弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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不妊治療の卵管通気検査を受けた女性が空気塞栓症によって死亡した事案で書類送検



朝日新聞「不妊治療で女性死亡、担当医らを書類送検へ 福岡県警」(2018年4月23日)は,次のとおり報じました..

 
「不妊治療で国内トップレベルの技術を誇る「セントマザー産婦人科医院」(北九州市八幡西区)で2016年、不妊治療で過って30代の女性を死亡させたとして、福岡県警は近く、当時の男性担当医や院長らを業務上過失致死の疑いで書類送検する方針を固めた。捜査関係者への取材でわかった。

 捜査関係者によると、女性は16年11月に不妊治療のために来院。卵管のつまりを検査するため、担当医らは全身麻酔をかけた上で腹腔(ふくくう)鏡を使って体内に空気を送り込む手術をしたが、途中で女性の容体が悪化。女性は別の病院に搬送されたが翌月、一定量の空気が血管に入って血流が妨げられる空気塞栓(そくせん)症によって死亡した。女性は手術前、健康だったという。

 県警は、医院側が適切な治療をしなかった可能性があるとして、業務上過失致死の疑いで捜査。捜査関係者によると、担当医らが過って血管の中に空気を送り込んだ可能性があるという。手術には院長らも立ち会っており、注意監督義務を怠ったと判断した。

 同医院はこれまでの朝日新聞の取材に、「多忙で難しい」などとして応じていない。」



毎日新聞「検査で女性死亡 セントマザー医院3人書類送検 福岡県警」(2018年4月24日)は,次のとおり報じました.

「高度な不妊治療で知られる北九州市八幡西区の「セントマザー産婦人科医院」で2016年、不妊治療を受けた女性が死亡し、福岡県警は23日、担当の男性医師(37)=東京都墨田区=や男性院長(68)=北九州市八幡西区=ら医師3人を業務上過失致死容疑で福岡地検小倉支部に書類送検した。

 送検容疑は16年11月16日、不妊治療のため通院していた福岡県の女性(当時37歳)の卵管の通りを確認するため、腹部に穴を開けて小型カメラなどを挿入する腹腔(ふくくう)鏡検査を実施した際、担当医が子宮内に大量の空気を注入。直後に女性の容体が急変し北九州市の別の病院に運ばれたが、同年12月1日、空気が毛細血管から吸収され血管内で塞栓(そくせん)を引き起こしたことによる多臓器不全で死亡させたとしている。

 県警によると、卵管の検査で異状がなかったため、院長が施術を中止するよう指示したが、担当医が卵管の通過性を高めようと独断で空気を注入。同様の治療では血液に溶けやすい炭酸ガスを使うのが一般的で、空気を使うのは珍しいというが、担当医は数百ccの空気を注入したとされる。県警に危険な行為との認識があったと認めた上で「自然妊娠がしやすくなるようにやった」と供述しているという。

 県警は治療に立ち会った別の男性医師(37)には制止しなかった責任、院長には監督責任がそれぞれあったと判断。捜査関係者によると、担当医については起訴などの厳しい刑事処分を求める「厳重処分」の意見を付けた。担当医は既に同医院を辞めているという。

 同医院は「事態を重く受け止め、ご遺族におわび申し上げています。現在も捜査中なので現時点では内容への回答は差し控えたい」とするコメントを出した。【柿崎誠、井上卓也】
保険適用の治療法

 不妊治療が原因で死亡するというショッキングな事故は、子宮に気体を通して卵管内の詰まりを取り除き、自然妊娠しやすくする「通気」治療中に起きた。それ自体は保険も適用される治療法で、専門家も「死亡事故は聞いたことがない」と口をそろえる。

 ただ専門家は通気治療で一般的な炭酸ガスではなく、空気を使ったことを疑問視する。日本生殖医療研究協会の荒木重雄会長は「空気を大量に入れて通りを良くする治療はない」と指摘。そのうえで「体外受精が普及した15年ほど前からは、通気治療自体が減っている」と言う。

 しかも今回の事故では、空気を注入する前の水を通す検査で、卵管の通過性が確認できていたという。名古屋大医学部付属病院の後藤真紀・病院講師は「それ以上通気する必要がなく、標準的ではないと思う」と語る。

 日本では6組に1組の夫婦が不妊に悩んでいるとされ、日本産科婦人科学会の調査では、2015年に誕生した赤ちゃんの約20人に1人が体外受精で生まれている。

 事故があったセントマザー産婦人科医院は、老化した卵子の若返りを目指した先進研究に取り組み、海外の専門医の研修を受け入れるなど高度な不妊治療で知られる。そうした専門医院で起きた今回の事故。子をほしいと願う多くの夫婦が安心して不妊治療を続けられるようにするためにも、原因の徹底究明が求められる。【佐野格】


これは,私が担当したものではありません.
上記報道からすると,刑事責任は免がれないように思います.


谷直樹

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by medical-law | 2018-04-27 05:10 | 医療事故・医療裁判

日本禁煙学会がドトールコーヒーに全面禁煙,従業員の健康診断を要望

日本禁煙学会は,2018年4月23日,ドトールコーヒーに

1.分煙店をやめ、ただちに全席禁煙店にしてください。
2.今後健康被害が出る恐れがあり、従業員の少なくとも三十年間にわたる健康診断を続けてください。


と要望しました.

分煙店舗のアルバイトからのメールをきっかけに,日本禁煙学会ドトールの19店を調査したところ、喫煙区画のPM2.5は平均216マイクログラム/m3で,.アメリカ環境保護庁の分類でもっとも危険なHazardous(心臓や肺の悪い人、お年寄り病状がいちじるしく重くなり、死亡率も著しく高まる。一般の人に重い呼吸器症状が現れる恐れあり。)で、全死亡増加率=150%でした.
禁煙区画では平均28.5マイクログラム/m3で,近隣のスターバックス店に比較すると高く,禁煙区画にもタバコの煙が漏れていると考えられました.
労働安全衛生法から,雇用主には従業員が受動喫煙を浴びないようにする義務がありますので,日本禁煙学会は,上記の要望を行いました.

http://www.jstc.or.jp/uploads/uploads/files/journal/2018423DC.pdf

谷直樹

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by medical-law | 2018-04-27 04:35 | タバコ

東京都受動喫煙防止条例(仮称)の骨子案

東京都は,東京都受動喫煙防止条例(仮称)の骨子案をとりまとめ,2018年4月20日,公表しました.
2018年6月に都議会に条例案を提出し,可決されれば,段階的に施行し,2020年に全面施行となる予定です.

岡本光樹都議会議員・弁護士が受動喫煙防止条例案のポイントを解説しています.
アゴラご参照


谷直樹

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by medical-law | 2018-04-27 04:10 | タバコ

国会,裁判所を敷地内禁煙としない健康増進法改正案

産経新聞「国会議員にモクモク特権、いつの間にか規制緩和」(2018年4月27日)は,次のとおり報じました.

「国会で受動喫煙の対策強化が議論されようとしている中、当の国会議事堂での対策の遅れを問題視する声が議員の間で強まっている。政府の健康増進法改正案が、最も厳しい規制の対象から国会議事堂を除外したことに「不公平で、筋が通らない」との批判が噴出。自らは“特権”を享受しつつ、民間に厳しい規制を強いることにどこまで理解が得られるか。」

「今年3月9日に国会に提出された改正案では「官公庁」の分類が消え、「行政機関」なる言葉が登場した。「行政機関」は中央省庁や都道府県庁、市役所など。「学校」「病院」「児童福祉施設」とともに「敷地内禁煙」に指定され、それ以外の事務所やホテルといった施設は、一段規制が緩い「原則屋内禁煙(喫煙専用室内でのみ喫煙可)」となった。

 立法機関である国会は後者に分類され、最も厳しい規制を免れることになる。厳しい規制を課す法案を審議、可決しようとする国会自身の規制が甘いのは道理が通らないのではないか。」


法案は,三権分立に配慮したということなのでしょうが,当然,国会,裁判所も敷地内禁煙とすべきでしょう.

谷直樹

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by medical-law | 2018-04-27 03:52 | タバコ

寺町東子先生,セクハラ告発の女性に名乗り出ることを求める調査方法への疑問,朝日新聞の安全配慮義務を指摘

寺町東子先生は,セクハラ告発の女性に名乗り出ることを求める調査方法への疑問を述べ,また朝日新聞の安全配慮義務を指摘しました.その後,遅ればせながら,朝日新聞が財務省に抗議することになったのは周知のとおりです.





谷直樹

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by medical-law | 2018-04-19 19:34 | 人権

ガーゼ置き忘れ事故防止のために

毎日新聞「「ガーゼ置き忘れ」警鐘 千葉大病院・近藤特任助教、論文で事例紹介 手術時ミス「国は防止マニュアルを」」(2018年4月12日)は,次のとおり報じました.

「手術で体内にガーゼを置き忘れる事例が後を絶たない。千葉大医学部付属病院の近藤健特任助教(総合診療)は、置き忘れの具体的な事例を紹介し、警鐘を鳴らす論文を米医学誌に掲載。「手術の前後でガーゼの数を数えるなど、国がマニュアルを作るべきだ」と訴えている。【信田真由美】

「近藤特任助教の論文は今年2月、米医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に掲載された。取り上げたのは、40代の女性が、6年前と9年前に帝王切開手術を受け、どちらかの手術でガーゼを置き忘れられたとみられる事例。女性は腹部の膨張感を感じて病院を受診し、レントゲンを撮ったところ、二つのガーゼが見つかった。開腹手術でガーゼを取り除くと、膨張感は解消したという。

 女性は帝王切開手術を受けた産婦人科の病院に相談に行ったが、病院はミスとは認めなかったという。一般的に、カルテは法定で義務付けられた5年間しか保管されておらず、他に手術を受けていないことを証明することも難しいという。

 近藤特任助教は取材に、「身体的負担に加え、経済的負担をかけることになったのは悲劇だ。医療の治療法などは発展しているが、安全面は進んでおらず、現在の医療システムに警鐘を鳴らしたい」と話している。 」





先行する研究は少なく,この報告は意義が高いと思います.
ただ,枚数を確認するなどのマニュアルを作成することはもちろんですが,そのようなマニュアルがあっても確認がおざなりになっていると事故は起きます.マニュアルを遵守するよう徹底することも同様に必要と思います.


谷直樹

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by medical-law | 2018-04-16 14:32 | 医療事故・医療裁判

「第8回産科医療補償制度 再発防止に関する報告書-産科医療の質の向上に向けて」

公益財団法人日本医療機能評価機構は,2018年3月,「第8回産科医療補償制度 再発防止に関する報告書-産科医療の質の向上に向けて」を発表しました.

今回のテーーマに沿った分析は,「遷延分娩について」と「胎児心拍数陣痛図の判読について」です.

遷延分娩についても産科医療関係者に対する提言は,次のとおりです.
1)分娩進行が遅延していると判断した場合、または分娩進行が遅延することが予測される場合は、以下に留意し分娩管理を行う。
・分娩経過中の胎児心拍数陣痛図における異常波形の有無を確認する。異常波形の種類や持続時間、異常波形出現後に胎児well-beingが健常であると判断される波形となったか否かにかかわらず、異常波形出現からの時間を把握する。加えて、分娩進行の遅延の原因(分娩の3要素の異常、胎児発育状態、母体合併症等)の有無と胎児心拍数波形の変化、分娩の進行状態等を総合的に判断し、適切な医療介入(子宮収縮薬による分娩促進など)、経腟分娩継続の可否を検討しながら管理する。
・パルトグラムは分娩経過中の観察や処置を行った時点で記載し、特に分娩第I期活動期(子宮口開大4cm)以降は、分娩進行が遅延していないかをパルトグラムを確認しながら管理する。遅延していると判断した場合は、原因検索や適切な医療介入の検討に活用する。
・胎児心拍数および陣痛の観察は 「産婦人科診療ガイドライン-産科編2017」 に則して行い、分娩監視装置装着中は胎児心拍数陣痛図を10分区画ごとに判読し、胎児心拍数波形分類に基づき対応と処置を行う。
・子宮収縮薬による分娩促進が必要と判断した場合は、「産婦人科診療ガイドライン-産科編2017」に則して使用する。子宮収縮薬投与中は分娩進行と子宮収縮、胎児心拍数陣痛図の判読所見から、子宮収縮薬の増量・再投与または減量・中止を検討する。
2)遷延分娩または分娩停止となり、重症の新生児仮死が認められた場合は、子宮内感染の可能性があるため、胎盤病理組織学検査の実施を推奨する。
3)分娩経過中に観察した事項、および実施した処置等に関しては、 診療録に正確に記載する。


胎児心拍数陣痛図の判読についてmの産科医療関係者に対する提言,次のとおりです.
1)すべての産科医療関係者は、胎児心拍数陣痛図の判読能力を高めるよう各施設における院内の勉強会や院外の講習会へ参加する。特に遅発一過性徐脈と変動一過性徐脈の鑑別、遅発一過性徐脈の判読、遅発一過性徐脈と早発一過性徐脈の鑑別、基線細変動減少・消失の判読について、正しく判読できるように習熟する。
2)胎児心拍数の波形パターン出現の生理学的な意味を理解し、胎児心拍数陣痛図から胎児状態を推測することができるように習熟する。
3)各トランスデューサーを正しく装着し、正確に胎児心拍数と子宮収縮を計測・記録する。正確に計測・記録されない場合は、原因検索を行い、トランスデューサーの固定位置を確認し、再装着する。
4)分娩監視装置の紙送り速度については、1cm/分または2cm/分で記録すると3cm/分で記録した場合に比し、基線細変動の評価や早発・遅発・変動一過性徐脈の鑑別が難しくなる。基線細変動の評価や一過性徐脈の鑑別に有利であるため、胎児心拍数陣痛図を3cm/分に統一する。
5)胎児心拍数陣痛図の評価は、「産婦人科診療ガイドライン―産科編2017」に則して行い、評価の結果は正常・異常にかかわらず判読所見を診療録に記載する



谷直樹

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by medical-law | 2018-04-06 23:43 | 医療事故・医療裁判

医療版事故調推進フォーラム,街頭署名100回へ

毎日新聞「
」(2018年4月3日)は,次のとおり報じました

「医療事故の遺族らでつくる「医療版事故調推進フォーラム」が、公正な事故調査制度の実現を求めて10年前から毎月続けてきた街頭署名が、8日に100回を迎える。活動は2015年の制度発足の原動力になったが、運用を巡る課題も多い。遺族たちは「被害者の一番の願いは、事故を再発防止につなげること。そのために今後も活動を続けなければ」と力を込める。

記念すべき100回目は,2018年4月8日(日)16:00~17:00,JR山手線駒込駅南口改札前で行うとのことです.



谷直樹

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by medical-law | 2018-04-03 20:44 | 医療事故・医療裁判

クリステレル胎児圧出法による肝臓破裂から出血性ショックで産婦が死亡した事案で和解(報道)

朝日新聞「出産後に死亡、遺族と病院が和解 横浜地裁」(2018年3月31日)は,次のとおり報じました.

「出産時に女性が死亡したのは、助産師が妊婦の腹部に過剰な力を与えたうえ、出血後に医師らが適切な治療をしなかったためだとして、女性の夫(47)や子どもが医療法人産育会「堀病院」(横浜市瀬谷区)を相手に約7540万円の損害賠償を求めた訴訟は30日、横浜地裁で和解が成立した。

 原告側の代理人弁護士などによると、病院側が遺族に解決金6500万円を支払い、出血性ショックに対する診断やその後の処置についての医療体制の整備などに努めることなどが和解条項に盛り込まれた。

 女性は2009年9月18日午後4時10分ごろ、第2子の女児を出産。その際、妊婦の腹部を押して出産を手助けする「クリステレル胎児圧出法」を助産師から施された。出産直後から、女性は気分が悪くなり、約4時間半後に死亡。肝臓破裂による、出血性ショックが原因だった。遺族側は、医師が出血性ショックを見落とし、対応が遅れたなどとして、2013年に病院を提訴した。

 原告側によると、クリステレル胎児圧出法による過失は問わなかったが、出血性ショックの診断が遅れた点に注意義務違反があったことなどが和解の内容に盛り込まれたという。

 女性の夫は「私たち家族は今も深い悲しみの中にいます。このような悲しい出来事が二度と起こらないように、医療従事者の方々には、再発防止に十分努めて頂きたいです」とコメントを出した。」


報道の件は,私が担当したものではありません.
事故が2009年で,提訴が2013年ですから,和解まで長くかかったのですね.

谷直樹

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by medical-law | 2018-04-03 09:23 | 医療事故・医療裁判