弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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奥州市総合水沢病院が検査が不十分だったことを認め,2億3千万円で和解(報道)

岩手日報「水沢病院で医療事故 奥州市、和解へ2億3千万円」(2018.05.24)は,次のとおり報じました.

「奥州市は23日、同市水沢大手町の市総合水沢病院(半井(なからい)潔院長、145床)で2013年12月に呼吸苦などを訴えて入院した同市の20代女性が重度の意識障害になった医療事故があったと明らかにした。女性側が病院側に損害賠償を求める訴訟を盛岡地裁に起こしており、市は和解するために慰謝料など2億3千万円を支払う方針を固めた。市は検査が不十分だったと認めている。

 同日開かれた市国保事業運営協議会で明らかになった。市医療局によると、女性は13年12月、自律神経失調症の疑いで内科に入院。倦怠(けんたい)感や呼吸苦など原因が特定できない体の不調を訴えた。主治医は心療内科と併せた診療が必要として転院を調整したが、転院前に女性の呼吸の状態が悪化し、心肺停止状態となった。盛岡市の県立中央病院に搬送後、低酸素脳症で重度の意識障害となり、現在も別の病院に入院中。

 女性側は訴訟で、心肺停止になる前に病院側が必要な処置を行わなかったと主張し、病院側に約3億円の損害賠償を求めた。市医療局によると、16年3月から盛岡地裁で口頭弁論が始まり、17年6月に地裁から和解に向けた提案があった。

 市は、女性が患っていたとみられる難病のギラン・バレー症候群がまれな疾患のため、疾患と疑って治療を始めるのは非常に困難とする一方、病院の検査は不十分だったと認め、和解する方針。和解金は逸失利益や将来の介護費用などが含まれる。」


報道の件は私が担当したものではありません.
原因が不明な場合は検査を実施すべき注意義務があります.とくに病名を特定できなくても患者に重大な病気の可能性がある場合には,すみやかに検査を実施すべき注意義務があります.
自院で診療できない場合は,高度な医療を施すことのできる診療機関に転医させる義務があります.
報道から判断すると,義務違反は免れない事案と思います.

谷直樹

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by medical-law | 2018-05-25 06:40 | 医療事故・医療裁判

2つの会見

宮川選手の会見は,衝撃的な内容でしたが,わかりやすく,気持ちが伝わるものでした.
宮川選手の会見には,代理人である弁護士法人多摩パブリック法律事務所(東京弁護士会が支援する公設事務所)の弁護士2名が付き添い,出過ぎず,必要なときには適切に介入していました.
翌日の日大の会見は,これと対照的でした.
指示の有無について当事者の言い分が真っ向から対立していますので,捜査によって真実を明らかにする必要がありそうです.

スポーツによる傷害が一般に傷害罪に問われないのは,「正当行為」,「危険の引き受け」等で説明されています.
判例は,「目的の正当性」「ルールの遵守」,「同意の範囲」等を基準として判断しています.つまり,目的が正当でなく,ルール違反で,同意の範囲を超えたものは,傷害罪に問われることがあります.
また,実行行為者に犯罪を指示した者も,教唆犯あるいは共同正犯として罪に問われます.

谷直樹

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by medical-law | 2018-05-25 06:21 | 人権

鹿児島市立病院が入院患者の急性心筋梗塞発症を診断しなかった事案で1650万円の判決確定(報道)


毎日新聞「鹿児島市立病院 医療過誤賠償 市が遺族に2355万円支払う」 (2018年5月19日)は,次のとおり報じました. 

「鹿児島市立病院に入院していた女性(当時40歳)が不適切な治療で死亡したとして市に損害賠償を命じた判決の確定を受け、市は16日の市議会で賠償金2355万5000円を遺族に支払ったことを明らかにした。

 2014年10月の1審鹿児島地裁判決によると、女性は2009年9月6日、胸部の痛みを訴えて入院。7日に急性心筋梗塞(こうそく)の可能性を示す異常が見つかったが、医師は8日に退院させた。女性は12日に再入院し、14日に死亡した。

 1審判決は遅くとも7日に急性心筋梗塞の発症を診断し、適切な治療をしていれば助かった可能性が高いとして市に約7169万円の支払いを命じた。

 2審福岡高裁宮崎支部は昨年10月、治療が難しい症例だったことも否定できないとして1650万円の賠償を命じた。双方が上告したが、今年3月に最高裁が退け、2審判決が確定。市は賠償額に遅延損害金を加えた金額を専決処分した。

 市立病院事務局の西村司次長は「判決を重く受け止めると共に、医療事故の防止に最善を尽くしていきたい」とコメントした。【林壮一郎】」


上記報道の件は,私が担当したものではありません.
地裁判決は,義務違反がなければ死亡という結果を回避することができた確率は非常に高い,と判断しました.高裁判決はその判断を維持しませんでしたが,1650万円と比較的高額な判決になっています.相当程度の可能性にも幅がありますので賠償額にも幅があると考えられます.

谷直樹

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by medical-law | 2018-05-24 10:38 | 医療事故・医療裁判

気仙沼市立病院,喉の強い痛みなどを訴えて受診入院した患者が死亡した事案で5000万円和解(報道)

毎日新聞「市立病院で死亡、遺族と和解成立 気仙沼市5000万円賠」(2018年5月22日)は,次のとおり報じました. 

「気仙沼市は、市立病院で受診し、同病院に入院中に死亡した30代男性の遺族に損害賠償金5000万円を支払って和解することを決めた。

 同病院によると、男性は2014年3月、喉の強い痛みなどを訴えて受診した。当直医の診察を受け入院したが、翌日に容体が急変し死亡した。遺族は15年10月、医師と看護師の連携など救急医療体制の不備で病院側に過失があったとして、約9330万円の賠償を求め、仙台地裁に提訴。今年2月に地裁から和解勧告を受けた。

 同病院は「勧告では過失の有無が示されていないが、早期に解決するため和解に合意した」と説明している。【新井敦】」


これは私が担当したものではありません.
急性喉頭蓋炎の症例なのでしょうか.
5000万円という和解金額から,裁判所が,過失があり因果関係も認められる事案と判断したことが分かります.

谷直樹

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by medical-law | 2018-05-23 01:40 | 医療事故・医療裁判

公立置賜総合病院が十二指腸穿孔の疑い見落とし死亡事件で3600万円で和解(報道)

NHK「異常見落とし 病院が遺族と和解」(2018年5月16日)は,次のとおり報じました.

「おととし、川西町の公立置賜総合病院で腹痛を訴えて救急外来を受診した70代の男性が、腹膜炎を起こして死亡し、病院は、当直の医師がレントゲン画像の異常を見落としていたとして、遺族に3600万円を支払うことで和解しました。

公立置賜総合病院によりますと、おととし5月、置賜地方に住む70代の男性が腹痛を訴えて病院の救急外来を受診し当直の医師から薬の処方や点滴を受けて帰宅しましたが、翌日、容体が急変して死亡しました。
死因は、十二指腸に穴が開いたことによる腹膜炎で、救急外来を受診した際に撮影されたレントゲン画像を確認したところ、腸に穴が開いていることを疑わせる所見が見つかったということです。
このため、病院は、当直の医師が、レントゲン画像の異常を見落としていなければ、命を救えた可能性があるとして、遺族に謝罪したうえで3600万円を支払うことで和解したということです。
公立置賜総合病院は「今後は、救急外来での精密検査を的確に行い、専門の医師に指示を仰ぐなど組織的なチェック体制を強化して、再発防止に努める」とコメントしています。」


報道の件は私が担当したものではありません.
画像検査記録に(明らかに十二指腸穿孔を診断できる所見でなくても)十二指腸穿孔を疑わせる所見があれば,帰宅させたことは注意義務違反(過失)にあたります.救急外来を担当する医師は必ずしも消化器の専門家とは限りませんが,緊急重大な疾患の疑いを拾い上げ,消化器の専門家医師につなげる注意義務があります.
この時点で画像検査記録から十二指腸穿孔による急性汎発性腹膜炎に気付けば救命できた可能性があったことから,このような和解が成立したと考えられます.

谷直樹

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by medical-law | 2018-05-17 04:53 | 医療事故・医療裁判

岐阜県立多治見病院の点滴チューブ外れ事故死事件が裁判へ(報道)

朝日新聞「点滴チューブ外れ失血死 県立多治見病院を遺族が提訴」(2018年5月12日)
は次のとおり報じました.

「岐阜県立多治見病院(多治見市)で昨年4月、点滴チューブが外れて入院中の70代の女性が失血死した事故で、遺族が病院に約3900万円の損害賠償を求める訴訟を名古屋地裁に起こした。提訴は4月18日。

 訴状などによると、女性は昨年4月11日、入院中に点滴チューブの接続部が外れ、血液が体外に流出して亡くなった。病院側のその後の調査で、容体の異常を知らせる生体モニターのアラームが鳴っていたが、「対応する責任者が明確でなかった」などと「医療ミス」を認めている。遺族は「極めて基本的かつ初歩的な注意義務で、違反の程度は重大だ」としている。

 病院が1月末に遺族にミスを認めて謝罪したが、その後の示談交渉で折り合わなかったという。病院は取材に「事故を起こしたことを真摯(しんし)に受け止め、ご遺族が納得できる賠償額を話し合いたい」としている。(仲程雄平)」


報道の件は私が担当したものではありません.
過失と因果関係が認めら,損害額だけの争いであっても,保険会社の意向等があって裁判外では解決できないことがあります。

【追記】
西日本新聞「岐阜、点滴死亡事故で和解 県立多治見病院が謝罪」(2018年9月12日 )は,次のとおり報じました.

「岐阜県立多治見病院(同県多治見市)で昨年4月、点滴のチューブが外れ、入院していた70代の女性が失血死した事故で、遺族が病院に約3800万円の損害賠償を求めた訴訟は12日までに、名古屋地裁で和解が成立した。病院が謝罪し、1700万円を支払う。和解は11日付。
 遺族側代理人は「遺族は賠償金よりも謝罪と再発防止を求めていた」と説明。多治見病院は「改めてご遺族に深くおわびし、再発防止に取り組む」とコメントした。
 事故を巡っては、多治見署が業務上過失致死の疑いもあるとみて捜査しているが、遺族側代理人は「処罰は求めない」としている。」


賠償金額が争点で提訴したというわけではなかったのですね.誠実な謝罪と実効的な再発防止を求めての提訴だったようです.

谷直樹

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by medical-law | 2018-05-17 04:12 | 医療事故・医療裁判

医療基本法制定に向けての院内集会,5月16日17時から

医療基本法制定に向けての院内集会,5月16日17時から参議院議員会館1階講堂で開かれます.是非ご参加ください.
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谷直樹

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by medical-law | 2018-05-16 06:05 | 医療

厚生労働省通知,無痛分娩の安全な提供体制の構築について

厚生労働省は,平成 30 年4月 20 日,「無痛分娩の安全な提供体制の構築について」(医政総発 0420 第3号 医政地発 0420 第1号)を発し, 提言の周知徹底及び自主点検表の活用を求めました.

「無痛分娩については、複数の死亡事案が発生したことを受け、平成 29 年度厚生労働行政推進調査事業費補助金(厚生労働科学特別研究事業)による「無痛分娩の実態把握及び安全管理体制の構築についての研究」(研究代表者:海野信也北里大学病院長)において、その実態把握と安全を確保する仕組みの検討を行い、平成30 年3月に、「無痛分娩の安全な提供体制の構築に関する提言」(以下「提言」という。)が、別添1のとおり取りまとめられた。また、厚生労働省において、提言を基に、別添2の「無痛分娩取扱施設のための、「無痛分娩の安全な提供体制の構築に関する提言」に基づく自主点検表」(以下「自主点検表」という。)を作成した。このため、下記について御了知の上、貴管下の分娩を取り扱う病院又は診療所(以下「分娩取扱施設」という。)の他、関係機関に対して、提言の周知徹底及び自主点検表の活用につき周知方お願いする。



1.安全な無痛分娩を提供するために必要な診療体制に関する提言について
無痛分娩を取り扱う病院又は診療所(以下「無痛分娩取扱施設」という。)は、「産婦人科診療ガイドライン産科編」(編集及び監修 日本産科婦人科学会及び日本産婦人科医会)を踏まえ、個々の妊産婦の状況に応じた適切な対応をとるとともに、提言の別紙「安全な無痛分娩を提供するために必要な診療体制」に記載されたインフォームド・コンセントの実施、安全な人員体制の整備、安全管理対策の実施並びに設備及び医療機器の配備が求められている。貴職においては、無痛分娩取扱施設に対し、提言で求められている体制の整備が徹底されるよう、周知をお願いするとともに、医療法(昭和 23年法律第205号)第25 条第1項の規定に基づく立入検査の際に、提言及び自主点検表を参考に、診療体制の確保について確認し、必要に応じて助言するようお願いする。

2.無痛分娩に係る医療スタッフの研修体制の整備に関する提言について
無痛分娩に関する関係学会及び関係団体は、安全な無痛分娩の提供体制を構築するため、無痛分娩に関わる医療スタッフに対する「無痛分娩の安全な診療のための講習会」の定期的な開催、「産科麻酔研修プログラム(仮称)」の策定及び専門施設における実技研修体制の整備等を行うこととしている。
講習会の開催予定や具体的な研修体制等については、詳細が定まり次第、追って周知する。

3.無痛分娩の提供体制に関する情報公開の促進のための提言について
現在、妊婦及びその家族に対して無痛分娩に関する必要な情報を分かりやすく提供することを目的として、日本産科麻酔学会ウェブサイトにおいて「無痛分娩Q&A」(※)が公表されており、貴職においては、妊婦やその家族、分娩取扱施設及び関係機関に対する周知をお願いする。
さらに、こうした既存の情報提供に加えて、無痛分娩取扱施設は、自施設の無痛分娩の診療体制等に関する情報を各施設のウェブサイト等で公開することが求められている。貴職においては、無痛分娩取扱施設が、各施設の診療体制等についてウェブサイト等において情報公開を行うよう、周知をお願いする。なお、ウェブサイトについては、平成 30 年6月以降は医療法上の広告規制の対象となるため、虚偽・誇大広告に該当すると認められた場合には、適切に指導されたい。違法な広告を行った施設に対しては、医療法(昭和 23 年法律第205号)第6条の8の規定に基づく命令等を通じて、各施設のウェブサイトが適切に運用されるようお願いする。
また、提言において、関係学会及び関係団体は、今後、情報公開を行う無痛分娩取扱施設を取りまとめたリストを作成し、ウェブサイト上で公開することが求められている。当該リストの公開等については、詳細が定まり次第、追って周知する。
(※)
http://www.jsoap.com/pompier_painless.html

4.無痛分娩の安全性向上のためのインシデント・アクシデントの収集・分析・共有に関する提言について
(1) 分娩取扱施設からの情報収集について
従前より、日本産婦人科医会による偶発事例報告事業や妊産婦死亡報告事業を通じて、分娩取扱施設におけるインシデント・アクシデントに関する情報収集が実施されている。貴職においては、分娩取扱施設に対し、当該事業の報告対象となる事例が発生した場合には、速やかに地域の産婦人科医会へ報告するよう、周知をお願いする。
(2) 患者及び家族からの有害事象の相談について
従前より、患者及び家族からの医療に関する相談窓口としての役割は、医療安全支援センター(以下「センター」という。)が担ってきた。センターを所管する地方自治体においては、無痛分娩に関連する有害事象等の相談を受けた際に地域の実情に応じて適切に対応するために、あらかじめセンターと地域の医師会及び産婦人科医会との連携体制の構築を図るよう、お願いする。例えば、センターにおいては、無痛分娩に関連する有害事象等の相談を受けた際に、地域の医師会の窓口を紹介し、特に再発防止の分析に資する症例については、地域の医師会が地域の産婦人科医会へ報告する等の対応が考えられる。
(3) 都道府県の周産期医療協議会について
各都道府県においては、「周産期医療協議会における協議の徹底について」(平成29 年1月17 日付け厚生労働省医政局地域医療計画課救急・周産期医療等対策室事務連絡)により、周産期医療協議会において、母体死亡事例や重篤事例等に関する検証と再発防止等に関する協議を徹底するようお願いしてきた。貴職においては、本提言を踏まえ、母体死亡事例等が生じた場合に、再発防止等に向けて、周産期搬送や救急医療との連携等の
医療提供体制に関して、同協議会における協議の徹底に努めるとともに、地域の医師会、産婦人科医会及びセンター等に寄せられた相談内容についても、同協議会において安全な分娩体制の確保に資するような検討が行われるよう併せてお願いする。」


谷直樹

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by medical-law | 2018-05-02 13:09 | 無痛分娩事故