弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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健康成人を対象とした治験における死亡例発生事案に係る調査結果の公表について

厚生労働省は健康成人を対象とした治験における死亡例発生事案に係る調査結果の公表についてをサイトに掲載しました.


経緯と本治験の状況

「(1)被験者が死亡するまでの経緯・死亡した被験者(以下、「被験者A」という。)は、最高用量(15mg/日)・10日間反復投与の本剤群に参加し、予定の投薬を受けた。・治験薬投与中には軽度~中程度の眠気及び浮動性めまいが認められ、投与終了後3日間の入院観察期間には軽度の悪心、眠気及び浮動性めまいが認められたが、それ以外は特段の異常を訴えずに退院。・その後、被験者Aは退院日当日に自主的に再来院。入院観察期間中に幻視、幻聴、不眠があったことを訴えた。医療機関側は、被験者の受け答えがはっきりしており、容態が安定していたこと等から経過観察を決断したが、翌日朝、警察から被験者Aが電柱から飛び降りて死亡したことが伝えられた。

(2)本治験状況及び他の被験者の状況死亡事例の発生後、本剤投与は中止している。医療機関側は、本治験の他の被験者の安全確認を行ったが、一部異常を訴えた被験者はいるものの、重篤な有害事象は認められなかった。」


調査結果は次のとおりです.

「・治験薬と被験者Aで生じた有害事象との因果関係は否定できない。

・治験実施医療機関は、被験者から治験参加の同意を得る際に、治験の概要や予測される副作用について情報提供していた他、緊急搬送先及びその手順を定める等、緊急時に適切な医療を提供するための措置を講じていた。また治験依頼者は、実施医療機関等の選定にあたり、医療機関に多くの治験の実績があること、治験で必要な検査等の実施が可能なこと、緊急時の対応が定められていること、治験責任医師となる者に中枢神経系の第I相試験を含めた治験の実績があること等を考慮していた。これらを踏まえると、治験実施医療施機関及び治験依頼者にGCP省令の規定からの重大な逸脱に該当する所見は認められなかった。
しかしながら、その理念に従い、より配慮を要する事項があった。

-治験実施医療機関は、被験者Aの再来院時に速やかに精神科等の医師に診察を受けさせるのが適切であった。また、治験実施医療機関は、治験薬投与後の入院観察期間においても被験者をより詳しく観察し、記録を行うべきであった。

-治験実施医療機関は、被験者に対する同意説明時に、自殺に関連するリスクを含む、治験薬の心身に与える影響について、より詳細な注意を書面で伝えると共に、心身の変調を感じたら速やかに申告するよう説明すべきであった。

-治験実施医療機関は、治験担当医師にとって専門外の有害事象を確認した際には、講じるべき措置をより慎重に判断すべきであった。

-治験依頼者は、治験薬のリスクを踏まえ、精神科医等による診察が可能な実施体制が整った医療機関を選定するか、治験責任医師・分担医師に精神科医等を含めることが適切だった。また、有害事象が生じた際の家族等の関与も事前に検討するべきであった。



今後の対応は,以下のとおり書かれています.

「今回の事案を踏まえ、医薬品の忍容性等を評価するための開発初期の治験を実施する際の対応として以下のものが必要と考える。

(1)治験依頼者における対応

-被験薬のリスクに応じた対応が可能な治験実施医療機関及び治験責任医師等を選定する。

-発現が想定され重大な転帰につながる有害事象について、治験実施医療機関に十分な説明を行い、被験者に文書で情報提供する。

-当該有害事象に対応可能な医師等が治験に参加していること又は、事前に連携体制を構築した他の医療機関で即時の対応が可能となっていること確認する。

-中枢神経症状を来す薬剤の治験を行う際には、有害事象の診断が可能な治験実施医療機関での実施や、家族等の保護者の関与の検討を行う。

(2)治験実施医療機関における対応

-発現が想定され重大な転帰につながる有害事象について、被験者に文書で情報提供するとともに、心身の変調が生じたら速やかに申告するよう被験者に伝達する。

-被験者に重篤な事象が発現した場合には、入院期間の延長等の被験者保護に必要な措置への協力を依頼する可能性があること、症状によっては精神保健指定医に診察への協力を依頼することや、家族等に連絡を取る可能性があることを説明し、同意を得る。

-被験薬の性質により治験終了後も有害事象が発現する可能性があることを理解し、被験薬投与終了後も被験者の有害事象の発現の有無を確認し、記録を取る。-重大な転帰につながる可能性のある事象が発現した際には、臨床経験のある専門の医師の意見を参照する等、適切な連携体制を整備する。」


健康な人が治験によって亡くなったことは重く受け止め,今後の対策に活かされるべきと思います.

谷直樹

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by medical-law | 2019-11-29 22:21 | 医療事故・医療裁判

平成30年(2018)人口動態統計(確定数)

平成30年(2018)人口動態統計(確定数)が,令和元年11月28日,厚労省のサイトに掲載されました.
その要点は以下のとおりです.

「出生数は減少

出生数は91万8400人で、前年の94万6146人より2万7746人減少し、出生率(人口千対)は7.4で前年の7.6より低下した。

死産数は減少

死産数は1万9614胎で、前年の2万364胎より750胎減少し、死産率(出産(出生+死産)千対)は20.9で、前年の21.1より低下した。

死亡数は増加 

死亡数は136万2470人で、前年の134万567人より2万1903人増加し、死亡率(人口千対)は11.0で前年の10.8より上昇した。

死因別にみると、悪性新生物<腫瘍>の死亡数は37万3584人(死亡総数に占める割合は27.4%)、死亡率(人口10万対)は300.7であり、前年と同様死因順位の第1位となった。
なお、第2位は心疾患、昨年第4位であった老衰が第3位となった。

年齢調整死亡率(人口千対)は男4.6、女2.5で、男は前年の4.7より低下したが、女は前年と同率となった。」


出生数は91万8400人で,死産数は1万9614胎です.死産とは,妊娠12週以降に死亡した胎児を出産することを言います.死産率が減少したのは,医学医療の進歩によるものでしょうか.
なお,死産について医療過誤を疑う方もいますが,死産の原因は様々で,原因を確定し難い場合も多く,予見し回避することが困難な場合も多く,裁判で医師の責任が認められ得るケースは少ないように思います.
「老衰」が3位になったのは,「成人肺炎診療ガイドライン2017」(日本呼吸器学会)以来,死亡原因を「誤嚥性肺炎」ではなく「老衰」とする医師が増えているためではないでしょうか.誤嚥性飛燕は嚥下能力の低下している患者におきるため,一部の例外を除いて,医療過誤としての責任を問うのが難しい事案が多いように思います.もっとも,静岡地裁令和元年9月19日判決は,肺がん患者が誤嚥性肺炎で死亡した事案で,総額1122万0116円が認めています.

谷直樹

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by medical-law | 2019-11-29 03:59

赤いほうれん草

茎が赤いほうれん草を見かけなくなって久しいです.
先日,関西のデパートで茎が赤いほうれん草がありましたので,買ってきました.
この赤い茎の部分が美味しく,葉の部分もしっかりした味でした.
少し渋めですが,緑と赤のクリスマスカラーで、見た目もきれいです.

谷直樹

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by medical-law | 2019-11-29 01:16 | 日常

大手法律事務所がベンチャービジネス進出

TMI総合法律事務が来月月「TMIベンチャーズ株式会社」と「TMIプライバシー&セキュリティコンサルティング株式会社」を設立するとのことです.
今,ベンチャーがビジネスチャンスと見たのでしょう.
法律家は慎重でブレーキを踏みたがり,ベンチャーは積極的でアクセルを踏み込みたがるとすれば,ブレーキとアクセルはどちらも必要ですから,法律事務所のベンチャーはよいかもしれません度と


谷直樹

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by medical-law | 2019-11-28 00:34

アドバンス・ケア・プランニング

厚生労働省は,批判を受け,2019年11月26日、「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」の普及啓発のため作製したポスターの自治体への発送を中止しました.

このアドバンス・ケア・プランニング(ACP)という言葉をよく聞くようになりました.
将来の意思決定能力の低下に備えて、患者家族と,ケア全体の目標や具体的な治療・療養について話し合う過程(プロセス)をアドバンス・ケア・プランニングACP)と言います.
①患者の意思は変化するものですから,医療・ケアの方針を、繰り返し話し合い,患者が価値観を確認すること、②患者が自らの意思を伝えられない状態になる前に患者の意思を推定する者について家族等の信頼できる者を前もって定めておくこと,③話合いの記録を残しておくこと,④そのための法的枠組み等が求められています.

話合いによる患者の自己決定のプロセスを重視するものですが,現実には幾多の困難があります.今回の件は,はからずもこの問題の難しさを提起した結果になったのではないでしょうか.


谷直樹

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by medical-law | 2019-11-27 23:42 | 無痛分娩事故

黒部市民病院のがん患者死亡裁判(報道)

NHK「患者死亡の損賠訴訟始まる」(2019年11月27日)は,次のとおり報じました.

「黒部市民病院でがんの治療を受けていた男性が死亡したのは看護師が投薬量を誤ったためだなどとして、遺族が市に賠償を求めている裁判が始まり、黒部市は争う姿勢を示しました。

訴えを起こしたのは黒部市民病院でがん治療をうけていて去年、死亡した当時67歳の男性の遺族です。
訴えによりますと、男性は平成23年から黒部市民病院でがんの治療を受けていて、去年、症状が悪化したため、病院に入院しました。
その際、看護師が薬の量を誤ったうえ、人工呼吸もしなかったために死亡したとして、市に約1100万円の賠償を求めています。
裁判は27日から富山地方裁判所で始まり、黒部市は訴えを退けるよう求める答弁書を提出し、争う姿勢を示しました。
黒部市の代理人を務める弁護士は27日、法廷に出てきませんでしたが、黒部市は取材に対し「原告側が言うような医療ミスはなかった」という趣旨の答弁書を提出したということです。」


報道の件は私が担当したものではありません.
看護師が薬の量を誤ったうえ、人工呼吸もしなかったために死亡したという事実があるか否か争点のようです.

サンデー毎日2019年11月17日号の「シリーズがん楽死 第1回/がんの痛みを解消する処方箋」に,「確かに「緩和ケア(在宅緩和ケアも含めて)」や「看取(みと)り」などの言葉は広く知られるようになった。しかし、緩和ケアが標準がん治療の尽きた最末期患者の「送り込み先」として利用されていたり、結果としての看取りだけが独り歩きして「その人らしく生きるための支援」が抜け落ちていたりと、緩和医療の現場にはお寒い現実も少なからず横たわっている。」と指摘しています.
上記報道の件がどのような場合なのかは分かりませんが,一般に,標準がん治療の尽きた最末期患者の医療とその決定については,医療過誤にあたるか否かとは別に,患者の権利の視点から考えねばならない大きな問題があるのではないでしょうか.

谷直樹

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by medical-law | 2019-11-27 21:15 | 医療事故・医療裁判

綾部市立病院の小腸損傷事故867万円で和解(報道)


京都新聞「手術のカテーテルで小腸損傷、元患者に和解金867万円 市立病院医療事故」(2019年11月26日)は次のとおり報じました.

「京都府綾部市は26日、2012年12月に同市立病院で起きた医療事故で、元患者と和解が成立する見通しとなり、損害賠償や慰謝料として和解金計867万円を元患者に支払うと発表した。12月3日開会の市議会定例会に病院事業会計補正予算案として提案する。

 事故は、舞鶴市在住の女性=当時30代=が卵巣から腫瘍を摘出する腹(ふく)腔(くう)鏡手術を受けた際、医師が挿入したカテーテルが小腸を損傷した。和解金は市が交付し、市立病院を運営する市医療公社が支払う。」


報道の件は私が担当したものではありません.
腹腔鏡下の卵巣腫瘍摘出手術でカテーテルが小腸を損傷した事案について,責任を認めた例です.


谷直樹

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by medical-law | 2019-11-26 21:14 | 医療事故・医療裁判

綾部市の産婦人科医,市に3億3600万円相当の金塊を寄付

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京都新聞「金塊3億円超、市に寄付 88歳医師「使い道はお任せ」(2019年11月26日)は次のとおり報じました.

「京都府綾部市は26日、市内の産婦人科医から「地域振興に使ってほしい」と金塊の寄付を受けたと発表した。金塊は110個計60キロで3億3600万円相当。市は金塊を現金化する議案を市議会12月定例会に提案し、使途を今後検討する。

 寄付したのは市内の産婦人科医の男性(88)。市には2016、17両年にも紫水ケ丘公園に河津桜と維持管理費を寄付している。

 金塊は10月に市が受領した。男性は「米寿の記念にと思い、市に寄付しました。使途は市にお任せします」と話している。

 市は昨年7月の西日本豪雨被災で財政難に陥っており、山崎善也市長は「ふるさとを思う気持ちに感激している。感謝し、大切に使いたい」と話している。」


金塊が安全確実と考えて蓄財してきたのでしょう.それを寄付するのはなかなかできることではないでしょう.

谷直樹

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by medical-law | 2019-11-26 20:46

京都地裁判決,欠勤は精神的不調と連続性を有すると認定し京大職員解雇無効(報道)


京都新聞「京大職員136日欠勤で解雇は「無効」 地裁判決「精神不調疑うことできた」(2019年11月25日)は次のとおり報じました.

「京大職員136日欠勤で解雇は「無効」 地裁判決「精神不調疑うことできた」

 136日間の長期欠勤を理由とした懲戒解雇処分は不当だとして、京都大元職員の女性(50)が京大に対して、懲戒処分の取り消しを求めた訴訟の判決が25日、京都地裁であった。藤田昌宏裁判長は、京大側が女性の精神的不調の回復に向けた対応を検討していなかったとして「懲戒解雇は無効」と判断し、元職員の訴えを認めた。
 判決によると、女性は1991年から京大で事務職員として勤務。2015年10月末ごろから、幻覚や妄想などの精神的不調が生じ、京大側から精神科受診を勧められていた。その後、職場のパワーハラスメントなどを理由に17年3月から欠勤。京大側は、女性に聴取するなどの懲戒手続きを行い、正当な理由なく長期間欠勤を繰り返しているとして、18年2月2日付で懲戒解雇処分とした。
 藤田裁判長は判決理由で、女性の欠勤は「15年10月末ごろからの精神的不調と連続性を有する」と推認。懲戒手続きの段階でも不調を疑うことは可能だったとして「精神科医への受診を再度勧めたり、受診を命じたりするなどの働き掛けや回復に向けて休職を促す対応を採ることが考えられた」と指摘した。
 その上で、京大側がそうした対応を検討せず懲戒解雇としたのは、京大の就業規則の禁止事項「みだりに勤務を欠くこと」には当たらないとして、「懲戒解雇は懲戒事由を欠き、無効」と結論づけた。」


報道の件は私が担当したものではありません.
ちなみに,私が担当していない京田辺市の無痛分娩事故は,大阪高裁で病院側が5840万円を支払う和解で終了していますが,その1審で請求棄却の判決を下したのが,この裁判長です.。

谷直樹

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by medical-law | 2019-11-26 20:40 | 司法

ユーハイムのバウムクーヘン

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ユーハイムのバウムクーヘンと時計をいただきました.
日本で最初のバウムクーヘンはカール・ユーハイムさんが作りました.
日本の捕虜となったドイツ人の1人カール・ユーハイムさんは,1919年,広島物産陳列館(現在の原爆ドーム)で開かれた似島収容所浮虜製作品展覧会にバウムクーヘンを出品したそうです.
カールさんは,第一次世界大戦終戦後も日本に残り,明治屋で働き,独立するも関東大震災で被災し,神戸に移り,「JUCHHEIM'S」を開き,太平洋戦争終戦の前日に亡くなりました.家族は連合軍によりドイツへ強制送還されましたが,やがて日本に戻り,「JUCHHEIM'S」の従業員が再興したユーハイムの経営者になりました.
100年の歴史とドラマのあるお菓子です.

谷直樹

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by medical-law | 2019-11-24 23:50 | 日常