弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

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クリニックが帝王切開時の全身麻酔の母体死亡で提訴される(報道)

福島テレビ「帝王切開で死亡したのは医療ミス 亡くなった女性の遺族が損害賠償を求める裁判」(2020年1月21日)は,次のとおり報じました.

「帝王切開で出産した女性が死亡したのは医療ミスが原因として、遺族が病院を運営する法人を相手取り損害賠償を求めた裁判の第一回口頭弁論が開かれた。

訴えによると当時36歳の女性は2019年1月。福島県○○市の○○クリニックで、全身麻酔をうけ帝王切開で出産したが、低酸素状態に陥りその後死亡した。

女性の遺族は全身麻酔後の速やかな気道確保を怠ったことが原因として病院を運営する法人に慰謝料などおよそ8200万円の損害賠償を求めている。

第1回口頭弁論は21日に福島地方裁判所で開かれ、被告の病院側は欠席した。

遺族の代理人によると病院側は請求の棄却を求め、全面的に争う姿勢を示したという。」


報道の件は私が担当したものではありません.
全身麻酔で帝王切開をうけた妊婦の死亡率は局所麻酔で帝王切開をうけた妊婦の16.7倍いう報告がありました.その後,1.7倍という報告があり,差は縮まっていますが,やはり危険性はありますので,適応は厳格に判断させる必要があります.
帝王切開時の全身麻酔には常に挿管困難のリスクがあります.
事前にリスクの程度を評価すること,挿管困難となったときに備えること,気道確保を確認してから手術を行うこと,再挿管は困難なので慎重な抜管等が重要になります.
報道の件はどのような事案だったのでしょうか.

谷直樹

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by medical-law | 2020-01-22 18:05 | 医療事故・医療裁判

がん見落とし事故 遺族の思いと県医療局の対応

NHK「がん見落とし事故 遺族の思い」(2010年1月21日)は次のとおり報じました.

「岩手県立二戸病院で、CT検査でがんの疑いが診断されたにもかかわらず、主治医が3度にわたって検査結果を見落とした医療事故について、亡くなった男性の遺族がNHKの取材に応じ、「再発防止の対策をとってほしい」と心境を語りました。

岩手県立二戸病院では、平成27年に60代の男性患者がCT検査を受けた際、放射線科の医師が腎臓のがんが疑われると診断しましたが、主治医が3度にわたって検査結果を見落としました。
このため治療が遅れ、男性は平成29年1月に死亡し、県は先月、遺族に謝罪しました。
この男性の娘はNHKの取材に応じ、心境を語りました。
女性は、「父のことがすごく好きだったので、亡くなったことがいまだに受け入れられていない。父は人生の最後になぜこんなに辛い思いをして亡くならなければいけなかったのか無念です」と話しました。
また、女性は再発防止の徹底を求めるため、21日付けで達増知事に要望書を送りました。
この中で、放射線科の医師が直接主治医に電話して所見を伝えることや、原則として報告書を患者に渡して説明するなどの対策をとることを要望しました。
県医療局業務支援課の鎌田隆一総括課長は、「画像診断の見落としを防止するシステムを、来年度の早期にすべての県立病院に導入していきたい」と話し、再発防止に向けて取り組む考えを示しました。」


岩手県の対応に注目したいと思います.

谷直樹

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by medical-law | 2020-01-22 00:24 | 医療事故・医療裁判

岩手県立二戸病院の遺族からの要望書

岩手県立二戸病院の遺族は,本日,岩手県知事に要望書を送り,2点の再発防止策をお願いしました.要望書は以下のとおりです.


2020年1月21日

岩手県知事 達 増 拓 也 殿

岩手県立二戸病院の遺族からの要望書


第1 要望の趣旨

 岩手県は、令和元年12月11日の厚生労働省通知「画像診断報告書等の確認不足に対する医療安全対策の取組について」に基づき、全県立病院で次の2点を再発防止策として採用していただきたく要望いたします。御検討いただき、御回答いただきたくお願いいたします。
(1) 画像読影医が緊急度の高い所見を指摘した場合、報告書を検査依頼医が所属する診療科の責任者に送付するとともに、直接検査依頼医に電話し所見を伝える。
(2) 主治医など説明を担当する医師は、患者が希望しない場合を除き、原則として画像診断報告書を患者に渡し、その結果を丁寧にわかりやすく患者に説明し、その旨を診療録に記載する。

第2 要望の理由

1 事故の経過

 父(60歳代男性)は、健康診断で肺の陰影を指摘され、受診したクリニックで岩手県立二戸病院(以下「二戸病院」と言います)を紹介されました。
 父は、二戸病院の呼吸器内科の医師の指示で胸部CT画像検査を受けました。
 二戸病院の平成27年3月のCT検査の放射線科医作成の画像診断報告書には「腎細胞がんを疑います」「s/o left renal cell carcinoma」(※ 左腎細胞がん疑い)と記載されていました。
 肺の疾患を疑って3か月の間隔をおいて実施された同年6月、9月のCT検査の画像診断報告書には、「left renal cell carcinoma」(※ 左腎細胞がん)と明記されていました。
 しかし、呼吸器内科の医師は、放射線科医の作成した画像診断報告書を見ていませんでした。この事故は、呼吸器内科の医師が画像診断報告書を見ていれば容易に防止できた事故です。医師間で医療情報の共有がなされなかったことが事故の原因と思います。
 父は、平成28年8月にがんが脳に転移して脳出血で二戸病院に運ばれ救急の医師がカルテを見てはじめて父の腎細胞がんが発見されました。父は、平成29年1月に腎細胞がんで亡くなりました。

2 再発防止策

 病院長は、令和元年12月6日、謝罪文のなかで、「重大な医療事故」との認識を示し、「この度の医療事故は、院内における検査結果情報の共有の仕組みに問題があったことが大きい要因と考えております。このことを深く反省し、今後は、二度とこのような事故を起こさないよう再発防止しに努め、患者と県民の皆様の信頼回復に向けて、職員一丸に全力で取り組んでまいります。」と書いています。
岩手県医療局は、二戸病院の医療事故の原因について、「当該診療科の医師は、応援医師であるが、画像診断報告書の既読状況を確認する体制が構築できていなかった。」とホームページに書いています。再発防止策について、「画像診断報告システムに「既読」ボタンを設定するとともに、重要な所見が含まれている場合は、強調文字で表示するようシステムを改修した。」と書いています。

 たしかに、岩手県の医師は盛岡市周辺に集中していますので、応援医師による診療は或る程度一般的であり、応援医師の存在を意識して、画像診断報告書の確認不足による医療事故防止に取り組む姿勢は評価できます。
 ただ、これだけで本当に再発が防止されるのか、二戸病院以外の県立病院では画像診断報告書の確認は十分なのか、という疑問もあります。
厚生労働省が、令和元年12月11日に、通知「画像診断報告書等の確認不足に対する医療安全対策の取組について」を発したこともあり、組織的な伝達体制や確認体制を構築する観点から、上記のとおりもう一歩踏み込んだ具体的な再発防止策がとられるよう要望いたします。
画像読影医が緊急度の高い所見を指摘する場合は、さほど多くないはずです。画像読影医に、①報告書を検査依頼医が所属する診療科の科長など責任者に送付する、②直接検査依頼医に電話し所見を伝えるの2点を求めても大きな負担にはならないと思います。
医師が原則として画像診断報告書を患者に渡して説明することになれば、画像診断報告書を読まないで説明することはできませんから、説明する医師は必ず画像診断報告書を読むことになると思います。また、患者は、画像診断報告書をもらって丁寧な説明を受けることで、検査結果・病態をよく理解できます。画像診断書の確認不足による事故を防止するにとどまらず、患者参画のより良い医療を実現することにつながると思います。

遺族連絡先 東京都新宿区四谷本塩町3-1 四谷ワイズビル1階 
      谷直樹法律事務所 遺族代理人弁護士谷直樹 
       電 話 03 5363 2052 
       FAX 03 5363 2053

谷直樹

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by medical-law | 2020-01-21 17:06 | 医療事故・医療裁判

大谷直人最高裁長官の訓示,殺された天一坊

長官は,毎年,新判事補に辞令を手渡した後,訓示を行います.
長官は今年は何をお話しされるのだろうかと注目されています.
今年は,浜尾四郎氏の「殺された天一坊」を紹介したそうです.
実際の南町奉行大岡忠相氏は天一坊裁判には関与していません.
あくまでも大岡政談をふまえた浜尾四郎氏のフィクションです.

産経新聞によると,「大谷直人長官が「人と人との間の紛争を裁くことへの畏(おそ)れ、危うさの感覚を持ち、畏れの自覚を判断の中に反映させていくことが重要だ」と語った。」とのことです.
そして,「殺された天一坊」を紹介し,「大谷長官は「裁判官に求められる説明責任という視点でも興味深い」と話し、「判決を書く際は、弱みをあえてさらけ出す、その重要性を思い出してほしい」と説いた。」とのことです.

共同通信によると,「大谷直人長官が「判決に対する非難や批判から逃げず、受け止める覚悟を持ってほしい」と訓示した。」,「当事者双方の主張が真っ向から対立する事件では「どのような判決を書いても『不当だ』との非難は免れない」とした上で「なぜ敗訴した側の主張が採用できないか、判決の中できちんと整理して示すことが必要だ」と説いた。」とのことです.



谷直樹

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by medical-law | 2020-01-21 07:10 | 司法

大寒の埃の如く人死ぬる

「大寒の埃の如く人死ぬる」

高浜虚子の昭和16年の作です.
昨日(1月20日)は大寒でした.大寒というとこの句でしょう.

谷直樹

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by medical-law | 2020-01-21 00:44 | 趣味

《サント・ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》

ポール。セザンヌ氏はサント・ヴィクトワール山を繰り返し描いていますが,《サント・ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》は1904~6年頃の制作,つまり最後のほうの作品です.色がとてもきれいです.
ブリヂストン美術館からアーティゾン美術館へ館名が変わり,昨日開館した同館が所蔵しています.2020年3月31日(火)までの開館記念展「見えてくる光景 コレクションの現在地」で展示されています.
ちなみに,2月8日には東京女子医科大学名誉教授岩田誠氏が「ホモ・ピクトル・ムジカーリス─絵を描くヒト」のタイトルでお話をされます.

今日1月19日はポール。セザンヌ氏の誕生日です.
《サント・ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》について詳しく知りたい方は,ポール・セザンヌ《サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》──立ち上がる崇高」をおよみください.
「一瞬のきらめきから永遠に耐えられる強靭な絵画へと実体感を活かし、空間を構造化し、構築性のある絵画の実現を試みた。・・・深く青々とした小宇宙に崇高な山の感動が喚起される。」



谷直樹

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by medical-law | 2020-01-19 14:20 | 趣味

医療安全情報「画像診断報告書の確認不足」と厚労省通知「画像診断報告書等の確認不足に対する医療安全対策の取組について」

公益財団法人日本医療機能評価機構医療事故防止事業部は,医療事故報告を分析し,月に1回医療安全情報をだしています.
医療安全情報に注意し,自院で事故が起きていなくても,起きうる事故については,対策をとることが必要と思います.

1 医療安全情報No.63
医療安全情報No.63(2012年2月)「画像診断報告書の確認不足」では,2008年1月1日~2011年 1 2 月31日お集計期間で3件の医療事故が報告されていました.
「画像検査を行った際、画像診断報告書を確認しなかったため、想定していなかった診断に気付かず、治療の遅れを生じた可能性のある事例が報告されています。と注意を喚起していました.

事例が発生した医療機関の取り組みは,次のとおりでした.
・主治医は、放射線科専門医の画像診断報告書を確認後、患者に画像検査の結果を説明する。
・放射線科専門医は、読影で検査の主目的以外の重大な所見を発見した場合、依頼した医師に注意喚起する。

総合評価部会の意見は,次のとおりでした.
・入院(特に退院直前)、外来を問わず、画像診断報告書が確認できる仕組みを医療機関内で構築する。

2 医療安全情報No.138
医療安全情報No.138 (2018年5月)「画像診断報告書の確認不足(第2報)」では,2015年1月1日~2018年3月31日の集計で37件の医療事故が報告されていました.
「画像を確認した後、画像診断報告書を確認しなかったため、検査目的以外の所見に気付かず、治療が遅れた事例が報告されています。」と注意を喚起していました.

事例が発生した医療機関の取り組みは,次のとおりでした.
・画像診断報告書を確認してから患者に説明する。
・画像診断報告書が未読の場合に気付ける仕組みを構築する。

総合評価部会の意見は,次のとおりでした.
・「画像検査~画像診断報告書の確認~患者への説明」の流れを整理し、業務工程を確立しましょう。

3 厚生労働省の通知
厚生労働省医政局総務課医療安全推進室は,令和元年12月11日,通知「画像診断報告書等の確認不足に対する医療安全対策の取組について」を発しました.
その内容は,次のとおりです.

「医療機関における画像診断報告書等の確認不足を防止するため、これまで、画像診断報告書等の確認不足に関する医療安全対策について」(平成29年11月10日付け医政局総務課医療安全推進室事務連絡)及び「画像診断報告書等の確認不足に関する医療安全対策について(再周知のお願い)」(平成30年6月14日付け医政局総務課医療安全推進室事務連絡)により注意喚起を図ってきたところです。
 しかし、その後も公益財団法人日本医療機能評価機構が実施する医療事故情報収集等事業において同種の事案報告が続いており、一般社団法人日本医療安全調査機構においても平成31年4月に医療事故の再発防止に向けた提言第8号「救急医療における画像診断に係る死亡事例の分析」が公表されました。
 こうした状況を踏まえ、今般、平成30年度厚生労働科学研究費補助金(地域医療基盤開発推進研究事業)による「医療安全に資する病院情報システムの機能を普及させるための施策に関する研究」において取りまとめられた研究報告書(別添1)より、今後、画像診断報告書等に記載された重要所見の見逃しを防止するために留意して頂きたい組織的な対応について、下記のとおり整理しました。なお、この組織的な対応については日本学術会議臨床医学委員会放射線・臨床検査分科会から令和元年9月に公表された「CT検査による画像診断情報の活用に向けた提言」(別添2)においても言及されております。また、医療機関において工夫されている取組についても、あわせて情報提供いたします。
 つきましては、貴管下の医療機関、関係団体等に周知いただくようお願いいたします。
                記

・ 報告書に記載された緊急度の高い所見や重要所見を受けて必要な対応がとられるためには、組織的な伝達体制や確認体制を構築することが推奨される。
・ 具体的には、診断結果の説明を担当する医師が重要所見を認知しやすくするための通知方法の工夫や報告書の未読・既読の管理、更には、その後適切に対応されたかを組織的に確認できる仕組みが構築されることが望ましい。


(参考)医療機関において工夫されている取組の紹介
・ 画像読影医が緊急度の高い所見を指摘した場合、検査依頼医に電話するとともに、報告書を検査依頼医が所属する診療科の責任者に送付する。
・ 患者自らが結果をいつ聞くことができるかを主治医に確認するように促す等、患者の参画を図る。
・ 画像診断や病理診断を専ら担当する医師が診断を行った場合、その診断結果が確実に患者へ伝わるよう、説明を担当する医師はその結果を丁寧にわかりやすく患者に説明し、その旨を診療録に記載する。


医師に画像診断報告書を見る,確認する,という注意義務があることは明らかで,それをしない医師に注意義務違反(過失)があることも明らかです.しかし,現実にそのような医師がいる以上,医療機関としての対策が必要です.
医療機関において,画像診断報告書の確認不足による医療事故が起きないようにシステムとして実効的な対策がとられることを強く願います.

谷直樹

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by medical-law | 2020-01-18 04:31 | 医療事故・医療裁判

岩手県知事の会見について


NHK「二戸病院医療ミス 知事が陳謝」(2020年1月16日)は次のとおり報じました.

「県立二戸病院でCT検査でガンの疑いが診断されたにもかかわらず、主治医が3度にわたって検査結果を見落とし、患者が死亡する医療事故があったことについて、達増知事は16日の記者会見で「ご家族の方々におわびを申し上げたい」と陳謝しました。

県立二戸病院では、平成27年に60代の男性患者がCT検査を受けた際、放射線科の医師が腎臓のガンが疑われると診断しましたが、主治医の呼吸器内科の医師が3度にわたって検査結果を見落としました。
男性はその後、ガンが転移し、平成29年1月に死亡しました。
県は先月、医療事故と認めた上で遺族に謝罪し、示談が成立しました。
この事故について、達増知事は16日の会見で、「示談が成立しているとはいえ、そもそもあってはならないことだ。改めてご家族の方々におわびを申し上げたい」と陳謝しました。
また、事故の公表が、男性が死亡してから3年たってから行われたことについて、「工夫の余地があったのかとも思うが、基本的には医療局の経営判断にゆだねられる。遺族との合意が大事なので、それに基づいた措置がとられたと理解している」と述べ、公表の方法に大きな問題はないとの認識を示しました。
一方で、遺族の弁護士は「他の医療事故と違って速やかに公表されず、はなはだ遺憾だと以前、県に伝えていた。示談するまで公表しないよう県に求めたことはない」と話しています。」


岩手放送「知事 二戸病院の医療事故で陳謝/岩手」(2020年1月16日)は次のとおり報じました.
「県立二戸病院で「がん」の発見を見落とし男性患者が死亡した医療事故について、達増知事は16日の定例会見で陳謝しました。会見では医療事故の公表のあり方が問われました。

県医療局は15日、今年度上半期に県立病院で5件の医療事故の報告があったと発表しました。そのうち二戸病院では、「腎細胞がん」の発見が遅れ60代の男性が死亡しています。

(達増知事)
「ご家族の方々に私からもお詫びを申し上げたいと思います」

達増知事はこのように述べ、医療事故について陳謝しました。県立病院での医療事故について、医療局は2004年度から患者や家族の同意が得られた場合に限り公表してきましたが、その方法は医療局や病院のホームページでの発表にとどまっています。達増知事は「ホームページでの公表は患者やその家族、遺族との合意の上での方法」としたうえで…。

(達増知事)
「様々な工夫の余地があるのかと思いますし、ここは基本的には医療局の経営の判断として、情報の発表の仕方については委ねられる部分だと考えます」

このように述べ、今後の公表のあり方について具体的な言及を避けました。」


 上記記事が報じているとおり,遺族側からはむしろ公表を求めていました.

「千葉大学医学部附属病院は,2018年6月8日会見し,60代女性が2013年6月に画像診断報告書で腎がんが疑われると指摘されながら担当医が確認せず,2017年10月に腎癌が確認され,同年12月に亡くなった事案について,2013年の時点で治療していれば,その後の経過に大きな違いがあったとしています。
横浜市立大学附属病院は,2018年6月25日会見し,同市の60代の男性がCT検査で腎がんの可能性を指摘されながら院内で情報共有されず,検査から約5年半後に死亡した事案を公表し,病院長らが謝罪しました。
このような対応に比し,岩手県の本件についての対応は甚だ遺憾と言わざるをえません。」という書面を県の代理人に送っています.

 また,県がホームページで公表することに同意しましたが,遺族は病院が会見を行わないよう求めていたわけではありません.

【追記】
岩手日日新聞「あってはならない」 二戸病院がん疑い見落とし 会見で知事陳謝」(2020年1月17日)は,「達増拓也知事は16日の定例会見で、県立二戸病院で腎細胞がんを疑わせる所見を見落とし、治療が遅れ男性患者が死亡した医療事故について、「そもそも ...」と報じました.

河北新報「患者死亡の医療ミスを岩手県がHPで公表 知事「局の判断を尊重」」(2020年1月17日)は,次のとおり報じました.

「岩手県立二戸病院(二戸市)で、コンピューター断層撮影(CT)の画像診断報告書の所見見落としによって60代の男性患者が死亡した医療ミスに絡み、県医療局が事実の公表をホームページ上で済ませたことについて達増拓也知事は16日の定例会見で「医療局の判断を尊重する」との考えを示した。
 知事は「情報公開の方法や事故の対策は医療局の経営判断に委ねられている」と説明。「県と遺族がホームページで公表するとの内容で示談した。決めたことに従った」と話した。
 患者は2015年3月にCT検査を受診。診断報告書に記載された腎細胞がんを疑う所見を非常勤医師が見落とし、適切な治療が行われないまま17年1月、腎細胞がんで死亡した。」


谷直樹

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by medical-law | 2020-01-16 19:38 | 医療事故・医療裁判

県立病院のがん見落とし報道

県立病院のがん見落としについて,次のとおり報道されています.

時事通信「がん疑い見落とし患者死亡=ミス認め、遺族に謝罪―岩手県立二戸病院」(2020年1月15日)は次のとおり報じました.

「岩手県立二戸病院(同県二戸市)で、60代男性患者の腎細胞がんを疑わせる所見を見落とし、治療が遅れたために男性が死亡する医療事故があったことが15日明らかになった。同病院はミスを認めており、遺族との間で昨年12月に示談が成立し、遺族に謝罪したという。

 同病院が県を通じ15日に発表した。遺族代理人によると、男性は2015年3月に呼吸器内科を受診。コンピューター断層撮影(CT)で腎細胞がんを疑わせる所見が認められ、放射線科の医師が画像診断報告書に記載したが、担当医師がこれを精査せず、同年6月と9月の再検査の際にも記載を見落とした。このため治療が遅れ、男性は16年8月にがんが転移して脳出血で病院に搬送され、17年1月に死亡した。

 遺族は15日、「事故が分かった時点で説明と謝罪をしてほしかった」とコメントを発表。同病院は再発防止のため、画像診断報告書をパソコンで閲覧する際、画面上に既読を確認するボタンを設置したり、重要所見を強調文字で表示したりするシステム改修を行ったことを明らかにした。

 岩手県医療局は「全県立病院が一丸となり、医療安全対策の徹底を図る」とコメントを出した。」 


共同通信「医師がん3度見落とし、男性死亡 岩手県立病院、示談が成立」(2020年1月15日)は次のとおり報じました.

「岩手県は15日、県立二戸病院で2015年にCT検査を受けた60代男性の担当医が、画像診断報告書に記載された腎臓がんを疑わせる所見を見落としたため判明が約1年5カ月遅れ、その後死亡したと発表した。病院では計3回CT検査を受けたが、いずれも見落としていた。県は死亡との因果関係を認め昨年12月、遺族と示談が成立した。

 県や遺族側の弁護士によると、男性は15年3月にCT検査を受診。放射線科の医師は腎臓がんの疑いがあるとする画像診断報告書を書いたが、呼吸器内科の医師が精査していなかった。

 男性は同年6月と9月にも同病院でCT検査を受けたがいずれも見落とされた。」


NHK「ガン検査結果見落とし患者死亡」(2020年1月15日)は次のとおり報じました.

「県立二戸病院は、CT検査でガンの疑いが診断されたにもかかわらず、主治医が検査結果を見落とし、患者が死亡する医療事故があったとホームページで公表しました。
県は、遺族と示談した上で謝罪したということです。

県や遺族の代理人の弁護士によりますと、平成27年3月に、60代の男性患者が県立二戸病院でCT検査を受けた際、放射線科の医師が腎臓のガンが疑われると診断しましたが、主治医の呼吸器内科の医師が検査結果を見落としたということです。
男性は、同じ年の6月と9月にもCT検査を受けましたが、同じ医師がその際も検査結果を見落としたということです。
その後、平成28年8月に男性が脳出血で救急搬送され、検査結果の見落としがはじめて分かったということです。
男性は、ガンの治療を受けましたが、5か月後に死亡しました。
県は遺族と話し合いを続けた結果、先月示談が成立し、遺族に謝罪の文書を送ったということです。
遺族は弁護士を通じて、「早く治療を始めていれば、苦しい思いをしなくて済んだのはないかと憤りを感じました。再発防止に努めてほしい」とコメントしています。
県立二戸病院はホームページ上で「応援の医師が診察していたが、画像診断の報告書を既読したと確認する体制が構築できていなかった。再発を防止するため、システムを改修した。関係者におわび申し上げます」とコメントしています。
また、県医療局業務支援課の鎌田隆一総括課長は、「関係者の方々に心よりお詫び申し上げます。全ての県立病院が一丸となって医療安全対策の徹底を図り、安心安全をさらに推進していきたい」と話しています。」


岩手放送「がんの発見遅れ60代男性死亡 県立病院で医療事故報告5件/岩手」(2020年1月15日)は次のとおり報じました.

「医療局は15日、今年度上半期に県立病院で5件の医療事故の報告があったと発表しました。そのうちの1件では「がん」の発見が遅れたことで60代の男性が死亡しています。

県医療局によりますと、今年度上半期に医療事故の報告があったのは県立遠野病院が2件、中央病院、中部病院、二戸病院がそれぞれ1件のあわせて5件で、いずれも家族の同意を得て公表されたものです。そのうち二戸病院では2015年に60代の男性が受診した際、CT検査で「腎細胞がん」が疑われたにもかかわらず担当医師がこれを見落としていました。遺族の弁護士によりますと、その後、男性はがんの発見と治療が1年5か月近く遅れ、2017年1月に「腎細胞がん」で死亡しました。この事故を受け県医療局は画像診断の報告の際に重要な箇所を強調して表示するなどの再発防止策を取るとしました。」


岩手日報「医師がん3度見落とし、男性死亡 岩手県立病院、示談が成立」(2020年1月15日)・河北新報「医師がん3度見落とし、男性死亡 岩手県立病院、示談が成立」(2020年1月15日)は次のとおり報じました.

「岩手県は15日、県立二戸病院で2015年にCT検査を受けた60代男性の担当医が、画像診断報告書に記載された腎臓がんを疑わせる所見を見落としたため判明が約1年5カ月遅れ、その後死亡したと発表した。病院では計3回CT検査を受けたが、いずれも見落としていた。県は死亡との因果関係を認め昨年12月、遺族と示談が成立した。

 県や遺族側の弁護士によると、男性は15年3月にCT検査を受診。放射線科の医師は腎臓がんの疑いがあるとする画像診断報告書を書いたが、呼吸器内科の医師が精査していなかった。」

 男性は同年6月と9月にも同病院でCT検査を受けたがいずれも見落とされた。


朝日新聞「がん見落とし、死亡 検査報告、確認怠る 岩手の県立病院」(2020年1月16日)は次のとおり報じました.

「岩手県は15日、県立二戸病院の医師がCT検査の報告書の確認を怠るなどして腎細胞がんを見落とし、60代の男性が死亡したと発表した。

 病院や遺族の代理人によると、男性は健康診断で肺に影があることが分かり、2015年3月に同病院の呼吸器内科でCT検査を受けた。放射線科医は画像診断報告書で腎細胞がんの疑…」


読売新聞「がん見落とし患者死亡 二戸病院 主治医CT報告書読まず」(2020年1月16日)は次のとおり報じました.

「岩手県立二戸病院(二戸市)で2015年、60歳代の男性患者がコンピューター断層撮影装置(CT)の検査で腎細胞がんの疑いを指摘されていたにもかかわらず、主治医が報告書の内容を読まず、患者が死亡していたことがわかった。県医療局が15日に公表した。

 同局や患者遺族の代理人弁護士によると、男性は15年3月にCT検査を受け、「腎細胞がんが疑われる」との所見が画像診断報告書に記されたが、呼吸器内科の主治医が読まなかった。男性は16年8月、別の疾患の治療のため同病院で検査を受けた際に腎細胞がんが見つかり、17年1月に死亡した。県医療局と遺族の間では示談が成立したという。

 同局によると、この主治医は応援医師で、スタッフと連絡を取り合うことが少なかったという。周囲の医師らは、主治医が報告書を読んで男性の状況を把握していたと思い込んでいた。

 県医療局の鎌田隆一・業務支援課総括課長は「関係者におわび申し上げる」と陳謝し、再発防止策として、院内の電子カルテに「既読」ボタンを設定し、重要な所見がある場合は表示を強調するシステムに改修した。

 県医療局は04年度から、県立病院の医療事故について患者や家族から同意を得たうえで半期ごとに公表しているが、患者が死亡したケースは確認できた13年度以降でほかにないという。」


デーリー東北「二戸病院で医療ミス、がんの疑い見落とし男性死亡」(2020年1月16日)は次のとおり報じました.

「岩手県医療局は15日、2015年3月に二戸市の県立二戸病院を....」

岩手めんこいテレビ「県立二戸病院 がん見落とし患者死亡」(2020年1月16日)は次のとおり報じました.

「岩手・県立二戸病院で、がんの疑いが見つかったものの、医師が見落とし、患者が亡くなっていたことががわかった。

県医療局は15日、2015年、県立二戸病院で市内の60代の男性がCT検査を受け「腎細胞がん」を疑わせる所見があったものの、担当していた呼吸器内科の医師が見落とし、男性が死亡していたことを発表した。

遺族の弁護士によると、CT検査はあわせて3回実施されたものの、医師がいずれも見落とし、男性は腎細胞がんの転移による脳出血で病院に運ばれ、その後亡くなった。

遺族と県は示談が成立しているが、遺族は「思い出すと、とても辛い。再発防止に努めてほしい」とコメントしている。

県は、この他にも2019年9月まで3つの県立病院で合わせて4件の医療事故があったことを公表した。」


県立病院の呼吸器内科の医師は,肺の疾患を疑ってCT検査をオーダーし,3か月ごとの定期的な経過観察を行っていました。CTの肺の部分だけは見ていました.しかし,放射線科医の作成した画像診断報告書は見ていませんでした.
放射線科医はCT画像のスライスを上から下まで全部を見て報告書を作成します.平成27年3月には「腎臓がんを疑います」,6月と9月には「left renal cell carcinoma」(左腎細胞がん)と明記していました.本件は,呼吸器内科の医師がこの画像診断報告書を見ていれば容易に防止できた事故なのです.医師間で医療情報の共有がなされなかったことが事故の原因です.
システムの改善により,このような事故の再発が防止されることを願います.

谷直樹

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by medical-law | 2020-01-16 05:57 | 医療事故・医療裁判

県立病院でがんを見落とされた遺族の思い

岩手県医療局は,2020年1月15日,サイトに「岩手県立病院等医療事故等の公表について」をアップし,5件の医療事故を公表しました.

私は,5件のうち,平成27年3月に県立二戸病院でがんを見落とされた患者の遺族の代理人です.
60歳代の男性は,健康診断で肺の陰影を指摘され,受診したクリニックで県立病院を紹介されました.
県立病院の平成27年3月のCT検査の放射線科医作成の画像診断報告書に「腎細胞がんを疑います」と記載されていたにもかかわらず,呼吸器内科の主治医はそれを見ていませんでした.
この主治医は,肺の疾患を疑って実施した同年6月,9月のCT検査の画像診断報告書(放射線科医の臨床診断「腎細胞がん」が記載されている)も見ていませんでした.
平成28年8月にがんが脳に転移して脳出血で県立病院に運ばれ救急の医師がカルテを見て腎細胞がんが発見されました.
患者は平成29年1月に腎細胞がんで死亡しました.
なお,民事的には令和元年12月に訴訟は行わず示談により解決しております.
病院からの謝罪は,令和元年12月に書面でありました.
遺族の思いを以下紹介します.

県立二戸病病院でがんを見落とされた遺族の思い

父は、仕事を忙しくしていましたが、かかりつけ医からの紹介状をもらった翌日、県立二戸病病院に行っています。定期検査もきちんと受けていて、父には何の落ち度もありません。
2度の定期検査も同じ医師が担当し、画像診断報告書が読まれることはありませんでした。

私たち家族が見落としを知ったのは、父が転移による脳出血で入院したときでした。ショックや今後の生活の心配でいっぱいで、後遺症に苦しむ父を見て、早く治療を始めていれば脳出血を防ぐことができたんじゃないか、苦しい思いをしなくて済んだんじゃないか、と憤りを感じました。

父はがんを告知されたとき『(定期検査で)良くなってたんだけどなぁ』と言って、頭をガクッと落としていました。その姿を見て、父が受けていた定期検査は医師の見落としにより全く意味を成しておらず、こんなにも無念なことはあるだろうか、と胸が押し潰される思いでした。
苦しんで亡くなった父を見て、何も悪いことをしていない父が、人生の最期にどうしてここまで辛い思いをしながら亡くならなければならなかったのか、今でも思い出すのがとても辛いです。
見落としがなかったら、母の存命中に告知を受け闘病ができ心強かったと思いますし、旅行など家族で過ごす時間や思い出を作ることができたはずです。そういった、人生の過ごし方や生き方を自分で決める時間を奪われたことは許されません。

病院側には、事故がわかった時点で説明と謝罪をして欲しかったです。
再発防止として、患者が検査票や報告書を見ることが出来ればよいと思います。
父や私達と同じ思いをする人が今後二度とあらわれないよう、再発防止に努めて欲しいです。(2020年1月15日)



谷直樹

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by medical-law | 2020-01-15 11:20 | 医療事故・医療裁判