弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ

福井地裁平成16年3月17日判決、気管チューブ抜管後の喉頭浮腫事案で責任肯定(報道)

福井新聞が10年前のきょうでとりあげていましたので,10年前の判決ですが,紹介します
術後の喉頭浮腫による窒息に対し,3.5mmのチューブ,3.0mmのチューブでも再挿管を試みるべきとし,麻酔科医が4.5mmのスタンダードチューブにより挿管を試みた後挿管操作を中断していることについて過失を認めた判決です.

福井新聞「旧国立鯖江病院医療ミスで賠償命令」(2004年3月17日)は,次のとおり報じました.

「旧国立鯖江病院で受けた手術後のトラブルで男児=当時(6つ)=が脳死状態となって死亡したのは、適切な処置をしなかった病院側の責任として、男児の両親=越前町在住=が国を相手に約八千百万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が十七日、福井地裁で言い渡された。小原卓雄裁判長は「担当医師は適切な処置をすべき注意義務に反した」として、国に約七千万円の支払いを命じた。

 男児は一九九七年二月、同病院で扁桃(へんとう)肥大の切除手術を受けた。終了後に気道を確保していたチューブを抜いたところ、気道が閉塞(へいそく)して呼吸できない状態になった。医師は二度にわたってチューブの挿入を試みたが失敗。気管切開手術でも間に合わず男児は脳死状態で意識不明となり、約一年半後に死亡した。

 男児は手術後、喉頭浮腫(こうとうふしゅ)を起こしていたのに、医師は喉頭けいれんと判断していた。国側は「浮腫は予見不可能」としたのに対し、判決では「チューブを抜いた後に起こる浮腫は、まれとはいえ文献で紹介されている。医師には予見し対処する注意義務違反があった」とした。

 また、医師はチューブが入らないためいったん挿入を中断している点について「異なる細さのチューブを使い、次々挿入を試みる必要があった。細いチューブでも酸素を送ることができるという症例もあり、命を救うのは可能だった」とした。

 男児の父親は「主張が認められ大変感謝している。この判決は大きな意義があると思う。事実を隠したり、否定することからは医療の進歩は望めない。国は控訴しないでほしい」としていた。厚生労働省近畿厚生局は「一部認められなかった点もあり、判決を十分検討して今後の方針を決めたい」とのコメントを出した。

 国立鯖江病院は国立病院・診療所の再編で二○○○年、丹南十市町村でつくる組合に経営移譲された。」


術後の喉頭浮腫による窒息事故は,まれではありません.すくなくとも患者側弁護士がうける相談では。
ただ,裁判となると,裁判所が,医師に具体的にどこまでを求めるか,義務認定についての予測が難しく,弁護士としては苦慮します.そこで,術後の喉頭浮腫による窒息事故は,示談,和解での解決が多いと思われます.この判決は,同種事案の解決の際に参考となっています.
この判決は,確定しており,判例時報1882号99頁に掲載されています.

弁護士 谷直樹

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# by medical-law | 2014-03-18 05:34 | 医療事故・医療裁判