のクリック数合計が順位に反映します.

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2012-02-21 01:09 | 医療

国立がん研究センター東病院,中間報告,基準値の誤設定隠蔽を認める

b0206085_912698.jpgmsn産経「検査の意味を把握せず がんセンター東病院 隠蔽も認める」(2012年2月20日)は次のとおり報じています.

「国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)の臨床検査部で誤検査が行われ、事実が隠蔽(いんぺい)されたとされる問題で、センターは20日、臨床検査技師らが検査試薬や検査自体の意味を把握しないまま業務を行ったり、問題を隠蔽するケースも複数あったりしたなどとする調査の中間報告を行った。

 報告では、がんの発生を確認する成分「βHCG」を検出する腫瘍マーカー検査で、必要な成分以外も検出する試薬を使用していた問題を「誤った試薬を使ったわけではない」と説明。一方で「臨床検査技師の大多数は、試薬導入の経緯や検査の意味を正確に把握しておらず、検査の測定内容に誤解があった」と、実質的に正しい検査が行われていなかった実態を認めた。

 さらに、βHCGの問題や、検査結果が正常か異常かを判断するための「基準値」が多くの項目で誤設定されていた問題が他部署に発覚しないよう、臨床検査部で隠蔽工作を行っていたと認定。肝炎検査でも必要な再検査の実施が徹底されず、その事実関係を隠蔽していたことなども認めた。

 記者会見した嘉山孝正理事長は「さらに3、4カ月かけ調査したい」とした。」


国立がん研究センター東病院,臨床検査部が試薬の誤使用を医師らに伝えず」でも書きましたが,誤りを医師に伝えず,隠蔽してきたことはきわめて重大です.

谷直樹
ブログランキングに参加しています.下記バナーを1日1回クリックお願いします.7日間のクリック数合計が順位に反映します.

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2012-02-21 00:28 | 医療

民医連の調査,経済的事情で受診が遅れ死亡した人数,平成23年は67人

b0206085_942826.jpgmsn産経「「無保険」など受診遅れで67人死亡 民医連「氷山の一角」」(2012年2月20日)は,次のとおり報じています.
 
「全日本民主医療機関連合会(民医連)は20日、経済的事情で国民健康保険料を滞納して「無保険」状態になるなどの理由で受診が遅れ、死亡した人が平成23年、22都道府県の加盟病院・診療所で67人いたと発表した。

 調査は6回目で、最多の71人だった22年に次ぐ人数。民医連は「調査対象が限定されているので全体から見れば氷山の一角。早急な対策が求められる」としている。

 23年は計663施設を対象に調査。受診遅れで死亡した67人のうち無保険は25人、滞納で有効期間が短くなる「短期保険証」が10人、さらに滞納が続き保険証を返して医療費全額をいったん払わなければならない「資格証明書」が7人いた。残る25人は、保険証はあっても医療費が払えなかったりした人。死因の半数余りはがんだった。」


民医連自身も認めているとおり,加盟の病院・診療所の663施設に限られた調査ですから,経済的事情で受診が遅れ死亡した例は遙かに多いでしょう.
医療費の無駄遣いが言われる一方で,経済的弱者が医療を受けるのに躊躇する状況があることが分かります.

谷直樹
ブログランキングに参加しています.下記バナーを1日1回クリックお願いします.7日間のクリック数合計が順位に反映します.

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2012-02-21 00:16 | 医療

障害者自立支援法社説,京都新聞,東京新聞・中日新聞,神奈川新聞vs毎日新聞

b0206085_981144.jpg障害者自立支援法の廃止についての厚労省の変節に対し,日弁連は,2012年2月8日,「障害者自立支援法の確実な廃止を求める会長声明」を発表しました.

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村

「今回示された厚生労働省案は、障害者自立支援法の名称を見直すことを検討するものの、その廃止を明確にしておらず、かつ、保護の客体から権利の主体への転換を図り地域での自立した生活を営む権利を保障するという重要な規定を設けないなど、骨格提言の主要な改革点についても法制度上の手当を予定しない対応としており、骨格提言に基づく新たな法制度を規定する法案が準備されているのか、重大な疑義を生じさせるものとなっている。また、もし、法案が厚生労働省案のような内容であれば、国が基本合意文書及び訴訟上の和解において確約した内容とは相容れないものであり、誠に遺憾といわざるを得ない。

当連合会は、国が、上記「基本合意文書」に基づき、障害者自立支援法を確実に廃止し、骨格提言を尊重した総合的な福祉法案を上程するよう、強く求めるものである。」


その翌日,京都新聞の社説が掲載されました.

◆ 京都新聞社説

京都新聞「障害者自立支援  見当たらぬ政治の反省」(2012年2月9日掲載)は,次のとおり述べています.

「障害者自立支援法に代わる新たな障害者福祉制度について、厚生労働省が改革案を民主党側に示した。政権交代の時、民主党が掲げた「自立支援法の廃止」は見送られ、これでは法律の看板取り替えになりかねない。
 障害者自立支援法は、2006年に施行された。身体、知的、精神の障害ごとに分かれていたサービスを一元化したものの、受けたサービス量に応じて原則1割を負担する「応益負担」になったため、障害の重い人ほど負担が増える制度設計だった。
 半数以上の人で授産施設から得る賃金が実質負担額を下回り、9割近い人の負担額が増えたことから、憲法25条が保障する生存権に反するとして、全国14地裁で違憲訴訟が起こされた。自立支援法が障害者の「自己責任」の色合いが濃いことも批判の対象になった。
 当時の長妻昭厚労相は自立支援法の廃止と新制度策定を言明し、「拙速な制度の実施で障害者の尊厳を深く傷付けた」と原告代表に謝罪した。これを受け、すべての訴訟で10年4月までに和解が成立し、法の「廃止と新法の制定」が合意文書に盛り込まれた。政府は同年6月、障害者総合福祉法(仮称)の提出を閣議決定し、今の国会での成立をめざしている。
 厚労省が示した改革案は、自立支援法の改正案とされ、法の廃止ではない。法を廃止した場合、約6万あるサービス事業者を指定し直す必要が生じ、自治体や事業者の負担が増すうえ、新法の制定に野党の協力が得られないためという。厚労省は「事実上の法廃止」というが、法の不当性を訴えて国と和解した元原告の理解は到底得られないだろう。
 改正案では、現行では障害者手帳のない人は対象外だった難病患者も給付対象とされる。パーキンソン病など130の疾患を介護サービスの対象とする方向だ。谷間のない制度と支援の実現であり、この点には異論はない。
 ただ、政府が検討した自己負担の原則無料化は見送り、6段階ある障害程度区分は施行後5年後をめどに見直すとし、支給区分の見直しは先送りされた。程度区分がしゃくし定規に行われ、個人の意向が反映されない欠陥の是正は急ぐ必要がある。
 厚労省は、雇用施策の対象となる障害者だけで、全国で約350万人いると見ている。この点で、障害者福祉の在り方は政府が進める社会保障と税の一体改革の大きな論点でもある。改革案は時間切れを防ぐ取りつくろいに過ぎない。
 「完全参加と平等」「障害の有無にかかわらず、人格を認め合う共生社会の実現」を言葉だけに終わらせず、法案決定に政治の責任と決断を見せてもらいたい。」


◆ 毎日新聞社説

毎日新聞社説「新障害者制度 凍土の中に芽を見よう」(2012年2月12日掲載)は,次のとおり述べています. 

「障害者自立支援法に代わる新法の概要がまとまった。名称や法の理念を改め、難病患者も福祉サービスの支給対象に加えることなどが盛り込まれた。だが、障害者からは現行法の一部修正に過ぎないとの批判が起きている。満開の春を期待していたのに裏切られたという思いはわかる。その矛先はどこに向けられるべきなのか。批判するだけでいいのか。障害者福祉の行方を大局観に立って考えてはどうだろう。

 「自立支援法廃止」は民主党のマニフェストの目玉の一つだった。政権交代後は自立支援法違憲訴訟の原告団と和解し、内閣府に障がい者制度改革推進会議を設置、障害者を中心にした55人による部会で議論してきた。個々の福祉サービスから支給決定の仕組みまで抜本改正する提言がまとまった。これを受けて厚生労働省が示したのが新法の概要だ。

 障害者中心の制度作りは、06年に障害者差別をなくす条例が制定された千葉県でも試みられた。この時は堂本暁子知事(当時)による政治主導が最後までぶれず、条例原案の作成から議会の説得まであらゆる場面で県庁職員と民間委員が協働し、日本初の障害者差別禁止条例を誕生させた。障害者同士の現実的な議論が外部の人々へも理解の輪を広げた。

 民主党政権はどうか。政治主導どころか、政権交代後、担当大臣が7人代わった。厚労省では「(官僚は)会議室の予約とコピー取りだけしていればいいと言われた」との声が聞かれる。官僚を排除して壮大な内容の提言をまとめても、それを法案にするのは官僚なのである。

 政権交代後、ムダの削減だけでは必要な財源が得られないことがはっきりし、民主党は税と社会保障の一体改革にかじを切った。子育て支援や雇用政策も意欲的に取り組むようになった。障害者施策は自立支援法で財源が義務的経費になったことで毎年10%前後も予算が伸び続け、この10年で予算規模は2倍になった。

 制度も改善が重ねられ、自立支援法はずいぶん様変わりした。4月から施行される改正自立支援法でさらにサービスは拡充するだろう。そうした流れから隔絶した所で部会の議論は行われてきたのではないか。関心を持って見守っていた民主党幹部がどこにいたのだろう。

 それでも、部会の議論から法案化への過程では、推進会議の中心メンバーは難しい説得や交渉を重ね、民主党の若手議員も批判を浴びながら取りまとめに奔走した。厚労省は今春から適用される障害福祉サービスの報酬単価を決める議論の過程を公開した。これまで密室で決められていたものをである。まだ小さいが、凍土の中に芽が見えないだろうか。」


これは,大変違和感を覚える論説です.


◆ 東京新聞社説,中日新聞社説

東京新聞社説と中日新聞社説は,同じです.
障害者の新法 現場の声を忘れるな」(2012年2月16日掲載)は次のとおり述べています.

「民主党政権は公約の「障害者自立支援法の廃止」を反故(ほご)にするのか。障害者が十分な支援を得られない欠陥を残したまま厚生労働省は法律を温存する構えだ。なぜ変節したのか、説明責任を果たせ。

 二〇〇六年に施行された自立支援法は身体、知的、精神の障害ごとにばらばらだった福祉サービスを一元化し、効率化を図った。だが、出足から評判が悪かった。

 サービス利用料の原則一割を支払うルールを取り入れたため、収入の低い人や障害の重い人ほど負担が急増した。授産施設では工賃が負担を下回るという逆転現象さえ生じ、サービスの利用を我慢する人が相次いだ。

 人権侵害だとして全国各地で違憲訴訟が一斉に起きた。この国の障害福祉行政は一体どこを向いて仕事をしているのだろうか。

 民主党政権もそんな自立支援法を問題視したからこそ原告団と和解し、法の廃止と新法の制定を約束したのではなかったのか。そして現場を熟知する障害者や家族らの知恵を借りようと、新法の枠組みづくりを委ねたはずだ。

 その現場の声は昨年八月に骨格提言として集約された。閣議決定通り今国会に向けて法案化されると信じたのに、新法案と称して厚労省が示したのは現行法の仕組みを維持した案にすぎなかった。

 提言内容はことごとくないがしろにされた。とりわけ問題なのは障害程度区分と呼ばれるシステムが残ることだろう。障害が軽いか重いかで障害者を六つのランクに分ける物差しだ。

 心身の機能や能力についてコンピューターを使ったり、専門家が話し合ったりして調べる。そして本人のいないところでそのランク、つまりサービス内容を一方的に決めてしまうのである。

 全国一律の客観的な物差しを使い、自治体によってサービスにばらつきが出ないようにするのが建前だ。裏を返せば、障害者がどんな暮らしを望み、どんな支援を求めたいのかという肝心要のニーズには応えないシステムだ。

 食事や排泄(はいせつ)、移動、コミュニケーションといった身の回りの支援は、障害者にとって命綱である。障害者が健常者と同じように社会生活を送るための必要最小限の手段だ。売り買いを目的とした商品ではない。

 いくら「障害者と健常者の共生社会の実現」と理念を掲げ、法律の名前を変えても、中身がそのままなら世界の六割が加盟する障害者権利条約の批准も危うい。」


◆ 神奈川新聞社説

「障害者総合福祉法 提言の無視は許されぬ」 (2012年2月16日)

「現行の障害者自立支援法を廃止し、2013年8月までに施行する目標の「障害者総合福祉法」(仮称)について、内閣府の諮問機関「障がい者制度改革推進会議」の総合福祉部会に厚生労働省案が示された。

 法案の方向性を示す概要だが、昨夏に同部会がまとめた骨格提言をほとんど無視した内容ともいえよう。部会の委員や障害者団体は強く反発しており、徹底した再検討が必要だ。

 厚労省案は、わずか4ページの簡略な中身だ。例えばサービス支給について、骨格提言は障害程度区分に代わる新たな支給決定の仕組みを求めた。これに対し、同省案は「法の施行後5年を目途に、障害程度区分の在り方について検討を行い、必要な措置を講じることとする規定を設ける」とした。現行の障害程度区分を維持したまま、部分修正のみ検討するという姿勢だ。

 新法制定ではなく、障害者自立支援法の一部改正にとどめようとする同省の姿勢が表れている。

 佐藤久夫部会長の整理では、骨格提言の内容60項目のうち、同省案で全く触れられていない事項が48項目にも上った。検討されているが、その内容が不明確なのは9項目。不十分ながら骨格提言を取り入れている事項は3項目にすぎなかった。

 委員からは「骨格提言を無視した内容であり、到底認めることはできない」「(国と障害者自立支援法訴訟原告との間で結ばれた)基本合意に反する。国は詐欺を働くのか」などの激しい反発の声が上がったという。

 骨格提言は、障害者、関係団体の代表らが一堂に会し、18回もの会合を重ねた末に一定の共通見解に達した歴史的な文書だ。

 障害者の地位を保護の客体から権利の主体へと転換し、障害者権利条約の精神を実現させるものだ。提言に基づく新法は、障害者福祉を大きく前進させるものとして期待されていた。

 厳しい財政状況下で、具体的なサービス支給には柔軟な対応もやむを得ないだろう。しかし、骨格提言が示した障害者の権利の在り方、制度の骨組みの具体化を法案で目指さなければ、部会を設置した意味がなくなる。

 障害者らは裏切られた思いだろう。深刻な不信感、政治・行政との亀裂は、今後に禍根を残す。政府与党は骨格提言に基づく制度づくり、工程表作成に真剣に取り組むべきだ。」


◆ 感想

毎日新聞社説だけが,基本合意,骨格提案を無視した変節を容認する内容となっていますが,甚だ疑問です.厚労省案からは新たな芽を見ることはできないでしょう.

谷直樹
ブログランキングに参加しています.下記バナーを1日1回クリックお願いします.7日間のクリック数合計が順位に反映します.

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2012-02-20 11:14

母の誕生日とキース・マンハッタン

b0206085_10241285.jpg
事務局Hです。

先週土曜日は母の誕生日で,姉もたまたま友人の結婚式のため帰ってくるとのことだったので,私も帰省することにしました。
スイーツに詳しい谷先生や姉に美味しいケーキを聞いて,結局,東京駅の大丸のキース・マンハッタンでチョコケーキを買って実家へ。

父が用意してくれていたお刺身でお腹一杯になってしまったのですが,美味しいケーキは別腹・・・というか背中に入ると思っているので,そちらもばっちり食べました。
初めて買ったお店のケーキでしたが,チョコが濃厚で,家族も美味しいとたくさん食べてくれたので良かったです。

幼い頃は,誕生日になると父がお寿司を握ってくれ,祖母がケーキを焼いてくれた記憶がありますが,家族全員でハッピーバースデーを歌って,主役がろうそくを吹き消す光景が久しぶりすぎて,懐かしいを通り越してなんだか新鮮でした。
年を取ることを喜ぶ年齢ではありませんが,それでも生まれた日はめでたいもの。
たまには家族だけで祝う誕生日も良いなぁと思いました。

谷直樹法律事務所
下記バナーのクリックを御願いいたします.クリックは一日一回有効です.7日間のクリック数合計が順位に反映します.

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村
by medical-law | 2012-02-20 10:24 | 休暇・休日

日弁連,「福島の復興再生と福島原発事故被害者の援護のための特別立法制定に関する意見書」

b0206085_13221545.jpg日本弁護士連合会(日弁連)は,2012年2月16日,「福島の復興再生と福島原発事故被害者の援護のための特別立法制定に関する意見書」を内閣総理大臣等に提出しました.

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村

意見書の趣旨は,以下のとおりです.

「政府は、今国会に提案された「福島復興再生特別措置法案」又は今国会に提出を目指すと報道されている「被災者保護法案(仮称)」に下記の施策を盛り込むなど、早急に被害者の生活再建支援、健康確保及び人権擁護のための施策を行うべきである。

1 被害者に対する生活給付金又は一時金等の生活再建支援制度を創設すること。

2 警戒区域設定された地域に住居を有する被害者に対する損失補償制度を創設すること。

3 国による被害者の健康管理調査と無償医療を実施すること。また、これらの施策の目的は「健康上の不安の解消」ではなく、「健康被害の未然防止、早期発見、治療」にあることを明記すること。

4 国は、被害者自らがどの程度被ばくしているかを知る権利があることを認め、被害者が希望する場合は、ホールボディカウンター等により内部被ばくの有無を測定し、そのデータから現在までの被ばく量を推計の上、当該被害者に開示することとし、また、その費用は国が負担すること。

5 居住地から避難するか、残留するかなどの意思決定に当たっては、被害者に対し、放射性物質による現在の汚染状況と今後の除染計画や風雨などに伴う放射性物質の移動などを予測した上で、中長期的な汚染状況の変化を適切に予測し、その正確な情報の提供をするとともに、被害者の自己決定権を尊重し、どのような決定を下した者に対しても、その状況に応じて十分な支援を行うこと。

6 福島県民に対するいわれなき差別を防止するとともに、とりわけ、子ども、妊婦、乳幼児を持つ母親、障がい者及び高齢者等の災害時要援護者に対して特別な保護を与えることを内容とする施策を行うこと。

7 警戒区域設定解除に当たっては、公正な判断がなされるよう専門家と市民の代表から構成される第三者機関を設置すること。一方で、警戒区域設定解除を機械的に適用して援助を打ち切るような扱いはしないこと。

8 上記の各施策に伴って支出された国費について、国から東京電力に対する求償等の措置を検討すること。

9 遠隔地避難者に対する支援に万全を期するため、被災者台帳を全国の自治体で整備し、正確な所在を把握するため積極的に情報共有すること。また、避難場所について公益活動を行う団体に開示すること。

10 国は避難によって別々に生活せざるを得ない家族に対し、家庭の維持のための支援を行い、避難者の受入れ自治体は住居の提供や雇用の創出・斡旋に努めること」


谷直樹
ブログランキングに参加しています.下記バナーを1日1回クリックお願いします.7日間のクリック数合計が順位に反映します.

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2012-02-18 08:46 | 弁護士会

日弁連会長談話,東京電力は原子力損害賠償紛争解決センターによる和解仲介案の尊重義務を果たせ

b0206085_13364317.jpg

日本弁護士連合会(日弁連)は,2012年2月15日,「東京電力に対し原子力損害賠償紛争解決センターによる和解仲介案の尊重義務を果たすことを求める会長談話」を発表しました.

国から,総額約1兆6000億円が損害賠償資金として東京電力に交付されます.
東京電力は,その見返りとして,原子力損害賠償紛争解決センターの和解仲介案を尊重することを約束しています.
ところが,実際には,東京電力は和解仲介案を全く尊重していません.
東京電力の,賠償資金をもらいながら賠償金を出し渋る,という対応により,原子力損害賠償紛争解決センターは,その役割を果たせない状態になっています.

上記会長談話は,次のとおり指摘しています.

「福島県大熊町から東京都内に避難している男性が原子力損害賠償紛争解決センター(以下「センター」という。)に昨年9月1日に申立てを行った第1号事件について、昨年12月27日にセンターの仲介委員が示していた和解仲介案に対して、東京電力は様々な条件を付けるなどして、今日に至るまでなお和解仲介案を受諾せず、仲介委員が和解仲介案を提示してから実に50日以上もの期間が徒過し、この間申立人である被害者は全く救済されていない。他の事案においても、東京電力は、財物価値喪失等や中間指針に具体的記載のない損害の賠償請求について和解協議に消極的、かつ、事件全般につき認否留保が多く、そのために和解解決が進んでいないと指摘されている。

特別事業計画は、政府及び国民との約束であり、この度の変更により更に多額の国費が東京電力に対し投入される以上、東京電力には、「和解仲介案の尊重」を始めとした「5つのお約束」を誠実に遵守する義務がある。

当連合会は、改めて、東京電力に対して、積極的に和解協議に応じるとともに、センターの仲介委員が和解仲介案を示した場合には、原則としてこれを尊重し、迅速かつ誠実に和解仲介案を履行するなど、特別事業計画に記載された事項を確実に遵守し、一刻も早い被害者の救済を図るために、最善の努力を行うことを強く求める。」


谷直樹
ブログランキングに参加しています.下記バナーを1日1回クリックお願いします.7日間のクリック数合計が順位に反映します.

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村
by medical-law | 2012-02-18 08:34 | 弁護士会