弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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東京大学医学部附属病院,画像診断書「未開封」が4割(報道)

読売新聞「東大病院、画像診断書「未開封」4割…主治医の確認形骸化」(2018年12月28日)は次のとおり報じました.

「東京大学病院で、CT(コンピューター断層撮影法)などの画像を専門医が診断して作成した報告書の4割を主治医が「未開封」だったことが、病院関係者への取材でわかった。

 今年10月に実施された1~8月作成分に対する院内調査で判明した。画像診断報告書の確認不足によるがんの見落とし発覚が相次ぐなか、確認システムの形骸化が浮き彫りになった。

 関係者によると、この8か月間に作成された報告書は約5万2000件。各診療科の主治医は、パソコン画面で報告書の「開封」ボタンを押して内容を確認するシステムになっている。しかし、そのうち約1万9500件が10月25日時点で「未開封」だった。調査後、病院が呼びかけると、約2週間後に「未開封」は約7500件に急減した。

 報告書は、主治医の依頼を受けて放射線科の専門医が画像すべてを詳しく見て作成し、電子データで提出する。千葉大や横浜市大などで発覚したがんの見落としは、主治医が報告書を十分確認していなかったことが主な原因だった。

 病院によると、報告書は「開封」ボタンを押さなくても読める。このため、広報担当者は「『未開封』でも見ているケースもあるし、『開封』しても確認が不十分なケースもあるだろう」とし、主治医が本当に内容を認識しているかどうかははっきりしていない。

 日本医学放射線学会は今年7月、報告書を必ずチェックする仕組みづくりを求める見解を出している。

 同学会理事の蒲田敏文・金沢大学病院長は「報告書をよく確認せず、主治医が自分で画像を見るだけで診断するのが常態化している病院は多く、このケースも、問題になって慌てて開封ボタンを押したのではないか。報告書を確認したうえで患者に説明することを徹底すべきだ」としている。」



「開封ボタン」を押さなくても報告書が読めるとのことですが,確認システムが機能していないことは問題でしょう.

谷直樹

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by medical-law | 2018-12-31 02:10 | 医療事故・医療裁判

熊本大学医学部附属病院の尿細胞診検査結果確認漏れ(報道)

熊本大学医学部附属病院は,平成30年12月21日,「医療過誤の発生について」を公表しました.

それによると,2017年2月,泌尿器科外来担当医師Bの指示でサポート医師Aが尿細胞診検査を依頼し,医師Bが尿細胞診検査を依頼したことを失念し、その検査結果を確認いたしませんでした.検査オーダーを行ったのは医師Aであったため,医師Bには検査結果確認のアラートが届かず,医師Aはアラートの確認はせず,アラートは機能しませんでした.
2018年4月にがん登録センターから泌尿器科のがん登録医である医師Cに尿細胞診結果についての問い合わせがあり,細胞診検査結果確認漏れが分かりましたった..

「再発防止のための改善策」は次のとおりです.
「院内で導入されている病理結果確認のルールを遵守し、病理検査結果は確定後1ヶ月以内に必ず確認することを徹底する。
外来診療においても診療科内での情報共有を行う。
現在導入している再発防止策の実施を継続し、さらに二重、三重のチェック体制を整備するよう努める。」


複数の医師がかかわる場合,情報共通のシステムが重要です.


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by medical-law | 2018-12-30 17:26 | 医療事故・医療裁判

平成28年東京高裁判決を受けて,損害保険料率算出機構が障がい者の後遺症認定を変更

保険会社は,従前,障がい者の後遺症について損害保険料率算出機構の運用に従い,別損害を認めませんでたが,平成28年東京高裁判決が,足に障がいをもつ人の事故による腕のしびれについて支払いを認めました。
それを受けて,損害保険料率算出機構,保険会社が運用を変えたとのことです.

時事通信「新たなしびれも救済=自賠責、運用変更-障害者の後遺症」(2018年12月25日)ご参照
新たなしびれも救済=自賠責、運用変更-障害者の後遺症

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by medical-law | 2018-12-30 12:35

自治医科大学附属病院,医療事故(卵巣の左右取り違え)を公表

自治医科大学附属病院は,卵巣の左右取り違えによる医療事故を公表しました.
開腹鉤を安全にかけるために左卵巣の癒着剥離処理を行った後、本来右付属器を切除するところを、誤って左付属器を切除した,とのことです.直後に卵巣を戻し血管吻合を行ったとのことです

「認知心理学的な分析では、左付属器周囲の剥離操作を進めるうちに「剥離操作をした側の付属器を切除する」という、臨床経験に基づく「判断スキーマ」の活性化が関与した可能性などを指摘されました。」

つまり,安全のために左卵巣の癒着剥離処理を行っているうちに,左卵巣を切除するという誤った認識が生じたという分析です.

再発防止策として次の4点をあげています.
1.付属器切除患者を対象とした「切除前タイムアウト」の導入
2.マーキング運用方法の改善
3.執刀前タイムアウトでの項目追加と記録の徹底
4.手術の進行状況の適切な共有


谷直樹

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by medical-law | 2018-12-21 22:46 | 医療事故・医療裁判

埼玉県立大宮高校強歩死亡事件請求棄却(報道)

NHK「競歩大会で死亡「救護不備」指摘」は,次のとおり報じました.

「14日の判決で、さいたま地方裁判所の石垣陽介裁判長は「生徒が倒れたあとAEDの手配が遅れ、到着までにおよそ20分かかった。学校はAEDを事故現場に運ぶ方法やルートなどについて事前に具体的な検討をしておらず救護体制の構築に不十分な点があった」と指摘しました。
その一方で、「教員が心臓マッサージなどを続けても呼吸は回復せず、AEDが迅速に運ばれていても命を救えた可能性が高いとまでは言えず、過失と死亡との因果関係を認めるのは難しい」として原告の訴えを退けました。」

報道の件は私が担当したものではありません.
このような院外での心肺停止の場合,心臓マッサージを行うことで16.1%の人を救命でき,さらに迅速にAEDを行うことで54.0%の人を救命することができます.心臓マッサージで呼吸が回復しなくても,AEDが迅速に行われていれば救命できた可能性はあります.つまり,27.9%の患者が心臓マッサージに加えてAEDを行うことで救命されるのです.
医療過誤事件では,判例上,相当程度の可能性の考え方が定着しています.
27.9%の可能性があれば,救命の高度の蓋然性までなくても,救命の相当程度の可能性があったとして,被告に賠償を命じることができたと思います.

また,本件は,雨天中止となるはずの強歩大会が小雨で決行された事案ですから,中止すべき注意義務が考えられます.
そもそも体力には個人差があり,体調も変動があるのに,事実上強制的に参加させられる強歩大会は問題ではないか,と思います.

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by medical-law | 2018-12-19 21:35 | 司法

杵築中央病院,専門の医師に早く紹介せず細菌を検査し適切な抗生剤を使用しなかったために足を切断を余儀なくされた患者と和解(報道)

OBS大分放送「足腐敗で切断…杵築中央病院で医療ミス」(2018年12月10日)は,次のとおり報じました.

「杵築中央病院は左足の一部が腐敗し、切断を余儀なくされた女性について適切な処置を怠った医療ミスと認め、謝罪したことを明らかにしました。
杵築市に住む43歳の女性は、今年9月18日に足の違和感を訴え杵築中央病院を受診しました。その後治療を続けましたが症状が悪化し、1か月後に別の医療機関で緊急手術を受け左足を切断しました。この処置について、県医師会の医事紛争処理委員会は杵築中央病院が専門の医師に早く紹介せず、細菌を検査し適切な抗生剤を使用していなかったと判断したということです。これを受け杵築中央病院は7日、「我々に非があった」と女性側に謝罪しました。病院は女性への補償を進めるとともに、再発防止に向けて外部の専門医などによる検証を行う方針です。」


報道の件は私が担当したものではありません.

人の生命及び健康を管理すべき業務に従事する医師は、その業務の性質に照らし、ri臨床医療上必要とされる最善の注意義務を要求されています(最高裁昭和三一年(オ)第一〇六五号同三六年二月一六日第一小法廷判決・民集一五巻二号二四四頁参照).
医師は、自ら適切な診療をすることができないときには、患者に対して適当な診療機関に転医すべき旨を説明し、勧告する義務(転医勧告義務)を負う場合があります.
報道の件は,そのような場合と考えられます.

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by medical-law | 2018-12-17 17:26 | 医療事故・医療裁判

つがる総合病院,コールドポリペクトミーによる腸壁損傷で和解(報道)

東奥日報「大腸ポリープ手術でミス、人工肛門に つがる総合病院、1250万円賠償へ」(2018年11月22日 )は次のとおり報じました.

「つがる西北五広域連合は21日、青森県五所川原市のつがる総合病院で2017年11月、つがる市の80代男性が内視鏡による大腸ポリープの切除手術を受けた際、担当医が腸を傷つけるミスがあり、人工肛門が必要になる後遺症が残ったと発表した。広域連合は過失を認め、患者側に賠償金1250万円を支払う方針。

 同日の広域連合定例議会で、広域連合長の佐々木孝昌五所川原市長が損害賠償に関する議案を提案し、全会一致で可決された。

 広域連合や同病院によると、ポリープを切除する「コールドポリペクトミー」という手術の際、担当医が誤って手術器具で腸壁を傷つけたため、患者は腹腔(ふくくう)内出血による腹膜炎を発症。壊死(えし)した左結腸の切除や、人工肛門をつくるなどの治療を強いられた。

 手術時の対応を検証した結果、病院は「無理に切除する必要のないポリープだった」(同病院管理課)などとして、過失を認めて男性に謝罪。今年10月に和解した。広域連合の鎌田和廣病院運営局長は、取材に「患者に大変ご迷惑をおかけした。今後このようなことがないよう、再発防止に努めたい」と述べた。」


報道の件は私が担当したものではありません.
手技による事故には,「注意して回避できるもの」と「注意しても回避できないもの」があります.報道のコールドポリペクトミーによる腸壁損傷は注意して回避できるものです.


谷直樹

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by medical-law | 2018-12-17 11:10 | 医療事故・医療裁判

患者の権利侵害の予防と救済に向けて= 医療基本法法制化の実現をめざし みんなで動こう!『医療基本法 』シンポジウムパートⅣ

日時:12 月1日(土)/2018年 ➤ 13時30分〜16時30分 (13時開場)
場所: 明治大学駿河台キャンパス 研究棟2階9会議室 (東京都千代田区神田駿河台1−1)
【基調報告】
●小林洋二(患者の権利法をつくる会事務局長:弁護士)
【各パネリストの報告】
●永井裕之さん(医療事故被害者遺族・医療の良心を守る市民の会代表)
  ●藤崎陸安さん(全国ハンセン病入所者協議会事務局長)
  ●浅倉美津子さん(薬害肝炎全国原告団代表)
  ●前田哲兵さん(優生保護法被害東京弁護団:弁護士)
  ●身体拘束事件原告の方(匿名)・三枝恵真さん(弁護士)

【パネルディスカッション】
【会場との質疑応答】
【総括】
●鈴木利廣(弁護士・明治大学学長特任補佐)

主催: 患者の権利法をつくる会
共催:明治大学法務研究科医事法センター


http://www.iryo-kihonho.net/

谷直樹

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by medical-law | 2018-12-01 09:51 | 医療事故・医療裁判