弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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市立病院の外部調査委員会,院内に問題を隠蔽し事実を改ざんするなど組織的な問題があると指摘

朝日新聞「院内の隠蔽体質を指摘 甲府病院被曝で調査報告」(2014年3月31日)は,次のとおり報じました.

「調査報告書を手に患者家族らに説明する、外部調査委員会の長尾能雅委員長(中央奥)=甲府市蓬沢1丁目の県自治会館

 市立甲府病院の放射性物質(放射性同位元素)を使った検査で多くの子どもたちが過剰に被曝(ひばく)した問題で、外部の専門家による調査委員会(委員長=長尾能雅・名古屋大医学部付属病院副院長)は30日、検査の詳細や医療態勢の問題点などをまとめた調査報告書を甲府市に提出した。問題を隠蔽(いんぺい)し、事実を改ざんするなど、病院の組織的な問題が根底にあると指摘した。

 調査委は昨年5月から計9回の委員会を開き、医師や患者家族からの聞き取りや各委員による独自調査を重ね、報告書をまとめた。

 報告書によると、1999年から12年間にわたり、のべ247人の子どもたちが放射性物質を使った検査を受け、そのうち、のべ226人が放射性物質を過剰に投与された。」

外部の調査委員会だから指摘できたことと思います.

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by medical-law | 2014-03-31 05:33 | 医療事故・医療裁判

胸痛で救急搬送された患者を顕著な異状がみられないと帰宅させ心筋梗塞で低酸素脳症に(報道)

読売新聞「診察、帰宅後に心肺停止 諏訪中央病院」(2014年3月29日)は,次のとおり報じました.

「諏訪中央病院(茅野市)で昨年5月、市内の別荘から救急搬送された神奈川県在住の女性(48)が診療を受けて帰宅後、心肺停止状態となり、重度の低酸素脳症となる医療事故があったことがわかった。病院側は「帰宅させるべきでなかった」と家族に謝罪、損害賠償について代理人を通じて協議を進めている。

 病院側の説明によると、女性は昨年5月29日正午過ぎ、胸の痛みを訴えて救急搬送された。救急担当の内科医グループが診療したが、会話もでき、顕著な異常が見られなかったため午後3時半ごろ家族とともに帰宅した。それから1時間半後の午後5時頃、女性は別荘で突然倒れ、心肺停止状態となった。駆けつけた救急隊員の処置で蘇生し、同病院に再度、救急搬送されて手当てを受け、一命は取り留めたが重度の低酸素脳症に陥り入院。自分の意志で行動するのが難しい状態になったという。

 病院では直後に医師、看護師ら6人の医療事故調査委員会を組織。外部からも大学教授の医師2人を迎えて、原因調査を行った。その結果、「帰宅させずに病院で診ていれば心肺停止になったとしても重度の低酸素脳症にはならなかった可能性が高い」との報告がまとまった。女性は8月まで入院し、その後、神奈川県内の病院に転院した。

 同病院組合長の柳平千代一茅野市長は「起きてはいけないことが起きてしまった。こうした事故が2度と起きないよう普段のチェック体制の強化に努めたい」とコメントした。

 同病院では事故があった5月29日を「医療安全の日」と定め、医療講演会や研修会を毎年開催し、質の高い医療を目指す、としている。」


受診時に顕著な異状,症状がなくても,胸痛を訴えて搬送された患者ですから,ガイドラインに基づいてリスク評価を行い,ハイリスクなら入院,心カテとすべきだったケースと思います.少なくとも入院措置をとっていれば,脳障害は防止できたのではないしょうか.

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by medical-law | 2014-03-29 08:02 | 医療事故・医療裁判

福岡地裁平成26年3月25日判決,いわゆるカンガルーケア訴訟で病院側敗訴(報道)

福岡放送「カンガルーケア訴訟 原告勝訴」(2014年3月25日)は,次のとおり報じました.

「病院側が十分な体調管理をせず、生まれて間もない赤ちゃんに重い障害が残ったとして母親などが病院に損害賠償を求めている裁判で、福岡地方裁判所は25日、病院側に1億3000万円あまりの支払いを命じる判決を言い渡しました。
この裁判は2009年11月、福岡県内の30歳代の女性が福岡市中央区の九州医療センターで二女を出産した直後、助産師が赤ちゃんを女性の胸の上に置いたままにしたことで体温や栄養の管理が十分に行われず、二女が植物状態になったとして約2億3000万円の損害賠償を求めているものです。
これまでの裁判で原告の女性は「帝王切開後の痛みなどで赤ちゃんを観察することは不可能だった」と主張、これに対し病院側は「異常があればナースコールをするよう母親に伝えていた。スタッフが四六時中、観察すべき注意義務はない」などと反論していました。
平田豊裁判長は判決で、「病院は原告がナースコールをするまでの約1時間20分の間、経過観察を怠った」と指摘、病院に1億3000万円あまりの支払いを命じました。九州医療センターは「産科医療の現場に不可能を強いている不当な判決」として直ちに控訴するとしています。」


TVQ九州放送「産後ケア“不十分” 国立病院機構が敗訴」(2014年3月25日)は,次のとおり報じました.

「生まれた子どもが植物状態になったのは、出産後のケアが不十分だったとして、両親らが九州医療センターを運営する独立行政法人国立病院機構に、損害賠償を求めていた裁判です。

福岡地裁は訴えを一部認め、機構に約1億3000万円の支払いを命じました。

この裁判は、九州医療センターで5年前に生まれた次女が、出産後の経過観察などが十分になされなかったため植物状態になったとして、福岡県内に住む両親らが、病院を運営する機構に対し、約2億3000万円の支払いを求めたものです。

両親らは「帝王切開で出産し疲労困憊の中、 次女を体に載せられた。授乳ができない状態で、病院側の見回りもなかった」と主張。

これに対し、病院側は、「管理上の問題はなく、義務違反はない」として訴えの棄却を求めていました。

25日の裁判で、福岡地裁の平田豊裁判長は、「帝王切開の疲労で母親に的確な対処ができない事態は予見できた。1時間20分にわたり、一切、経過観察を行っていない」として、病院側に約億3000万円の支払いを命じました。

判決後の記者会見で原告・母親は「少しは報われた気分です。同じような苦しい思いをしている家族の方々が少しでもいい方向に向かっていければと思います」と話しました。

産後のケアをめぐる訴訟は、全国で6件起きていて、原告の勝訴は今回が初めてです。

敗訴した病院側は「不当な判決で直ちに控訴する」としています。」


読売新聞「新生児の母子同室で障害、1億3千万円賠償命令」(2014年3月25日)は,次のとおり報じました.
 
「出産後に母子同室を実施した際、医師らの経過観察が不十分で次女(4)が重い障害を負ったとして、福岡県の両親と次女が「九州医療センター」(福岡市)を運営する独立行政法人国立病院機構に約2億2950万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、福岡地裁は25日、病院側に約1億3000万円の支払いを命じた。

 平田豊裁判長は「次女の容体急変などを回避するため経過観察をする義務に違反した」と述べた。病院側は控訴する方針。

 判決によると、母親(36)は2009年11月20日、センターで次女を帝王切開で出産。約10時間後、助産師が次女を母親のベッドに移し、授乳させた。その後、約1時間20分間にわたって見回りせず、次女の容体が急変。心肺が一時停止し、低酸素性虚血性脳症で寝たきりとなった。」

福岡地裁は,問題の多い大阪地裁判決と(事案はまったく同じではありませんが)異なる判断を下したわけです.
積極的に評価できる判決と思います.判決全文を読みたいです.


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by medical-law | 2014-03-26 00:38 | 医療事故・医療裁判

母乳から放射性物質検出

母乳からの放射性物質検出されたというのは,母親が高濃度に汚染されていた疑いを示すものです.放射性物質により汚染は,広くかつ深刻である,といえるかもしれません.

西日本新聞「6都県、母乳から放射性物質 国調査より広範囲に 原発事故後半年」(2014年3月24日)は,次のとおり報じました.

「2011年3月の東京電力福島第1原発事故直後から約半年、名古屋市の市民団体が東北・関東9都県に住む授乳中の母親356人の母乳を調べたところ、8・1%に当たる6都県の29人から放射性セシウムやヨウ素を検出した。国の研究チームが実施した同様の調査より広範囲で確認されており、識者は「今回の結果を踏まえ、行政は継続的な健康調査をすべきだ」と指摘している。

 市民団体は「母乳調査・母子支援ネットワーク」。事故直後から11年9月まで、調査希望の母親を募集し、母乳の成分を民間の研究機関に依頼して調べた。

 国の研究チームが11年5~6月、全国8県108人を対象に実施した母乳の調査で、セシウムを検出したのは福島県の7人だったが、今回は東京、福島、千葉、茨城、神奈川、栃木の6都県24人に上った。甲状腺がんを引き起こすヨウ素は、短期間で崩壊が進むため国の調査では確認できなかったが、今回は福島、茨城、千葉3県の5人から検出された。

 県別では、155人が調査対象となった福島の14人(セシウム13人、ヨウ素1人)が最多。セシウムの最高値は福島県郡山市の女性=当時(30)=から検出した1キロ当たり11・5ベクレルだった。国が年間1ミリシーベルトを超えないよう設定した食品基準値は牛乳1キロ当たり50ベクレルで、今回はこれを下回った。

 母乳には母親の体内に蓄積した放射性物質と、摂取した食物などに付着した同物質の一部が移行するとされる。国の調査を受け、日本産科婦人科学会などは「授乳を続けても問題ない」との見解を出していた。

 同ネットが11年9月から12年3月に実施した東北・関東7県の乳児100人(検査時の平均年齢1歳5カ月)への調査では、37人の使用後のおむつからセシウムが検出された。今回の調査を監修した長山淳哉元九州大准教授(環境遺伝毒性学)は「母乳からの検出は母親が高濃度に汚染されていた証拠で、原発から遠く離れた地域でも食物や水などを通じて被ばくが広がったとみられる。母乳から乳児が被ばくしたとみられ、福島県以外でも母子の健康調査が必要だ」としている。」



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by medical-law | 2014-03-25 07:59

産科医療補償制度の対象児の新基準は遡及せず,28週以上で新基準をみたさない児は現行通り個別審査で

産科医療補償制度の対象児について,現行は,在胎週数33週以上かつ出生体重2,000g以上が当然対象となり,28週をみたさない児は対象外となっています。その間の28週から32週までと出生体重2,000g未満の児が個別審査の対象となっています.つまり,28週以上であれば,産科医療補償制度の対象となる可能性があります.

新基準は,平成27年1月1日以降に出生した児に適用されます.
この新基準では,在胎週数32週以上かつ出生体重1,400g以上の児は当然対象となります.28週をみたさない児は対象外です。その間の28週から31週までと出生体重1,400g未満の児が個別審査の対象となります

あくまで,補償対象となる脳性麻痺の新基準は、平成27年1月1日以降に出生した児から適用されます。平成21年から26年までに出生した児については、補償申請を行う時期が平成27年以降であっても現行の基準が適用されます.つまり,新基準は遡及適用されないのです.

新基準は,個別審査によって判断されていた児の一部が当然対象となる,というものであって,現行基準でも,個別審査を求めることにより産科医療補償制度が適用される可能性があります.当然対象の基準を満たさない場合でも,あきらめず,個別審査を求めるのがよいと思います.

産科医療補償「平成27年1月の産科医療補償制度の見直しの概要」ご参照

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by medical-law | 2014-03-25 07:38 | 医療事故・医療裁判

出産前後の赤ちゃんの死亡の25%は,医療機関・妊婦側の適切な対応により救命できた可能性あり

朝日新聞「死産・新生児死亡、25%は救えた可能性 滋賀医大検証」(2014年3月20日)は,次のとおり報じました.

「出産前後に赤ちゃんが死亡した200以上の症例を滋賀医科大学が検証し、医療機関や妊婦側が適切に対応していれば4人に1人が助かる可能性があったと判定した。厚生労働省や専門家によると、全県的な検証は珍しく、再発を防ぐ取り組みとして注目される。

 高橋健太郎・特任教授(62)らのチームが、厚労省の許可を得て保健所から医療機関名や妊娠週数などのデータを入手。滋賀県で2007~11年に届け出があった出産前後の死亡症例352件について担当医にアンケートし、死亡時の状況や思い当たる問題点をすべて答えてもらった。

 これまでに233件の検証と判定を終了。うち59件(25%)は命が助かった可能性があると判定した。内訳は妊娠満22週以後の死産が38件、新生児死亡21件。」


これは,出産前後の死亡症例233例を検証した結果ですから,信頼性が高い数字だと思います.
裁判は「証拠による立証」というハードルがあるので,救命できた可能性を立証できる見込みがないと提訴は難しいのですが,私が受けた相談・調査例でも,妊婦側が異変に気づいた時点でただちに医療機関を受診し,医療機関がすみやかに適切に対応していれば,あるいは救命できたのではないか,救命のの可能性があったのではないか,と考えられる例もあります.

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by medical-law | 2014-03-22 06:37 | 医療事故・医療裁判

自民党の尊厳死に関する検討プロジェクトチーム,延命治療を中止できる案にまとまる(報道)

毎日新聞「尊厳死:自民PT案「患者の意思表示で医師責任問わない」」(2014年3月20日)は,次のとおり報じました.

「尊厳死に関する法案を検討している自民党のプロジェクトチーム(PT、座長は山口俊一衆院議員)は20日、患者の意思表示に基づいて終末期の延命治療を中止しても、医師の責任を問わないとする案を基に議論を進めることになった。

 山口座長は「PTでは法案自体に反対の意見もあるが、延命治療の中止も含めないと法制化の意味がないという意見が多かった」と述べ、今後は延命治療の中止を含めた案について議論する。民主党など各党も議論をしており、自民党は超党派の議員立法で5月の国会提出を目指している。

 尊厳死については、超党派の議員連盟が2012年、書面などで示された患者(15歳以上)の意思を尊重した上で、2人以上の医師による終末期の判定で、(1)新たな延命治療を開始しない(不開始)(2)不開始に加え、中止もできる−−の2案をまとめた。自民党のPTは昨年12月から、専門家や患者団体などのヒアリングを行ってきた。【下桐実雅子】」


議連は2案併記でしたが,自民党は(不開始に限らず)中止もできるという案にまとまったわけです.
なお,生きる権利が十分保障されていると言い切れない現状にあると思うのですが,死ぬ権利の整備だけが着々と準備が進んでいる感もしないではないです.理念的な議論のまえに,現状を調査し,正確に把握することが必要と思います.


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by medical-law | 2014-03-21 07:27 | 医療

松山地裁平成26年3月20日判決,頸椎手術のミスで脳神経外科病院に賠償を命じる(報道)

毎日新聞「医療ミス:1074万円の支払い 高知の病院に命令−−松山地裁」(2014年3月20日)は,次のとおり報じました.

「2007年7月に受けた頸椎(けいつい)手術のミスで腕や肩に後遺症が出たとして、愛媛県宇和島市の60代の女性が高知市の脳神経外科病院長らを相手取り、計約6000万円の損害賠償を求めた裁判の判決が、松山地裁であった。森実将人裁判長は執刀医の過失を認定、病院側に約1074万円の支払いを命じた。」


手術後に腕や肩に障害が残る例がありますが,そのなかには,手術ミスによるものとそうでないものがあります.
判例雑誌等に掲載されたら,熟読したいと思います.

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by medical-law | 2014-03-21 06:47 | 医療事故・医療裁判

金沢地裁平成26年3月17日判決,酸素吸入チューブの交換中にけいれんを起こした事案で請求棄却(報道)

読売新聞「北陸中央病院医療事故訴訟 原告側の請求棄却」(2014年3月18日)は,次のとおり報じました.

「小矢部市の北陸中央病院に入院していた石川県内の70歳代女性(2012年7月死亡)が、酸素吸入用の挿管ミスで脳に重い障害を負ったとして、女性の家族が病院を経営する公立学校共済組合に約6920万円の損害賠償を求めた訴訟で金沢地裁は17日、原告側の請求を棄却する判決を言い渡した。

 判決によると、女性は2000年6月、酸素吸入チューブの交換中にけいれんを起こし、低酸素状態に陥って脳に障害が残った。

 判決理由で源孝治裁判長は、再挿管用のチューブを事前に準備していなかったとして組合側の注意義務違反を一部認めたが、障害との因果関係については「けいれん発症までの時間は短く、事前準備があっても酸素吸入できたとは認められない」と否定した。」


医療過誤に基づく損害賠償請求が認められるためには,(1)注意義務違反(過失),(2)因果関係,(3)損害が認められることが必要です.
本件は,(1)注意義務違反(過失)を一部認め,(2)因果関係を否定し,請求棄却とした判決です.
けいれん発症まで何分と認定したか不明ですが,「相当程度の可能性」も認めなかったのですから,裁判所の因果関係立証のハードルは高いという印象をうけます.


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by medical-law | 2014-03-18 06:57

横須賀市の病院の肺動脈損傷事故の使用者責任は横須賀市か公益社団法人地域医療振興協会か(報道)

神奈川新聞「医療過誤で患者死亡、遺族らが市に損賠請求/横須賀」(2014年3月13日)は,次のとおり報じました.

「横須賀市立うわまち病院(同市上町)で手術中に医師が誤って肺動脈を損傷して患者を死亡させたとして、遺族が市を相手に、約4058万円の損害賠償請求調停を、横須賀簡裁に申し立てていたことが12日、分かった。

 市議会への説明資料の申し立て概要によると、事故が起きたのは昨年10月15日。市内在住の男性(59)に対し、胸腔鏡という小型カメラを使って左肺下葉の切除手術を行っている際、執刀医が誤って左肺動脈を損傷。男性は出血多量となって多臓器不全を引き起こし、同月26日に亡くなった。

 遺族は、執刀医は市の使用者で、市に使用者責任があるとして、損害賠償金の支払いを求めた。市側は、同病院は公益社団法人「地域医療振興協会」が管理運営しており、市に使用者責任はないとの見解を示している。」


神奈川新聞「過失致死容疑で県警が捜査、横須賀・うわまち病院で患者死亡」(2014年3月18日)は,次のとおり報じました.

「横須賀市立うわまち病院(同市上町)で手術中に執刀医が誤って肺動脈を損傷して患者を死亡させたとされる事故で、横須賀署が業務上過失致死容疑で捜査していることが17日、分かった。

 事故が起きたのは昨年10月15日。市内在住の男性(59)に対し、胸腔(きょうこう)鏡という小型カメラを使って左肺下葉の切除手術を行っている際、女性医師(41)が誤って左肺動脈を損傷。男性は出血多量となって多臓器不全を引き起こし、同月26日に亡くなった。

 同署は事故の直後に病院から連絡を受け、捜査を開始した。カルテなどの提出を受け、司法解剖も実施。医学的見地から調べを進めている。

 この事故では、遺族が市を相手に、約4058万円の損害賠償請求調停を、横須賀簡裁に申し立てている。

 申し立てでは、執刀医は市の使用者で、市に使用者責任があるとして賠償を求めているが、市側は、同病院は公益社団法人「地域医療振興協会」(本部・東京都)が管理運営しており、市に使用者責任はないとの見解を示している。」


横須賀市立うわまち病院の開設者が横須賀市で,運営者が公益社団法人地域医療振興協会です.
使用者責任は,開設者が負うか,運営者が負うか,の争いです.開設者は病院運営の最高責任者ですが,運営者を置いたら開設者にその責任はなくなるのか,という問題です.

横須賀市の主張は,運営者である公益社団法人地域医療振興協会が使用者で同法人を相手方とすべきということなのでしょう.

公益社団法人地域医療振興協会は,どのような考えなのでしょうか.

第715条1項は「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。」と定め,同条2項は「使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。」と定めています.

病院の開設者(横須賀市)が使用者であるとしても,その場合運営者(公益社団法人地域医療振興協会)が「使用者に代わって事業を監督する者」となりますから,いずれにしても公益社団法人地域医療振興協会は責任を免れないということになりそうです.

裁判所の判断に期待したいですね.

【追記】
産経新聞「胸腔鏡手術ミス認め和解 横須賀市、4千万円賠償」(2015年2月13日)は,次のとおり報じました.

「神奈川県横須賀市は13日、同市立うわまち病院で平成25年に肺の胸腔鏡手術を受けた同市の男性=当時(59)=が死亡したのは手術ミスが原因だったと認め、遺族に4370万円を支払うことで和解したと発表した。遺族が損害賠償を求め、提訴していた。

 市によると、男性は25年10月15日、胸に穴を開けて小型カメラを入れて行う胸腔鏡で、左肺の腫瘍の切除手術を受けた際、大量出血。同26日に多臓器不全で死亡した。

 手術は40代の女性医師が担当。出血は、腫瘍に癒着していた動脈をハサミ型の器具ではがそうとした際、誤って動脈を傷つけたためだった。

 遺族は26年5月、市と病院を運営する公益社団法人「地域医療振興協会」(東京)に約5千万円の損害賠償を求めて横浜地裁横須賀支部に提訴。今年1月13日、和解が成立した。和解金は市と協会が連帯して支払った。県警横須賀署は、業務上過失致死の疑いで任意で捜査している。」


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by medical-law | 2014-03-18 06:20 | 医療事故・医療裁判