弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

147mmHgの波紋

NHK「人間ドック 日本医師会が新基準を批判」(2014年6月8日)は、次のとおり報じました.

「人間ドック 日本医師会が新基準を批判
日本人間ドック学会が健康な人の血圧などの基準値を新たに示したことについて、日本医師会は「医療現場の混乱を招いている」などと批判する見解を出しました。

日本人間ドック学会は、人間ドックで健康と判定された人1万人以上の血圧や肥満の程度を示すBMIなどを詳しく分析しました。
その結果、健康と判定された人の血圧は、上が147まで、下が94までとなり、上が129まで、下が84までとなっている現在の正常値とは異なる値となりました。
また、肥満度を表すBMIの値も、現在の男女とも、25までが男性は27.7まで、女性は26.1までとなりました。
人間ドックでの判定の際には現在、血圧は日本高血圧学会が、肥満度は厚生労働省が決めた基準値を使っていますが、今回、人間ドック学会として独自の分析を行ったことで、正常とされる基準値が2種類存在すると受け取られるような事態となっています。
このため日本医師会は「医療現場は大きな混乱を来している」などと批判していて、新たな基準値をどう扱うのか関連する学会との間で慎重な検討を行うよう求めました。
日本医師会の今村聡副会長は「本来は生活習慣を改めるべき人が何もせず、病気になることがあってはいけない。医師に数値の意味をきちんと聞いてもらうことが大事だ」と話しています。
一方、人間ドック学会は、「新たな基準値を判定に導入するかは今後、議論していきたい。ほかの学会にも丁寧な説明を行い、理解を得る努力をしていきたい」としています。」


この報道は、やや誤解を招きかねないのではないか、と思います.

日本人間ドック学会が4月に発表したのは、タバコ喫煙、糖尿病、肥満などのリスクのない「スーパーノーマル」の人の血圧は、上が147mmHgまで、下が94mmHgに範囲におさまっていた、というものにすぎません.日本人間ドック学会は、この値が正常値との範囲であるいう意味で発表したわけではないでしょう.

これは、診断基準とはまったく別のものです.
日本人間ドック学会が「基準」を示し、日本医師会がその基準を批判した、というわけではなく、日本人間ドック学会の報告が「基準」であるかの誤解が生じ、混乱が生じていることを日本医師会が批判したということではないでしょうか.

日本人は、一見健康でも血圧が高いことが判明したとうけとるべきでしょう.日本食は塩分が多いですし、とくに外食は味付けが濃いように思います.「スーパーノーマル」でも、血圧が高いと病気になる可能性があるわけです.
現時点で「健康」でも、高血圧の診断基準に該当した場合、食生活の改善や定期的な運動、減量、禁煙など生活習慣の改善が必要です.
それでも、血圧が下がらないとき、はじめて降圧薬による治療が行われます.

血圧は検査するたびに変わりますので、そのとき基準値内であったとして安心はできません.病また、院で測定すると高めにでることもあります.日本人は、一家に一台血圧計を用意し、ときどき朝の血圧を測定したほうがよいのではないでしょうか.

谷直樹

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# by medical-law | 2014-06-09 01:18 | 医療