弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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山形地裁平成26年1月28日判決,アラーム音に気づかず窒息の事案で国立病院機構山形病院に賠償命令(報道)

読売新聞「「窒息防ぐ義務怠った」国立病院に賠償命令」(2014年1月30日)は,次のとおり報じました.

「山形県鶴岡市の筋ジストロフィーの当時8歳の男児が意識障害になったのは、短期入所した国立病院機構山形病院(山形市)の監視体制に不備があったためだとして、両親が病院を相手取り、慰謝料など約3200万円を求めた訴訟の判決が28日、山形地裁であった。

 石垣陽介裁判長は「男児が窒息することを防ぐ義務を怠った」と病院側の過失を認め、1980万円を支払うよう命じた。

 看護師らが呼吸状態を判定する機器のアラーム音に気付かず、発見が遅れて男児が意識障害を負ったかどうかが争点となり、原告は、アラーム音が大きい機器を使用すべきだったなどと主張した。男児は昨年9月に10歳で亡くなっている。

 判決では、発見が遅れたことで男児が窒息し、心肺停止状態になったと認定。病院側に男児の様子を頻繁に監視する義務があったとした。一方、請求額を減らした理由として、男児はたんがたまりやすく吸引介護が必要だったことなど、父親が病院側に十分な情報提供をしていれば、今回のような事態を回避できた可能性があったことを挙げた。

 原告の弁護士は「こちらの主張がおおむね認められた」と判決を評価した。病院側は「主張が認められず残念。控訴も視野に入れて関係機関と相談する」としている。」


本件は,仙台の坂野智憲先生が担当した事件です.
山形地裁平成24年(ワ)第34号 損害賠償請求事件
http://www5b.biglobe.ne.jp/~j-sakano/chissoku1.html

本件に限らず、アラーム音に気づかなかったために起きた医療事故は結構あるようです.


弁護士 谷直樹

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by medical-law | 2014-01-30 18:47 | 医療事故・医療裁判

大阪高裁で逆転判決,大阪拘置所で強制的に栄養を鼻から注入された事案で賠償認める(報道)

西日本新聞「鼻に栄養剤、国に賠償命令 「屈辱的扱いで苦痛」」(2014年1月23日)は,次のとおり報じました.

「大阪拘置所で強制的に栄養を鼻から注入され負傷したなどとして、京都市に住む元収容者の男性が国に300万円の賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁は23日、請求を棄却した一審大阪地裁判決を変更、「屈辱的扱いで精神的苦痛を与えた」として、国に50万円の支払いを命じた。

 判決理由で山下郁夫裁判長は「拘置所の医師は食事を拒んだ男性に、点滴などほかの方法を試みず、同意も得ないで鼻から栄養剤を注入した。安全配慮義務に違反しており違法だ」と指摘した。」


報道の件は私が担当したものではありません.
地裁の判決を高裁が覆したものです.
本件は,そもそも同意・不同意が可能なのに,同意を得ずに強制的に治療することに問題がある事案と言えるでしょう.


弁護士 谷直樹

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by medical-law | 2014-01-30 09:28 | 医療事故・医療裁判

平戸市の病院で投薬ミス(報道)

読売新聞「平戸市民病院で投薬ミス、入院患者が一時意識混濁」(2014年1月28日)は,次のとおり報じました.

 「長崎県平戸市の平戸市民病院で、症候性てんかんと診断された男性入院患者(87)に、適正量の10倍の抗てんかん薬が誤って投与されていたことが分かった。男性は一時、意識混濁状態になったが、現在は回復しているという。

 同病院によると、男性患者は転んで頭部を強打し、同県佐世保市の病院に運ばれ、その後遺症として症候性てんかんと診断された。今月22日に市民病院に転院。診察した60歳代の男性医師が、1日当たりの抗てんかん薬の投薬量を電子カルテに入力する際、誤って適正量(0・8グラム)の10倍にあたる8グラムと入力。カルテに従い、23日朝と夜、24日朝の3回に分けて4グラムずつ計12グラムが投与された。

 男性患者は23日に意識が混濁、24日にけいれんを起こし、佐世保市の病院に救急搬送された。意識は戻ったが、現在も入院している。男性医師は24日、ミスに気付き、その後、患者の家族に謝罪したという。」


報道の件は私が担当したものではありません.
平戸病院では,電子カルテシステムが昨年秋から稼動したばかりでしたので,医師が不慣れだったのかもしれませんが,桁間違いの入力はあり得ることですので,処方量が添付文書上の1回量,1日量を超えた場合に警告が出る設定が必要ではないでしょうか.


弁護士 谷直樹

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by medical-law | 2014-01-28 20:09 | 医療事故・医療裁判

患者の視点で医療安全を考える連絡協議会、医療版事故調創設を要請

東京新聞「医療事故調は「議論不十分」 自民内から設置に批判」(214年1月23日)は、次のとおり報じました.

「自民党の社会保障制度特命委員会・厚生労働部会合同会議は二十二日、厚労省が通常国会に提出する医療と介護保険の見直しを一本化する法案について議論。医療事故を調査する第三者機関(事故調)の設置と、看護師に一部の医療行為を委ねられるようにする研修制度の新設に対し、「議論が不十分で拙速だ」などと批判が相次いだ。

 法案では、患者が死亡する医療事故が起きた場合、遺族らの申請を受けた事故調が、原因究明と再発防止策を検討する。ただ、医師会の支援を受ける議員らが事故調設置とセットになる医師の過失責任を免除する仕組みの議論が不十分として反発。削除か、一定期間後に内容を見直す条項を盛り込む修正を主張した。

 新設を検討する研修制度は、患者への気管挿管や動脈からの採血などの「特定行為」と呼ばれる医療行為を、研修を受けた看護師ができるようにする内容。医師の指示を受けた看護師が既に特定行為を行っている実態があることから、議員から「制度の新設は現場の混乱を招く」などとして撤回を求める意見が出た。

 丸川珠代厚労部会長は会合後、厚労省に研修制度について「現場の混乱が起きない理由の説明が十分でなかった」と指摘。記者団に対し、二十八日の次回会合であらためて厚労省の説明を聞き、事故調も含めて一括法案に盛り込むかどうか、結論を出す考えを示した。」



読売新聞「医療事故の調査制度創設を…事故被害者ら要請」(2014年1月27日)は、次のとおり報じました.

「医療事故の被害者や遺族らで作る「患者の視点で医療安全を考える連絡協議会」は27日、安倍首相や田村厚生労働相らに対し、医療事故調査制度の創設に向け、医療法改正を求める要請書を提出した。

 通常国会に提出される医療法改正案に制度の創設が盛り込まれる予定になっているが、一部の与党議員から疑義を唱える声が上がっているためだ。」



医療にたずさわる方は、医療過誤で患者が死亡しても、必ずしも遺族から責任追及があるわけではないことをご存知だと思います.
医療過誤を立証することのハードルの高さもさることながら、遺族が医療過誤であることに気づいていないケースが少なからずあるからです.

医療版事故調は、責任追及の制度ではなく、原因究明と再発防止のための制度です.
ただ、医療版事故調により事実が明るみにでてしまうと、医療過誤であることに気づいてしまう遺族もいるでしょう.その結果、いままで闇に埋もれていた医療過誤事案について、医療機関に対する民事の賠償が請求されることになりかねません.これが不都合である、と考える人たちは、医療版事故調に反対しています.
しかし、医療版事故調ができ、事実が明るみにでることよって、遺族が医療過誤に気づいてしまうという不都合なことがあるとしても、それは、医療版事故調の問題ではありません.医療過誤が少なからずあることの問題といえるのではないでしょうか.

また、明確な根拠は示されていませんが、民事賠償事請求訴訟が増えると、刑事の処分も増加し、行政処分も増えるから、という理由で反対する人もいます.
しかし、一般に示談成立により不起訴となることが多いように、民事が機能すれば刑事は謙抑的になると考えるべきでしょう.

医療版事故調が創設されると、医師が逮捕される、刑事処分が行われる、などと危機意識を煽る論調をみかけることもあります.
しかし、医療過誤に関して医師が逮捕される例はごくわすかです.一部の医師は、刑事処分に処されていますが、それは本当に不当なことなのでしょうか.
過失犯において逮捕されるのは、医療事故に関連するより、交通事故に関連するもののほうが多いでしょう.医療過誤を起こした医師の圧倒的多数は逮捕されていません.医療事故において逮捕され刑事処分を受けるのは、とくに違法性が高い場合に限られています.

院長である医師が理事長である義母を殺害し、(異常死であるにもかかわらず)病死とする死亡診断書を書き、義母は火葬されたという事件は記憶に新しいところです.このような事案で医師が逮捕され刑事処分を受けるのは不当とは思われません.
国家が刑事処罰を行うのは私的制裁を封じ秩序を維持するためでもありますから、医師に特権的な刑事免責権を付与するのは医師のためになりません.

医師法との関係は確かに未整理ですが、そのことをもって医療版事故調を先送りするのは早計ではないか、と思います.
医療版事故調により、事故の原因解明と再発防止がすすむことが期待できます.その結果、中長期的には医療事故が減り、医療弁護士の仕事が減るでしょう.そのほうが悲痛な医療事故被害を見ることが少なくなりますので、私はうれしいです.

【追記】

日本経済新聞「医療版事故調を設置へ 自民が大筋了承」(2014年1月28日)は,次のとおり報じました.

「医療事故の原因究明と再発防止に役立てるため、厚生労働省が法制化を目指す第三者機関「医療版事故調査委員会」について、自民党の社会保障制度特命委員会・厚生労働部会合同会議は28日、2年以内に制度を見直すことなどを条件に大筋で了承した。厚労省は今国会に制度創設を盛り込んだ医療法改正案を提出する。

 法案では診療行為に関して患者が予期せず死亡した場合、医療機関は民間の第三者機関への届け出と院内調査が義務付けられる。調査結果に納得できない遺族は第三者機関に再調査を求めることができ、調査結果は警察や行政に通知しない。

 ただ、医師が患者を「異状死」と認めたケースは従来通り医師法に基づき警察に届け出る義務があり、一部の議員らが「警察が介入する恐れがある」などと反発していた。法案ではこうした意見も踏まえ、2年以内に医師法との関係性についても結論を出すとの文言が盛り込まれる見通し。」


【再追記】

読売新聞「医療事故調査制度創設を了承…自民部会」(2014年1月30日)は,次のとおり報じました.

「自民党は30日午前、厚生労働部会などの合同会議を開き、医師の治療で患者が予期せずに死亡した場合、原因究明し再発を予防する医療事故調査制度を創設することを盛り込んだ「医療・介護総合推進法案」を了承した。

 公明党の部会でも31日に了承される見通しで、政府は近く法案を閣議決定し、通常国会に提出する。

 調査制度は、医療機関に対して、国が指定する第三者機関「医療事故調査・支援センター」に事故の届け出や院内調査結果の報告を義務付けるもので、2015年10月に施行される。今後、現行法が定めている警察への届け出との関係などを調整し、法律の公布後2年以内に制度を見直すこととされた。

 法案には、高齢者の在宅復帰や長期療養を支援するため、都道府県が必要な病床数をまとめた「地域医療ビジョン」を作ることも盛り込まれた。住み慣れた地域で医療と介護のサービスを一体的に受けられる体制作りを目指す。介護保険サービスの自己負担は、高所得の高齢者を対象に1割から2割に引き上げられる。」



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by medical-law | 2014-01-28 02:24 | 医療事故・医療裁判

鳥取県の病院、がんの手術後の死亡事故で裁判上の和解成立(報道)

米子の医療過誤:損賠訴訟 山陰労災病院、遺族に陳謝と和解金−−地裁米子支部 」(2014年1月21日)と報じました

「米子市の男性(当時77歳)ががんの手術後1カ月余で死亡したのは山陰労災病院(米子市)の手術ミスが原因として、遺族6人が同病院を運営する独立行政法人労働者健康福祉機構(川崎市)と主治医を相手取って4491万円の損害賠償を求めた医療過誤訴訟は20日、鳥取地裁米子支部(上杉英司裁判長)で和解が成立した。」

報道の件は私が担当したものではありません.
全国の地方裁判所で,平成24年に判決となった医療事件は319件(37.8%),和解となった医療事件は 433件(51.3%)です.医療裁判は,一般的に,和解で終わることが多い,と言えます.

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by medical-law | 2014-01-23 22:52 | 医療事故・医療裁判

鳥取県の病院,腸閉塞による死亡事故で提訴される(報道)

テレビ朝日「死亡4歳長男は医療ミスが原因 両親が鳥取県を提訴」(2014年1月23日)は,次のとおり報じました.

「鳥取県の病院で当時4歳の長男が死亡したのは病院の医療ミスが原因だったとして、両親が病院を運営する鳥取県を相手取り、約6800万円の損害賠償を求めて提訴しました。

 訴状によりますと、鳥取県に住む30代の夫婦の長男は2012年、嘔吐(おうと)を繰り返すなど体調不良を訴えて鳥取県立中央病院に救急搬送されましたが、翌日、腸閉塞で死亡しました。夫婦は腸閉塞を疑うべき症状が無視されるなど、医療ミスが原因で長男が死亡したとして、病院を運営する県に対し、約6800万円の損害賠償を、病院に対しては謝罪などを求めて、22日、鳥取地裁に提訴しました。夫婦は会見で「ちゃんと治療してもらえれば、この春には小学校に入学するはずだった」と語りました。鳥取県立中央病院は、「事実関係を整理したうえで対応を検討していきたい」とコメントしています。」

報道の件は私が担当したものではありません.
イレウスの裁判例は多いです.嘔吐・腹痛を訴える患者は多いですが,常にイレウスを念頭において診療する必要があるでしょう.

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by medical-law | 2014-01-23 13:27 | 医療事故・医療裁判

横浜地裁,喫煙禁止表示が小さいと,市に過料処分取り消しを命じる(報道),東京高裁判決で逆転

読売新聞「禁煙表示小さい…路上喫煙の男性が横浜市に勝訴」(2014年1月22日)は,次のとおり報じました.

 「横浜市条例で指定された喫煙禁止地区でたばこを吸ったとして、2000円の過料処分を受けた東京都立川市の男性が処分取り消しを求めた訴訟の判決が22日、横浜地裁であった。

佐村浩之裁判長は「男性は喫煙禁止地区であることを知らず、過失は認められない」と述べ、横浜市に処分取り消しを命じた。

 同市などによると、男性は2012年1月、同地区に指定された横浜駅近くの路上で喫煙した。男性は「禁止地区であることを認識できる標識が近くになかった」と主張。市は「路面表示があり、容易に認識可能だった」と反論していた。

 判決では、佐村裁判長は「路面表示は小さく、歩行者が認識することが困難だった」と指摘、男性に過失はなく処分は違法とする判断を示した。

 市は「判決文を精査し、弁護士とも協議して対応を決めたい」としている。」


今後,喫煙禁止地区であることをより大きく表示するなど,横浜市は対応を迫られることになるでしょうが,横浜市内全域を喫煙禁止地域に指定し,例外的に喫煙可能な地域を表示するという方法も考えられるでしょう.

私は,突然咳き込み苦しくなり,見ると20メートルくらいさきに歩行喫煙している人を発見するということがよくあります.路上喫煙する人は,人に害をなしていることに気づいていないのでしょうが...


【追記】

東京高裁平成26年6月26日判決(第4民事部 田村幸一裁判長)では, 横浜市が逆転勝訴しました.


日刊スポーツ「「禁煙確認は義務」と判決 横浜路上喫煙」(2014年6月26日)は,次のとおり報じました.

「横浜市の路上禁煙地区でたばこを吸ったとして、過料2000円の処分を受けた男性が「表示が小さくて見えなかった」と取り消しを求めた訴訟の控訴審で東京高裁は26日、「路上禁煙の取り組みは拡大しており、あえてたばこを吸う人は禁煙地区かどうか事前に確認する注意義務がある」と男性側逆転敗訴の判決を言い渡した。

 1審横浜地裁判決は「禁煙地区を示す路面表示や看板が小さく、読み取ることは困難だった」と、男性の過失を否定し、処分を取り消していた。

 判決によると、男性は2012年1月、横浜駅近くの「喫煙禁止地区」の路上でたばこを吸っていて、市の美化推進員から過料処分を受けた。男性が喫煙した付近には、直径30センチの円形の路面表示が2カ所と、看板が1つあった。

 高裁の田村幸一裁判長は判決理由で「受動喫煙防止のために路上喫煙を規制する条例を制定している自治体は多い。この程度の表示があれば十分で、確認を怠らなければ禁煙地区かどうか認識することは可能だった」と指摘し、男性に注意義務違反の過失があったと認めた。

 男性は東京都立川市在住で、1審判決は「禁煙地区と知らない場合は、過失がないこともあり得る。その地区を訪れる者には標識などで周知する措置が必要だ」としていたが、高裁判決は「立川市にも路上禁煙地区はあり、男性は喫煙場所の制限が時代の流れと認識していた」と指摘した。(共同)」


神奈川新聞「路上喫煙訴訟:「禁止地区と認識できた」 横浜市の過料認める 東京高裁」(2014年6月27日) は,次のとおり報じました.

「指定した地区での路上喫煙を禁じる横浜市の条例をめぐり、過料2千円の処分を受けた東京都の自営業の男性(64)が、「違反現場が禁止地区とは認識できなかった」として市に処分の取り消しを求めた訴訟の控訴審判決が26日、東京高裁であった。田村幸一裁判長は「注意すれば現場は禁止地区と認識できた」として、処分取り消しを命じた一審判決を覆し、男性の請求を棄却した。

 一審横浜地裁判決は、路上喫煙の規制の現状について「禁止されている地域は極めて限られている」としたが、田村裁判長は「条例制定などの取り組みは、拡大してきている」と指摘。その上で、「あえて路上で喫煙する場合には、禁止地区かどうか十分に注意する義務がある」とし、違反現場にあった禁止地区を周知する路面表示も「注意を怠らなければ認識できた」として、男性の過失を認定した。

 一方、争点の一つだった過料処分に過失が必要かどうかについては、「本来違法とされていない喫煙を禁止し、それに対する制裁という過料の性質からも、違反者に過失がない場合まで制裁を科すのは不相当」と判断。一審に引き続き「過失がなくても過料を徴収できる」とする市側の主張を退けた。

 男性は2012年1月、市条例で喫煙が禁止された横浜駅近くの路上で喫煙。市の「美化推進員」から過料2千円の処分を受け、提訴した。今年1月の横浜地裁判決は、「違反現場は路面表示が小さく禁止地区との認識は困難」として、市に処分の取り消しを命じていた。

 原告側代理人は「市の主張通りなら、自治体の取り締まりに歯止めが利かなくなり、過失の必要性を認めた点は評価できる。判決については上告が可能か検討したい」と話した。横浜市は「処分が適法だったことが認められた」とコメントした。

〈解説〉マナー向上と条例周知求め

 東京高裁判決は、一審判決を覆しつつ、喫煙者にはマナーの向上を、規制する自治体側には条例の十分な周知徹底を求めた。個人のたしなみと、不特定多数が利用する空間の環境保全の両立に、一つの物差しを提示している。

 判決の根幹にあるのは、「路上喫煙をなくす」という条例制定の目的だ。横浜市は「規制の実効性を保つため」として県内で最も厳しく対応してきた。ただ、控訴審判決が求めたのは、丁寧な事前周知と注意喚起。それを徹底すれば結果的に、「知らなかった」との言い訳が通用しなくなり、違反者の過失の立証にもつながる、というわけだ。

 一方で、喫煙者にも注意義務があるとしている。現状では繁華街などを中心に路上喫煙の規制が進んでおり、吸う側も周囲の環境に注意すべき、との指摘は当然といえる。

 さらに判決は、自治体の独自ルールの設定にも影響を与えそうだ。路上喫煙のように、違法ではない行為にあえて過料を適用するためには、事前の周知徹底が欠かせない。「周知が不十分な場合は自治体の責任」という判決の指摘を踏まえ、罰則を適用することが求められている。」


神奈川新聞「路上喫煙処分は適法 最高裁が男性の上告棄却」(2015年1月8日)は、次のとおり報じました.

「指定地区での路上喫煙を禁じる横浜市の条例に基づき、過料2千円の処分を受けた東京都の自営業の男性(64)が処分の取り消しを求めた訴訟で、最高裁第1小法廷(白木勇裁判長)は7日までに、男性の上告を棄却した。決定は昨年12月18日付。処分を適法と認めた同6月の東京高裁判決が確定した。

 東京高裁判決は、「路上喫煙規制の取り組みは次第に拡大してきたと認められる」とし、「あえて路上で喫煙するなら、その場所が禁止地区か注意する義務がある」と判断。喫煙禁止地区を知らせる路面表示の大きさなどから「(男性が)禁止地区と認識することは困難」として処分取り消しを命じた一審横浜地裁判決を覆し、市の処分を適法と認めた。

 男性は2012年1月、市条例で喫煙が禁止された横浜駅近くの路上で喫煙。過料処分を受けたが、「違反現場が禁止地区とは認識できなかった」として、取り消しを求めていた。

◆横浜市、条例の周知強化

 横浜市は路上喫煙を禁じる条例の周知強化に乗りだしている。昨年6月の東京高裁判決が、今回の過料処分は適法と認めた一方、「喫煙禁止の周知徹底、喫煙者の注意喚起に費用を掛けるのは当然」と指摘したからだ。

 市資源循環局業務課によると、これまで期間限定ながら、京急電鉄や東急電鉄の協力を得て、駅ホームや車両内に条例を周知する広告を掲示。昨年12月からは、観光情報を発信するホームページで市の取り組みを紹介した。さらに今月、地元の情報誌に有料広告を掲載する予定だ。

 また、一審判決で「認識が困難」とされた禁止地区を伝えるシール式の路面表示についても、従来は劣化が目立ったものを交換するだけだったが、地区ごとに一斉貼り替えを進める。市内に6カ所ある禁止地区のうち、2014年度中に2カ所、15年度にも2カ所を刷新させる。将来的には、景観に配慮しつつ、外国人も理解しやすいデザインへの変更も検討するという。

 「処分の適法性が認められた」と判決確定を受け止める横浜市は、今後も違反者を見つけた場合は条例に基づいて過料を徴収する方針。ただ、「より丁寧に条例の趣旨を説明し、PRや表示も充実させて路上喫煙の防止を目指したい」としている。」



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by medical-law | 2014-01-22 22:06 | タバコ

甲府市の病院,気管切開手術ミスを理由に提訴されていた(報道)

毎日新聞「提訴:「甲府病院のミスで死亡」 気管切開手術、遺族が市を」(2014年1月22日)は,次のとおり報じました.

「市立甲府病院(甲府市増坪町)で気管切開手術を受けた後に死亡した男性(当時37歳)の甲州市に住む遺族が、気管挿入の際にミスがあったなどとして甲府市に約1億1300万円の損害賠償を求める訴訟を甲府地裁に起こした。 提訴は12月26日付。」

報道の件は私が担当したものではありません.
12月は,提訴が多い月です.
請求額と訴状に貼る印紙代が連動する関係で,私ですと,160万円の一部請求で提訴し印紙代を節約するのですが,一部請求ではなく全部請求という弁護士も多いですし,不法行為の時効(3年)との関係で全部請求することもあるのでしょう.

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by medical-law | 2014-01-22 21:39 | 医療事故・医療裁判

医療問題弁護団,レーシック被害ホットラインで日本眼科学会の指針違反の例など129件(報道)

読売新聞「「角膜削りすぎ」も…レーシック被害、129件」(2014年1月20日)は,次のとおり報じました.

「レーザー照射で視力を矯正するレーシック手術を巡り健康被害の訴えが相次いでいる問題で、昨年12月、被害相談ホットラインを開設した医療問題弁護団への相談が129件に上ったことがわかった。

 ドライアイや目の痛みなど通常の手術でも起こりうる合併症が多かったが、日本眼科学会の指針に違反する可能性がある「過矯正」の苦情も3割近く(35件)に上り、弁護団で調査を進めている。

 「過矯正」は、角膜を削りすぎて近視を必要以上に矯正すること。遠視や疲労感などの弊害につながり、学会指針では矯正の限度基準を定めているが、それを超えた手術が行われた可能性がある。相談者の受診先は特定の医療機関に集中しており、ほぼ半数が同じ医療機関で手術を受けていた。」


この件については,電話03-5698-8544医療問題弁護団事務局)へ


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by medical-law | 2014-01-21 10:57 | 医療事故・医療裁判

茨城県の病院,スタンバイにした人工呼吸器の開始忘れ事故で,看護師に罰金50万円の略式命令(報道)

読売新聞「人工呼吸器停止、患者が重体…看護師を略式起訴」(2013年12月19日)は,次のとおり報じました.

「茨城県日立市城南町の日立総合病院で2008年、入院中の男性患者(当時76歳)が、人工呼吸器の酸素供給を止める「スタンバイモード」にされたまま放置されて意識不明の重体となる事故があり、日立区検が女性看護師(32)を業務上過失傷害罪で略式起訴したことがわかった。

 男性は事故の約2か月後に死亡した。起訴は17日付。

 起訴状などによると、看護師は08年12月31日、心臓疾患で入院していた男性の気管にたまった痰(たん)を除去する際、人工呼吸器をスタンバイモードに切り替えたまま退室し、約40分間放置したために心停止させ、低酸素脳症の傷害を負わせたとされる。

 男性が急に意識不明となり、亡くなったことを不審に思った遺族が09年4月、日立署に相談。県警が今年2月、業務上過失致死容疑で書類送検したが、検察は「死亡との因果関係までは問えない」と判断した。捜査関係者によると、看護師は調べに対し、「以前から日常的にスタンバイモードに切り替えていたが、この日は戻すのを忘れた」と話しているという。」


毎日新聞「呼吸器操作ミス:日立総合病院の看護師に罰金50万円略式命令」 (2013年12月25日)は,次のとおり報じました.

「日立市城南町の日立総合病院で2008年、男性患者(当時76歳)の人工呼吸器を止めたまま放置し、低酸素脳症を負わせた事件で、日立簡裁(織田啓三裁判官)は、業務上過失傷害罪で略式起訴された女性看護師(32)に罰金50万円の略式命令を出した。命令は18日付。【玉腰美那子】」


医療事故情報収集等事業医療安全情報No.37「スタンバイにした人工呼吸器の開始忘れ」(2009年12月)は,「スタンバイ」のまま患者に人工呼吸器を装着したため換気されなかった事例が4件報告されていたとのことです.

「事例1
患者は自発呼吸をサポートするために人工呼吸器(Servo i)を装着していた。看護師Aは、患者の体位を変えるため、人工呼吸器のモードを「オン」から「スタンバイ」に切り替え、看護師Bと共に患者の体位を変えた。その後、看護師Aは、人工呼吸器のモードを「スタンバイ」から「オン」に切り替えず退室した。しばらくして、看護師Aが患者の病室に入ると、人工呼吸器による換気が行われていなかった。

事例2
患者はトイレに行くため、一時的に人工呼吸器(Servo i ユニバーサル)をはずし、経鼻的な酸素投与に切り替えた。その際、看護師Cは、人工呼吸器のモードを「スタンバイ」にした。その後、患者がトイレから戻り、看護師Dは患者に痰の吸引を行い、人工呼吸器を装着した。この時、看護師Dは、人工呼吸器のモードを「スタンバイ」から「オン」に切り替えるのを忘れた。」

再発防止についての総合評価部会の意見は,「人工呼吸器を装着する際、換気が行われていることを胸郭の動きに基づいて確認する。」というものです.

医療に対する刑事罰については,医療行為の萎縮を招く等の理由で消極的意見もあり,議論が絶えませんが,このような事案について刑事罰(罰金)を課すのが医療行為の萎縮を招きそもそも不適切なのか,慎重に検討すべきと思います.

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by medical-law | 2014-01-21 09:52 | 医療事故・医療裁判