弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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鳥取県立厚生病院,直腸がんの手術後,腹膜炎から敗血症を起こして死亡した事案で遺族と和解

鳥取県立厚生病院,直腸がんの手術後,腹膜炎から敗血症を起こして死亡した事案で遺族と和解_b0206085_633221.jpg

◆ 事案

鳥取県立厚生病院で,2011年4月1日大腸がんの手術をうけた患者(72歳,男性)の容態が,同月6日に悪化しました.
医師は,感染性腸炎と誤診したことから,適切な治療が遅れ,腹膜炎から敗血症を起こして死亡しました。

◆ 対応

患者の遺族は,2011年9月,同病院に対し2600万円の賠償金を請求しました.
鳥取県は,2012年2月1日,医療過誤があったことを認め,1800万円の損害賠償を支払うことで遺族と和解すると発表した。

msn産経「鳥取県、遺族と和解 厚生病院の男性死亡 医療過誤認め賠償へ」(2012年2月3日)ご参照

◆ 感想

医療過誤を疑って弁護士に相談される類型の一つが,このように手術後,腹膜炎から敗血症を起こして死亡した事案です.
手術時の縫合不全,術後の症状と診断の可能性等が問題になります.
本件は,有責例として比較的早期に解決でき良かったと思います.

【追記】

朝日新聞「厚生病院で誤診」(2012年2月3日)は次のとおり報じています.

「県立厚生病院(倉吉市)は2日、昨年4月に大腸の摘出手術を受けた琴浦町の男性(当時72)に対し医療過誤があり、男性が手術の8日後に死亡した、と発表した。男性は手術での腸の縫合不全による腹膜炎を腸炎と診断ミスされていた。病院側は医療過誤を認め、男性の遺族に損害賠償1800万円を支払うことで和解するという。20日からの2月定例県議会に議案が提出される。

 前田迪郎(みち・お)院長が記者会見して明らかにした。病院側の説明によると、男性は昨年4月1日、直腸がんのため厚生病院で大腸の摘出手術を受けたが、6日未明に下痢や嘔吐(おう・と)を催すなど容体が急変。消化器外科の主治医(昨年6月末に退職)は症状から感染症腸炎と診断し、抗生剤を投与する治療を行った。

 しかし、男性は7日朝に心肺停止状態に陥り、開腹手術を行ったところ、腹膜炎を患っていたことが分かったという。男性は9日、腹膜炎によって細菌感染が全身に広がる敗血症で死亡した。

 病院側は当初、遺族に対して合併症による医療事故と説明。その後、遺族側が病院側の注意義務違反を申し立て、9月に2600万円の損害賠償を請求したことから、再度検討した結果、医療ミスだったことを認めた。

 前田院長は会見で「腹腔(ふく・くう)内にガスがたまるなど腹膜炎の兆候もあったが、それよりも腸炎を示す症状を重視してしまった。腹膜炎として最初から処置していれば、助かった可能性はあった」と謝罪した。(宋潤敏)」


毎日新聞「医療過誤:厚生病院で大腸手術の男性死亡 1800万円で遺族と和解--県 /鳥取」(2912年2月3日)は次のとおり報じています.
 
「県は2日、県立厚生病院(倉吉市東昭和町)で昨年4月に琴浦町の男性(当時72歳)が直腸がんのため大腸の切除手術を受けた際、CT(コンピューター断層撮影)検査の結果を主治医が過小評価し腹膜炎で死亡させる医療過誤があったと発表した。当初は過失がない医療事故としていたが、遺族側から「注意義務違反があったのではないか」などと損害賠償を請求されたため、病院側が詳しく調査。11月に過失を認め、和解に向けて協議していた。慰謝料などとして県が約1800万円を支払うことでこのほど合意したという。

 男性は直腸がんのため昨年3月30日に入院し、4月1日に大腸の切除手術を行った。入院中の6日午前2時ごろに容体が急変。同日にCT検査を行ったところ、担当の放射線科医が腹膜炎の疑いを指摘した。だが、主治医(消化器外科)は下痢が続いていることや所見により感染性腸炎の可能性が高いと判断。薬の投与などの治療を行ったが、症状は改善しなかった。7日の朝に心肺停止となり、緊急手術を行ったところ、縫合不全による汎発性腹膜炎だったと判明。治療を試みたが、9日に死亡したという。

 前田迪郎院長は「(主治医は)他の医師のアドバイスを素直に聞くべきだった。診断と治療が遅れた点について、おわび申し上げる」と謝罪。「今後はこのようなことがないように、対応策などを病院内に配布して再発防止に努める」としている。【田中将隆】」


CT検査で腹腔内にガスがたまるなど腹膜炎の兆候があり,それを見た放射線科医が腹膜炎の疑いを指摘していたのですから,主治医の判断に過失があったことは,はっきりしています.

谷直樹
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by medical-law | 2012-02-03 04:01 | 医療事故・医療裁判

あなたはだいじょうぶ?ー増え続ける怖い合併症を持つ糖尿病ー

平成24年2月4日(土)14:00~16:00,横浜市港南区公会堂(港南区総合庁舎5階)で,港南 禁煙・分煙をすすめる会主催の「わかりやすい市民のための健康塾(第4回)公開講座 あなたはだいじょうぶ?ー増え続ける怖い合併症を持つ糖尿病ー」が開かれます.

タバコと肺癌・肺気腫との関係はよく知られていますが,タバコは血液・血管に作用し糖尿病を悪化させます.

港南 禁煙・分煙をすすめる会 わかりやすい市民のための健康塾(第4回)公開講座
あなたはだいじょうぶ?ー増え続ける怖い合併症を持つ糖尿病ー

【特別講演1】14:00~14:45(45分)
「あなたは糖尿病の怖さを知っていますか?」
横浜内科学会 副会長 伊藤 正吾

【特別講演2】14:45~15:20(35分)
「こんなにタバコが糖尿病を悪化させる」
神奈川県内科医学会 名誉会長 中山 脩郎

【特別演出】15:30~16:00(30分)
「ハンドベル演奏」
 港南区のハンドベルチーム;Erba の皆様

と き: 平成24年2月4日(土)14:00~16:00 開場13:30
ところ: 港南区公会堂(港南区総合庁舎5階)定員600名 横浜市港南区港南中央通10-1
申し込み不要
入場無料
あなたはだいじょうぶ?ー増え続ける怖い合併症を持つ糖尿病ー_b0206085_8461132.jpg
共催:港南 禁煙・分煙をすすめる会、港南区医師会、横浜内科学会、神奈川県内科医学会、医療のすき間を考える会、神奈川県予防医学協会、株式会社三和化学研究所(順不同・予定)
問い合わせ先:港南 禁煙・分煙をすすめる会(中山医院)TEL 045(821)1511

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by medical-law | 2012-02-02 03:02 | タバコ

公益社団法人岐阜病院,利尿剤を薄めずに高齢者に点滴したミスで遺族に謝罪

公益社団法人岐阜病院,利尿剤を薄めずに高齢者に点滴したミスで遺族に謝罪_b0206085_9115277.jpg◆ 事故の経緯

患者(女性)は統合失調症などで2004年から公益社団法人岐阜病院に入院しました.
患者は,2011年末に肺炎にかかり,2012年1月に胸水がたまり呼吸困難になりました.

医師は,2012年1月11日,体から水を抜くために,利尿剤点滴を決定しました.
患者が82歳と高齢のため,利尿が急激に進んで体に負担をかけないよう,体液を補う点滴液に利尿剤を薄めて徐々に点滴することを看護師に指示しました.

ところが,看護師は,誤って利尿剤を薄めずに点滴しました.
患者は,点滴後に血圧が低下し,約2時間後に死亡しました.

◆ 事故後の対応

患者死亡の翌日,別の看護師がカルテに記載された医師の指示と看護師の処置が異なることに気付きました.
病院は遺族に経緯を説明し,謝罪しました.

「鈴木院長は取材に「点滴ミスが死の直接原因なのかは不明だが、指示通りにやれなかったことはミス。高齢患者で利尿が進み、血圧が低下した可能性は否定できない」とし「今後は看護師の技能向上に努めたい」と話した。

遺族は「病院から同様の説明があり、納得している」としている。」
 

岐阜新聞「点滴ミス後に患者死亡 岐阜病院が遺族に謝罪」(2012年2月1日)ご参照

◆ 感想

報道の件は私が担当したものではありません.
医療過誤に基づく損害賠償は,①過失,②損害,③過失と損害との間の相当因果関係が要件ですが,実際に医療現場でミスがあった場合,ミスが死亡の直接の原因になったかどうかの推論,議論はさておいて,まず実際にあった事実(医師の指示,看護師がその指示通り実行しなかったこと,血圧低下,死亡)について説明し,謝罪するのが,必要なことです.
看護師のミスはとても残念ですが,その後の岐阜病院の対応は適切です.

谷直樹
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by medical-law | 2012-02-02 02:32 | 医療事故・医療裁判

医療情報の提供のあり方等に関する検討会,客観性を担保した「患者満足度」の公表に消極意見

医療情報の提供のあり方等に関する検討会,客観性を担保した「患者満足度」の公表に消極意見_b0206085_915441.jpg◆ これまでの議論

検討会のこれまでの議論は,「医療の成果に関するアウトカム指標」「医療の過程に関するプロセス指標」について,客観的を担保して公表する方向でした。

そこで,報告書案は,①「医療の成果に関するアウトカム指標」の中でも患者のニーズが高いと考えられる「患者満足度」,②「医療の過程に関するプロセス指標」の中でも客観性の確保が比較的容易と思われるものについて,客観性の確保に取り組み,公表する方向性を示しました.

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◆ 加納繁照委員,鈴木邦彦委員の意見

ところが,これに対し,加納繁照委員(日本医療法人協会副会長)は,「客観的にサービスが評価されるのは非常に大事だが,患者が過度なサービスを依頼するようになる。現場が非常に疲弊している中で,患者満足度という言葉に懸念を持っている」と述べ、患者満足度が大きく取り上げられることで医療従事者の負担が増える可能性を強調し,消極論を展開しました.

鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)も,「医療従事者の負担軽減と逆行しかねない」と述べ,加納委員に賛同し,「公表に向けたデータの集計には、ものすごくコストがかかる」と指摘しました.

長谷川敏彦座長(日本医科大)は,「アウトカム指標が病院経営上必要で,その中でも患者満足度が重要というのは,委員全員の合意だが,外部への出し方にはいろいろある」と述べ、次回会合で引き続き検討することとなりました.

キャリアブレイン「患者満足度公開に医療者側委員が“待った”- 医療情報提供検討会、年度内取りまとめへ 」(2012年2月1日)ご参照

◆ 感想

「患者満足度」の向上に努めている医療機関と,さほどではない医療機関を客観的に知りたい,という患者側の要請は当然と思います.
客観性を担保した「患者満足度」の公表は,医療の質の向上にもつながるはずです.

たとえば,一流レストラン並の病院食は過度のサービスと言えるでしょうが,説明と医療の中核について,より良い質を求めるのは,過度の要求でしょうか.
「患者満足度」の公表が過度の競争を招き,医療機関の負担が増えかねないので,公表せず,患者満足度向上への努力を行わないようにしよう,というのは,何か違う気がします.
公表の仕方で弊害は防止できると思います.

谷直樹
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by medical-law | 2012-02-02 01:55 | 医療

QRS(生体共鳴測定装置)を用いた検査と薬事法

QRS(生体共鳴測定装置)を用いた検査と薬事法_b0206085_9215698.jpg◆ QRS(生体共鳴測定装置)を用いた検査

QRS毛髪検診について,いくつかのサイトを見てみました.
以下のとおり書いてあるサイトがありました.

「散髪した時の髪の毛で自分の健康状態を検査できる方法があります。
もちろん、今回の放射能汚染に関しても検査することができます。
きちんとしたクリニックの西洋医学のお医者さんが開発した検査方法です。
したがって、『薬事法』もクリアしています。
※ネット販売している健康食品とは異なります。あやしいキットではありません。
成人病を検査する『人間ドック』の項目だけではなく、メンタル面の状態も検査することができます。」


この「したがって」というのがわかりません.

薬事法第13条は「医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器の製造業の許可を受けた者でなければ、それぞれ、業として、医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器の製造をしてはならない。」と定めています.
医療機器の製造者が「・・・医療機器の製造業の許可を受けた者」であるかが問題なのです.
開発者がお医者さんであれば薬事法をクリアできるという話ではないのです.
論理的に「したがって」とは言えないはずです.

◆ 「医療機器」とは

薬事法第2条第4項は,「この法律で「医療機器」とは、人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等であつて、政令で定めるものをいう。」と定めています.
薬事法施行令で「内臓機能検査用器具」は医療機器とされています.

QRS(生体共鳴測定装置)は,単に毛髪の状態を調べるというものではなく,毛髪を調べその人の健康状態を検査できるとうたっているのですから,「内臓機能検査用器具」の一つとして,薬事法上の「医療機器」に含まれ,承認を要することになるでょう.

また,日本は,医療機器規制国際整合化会議(GHTF)加盟国で,GHTFは,医療機器路「あらゆる計器・機械類、体外診断薬、物質、ソフトウェア、材料やそれに類するもので、人体への使用を意図し、その使用目的が、疾病や負傷の診断、予防、監視、治療、緩和等、解剖学または生物学的な検査等、生命の維持や支援、医療機器の殺菌、受胎の調整等に用いられるもの」と定義していますので,QRS(生体共鳴測定装置)は医療機器に含まれるでしょう.

◆ 薬事法第68条

薬事法第68条は「何人も、第14条第1項又は第23条の2第1項に規定する医薬品又は医療機器であつて、まだ第14条第1項若しくは第19条の2第1項の規定 による承認又は第23条の2第1項の規定による認証を受けていないものにつ いて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。」と定めています.

したがって,もし,QRS(生体共鳴測定装置)が「内臓機能検査用器具」として薬事法の承認を受けていないのであれば,薬事法違反となると思います.

◆ 薬事法第66条

毛髪で婦人科のがんが診断できる,とうたっているサイトもあり,「検診結果を基に指導とケアを行い、その人に適した「QRS処方水」を調整」と書いているサイトもありました.

薬事法第66条は「何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。」と定めています.

監督官庁は,どのように対応するのでしょうか.

谷直樹
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by medical-law | 2012-02-01 02:04 | 医療

映画「新・あつい壁」の上映会,2月5日,国立ハンセン病療養所「菊池恵楓園」で

映画「新・あつい壁」の上映会,2月5日,国立ハンセン病療養所「菊池恵楓園」で_b0206085_9393799.jpg監督中山節夫氏は,熊本県菊池郡合志町出身です.
龍田寮事件(黒髪校事件)をテーマに,映画「あつい壁」(1970年)でデビューしました.
龍田寮事件(黒髪校事件)とは,菊池恵楓園のハンセン病患者の子供たちの龍田寮から黒髪校への通学が強い反対に遭った事件です.

映画「新・あつい壁」(2007年)は,藤本事件(菊池事件)をテーマにしています.
藤本事件(菊池事件)とは,以前も「藤本事件,50年後の再検証と再審請求を探る動き」で書きましたが,ハンセン病患者藤本氏が,差別偏見による杜撰な捜査,裁判を受け死刑となった事件です.

2012年2月5日,国立ハンセン病療養所「菊池恵楓園」で「新・あつい壁」が上映されます.

菜の花法律事務所の弁護士国宗直子氏は「明白な証拠もないまま差別的な裁判手続きで刑が執行された事件を多くの人に知ってほしい」と話しています.

毎日新聞「映画:「菊池事件を知って」 ハンセン病差別描いた「新・あつい壁」、恵楓園で上映会--来月5日 /熊本」(2012年1月31日)ご参照

谷直樹
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by medical-law | 2012-02-01 00:34 | 医療