弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

<   2019年 01月 ( 15 )   > この月の画像一覧

マイトラクリップ手術で患者死亡(報道)

慶應義塾大学医学部出身の医師が東京大学医学部附属病院で行ったマイトラクリップ手術で患者が死亡していたことが報じられました.

NEWSポストセブン「東大病院「心臓手術死亡事故」現役医師たちが覚悟の内部告発」(2019年1月21日)は次のとおり報じました.

 
「国内の心臓疾患患者はおよそ172万人。病状の悪化が死に直結する部位だけに、新たな治療法の確立がいまこの瞬間も待ち望まれている。しかし、患者にとって希望になるべき最新術式を巡って、医療の信頼を揺るがす問題が起きていた。舞台は東大病院。内部告発で暴かれた、手術死亡事故の全容とは──。

◆差出人は〈東大病院有志一同〉

 ここにA4用紙13枚にわたる文書がある。

〈告発状 東京都福祉健康局 医療政策部 医療安全課 〇〇課長 ご机下〉

 そう宛先が書かれた文書は冒頭でこう述べる。

〈東京大学医学部付属病院循環器内科における医療死亡事故隠ぺい事件をここに告発するものである〉

 末尾に〈東大病院有志一同〉と記されたこの告発状は何を訴えるのか──。

 発端は、昨年9月21日に遡る。この日、40代男性のA氏は東大病院のベッドに横たわっていた。

 A氏は心臓が通常より肥大化し、血液を適切に全身に送れなくなる拡張型心筋症と僧帽弁閉鎖不全症を患っていた。原因不明であるケースが多く、悪化すると心臓移植が必要となる難病である。

 そのA氏に施されたのが「マイトラクリップ手術」だ。脚の付け根から心臓までカテーテルを挿入し、左心房と左心室の間にある僧帽弁の先端をクリップで繋ぎ合わせ、血液の逆流を減らす手術で、従来の開胸手術より患者の負担が大幅に軽減される。日本では2018年4月に保険適用が始まったばかりの治療法である。

 手術を担当したのは、同術式の豊富な経験があると医療ニュースサイトなどで紹介される、東大病院循環器内科のK医師だった。だが、手術から16日後の10月7日午後2時5分、A氏は息を引き取った。

 件の告発状では、この処置について以下のように指摘していた。

〈不適切な医療行為により死亡した〉〈その死に至る過程では、単純な過失による医療事故のみでは片づけられない数多くの不適切行為が行われ、無念の悲痛な最後を迎えたのであります〉

 1月初旬、宛先である東京都福祉健康局を訪ねると、担当者はこう述べた。

「告発状の存在は我々も把握しています。すでに東大病院には都として立ち入り調査に入っており、検証が終わるまでマイトラクリップ手術を中止するよう指導してあります。

 この術式は高難度新規医療技術に当たり、保険適用下の治療に際しては慎重な運用が求められる。過去の実施症例において、なんらかの疑義がある状況のままでは、施術が行なわれるべきではないと判断しました」

◆カルテに〈特に問題なし〉と記載

 日本の医療を牽引する名門病院で一体何があったのか──。取材を進めると、内情を知る東大病院循環器内科の現役医師B氏と接触できた。B医師が語る。

「A氏の一件は、手術中に医療ミスが発生し、かつその点を見落として患者を死に至らしめた可能性が高い。カルテにもその形跡が示してあります」

 本誌・週刊ポストはA氏のカルテや死亡診断書、X線写真などを入手し、様々な角度から検証すると、A氏の手術について様々な不可解な点が浮かびあがってきた。

 手術中の出来事について、カルテにはこうある。

〈中隔穿刺を行なったが、中隔の肥厚、(中略)何度通電しても穿刺できず〉

〈可変式カテなどを使用するも穿刺できず、これ以上の手技継続は合併症のriskを考慮し、本日は手技中止とした〉

 昭和大学横浜市北部病院教授で心臓外科手術の権威として知られる南淵明宏医師は、次のように見解を示した。

「心臓にカテーテルを通すには、心房中隔に小さな穴を空ける必要があります。カルテからは、担当医がカテーテルを何度変えても心房中隔に穴を空けられず、結局マイトラクリップ手術を中断した様子がうかがえます」

 中止直後に撮影された胸部X線写真について、B医師が指摘する。

「写真を見れば、右肺部から空気が漏れて肺を圧迫する『気胸』が発生していたのは明らかです。(穿刺が行なわれた)左心房のすぐ隣には肺があります。術中に心房中隔に穴を空けようとして何度もカテーテルを動かした際、誤って肺に穴を空けてしまい、気胸が発生したと考えられます。しかしK医師はカルテに『特に問題なし』と記載していました」(B医師)

 手術翌日のカルテには〈日中にも血痰あり、やや酸素化不良 右呼吸音減弱〉〈CTでも右気胸あり〉との内容が記載されていた。

「血痰は肺が突き破られたことを指す重大なサインです。直後のCTで胸膜腔に血が溜まる血気胸が確認されました。本来なら血気胸を発見した時に補助心臓をつけて外科手術を施すべきでしたが、そうした処置はなされなかった」(B医師)

 その後、A氏の状態は急激に悪化し、10月7日に死亡したのは前述の通りだ。

◆診断書の死因は〈病死及び自然死〉

 A氏の死後、さらに不可解な出来事が起きていた。東大病院が作成したA氏の死亡診断書を確認すると、「死因の種類」という欄は、「病死及び自然死」にチェックが付けられ、「直接死因」は「慢性心不全急性憎悪」と記されている。

 驚くのは、手術の有無を問う欄は「無」にチェックされており、主要所見の欄も空白だったことだ。死亡診断書からは、A氏に手術をした事実が“消えて”いるのだ。

 厚労省の「死亡診断書記入マニュアル」は、「直接死因」や「直接死因の原因」に関係のある手術を実施した場合、術式及び診断名と、関連のある所見(病変の部位、性状、広がり等)の記入を求めている。が、A氏の死亡診断書にはマイトラクリップ手術の実施や、その後気胸が発生した事実が一切記載されていない。

 南淵医師が指摘する。

「もし心臓手術を施した患者が、1か月後に手術が直接の原因とは思えない脳出血で突然亡くなられたとしても、死亡診断書には、手術の詳細を記すことが求められます。A氏の件は手術後に肺に穴が空き、それが死に繋がった可能性が浮上しています。死亡診断書に心臓手術が行なわれたことを記載しないのは、医学界のルールを逸脱しているといえます」

 A氏の死について、東大病院が第三者機関の医療事故調査・支援センターに報告し、実態解明に乗り出したのは、死後2か月経ってからのことだった。

 問題はそれだけでない。そもそもA氏は、マイトラクリップ手術を受けられない患者だったという疑いも浮上したのだ。

 医療機器の承認審査などを行なう医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、マイトラクリップ手術について、心臓の収縮力を示す左室駆出率(EF)が30%以上の患者にしか適用してはならないと定める。それ以下の数値では、手術の負担に心臓が耐えられないリスクがあるからだ。

 事前の検査結果でA氏のEFが17%だったことがカルテに記載されている。だが、カルテには〈転院前の前医で施行したTTE(注・経胸壁心臓超音波検査)ではVisual EF30%であり、保険適応上は問題ない〉と併記されていた。

「Visual EFとは、“超音波画像で見たところこれくらいだろう”と視認した参考値にすぎません。そもそもEF17%という数値は心機能が著しく低下した状態。手術を行なったこと自体が間違いだったのではないか」(B医師)

 A氏が適応外の患者だったことを示す記載は他にもある。PMDAは「強心薬(カテコラミン)依存者」についても、マイトラクリップ手術には不適応とする。

 カルテには、A氏がカテコラミン依存状態であったことが記載されており、手術前にも、持続的に静脈内にカテコラミンを投与する状態だった。

「本来、補助人工心臓の埋め込みか、心臓移植が最適の処置だったはず」(B医師)

 医療問題に詳しい中川素充弁護士が語る。

「死亡診断書に虚偽の記載をしたのであれば虚偽診断書等作成罪にあたる可能性があります。仮に執刀医ではない人間が記載したために、事実を知らずに誤記していたケースであったとしても、同じ院内で報告が行き届いていない状況は問題です。真相解明の機会を奪っていることになる。

 PMDAで定められた基準に反して適応外の患者に治療を施し、死亡させた場合は、業務上過失致死傷罪に問われる可能性があります」

◆症例集めに〈苦戦しております〉

 なぜ、K医師はこれほどまでにマイトラクリップ手術にこだわったのか。K医師は慶應義塾大学医学部出身で、ドイツのブランデンブルグ心臓病センターに留学経験がある。東大病院のスタッフとなったのは、2018年1月だ。

「医局の教授から『これからK先生がマイトラクリップ手術のイニシアチブを取る』とのお達しがありました。新任ながらいきなり難易度の高い手術を任されただけに、周りの医師は驚きました」(B医師)

 就任の翌月、東大病院でマイトラクリップ手術の開始が決まると、K医師は適応症例集めに励んだ。

「新しい手術法を開始する時にはできるだけ症例を重ねて、他の病院を実績でリードすることが求められます」(B医師)

 だが、症例となる患者はなかなか集まらなかった。2018年5月17日にK医師が循環器内科の医局員に送った以下のメールからは、焦りがうかがえる。

〈MitraClip候補症例については現時点で確定症例がわずかに1例のみと苦戦しております。7月から本治療を開始するにあたり、候補症例を最低7例ストックする必要があり、非常に厳しい状況です〉

〈高齢者でも透析症例でも機能性MRでも適応になります。(中略)このようなお願いばかりで誠に恐縮ではございますが、MitraClip候補症例集めにお力添えを賜れば幸甚です〉

 そんな状況のK医師にとってA氏は“求めていた症例”だったのかもしれない。A氏は独身で一人暮らし。カルテにはA氏の家族について、「母認知症、姉とは30年会っていない」との記述があった。だが、母親は70代で物忘れをすることはあるが、病院で「認知症」と診断された経験はない。

 母親は息子の死について、「本当のことが知りたい」とだけ話した。

 手術のリスクについて、本人や家族への説明は尽くされたといえるのだろうか。本誌は一連の出来事についてK医師に取材を申し込んだが、締め切りまでに回答はなかった。

 東大病院の広報部は書面でこう回答した。

〈当該患者に対する治療が極めてハイリスクであることもかんがみて、治療の是非については、循環器内科内での症例検討会や、循環器内科、心臓外科、麻酔科でのハートチームカンファレンスのみならず、新規診療等検討委員会、臨床倫理委員会でも検討を行い、そのいずれからも治療の許可、賛同を得たうえで、当該患者本人とそのご家族にご説明を行い、そのご意向も踏まえて、最終的に当院でMitraClip治療を行うことを決定しております。
(中略)
 当該患者の死因について、治療にあたった循環器内科としては、原病である突発性拡張型心筋症による慢性心不全の増悪が主であると考えており、原病に対する手術は行っておりませんので、その旨を死亡診断書に記載しております〉

 告発状とは真っ向から主張がぶつかるなか、B医師が胸中を明かす。

「今回の事故について、“検証し、責任の処在を明確にしなければ、患者が次々と危険な目に遭い、病院やマイトラクリップ手術に対する信用も損なわれる。それだけは食い止めなければ”との危機感を持つ現役医師は私だけではありません」

 一刻も早い事実解明が求められる。

●文/伊藤隼也(医療ジャーナリスト)と週刊ポスト取材班
※週刊ポスト2019年2月1日号」


報道の件は私が担当したものではありません.
先端技術を適用しようとするあまりに起きた事故の可能性があります.


谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!

  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村


by medical-law | 2019-01-24 12:48 | 医療事故・医療裁判

高性能ノートパソコン

昨年,高性能ノートパソコンを購入しました.
価格を度外視し,CPUとGPUは最高のもの,SSDは容量が大きいものを選びました.
起案用のパソコンの横に置いて,CT画像,手術動画など画像記録を再生しています.
画質の善し悪しもよくわかりますし,画像記録の情報量の豊富さに感心します.
常に画像を確認しながら訴状,準備書面を起案できるのでとても便利です.

谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!

  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村

by medical-law | 2019-01-23 17:30 | 事務所

『グッドワイフ』

日本の弁護士ドラマはアメリカ映画の日本人描写のような違和感を覚えるので基本的に見ないのですが,『グッドワイフ』だけは見ています.



「京都人の密かな愉しみ」の常盤貴子さんと「白い巨塔」の唐沢寿明さんが主演だからです.「半沢直樹」の斎藤役の滝藤賢一さん,内藤役の吉田鋼太郎さんがそろって検察官役で出演しています.

ちなみに,原作の海外ドラマは9人の脚本家のうち3人が弁護士だそうですから.昔のアメリカでは或る程度リアリティがあるのだと思います.今の日本の裁判所,検察,法律事務所ではこのようなことはあり得ませんが,昔のアメリカの話と思えば,違和感は薄らぎます.

谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!

  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村

by medical-law | 2019-01-22 17:29 | 趣味

医療安全情報No.146 「酸素残量の未確認」(第2報)

日本医療機能評価機構は,2019年1月15日,医療安全情報No.146 「酸素残量の未確認(第2報)」を発表しました.
「酸素ボンベ使用中に残量ゼロ」となってしまった事故事例9件のうち5件では,搬送時以外にも酸素ボンベを使用していたとのことです.

医療安全情報No.146 は,再発防止のために,以下の3点の対策を検討するよう求めています.
1 酸素ボンベの使用は「搬送時のみ」として、中央配管がある場所では速やかに切り替える.
2 酸素ボンベ使用中は,「引き継ぎ時」「検査中」「検査終了時」などに酸素の残量を確認する.
3 患者の検査時は,酸素投与量と患者の状態に応じて医師や看護師が付き添う.

谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!

  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村

by medical-law | 2019-01-17 23:51 | 医療事故・医療裁判

「医療基本法から始まる修復的正義のすすめ」

弁護士の鈴木利廣氏とジャーナリストの神保哲生氏と社会学者の宮台真司氏が議論する動画が公開されています.ダイジェスト版は誰でも,完全版はビデオニュースに会員登録すると,見ることができます.

鈴木氏は,現状は,患者と医師が対立し,ぞれぞれが正義を主張する「正義の取り合い」の関係にあるが,医療基本法の制定により,両者が互いに信頼し協力しながらより安全な医療を実現していく修復的正義の実現へと移行していくことを期待しています.
修復的正義とは,コミュニティを巻き込んだ対話の中から,被害者には補償と癒やしを,医師側には責任と贖罪意識を促し,社会復帰をサポートすることを目指すものです.
医師と患者とコミュニティの三者が一体となって,より効果的に医療の安全を促進できる可能性がある,と述べています.



谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!

  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ



by medical-law | 2019-01-16 02:40 | 医療

平成31年1月10日東京地裁判決,千葉大学医学部附属病院の看護師が医師を呼ばす吸引を続けた過誤を認定(報道)

保健師助産師看護師法第5条は,」の法律において「看護師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう。」としています.看護師の診療の補助行為について医療過誤が問題になることがあります.
とくに,緊急事態に直面したときの対応,医師への連絡が不適切な場合,責任を問われることがあります.

朝日新聞「医療ミスで植物状態 千葉大に1.5億円の賠償命令判決」(2019年1月10日)によると,平成31年1月10日東京地裁判決(裁判長佐藤哲治氏)は,看護師の注意義務違反を認め、約1億5千万円の支払いを命じた,とのことです.

(事案)
患者は2012年8月、上あごと下あごのズレを矯正する手術を受けた。4日後、チューブにたんが詰まって窒息状態になった。異変に気づいた女性看護師2人が5分ほど吸引したが改善せず、低酸素脳症による重い障害を負った,とのことです.

(判決の認定)
看護師が呼吸の回数や脈拍を確認する義務があったにもかかわらず、男性の様子を十分に把握していなかったと指摘。医師を呼ばずに吸引を続けたのも不適切で、「早く処置をしていれば障害は生じなかった」と認定した,とのことです.

報道の件は私が担当した事件ではありません.看護過誤の例として参考になります.判例雑誌に掲載されたら是非読んでみたいと思います.

谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!

  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村



by medical-law | 2019-01-11 07:50 | 医療事故・医療裁判

菱葩餅

b0206085_00075161.jpg

菱葩餅は,雑煮の見立てです.
牛蒡を押し鮎に,白い求肥を餅に,白味噌餡を白味噌に見立てています.
正月を代表する和菓子です.

谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!

  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村

by medical-law | 2019-01-08 23:57 | 日常

京田辺市のクリニックの無痛分娩事故,大阪高裁で和解(報道)

共同通信「無痛分娩ミス訴訟が和解 京都の夫婦と産婦人科医院」(2019年1月7日)は次のとおり報じました.

「麻酔で痛みを和らげる「無痛分娩」で出産しようとした際、医師が適切な処置をせず、生まれた長女が脳性まひを負ったとして、京都府の夫婦が同府京田辺市の医院「ふるき産婦人科」と院長に計約1億円の損害賠償を求めた訴訟の和解が7日までに、大阪高裁で成立した。

和解条項によると、和解金を7400万円と算定。このうち産科医療補償制度に基づき既に支払われた補償金を差し引いた5840万円を医院側が夫婦に支払う他、障害を負った事実を厳粛に受け止め遺憾の意を表し、夫婦も医院側を刑事告訴しないなどの内容が盛り込まれた。和解は昨年12月7日付。

原告側の請求を棄却した昨年3月の一審京都地裁判決によると、同医院の医師は2011年4月、無痛分娩を行うため母親に硬膜外麻酔をし、子宮収縮剤を投与。長女は帝王切開で生まれたが脳性まひなどの障害を負い、3歳だった14年に急性呼吸不全で亡くなった。

一審判決は、分娩時の子宮収縮剤の過剰投与や、分娩監視装置の未装着など医師の過失を認定。一方、長女が脳性まひを負った点について、装置の記録がなく過失との因果関係の分析に限界があるとし「夫婦の憤りは察するに余りあるが、因果関係は不明と言わざるを得ない」としていた。」


KBS京都「無痛分娩ミス訴訟が和解」(2019年1月7日)は次のとおり報じました.


「無痛分娩で出産しようとした際、医師が適切な処置をせず、生まれた長女が脳性まひを負ったとして京都府の夫婦が京田辺市の産婦人科におよそ1億円の損害賠償を求めた訴訟の和解がきょうまでに大阪高裁で成立しました。去年3月の京都地裁の判決によりますと2011年4月、京田辺市の「ふるき産婦人科」の医師は無痛分娩のために母親に硬膜外麻酔をし、子宮収縮剤を投与、帝王切開で生まれた長女は脳性まひなどの障害を負い、3歳で亡くなりました。一審判決は子宮収縮剤の過剰投与など医師の過失を認めたものの、長女が障害を負った点との因果関係は不明として、夫婦の請求を棄却しました。先月7日付の大阪高裁での和解条項では和解金を7,400万円と算定し、このうち、産科医療補償制度に基づき、すでに支払われた補償金を差し引いた5,840万円を医院側が夫婦に支払うほか、障害を負った事実を厳粛に受け止め遺憾の意を表すとの内容が盛り込まれました。ふるき産婦人科に対しては別の2組の母子も無痛分娩や帝王切開の麻酔ミスを巡り、損害賠償を求める訴訟を起こしています。」


朝日新聞「「医師のずさんな管理排除を」無痛分娩で娘亡くした夫婦」(2019年1月7日)は次のとおり報じました.

「無痛分娩(ぶんべん)で医師が適切な処置を怠ったために長女が重い障害を負ったとして、京都府内に住む夫婦が「ふるき産婦人科」(同府京田辺市)と男性院長に約1億円の賠償を求めた訴訟が、大阪高裁で和解した。

 原告の夫婦は和解前に朝日新聞の取材に応じ、「お金で娘は帰ってこない。ただ医師に反省してほしいだけです」と語った。

 夫婦によると、妻は2010年8月に長女を妊娠。待ち望んでいた第1子で、生まれる前から「元気な子に育ってほしい」と思いを込めた名前を考えていた。周囲で評判が良かった遠くの病院に妊婦健診に通っていたが、自宅に近いふるき産婦人科に切り替えた。院長は健診の時から「血圧が高いから無痛がいい」と無痛分娩を勧めたという。

 一審判決によると、出産の日、妻は無痛分娩で異変が起きても決して苦情を言わないとする趣旨の承諾書で無痛分娩に同意したが、リスクの有無などについて説明を受けなかった。

 麻酔薬と陣痛促進剤の投与を受け、4回にわたる吸引分娩でも出産できずに帝王切開に。
 ようやく生まれた長女の産声は聞こえなかった。搬送先の病院で会った時は保育器の中で、何本もの管につながれていた。「なぜこんなことになってしまったのか。涙が止まらなかった」と妻は話す。

 退院後は家族で24時間介護を続けたが、長女は自分の意思で手足を動かすこともできないまま亡くなった。

 提訴に踏み切ったのは長女の身に何が起きたのかを知りたかったからだ。言葉を話すことはなかったが、家族の顔を見ると笑顔を見せ、大好きなアンパンマンの音楽に反応して手足をバタバタさせた。夫婦は「無痛分娩自体は悪くない。ずさんな管理をする医師をきちんと排除できる仕組みをつくってほしい」と訴えた。(大貫聡子)」


報道の件は,私が担当した事件ではありません.(私が担当たのは神戸と大阪の無痛分娩事故です.)
医療過誤訴訟で因果関係は重要な争点になります,京都地裁の判決は疑問の多いものでしたので,高裁で和解が成立してよかったと思います.




谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!

  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村

by medical-law | 2019-01-07 20:31 | 無痛分娩事故

公益財団法人日本医療機能評価機構,医療事故情報収集等事業第55回報告書公表

公益財団法人日本医療機能評価機構は,平成30年12月,医療事故情報収集等事業第55回報告書を公表しました.
「再発・類似事例の分析」において,「病理診断報告書の確認忘れ」(医療安全情報No.71)と「口頭指示の解釈間違い」(医療安全情報No.102)をとりあげ,それぞれ次のとおりまとめています.

「本報告書では、「病理診断報告書の確認忘れ」(医療安全情報No. 71)について、医療安全情報No. 71の集計期間後の2012年9月以降に報告された再発・類似事例を集計した。さらに、そのうち最も多かった上部消化管内視鏡検査の生検組織診断の事例26件について分析を行った。
各診療科の主治医が内視鏡検査担当医に依頼して上部消化管内視鏡検査が行われ、さらに内視鏡検査担当医が病理医に依頼して病理診断が行われる複雑な流れの中で、病理診断報告書が確認されず長期間が経過した事例が報告されていた。また、病理診断報告書が作成されたことや一定期間未読であることを知らせるシステムがある医療機関においても確認忘れの事例が発生していた。
病理診断は患者の治療方針を決定する上で重要な検査であり、病理診断の結果を、いつ、誰が患者に説明するのかを明確にして、病理診断報告書の内容を確実に確認することが必要である。そのためには、医療機関において「内視鏡検査~病理検査~病理診断報告書の確認~患者への説明」の流れを整理し、業務工程を確立することが重要である。また、病理診断報告書の作成や未確認を知らせるシステムを活用する場合は、通知先を適切に設定し、漏れがないように運用することが望まれる。」

「本報告書では、「口頭指示の解釈間違い」(医療安全情報 No. 102)の再発・類似事例8件を分析した。事例の概要では、薬剤が5件と多かった。また、情報を伝える側が指示した内容と、情報を受け取る側が間違って解釈した内容と誤って実施した内容を整理して示し、主な事例や背景・要因、医療機関の改善策をまとめた。
口頭でのやり取りはできる限り行わないとしている医療機関もあるが、緊急時など状況によっては口頭による指示や依頼が発生する可能性がある。報告された事例の中にも、指示した医師が清潔野で処置をしていた事例があった。しかし、口頭で指示や依頼をする場合、情報を簡便に伝えようとした結果、伝えるべき内容が不足してしまうことがある。また、情報を受け取る側も、周囲の環境や状況によっては聞き取りにくい、指示や依頼を視覚で確認できないなどの要因から、相手が意図した内容とは異なった解釈をしてしまう可能性がある。
情報を伝える側は正確に伝わる言葉を選択することや、情報を受け取る側は受け取った内容の解釈を復唱して、双方の意思疎通ができているか確認する必要がある。また、可能な限り、情報を伝える側は口頭での指示や依頼だけでなく指示を入力したり、情報を受け取る側はメモに記載したりするなど、記憶に頼らない工夫をすることが必要である。」


谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!

  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村

by medical-law | 2019-01-07 00:14 | 医療事故・医療裁判

医療安全情報No.145  腎機能低下患者への薬剤の常用量投与

医療安全情報No.145は,「添付文書上、腎機能が低下した患者には投与量を減量することや慎重に投与することが記載されている薬剤を常用量で投与し、患者に影響があった事例が8件報告されています。(集計期間:2014年1月1日~2018年10月31日)」
と注意換気しています.

「・医師は、処方する前に患者の腎機能を把握し、患者の 腎機能に応じた用量で処方する。
・薬剤師は、腎で代謝・排泄される薬剤を調剤する際は、 患者の腎機能を確認する。」
としています.

谷直樹

ブログランキングに参加しています.クリックをお願いします!

  ↓

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村



by medical-law | 2019-01-06 23:56 | 医療事故・医療裁判